白雪序章
タイトルは『つきのついおうりゅう』です
【白雪序章】
月が綺麗ですね
其れは私が彼と出会った日、と或る日の夜に出た言葉だった。数日前の事を逆行再現で思い返すと、腹は手刀で貫かれている。手を引き抜かれると視界が揺らぐ。腹に空いた風穴からは熱が流れ出して広がり、倒れた私は夜空を見上げている。
致命傷を受けた事は明白で、この体はもう何も感じなくなり、動かす事も出来ない。そうして私の名前を叫ぶ声が聞こえた。白毛赤眼で黒い被り物付き長外套に、手を覆う革手袋の彼だ。
体を抱えられると顔が見える、其の表情から、もう助からない事は分かっているのだろう。この光景が最期だと分かりきっていた。だからある約束をする。
必ず迎えに来て、私の運命。
西暦一九六九年十二月二十五日。
私はそう言い残した後、再び永い眠りにつく。
西暦二〇一六年十二月。
二年目の高校生活は冬休みで、私は何度目かの朝を迎えていた。
原込区を歩いていると、京都らしい日本の温かみある古風な建物は少ない街並みで、現代の無機質な建物ばかりが建ち並んでいる。向原の家を出ている私は、住み始めてから進学した高校の前を横切って行く。大体の課題を手早く完了させている私が心配する事はなかった。
近所には住宅街や学校等の教育機関があり、冬休み期間だからか施設から子供の声は聞こえない。聞こえるのは、物静かな冷たい風の音だけ。いつもの活発な雰囲気を知っているからか、何とも言えない静かさを感じる。周囲の空気を振り払うように、私は足を速めた。
向原から来た原新は事務所街と和や洋の店が並ぶ商業地域で構成されている。私の脚はどこを目指す訳でもなく、ただ歩いていた。そうして商業地域を歩きながら見渡していると、陳列窓には私が映っている。
友人から私は雪肌に『真白の毛』と青眼で氷雪を思わせると言われていた。そして横髪は身長の半分まで伸び、後ろ髪は足首に届く。
無地の白服に長手袋、襞飾と衣嚢付きで靴全体が隠れない短裳、膝丈長靴を履いている。
見て思う事は我ながら白の面積が多いと思い、気づけば自分の服装が花嫁衣装のように見えていた。
其処から私はある事を連想して、少し溜め息が出る。
今日も見つけられないのでしょうか、私の──
運命の相手
気づいた頃もう既に探していた。何故か相手がいる事と
何時か出会える確信から、私の行ける範囲で探し続けて今に至る。
成果は……当然と言う可きか、無かった。
こんな風にある事だけ分かる、新月を探すような私の姿は屹度、迚も異常に見えるのでしょう。
私は自身を元から異常だと理解して、当然とも認識している。でも生き方を変えるなんて考える事はなく、変えるつもりもない。私は必ず相手を見つける。そう考えているも、今日も出会う事なく、無慈悲に時間は過ぎて行く。
月明かりで薄暗く、明るい帰り道を歩く私の前方からは、或る男性が向こう側から歩いて来る。
国は不明な長外套の軍服を肩に羽織る、青年的な白髪に赤眼と『縦長の瞳孔』です。
……縦長の瞳孔?
見間違いじゃない、彼れは確かに縦長の瞳孔でした。すると軍服の男性は剣がある手を右後ろに振りかぶり、突然と襲い来る。
男性を見た時点で剣が手にあるにも関わらず、反応する以前に警戒すら出来ずにいた。生存本能で避けようと背の方へと動き、体勢を崩した私は自分が死ぬ事を悟る。
男性は容赦なく私の体を深く斬りつけて殺す。それは生きてるなら何だろうと持っている物で、体の内側から心底冷えるようだった。
直前で私の目に映る光景は全て遅い動作になる。それは間際に起こりうる現象でした。
その時に周りを見て、死神がいた。
死神は右手で持つ黒い鎌を、左下から勢いよく曲線状に振り上げ、私達の間に割り込む。男性の剣と搗ち合い金属音が鳴り、死神は男性を弾き飛ばす。男性は剣を地面に突き立て、勢いを減らしきると立ち上がる。
男性は剣を振り死神を睨みつけた。私は尻餅を搗いてしまうも、上を向くと死神の正体が明らかになる。
死神は鎌に見えた太刀を持つ黒衣の人でした。
白肌に少年的で浮き毛のある黒髪で、下三白眼に黒い瞳の猫目や和洋折衷の中性的な女性顔です。
第二関節までの手袋が嵌めてあり、腰巻の左右には帯輪があり、大型で長方形の鉄鎖を二つ付けています。
左手の小銃と右手は太刀で、柄の部分にある鍔が、黒の逆十字と薄明るい刃を持ち黒い。左に鞘を鎖で巻き吊り提げ、二つの武器を両腰から引き抜いた事が分かる。
死神の様な黒衣の人を、私『スノウ・ホワイト』は、運命の相手だと確信した。




