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男のロマン

清史郎が入院して4ヶ月が経とうとしていた。

ある日、菫から両家のグループLINEにメッセージが入った。

清史郎の両親は⦅何だろう?⦆と思いながら、実家に戻った菫の元を訪れた。


「お義父さん、お義母さん。

 来て頂いて本当にありがとうございます。」

「いえいえ、菫さんの顔を見られて嬉しいよ。」

「ええ………菫さん、少し顔色が良くなって……。

 本当に良かったわ。」

「お義母さん……心配ばかり掛けて、ごめんなさい。」

「そんなことないわよ。それは清史郎が悪いんだから……。」

「お義父さん、お義母さん、パパ、ママ。

 報告があります。」

「報告……。」

「私、母になれます。なります。」

「母に?」

「菫、どういうことなんだ?」

「私、たぶん今妊娠してます。」

「えっ?」

「勿論、清ちゃんの子です!

 清ちゃんが、倒れてから、ずっと生理が無かったの。

 生理が無かったし、吐き気がするし……。

 それは、全て清ちゃんが、あんなことになってショックで……と思ってたの。

 今日、友達に話したら、妊娠してるんじゃないかって!

 パパ、ママ。

 私、どんなに言われても離婚しないから!

 お義父さん、お義母さん。

 喜んで下さいますよね。

 清ちゃんの子が生まれてくるんです。」

「菫、行ったの? 病院へ……。」

「まだ行ってないの。ママに付いて来てもらおうと思って……。」

「ママ、兎に角、菫を連れて病院へ行って来てくれ。」

「そうですね。先ずは病院へ行って来て下さい。」

「お義父さん、お義母さん。

 楽しみに待っててくださいね。」

「はい。」


翌日、菫は実母と共に産院へ行って来た。

残念なことにお腹に赤ちゃんは居なかった。

菫の想像妊娠だったのだ。


「どうか、お義父さん、お義母さん。

 このまま私を清ちゃんの妻で居させて下さい。

 離婚はしたくありません。

 私、まだ清ちゃんが大事なんです。

 治ってくれるって信じてるんです。

 赤ちゃんは授かってなかったけど、このまま妻で居たいです。

 お願いします。」

「菫さん……気持ちは本当に有難くて涙が出るほど……。

 でもね……清史郎は、もう……。」

「そうよ、菫さん。」

「嫌です。嫌……。」


3人とも泣いてしまって、言葉も出なくなった。

そして、5年の歳月が経った。


「お義父さん、お義母さん。

 私、清史郎さんと離婚します。」

「そうか……それで、いい。」

「……今まで5年もありがとう。菫さん。」

「いいえ、いいえ。私こそ……。

 ……話してなかったことなんですが……。」

「なぁに? 話して頂戴、菫さん。」

「結婚して間もなかったので、私から清史郎さんにお願いしたんです。

 子どもは、もう少し後で……って……。

 私、あの日、後悔したんです。

 あんなこと言わずに自然にしていたら、もしかしたら清史郎さんの子どもを授か

 ってたかもしれないって……無意識に後悔してたんです。

 想像妊娠は、無意識のうちに後悔していたから……じゃないかって……思ったん

 です。

 それからは清史郎さんへの愛が試されているような感覚に陥って……。

 がむしゃらでした。

 でも、疲れました。」

「辛かったわよね。ごめんなさいね。何も気が付かなくって……。」

「いいえ、いいえ。もう充分にして頂きました。

 離婚が成立しても、私は清史郎さんを忘れることはありません。

 お義父さん、お義母さん。

 これからも今までと同じで娘と思って下さい。」

「ありがとう。菫さん。幸せになって欲しい。」

「菫さん、ありがとう。幸せになってね。」

「はい。お義父さん、お義母さん。

 また来ます。」

「ええ、待ってるわ。」

「無理して来ないでいいんだよ。」

「はい。」


離婚に向けて動き始めて直ぐの頃、三田清史郎は最期の時を迎えた。


「お義父さん、お義母さん。」

「来てくれたんだね。」

「ありがとう、菫さん。」

「三田さん。」

「来て下さったんですね。ご足労頂きありがとうございます。」


⦅あぁ………俺も人のことをバカって言えねぇな。

 たった一人愛した女を幸せに出来なかった。

 二人で幸せになれなかった。

 愛した人と二人で幸せになることが……それが、俺の男のロマンだったのに、

 な……叶わなかったな……。

 俺は…………。

 あぁ……もう消えていくって感じる。

 父さん、母さん……菫。

 お義父さん、お義母さん。

 どうか幸せになって下さい。

 さようなら……。⦆

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