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浅葱は、真っ向から脅して来た。


「それに、さっき君が言ったような放浪の旅とかはこちらもまだ考えてない。」

「妖怪が出た時だけ一緒に行って、結界の綻びの場所を教えてくれたらいい。」


「わかりました、お代は弾んでください。依頼主さんは、結界師なのに綻びは視えないんですか?」


「恥ずかしながらぼくには視えない。今ぼくの知る限りでは真朱だけ…かな。」

少し歯切れの悪い言い方をした。


「そうそう、ぼくの名前は浅葱彗(あさぎすい)だ。」


依頼主がお茶に口を付けた。


「呆れた。まだ、名乗ってなかったのですか。」

従者が横から声を挟んだ。


含んだままなかなか嚥下しない。

不味いのだろう。


「依頼がある以上、依頼主で良いのでは。」


チラと茶筒を見た。

依頼料によってはいい茶葉でも良かったかも…。


「君は、何。依頼が重なって依頼人が何人も偶然に一緒になったとしてもみんなに依頼主と呼んで回るの?」


「では次から浅葱さま、と。」



浅葱が袂から封筒と金平糖を取り出し、テーブルの上に置いた。


浅葱の袂から万年筆が一緒に転がり落ちてきた。


「昨日の報酬だ。金額には少し色を付けてあるよ。君には人力車も引いてもらったしね。」

「そういえば、あの人力車は付喪神が憑いてなかったんだね。」

「以前に別の鑑定士に依頼した時は、ツクモ憑きって言われたんだけどね。」



真朱は浅葱の話半分で、転がり落ちてきた万年筆を凝視していた。


そしてそれを敬々しく持って浅葱の手に渡し、尋ねた。


「このコは?」


「このコ?もう付喪神が憑いていた?」

浅葱がきょとんとした。

付喪神が憑くには100年近くかかるはず。


「万年筆のペンちゃんと名付けましょう。」

「まだ憑いてはいません。ですが、将来有望です。」


「もっと眺めていたく大変後ろ髪を引かれますが、お返ししましょう。いつかこのコを報酬として下賜していただけたら嬉しいです。」

「多分、浅葱さまがお持ちのほうが、付喪神が生まれやすい気がします。」


「では…ぼくが預かるということで。ここに入れて肌見放さず持っておくとしよう。」

着流しの袂に万年筆を入れた。


「時々、会わせてくださいね。生まれる時には是非立ち会いたいですね。」


浅葱と桔梗が、ちょっと後ずさった。


真朱は名残り惜しそうな目を向け、封筒と金平糖は部屋の奥の箪笥に仕舞った。


「そういえば、真朱の蔵も見てみたいな。」

浅葱がふとそんなことを口にした。


「まああ。よければうちのコ達に会っていってやってください。浅葱さま。」

目が生き生きしてきた。


いそいそ蔵に案内する。


蔵の扉を開けた瞬間、付喪神がざわついた気がした。ふわふわしているような。浮ついているような。


真朱はハッとした。




「浅葱さまの霊力に私の付喪ちゃん達が落ち着きを無くしてます。」

「霊力を一滴も漏らさないでくだい。うちのコ達を誘惑しないでください。」


「え。そんなこと言われても。」


「浅葱さまはうちのコ達に接見禁止です。もうお引き取りを。」

「やはり先程の話も無しで。うちのコを誘惑するような人とは、一緒に仕事出来ません。」


「君、酷い扱いだな。せっかく少し打ち解けたと思ったのに。」






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