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そこに愛があるから

本作は、埼玉県上里町を舞台にしたボイスドラマ作品です。

都会で働く二人が「移住」と「帰郷」の間で揺れながら、

人生の選択と向き合う物語を描いています。


日常の延長線にある、小さな決断。

その積み重ねが、未来をつくっていく。


そんな想いを込めて書きました。

【ペルソナ】

・瑞生(みずき:27歳/CV:廣庭渓斗)=東京のラジオ局で働くディレクター。移住検討中

・希空(きく:28歳/CV:中野さいま)=瑞生の先輩でパートナー。名古屋出身。地元へ帰りたい


【上里町 - 埼北移住 ~埼玉県北部地域移住交流サイト~】

https://www.saihoku-ijuu.com/kamisato.html



【シーン1/放送局のスタジオ】


■SE/番組のエンドタイトル(jingle)


「おつかれ!」


深夜2時。

防音壁に囲まれたスタジオでオレはパーソナリティを送り出す。

ヘッドホンから流れるのは、生番組のエンディングテーマ。

ADやミキサーのスタッフたちにも一人一人声をかける。


「アナ尻、5秒巻いちゃったけど、あのノリなら全然アリだよね!」


オレの名前は瑞生。

都心のラジオ局で毎日キューをふるディレクターだ。


そして・・・


「放送事故じゃないけど、不体裁でしょ、これ」


副調整室、略して「副調」の後ろで腕を組んでいるのがオレの先輩。

プロデューサーの希空。

すこ〜し辛口だけど、言うことはだいたい正しい。

で、みんなが出てったあと、こそっと呟く。


「こんな時間だけど、お腹減っちゃったぁ」


1歳年上の彼女はプライベートじゃパートナーなんだ。

その日の深夜も、打合せを兼ねて居酒屋へ。


昭和か、っての。


いや、打合せってのはガチで。

春から始まる新番組なんだけど。

都心で働く若者たちをターゲットに、移住をテーマにした番組。

さまざまな情報をパーソナリティが紹介していく。

もちろんPodcastでも展開する。


移住ったって、どこでもいいわけじゃないよな。

だから、最近オレたちは休みのたびにいろんなとこへロケハンしてる。

ってか、ロケハン兼ねた、体のいい旅行だけど。


先週は希空の実家、名古屋へ。

でも東京から名古屋へ移住って・・・ちょっとないかなあ。

彼女は帰りたがってるけど。



【シーン2/神保原駅】


■SE/駅前の雑踏


次の日曜。

オレたちは、神保原駅に降り立った。


埼玉県最北端の駅。

場所は、上里町かみさとまち

高崎線の中にある唯一の「町」なんだって。


そう。

ロケハンの場所は、埼玉県上里町。


都会の喧騒を離れて90分。

駅前だというのに、静寂が二人を包む。

駅舎を出ると空が空が驚くほど広かった。


「上里っていったら小麦だよね」


という彼女のひとことで、オレたちは田園地帯へ。

レンタカーを借りて、神流川を目指した。



【シーン3/神流川・烏川へ向かう車中】


■SE/車内の走行音


「希空って、朝はパン派だったっけ?それともごはん?」


「パンだけど・・どうかした?」


「いや、別に・・」


「私は移住、しないわよ」


「そ、そんなこと言ってないし」


「そう・・ならいいけど」


おっと。やばいやばい。

直球過ぎたかな。


実はいまオレ、真剣に移住を考えてる。

次の改編でお昼のワイド番組が決まってるし。

そこで移住のコーナーも作っちゃったし。


ちょうどいいタイミング。


家賃とか物価とか、東京での生活はオレにはハードルが高い。

局長に相談したら、半分リモートでも問題ない、って言われたんだ。

ってことで・・

風向きはもう、移住一直線なんだけど、ひとつだけ問題が・・・


うう・・彼女、希空にまだ話してないんだ!


彼女の出身は名古屋。

酔っ払うといつも、名古屋に帰りた〜い、って言うんだよな。

だからそっち方面の移住、ってのも考えたんだけど・・・

距離がなぁ・・・


番組のこともあっていろいろ調べてたら、

彩北、埼玉の北部ってのが、結構ポイント高いんだ。

群馬ほど遠くなくて、車も電車も交通の便がバッチリだし。


で、今日、その彩北の上里へ来たってわけ。


ホントは希空がパン派だってこともリサーチ済み。

粉物が大好きだってことも知ってるから。


ようし、ちょっとお腹すいちゃったから、ランチにするか。

そこで陥落させてやるぞ!


■SE/車内の走行音


「冬の小麦畑って、なんだか寂しい感じね」


「冬はね。

でももう少ししたら、緑の絨毯になるんだってさ」


「ふうん」


こ、この目は・・・疑いの目!


「お、お腹すいちゃったからお昼にしよ」


「わかった」


■SE/車の走り去る音



【シーン4/上里サービスエリア】


■SE/SAのガヤ


オレたちは、SNSで人気のつみっこのお店へ。

お腹がふくれたら彼女のテンションも上がってきた。

よしよし。


このままたたみかけるように

上里サービスエリアでカフェタイム。

もちろん、小麦を使ったスイーツは必須だ。


「あとはなにがあるの?」


「ショッピングでしょ、やっぱり!

上里は、別名”ショッピングの無限回廊”。

小さな町に

ショッピングモールやホームセンターがたっくさんあるんだよ」


「どうして?」


「車のアクセスが抜群なんだな。

関越道に国道17号、254号。

交通の要所、ハブになってるってこと」


「やけに詳しいのね」


「そりゃあロケハン前にも入念なチェック!

って、あったりまえじゃないか」


「ふうん」


ま、またしてもテンションが・・


だめだだめだ、これ以上落としては・・

よし、言うなら今しかない!


「ねえ、帰りは新幹線で帰らない?」


「え?」


「本庄早稲田って近いんでしょ」


「そ、そうだよ。

車だって、電車だって、アクセスすっごくいいじゃんね〜。


思ったんだけど〜

上里って神流川、烏川って清流があって

野菜もめっちゃ美味しいし、

ショッピングモールもあって便利だし・・・」


「なにが言いたいの?」


「き、希空!」


「なによ?」


「オ、オレたち、上里に住まないか?」


「え?」


「ゴメン!実はずうっと考えてたんだ。

いまみたく都心に暮らし続けてたら、なかなかお金たまんないし」


「・・・」


「上里で新しい人生を始めたいんだ」


「そう・・」


「わ、わかってる!希空が名古屋へ帰りたがってるのは!

だから、まずは住んでみて、落ち着いてきて、貯金もできてきたら・・・」


「子どもが大きくなってきたら?」※ってこと?、という意味


「そう、子どもが・・って・・ええっ!?」


「いいわよ」


「え?え?」


「帰ってから言おうと思ってたんだけど」


「こ、こ、子ども!?」


「ここなら、子育てするにもいい環境だと思うし」


「そ、それ、本気で言ってる?」


「本気」


「名古屋は?ここ、東京から名古屋とは反対方向だぞ」


「子どものこと、考えると、ここがいいかな、って」


「そ、そうだ、子ども!子どもって?」


「はいはい、ちゃんと説明するからよく聞きなさい。瑞生パパ」



いちばん大事なことは・・

大切な人と、

同じ景色を見て、

笑って生きていける場所。


そこに、

愛があるなら・・・


僕たちの新しい人生が、いま、この瞬間に始まった。

最後までお読みいただきありがとうございます。


この物語はボイスドラマとしても制作されています。

「彩の国」で検索し、公式チャンネル、または

Spotify・Apple・Amazon・YouTubeなどのPodcastで

ぜひ音声でもお楽しみください。

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