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いつも無愛想で不機嫌な幼馴染がさらに不機嫌そうにしていた日

作者: 光井 雪平

「おはよう」


 つっけんどんな挨拶。いつも不機嫌そうにしている幼馴染の夏葉が今日はさらに不機嫌そうにしている。


 今日は夏葉と一緒に日直の仕事があるので早めに教室に来た。早く来たと思った自分よりも夏葉はさらに前に来ていた。


「夏葉、なんかあった?」

「はっ?何?何もないけど」


 いつもより無愛想で不機嫌そうな声。こんなに不機嫌そうなのは初めて見た。


「いやなんか悪いことでもあったのか?」

「別になんもないけど」


 かかわるなと全身からオーラが出ている。だが、気になってしまう。


「なあ、なんか相談とかあればのる

「うっさい」


 俺の言葉を遮るように、夏葉は声を荒げた。こんな風に拒絶されたのは初めてだ。ショックがすごかった。だが、それ以上に夏葉もショックを受けていそうな顔をしたのが気になった。


「夏葉、やっぱりなんかあったのか?」

「ないっていってるでしょ!!!」


 夏葉はもう一度声を荒げる。俺はこれ以上踏み込まないほうがいいと思いながらも踏み込む。


「そういう顔に見えねえんだよ。幼馴染だからなわかっちまう。だから」

「幼馴染?だから?幼馴染だからなんだっていうの」

「大切なんだ、だからお前が辛そうだとこっちも辛い」


 俺がそういうと夏葉はさらに不機嫌さを強める。


「大切?ただの幼馴染でしょ、それ以上でもそれ以下でもないじゃない、私たちはただの幼馴染そうでしょ?」


 夏葉は声を震わせていた。怒りというよりも俺には悲しみのように少し思えた。


「ただの幼馴染じゃない、俺にとっては夏葉は

「いいわよ、そういうの。思ってもないこと言わないで」


 夏葉の拒絶の声。


「そんなことない、俺は」

「もういいって言ってるじゃん!!!」


 夏葉は声を荒げて机をたたいた。俺はびっくりした。物に当たるようなことを夏葉が初めてしたからだ。


「私なんてただの幼馴染でしょ。そうでしょ、大切なのはあの子でしょ」


 あの子?と俺は首をかしげた。


「美奈のことよ、私見たんだから、昨日楽しそうにデートしてるとこ」


 夏葉の言葉から俺は昨日のことを思い出す。美奈とはクラスメイトで夏葉の親友だ。確かに昨日ショッピングモールで会って、話をした。だが、あれはデートではない。偶然会って話をしただけだ。


「誤解だ、デートじゃない」

「誤解?何それ?別にデートでいいでしょ、美奈はいい子よ。お似合いよ」


 俺は夏葉の誤解を解こうとする。


「だからデートじゃない。ただ会って話をしただけだ、付き合ってるとかそういうんじゃない」

「あっそ、じゃ、これから付き合うのね。いいわよ、応援してあげる、美奈のこと私詳しいし」


 夏葉は俺の言葉を否定してくる。俺はそれに辛さを覚え、イラつきを少し思ってくる。


「だから付き合うとかそういんじゃない、別に何もない」

「いいわよ、誤魔化さなくても、応援するって言ってるじゃない」


 俺の言葉が届かない。俺はそれに対して衝動的に行動してしまう。


「俺が好きなのは夏葉だけだ!!!」


 教室でついでかい声を出してしまう。夏葉はポカンとした表情をする。俺は矢継ぎ早に夏葉に思いを伝えていく。


「ずっと夏葉のことが好きだ。幼馴染としてじゃない、恋人にしたいと思ってる。ずっと前から。だからデートとかじゃない、俺がデートするならお前だけだ」


 俺は言い終えた瞬間、顔が一気に暑くなった。つい言ってしまった。しかもこんなところで。まだ早いから人はほとんどいないはずだが、聞かれた可能性もある。それに何よりも夏葉に告白してるのと変わらない、これでは。


「ほ、本気なの」


 動揺した様子の夏葉。俺も動揺を抑えながら言ってしまったものは仕方ないと考える。


「本気だよ」


 夏葉はさらに動揺する。


「う、嘘よ、嘘。だって私めんどくさい女よ。いっつも無愛想で不機嫌で。今回なんか付き合ってもいないのに、別の女の子とデートしたってあなたに当たっていためんどくさい女よ。それを好きなんて、噓よ、嘘」

「好きだよ、それでも」


 俺はすぐにそう言い放った。確かに夏葉は無愛想でちょっとしたことですぐ不機嫌になる、少しめんどくさいところもある。でもそういうところも含めて俺は夏葉が好きだった。ただ夏葉は自分の感情に正直なだけだから。


「そ、そうなんだ。じゃあ美奈とはほんとになにもないの?」


 夏葉の少し心配している声。俺はすぐに「なんもないよ」と否定する。夏葉はすごいほっとした様子で「よかった」と言う。


「あっ別になんでもないからね、じゃあ私これ職員室に持っていくから」


 夏葉は逃げるようにする。俺は夏葉の腕をそっとつかむ。


「な、何?」

「俺は夏葉のことが好きだ、付き合ってほしい」


 俺はムードもなにもないが、告白する。夏葉は顔が真っ赤になる。


「えっ、えっ、返事はまたで」

「今ほしい」


 俺は夏葉をじっと見つめて言う。夏葉は「そういうところ意外と強引だよね」と俺に向かって言う。俺は夏葉をじっと見つめる。夏葉の顔がどんどん赤くなる。そして、夏葉がぼそりと言う。


 俺は聞き取れず首をかしげる。夏葉がもう一度何かをぼそりと言う。


「夏葉、ごめん聞こえない」

「つ、付き合うって言ったの!一回で聞き取ってよ!」

「いいのか?」


 俺がそう聞くと、夏葉は「いいに決まってるでしょ」と言う。俺は「嬉しい」と返した。夏葉は「あっそ」と恥ずかしそうに言う。


「で、手離してよ」


 俺は悩む。夏葉から聞きたい言葉があった。それに今日振り回されたようなものだ。俺の中の何かが外れていた。


「夏葉が俺のこと好きって言ってくれたら離す」

「な、何それ」


 夏葉はいやといって抵抗しようとする。俺は夏葉をじっと見つめる。少しして、夏葉はまたぼそりと何か言う。今回は少し聞こえた。


「い、言ったわよ」

「聞こえなかった」


 夏葉は俺をにらむ。俺が聞こえたのはばれていたようだ。だが、俺が強情な態度を崩さないのを察すると夏葉は、俺の耳もとに口を近づける。


「好きよ、大好き」


 俺はそれを聞いて、「俺も夏葉のこと大好きだよ」と返す。そして、手を離す。夏葉はすぐに逃げるように教室を出ていった。俺は教室でぼーっと立っていた。


 

 そして、俺と夏葉は付き合うことになった。夏葉の無愛想で不機嫌な様子はあまり変わらないが、それでも俺に向けての笑顔は増えた。俺にとっては嬉しいことばかりだ。


 ただよくなかったのが、教室の告白の一件がほかの生徒にばれていたことだ。いしばらくからかわれることになったことだけはほんとに最悪だった。


 だが、それ以上に夏葉と付き合えたことが最高だった・・・


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