コンビニ前のトランポリン
ナンセンス文学を書いて
駅前のコンビニの前で、私は毎朝トランポリンを跳ねている。
店員は気にも留めない。いや、正確には「気に留めてはいけない」と教えられているらしい。
昨日も、カップ麺が逆立ちして棚の上で踊り出したのに、誰も驚かなかった。
郵便局の窓口からは、突然「封筒の雨」が降ることがある。中身は大抵、未来の天気予報か、誰かの靴下の行方についての報告書だ。
私はそれを一枚ずつ拾い上げ、折り紙のように折ってポケットに入れる。
電車に乗ると、車内は全員が透明なかばんを持っていて、かばんの中には透明なハムスターが住んでいる。
「今日は誰のハムスターが一番速いだろうか」と私は思うが、ハムスターたちは皆、急いでいるのに必ず後ろ向きに走る。
午後になると、信号機が全員に向かって雑談を始める。
「今日は赤ですけど、あなたの心の色は?」
「青に見えますけど?」
「違います、緑です」
道路は混乱し、歩行者は逆さまに歩く練習を強いられる。
夜になると、街灯は自分の影を売りに出す。
私は小銭を握りしめ、いくつかの影を買った。
帰宅途中、影たちは私の靴の中で静かに寝息を立てる。
しかし、玄関を開けると、靴は家出していて、代わりに小さな猫が私のスリッパを履いていた。
窓の外では、月がカフェラテのように泡立っている。
その泡の中から、毎晩違うサボテンが顔を出す。
「おかえり」と言うけれど、声はゼリーのようにぷるぷる震えていて、意味はほとんどわからない。
結局、私は寝る前にトランポリンにもう一度跳ねる。
すると天井に開いた穴から、昨日折った封筒が一枚落ちてくる。
中身は私の靴下の行方だった。だが、靴下は自分で考えすぎて、逃げてしまったらしい。
明日もきっと同じことが起こるだろう。
起こらないかもしれない。
でも、トランポリンを跳ねる私は、それを深く考えない。
翌朝、駅前のトランポリンには昨日より大きな行列ができていた。
見知らぬ人々も次々とジャンプし始め、靴が空中でスニーカーと革靴に変わる。誰かが「これ、履き替え競争?」とつぶやくが、競争ではなく、靴たちは自分で跳ぶのが好きらしい。
郵便局からは、今度は封筒ではなく小さな扇風機が降ってきた。
私は手で受け止めると、突然扇風機が「今日は南風です」と歌い出す。
向かいの自動販売機は気まぐれに飲み物を逆流させ、缶コーヒーが空から降ってくる。
通行人はみな上を向き、手でキャッチするが、手を伸ばすと指先がチョコレートに変わるため、飲み物が指で溶ける。
電車に乗ると、乗客の顔が次々と自動販売機の模様に変わる。
「切符は必要ありません」と車掌が言うが、誰も聞いていない。
みんな、自分の顔で電車の座席を予約しているらしい。
私は隣に座った人の顔がサンドイッチになっていることに気づき、少し食欲を失ったが、サンドイッチはすぐに会釈をして元に戻った。
町の信号機は今朝もおしゃべりを続ける。
「赤です。でも、あなたの影は自由です」
「青です。でも、雲が寝ています」
歩行者たちは影を小脇に抱え、空を飛ぶ練習を始めた。
私も一緒にジャンプすると、トランポリンの影響か、ふわりと浮いたまま道路を歩く感覚になる。
夜、街灯の影売りは値上げしていた。影の値段は言葉の長さで決まるらしい。
私は小銭を握りしめ、影を買った。影は靴の中で眠るのを好み、時々夢の中でくしゃみをする。
玄関を開けると、今度は靴が庭でラーメンを作っていた。
庭の水道は自動的にスープの温度を調節し、ネギが空中で踊る。
月は今夜もカフェラテ状で、泡の中からサボテンが顔を出す。
「おかえり、今日は町全体が浮遊します」と言った。
私が窓から覗くと、向かいのマンションがふわりと浮き、屋上で猫がバレエの練習をしていた。
その下ではコンビニ前のトランポリン行列が空中でジャンプしており、靴と影と封筒が入り混じった舞踏会のようになっていた。
結局、私はベッドに横になり、天井を見上げた。
天井には小さな穴が開き、昨日折った封筒が再び落ちてきた。
中身は、誰かの靴下と、私の影の一部だった。
私はそれをそっとポケットにしまい、目を閉じる。
町は明日も、きっと浮かび続けるだろう。
いや、浮かばないかもしれない。
でも、トランポリンを跳ねる私には、どちらでもいいのだ。
完全なオリジナルは存在しうるだろうか。
あと視点主の行動順序がよくわからない。そうゆうものなのだろうか。
改行位置もそういえばおかしいけれど演出?




