読者
愛恋は二つ目の物語を書き終えた。
当初は「ハーレムを楽しむ男」を軽く描こうと思っていた。
アニメ化されている作品のように、ハーレムの女たちは相手を気にしていなかったり、仲良くしていたり……という物語を書こうと思っていた。
でも、出来なかった。
書き終えて、愛恋は落胆していた。
そんな時、兄夫婦がやって来た。
「おい! あ・い・こ!
読んだぞぉ―――っ。」
「げっ!」
「げっ!って何だよ!」
「……あ…あ……読んだの?」
「夫婦で読んだわ。」
「げっ!」
「げっ!は、止めてね。」
「ごめんなさい……。」
「軽い男の軽いハーレムの話じゃなかったな。」
「うん。」
「愛恋ちゃんには無理よね。」
「……うん。無理だった。
だってね、洋の東西を問わず、ハーレムで苦しむのは女性なのよね。」
「そうよね。御所でも、大奥でも……トルコ帝国のハーレムでも、ね。」
「正室と側室が仲良くなんて無理でしょ?」
「そうよ、無理よ。」
「それを何でか、軽く書いてるのよね。」
「ねぇ、ハーレムを作って、女性同士が揉めない小説って絶対に男が書いてる
わ!」
「そうよね! 私もそう思ってたの。」
「でしょ、でしょ。でないと、あんなハーレムを書けないわ。
能天気な主人公と女たちでないと無理よね。」
「本当に!」
「それで、か? あの悪名高いヘンリー8世を持って来たのか?」
「なんかね、思い付いたのがヘンリー8世だったの。」
「そっか。」
「あ……それとね、ググって思たんだけどさ。」
「うん。なんだ?」
「転生物で、婚約者に婚約破棄される時ね。」
「うん。」
「当事者同士で婚約破棄するのよ。
でもね、可笑しいでしょ!
国が決めた婚約なのに、当事者の王子が『婚約を破棄する!』って効力がある
の?って思ったのよ。
場合によっては10歳未満で婚約破棄を当事者間で話してるのね。
親は? 変でしょう?
婚約を決めたのは親同士なのに、婚約を解消する時も当事者抜きで決まるんじゃ
ないの?
だって、婚約を決める時、大抵は親が決めてるのよ。
そう思うと、転生物って面白くなくなったのよね。
同じ過ぎて……ほぼ同じような内容だから……。」
「そうよね。私もそう思ったの。」
「あ~ぁ……二つ書いたけど、二つとも悪い出来よね。
あんなんじゃ、誰も読んでくれないわ。」
「アニメ化されたかった?」
「ま……まさか……そこまでは、思ってないですよ。」
「ちょっとは思ってたんだ。」
「だって、頑張って書いたんだもん。」
「もん。って……いい年した妹から聞きたくない言葉だな。」
「いいじゃん、別にぃ、誰にも迷惑掛けてないもん。」
「愛恋ちゃん、私は良いと思ったわ。
だって、あのヘンリー8世に『バカ王』って言って。
その上、『たった一人の女も幸せに出来なかった!』って事実を突きつけたんだ
もん。
快感だわ!」
「もん!って言ったよ。お兄ちゃん……。もん!って。」
「妻は良いのだ。」
「なんですとぉ―――っ! ひいき反対!」
「そりゃあ、愛恋ちゃん、私達は夫婦だもん。」
「そうだよなぁ……愛し愛された夫婦ぅ。」
「ねっ!」
「ねぇ~っ。」
「ああ……もうお帰り下さい。」
「愛恋!」
「感想はお母さんから聞きます。」
「あっ、家族全員が読んだぞ。」
「えっ?」
「おじいちゃんも読んだって聞いたぞ。」
「ひぇ~~~っ……どうしよう……。」
「いいんじゃないか? 生活に張りが出来たってもんよ。」
「ああ………もう……駄目だ……。」
「次回作は?」
「当分は……無いです。」
「また、書いたら読むわ。」
「俺も読むぞ。少なくとも家族は全員読んでるからな。
読者確保おめでとう!」
「はぁ―――っ。」
暫く書くことを止めた愛恋。
読者は家族から親族一同になった。




