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執務室まで真朱の隙を突いて、強制的に浅葱が一緒に転移して連れて来た。


執務室の扉の前に、薄緑の髪に黒い瞳の少女が立っていた。

「おはようございます。真朱先生、今日からよろしくお願いします。」


確か、名前は藍白だったよな。


「こんな執務室の前で待っててくれたのか?」


真朱が感動した。


「あ、違いました?梅芝くんが真朱先生を迎えに上がったほうが、訓練が時間通りに始まるって助言してくれて。」

藍白が恥ずかしそうに真朱の後ろの浅葱を見る。


「梅芝のやつ…いや、ありがとう。助かる。」

私が方向音痴なのを生徒に広げてないだろうな。


「真朱先生、今日のお召し物素敵ですね。きれいな色のスーツですね。」

女子は人の着るものを随時チェックしてるのか…。


ん?褒めてくれたが藍白のスカートと色が被ってるな……


「あ、ああ。藍白も濃紺のスカートか。私のスーツと同じ色みたいだな。」

今回のは浅葱家からだ。

自分のじゃ無い時に限って褒められる。


「おはようございます、浅葱先生。」

藍白がはにかみながら挨拶する。


「おはよう、藍白さん。ぼくも後で訓練室に見に行くね。」

浅葱が、藍白に微笑む。


それを聞いた藍白の頬が桃のように染まる。

「あ、はい。嬉しいです。」


場の雰囲気を一掃するように桔梗が割って入る。

「彗さま、真朱さま。重要事項の引き継ぎがありますので執務室へ。」

「藍白さんは少しお待ちください。」


「え、と。ここで待たせるのか。」

散々自分を待たせていたので、扉の前で待たせ続けるのは申し訳無い。


「中で待ってていいよ。そもそも真朱の為に迎えに来てるわけだしね。」

浅葱が、扉を開けて藍白を中に入るように促した。


桔梗が応接セットの下座側の椅子を勧める。

「こちらで掛けてお待ちください。」


浅葱の執務机の周りに桔梗と真朱が集まる。


桔梗が声を潜めて切り出した。

「昨日の占い師の宝珠ですが、旦那さまが結界を施した小箱に納められました。どなたも触らないよう周知して保管してあるようです。」


「真朱のお友達に早々に取りに来て頂こう。」


「傍迷惑な品物だったな。」

いろいろ苦い思い出だ。

途中までは浅葱をからかういい材料だと思っていたのに…。


「そうかな?この間の真朱はかわいかったな。ぼくのシャツを握りしめて。」

浅葱にもからかわれる。


「お前、それ藪蛇だろう。お前なんか、風呂でお目々に泡が入らないようにして〜って言ってたぞ。」

こっちもまだ隠し玉はある。


「ぐっ…記憶がないから否定も出来ない。」

浅葱が唇を噛む。

それを横目で見る。

よし効いてるぞ。


「はい、そこまでです。彗さまは講義です。真朱さまは訓練室へ。」


「そのスーツは旦那さまから、真朱へ昨日の迷惑料だそうです。浅葱家、滞在中の真朱さまのお召になったものも同様にお納めくださいとのことです。」





「待たせて、ごめんな。藍白、行こうか。」

藍白が手と脚を強化する。

「私、先生を抱えれるかしら。」

「え。」

なぜ、藍白が私を抱っこするんだ。


後ろから浅葱が覗き込んでくる。

「真朱、抱っこってみんなに言ってるの?」

「なんのことだ。」


藍白が、近くに来た浅葱を上目遣いで見る。

「浅葱先生…。」

浅葱が来ると藍白が分かり易くかわいい反応だな。


「ぼくが抱えて行こうか。」

真朱をからかいながら見下ろす。


「どっちもけっこうだ。梅芝は別だ。」

あいつは気の利く良い生徒だ。





訓練室までは、藍白と2人で歩いて行く。


浅葱は後で顔を出すそうだ。


訓練室の鍵を霊力を通して、扉を開ける。

使用中の札を下げた。


「最初お会いした日、先生ってわからなくて失礼なことしてなかったかな。」

訓練室の中程まで進む。

「あの時は親切にしてもらったよ。それに私は単なる補佐だから、気にしなくていいよ。」

この子もなんていい子なんだ。


「藍白の霊力は、物に霊力を込めるタイプだね。」

「そうなんです。なのでお料理とかお菓子とかに霊力を込めてます。」

「霊力は手に集めてる?」

「はい。」

「じゃ、私がいいと言うまで手に霊力を集めてみようか。」

「はい。」

真朱が目に霊力を纏って霊紋を展開し術を発動させて視る。



真朱は時計を確認すると、だいたい30分程度経っていた。


そろそろ溜まってきたかな。

「一気に放出して。」


茜色の柔らかい霊力が一気に体外へ流れ出る。

夕日のように優しい。

「じゃ、今のを後3回しよう。」


「真朱先生、浅葱先生の遠い親戚でしたよね。王宮のパーティーとかで見たことなかったから。」


なんだ疑われているのか?

それとも恋する乙女ってこんな感じなのか…。

なんでも知りたいみたいな。


「そうだね、忘れ去られるぐらいの遠縁なんだよ。」

実際はウソだしね。

私がついたわけじゃないぞ。


「私、浅葱先生の為に結界師や陰陽師と同じ訓練をしたんです。」

「2年前なんですが、とても辛くて1週間しか持たなくて……」

「ただ、その訓練のお陰で霊力が上がったらしくて浅葱先生の伴侶候補に名前が上がりました。」


藍白は浅葱の伴侶になりたいんだな。


「そうか。藍白、霊力の溜めれる器はあらかじめ決まっている。これを超えて霊力が増えること無いんだ。」

「今、藍白は8分目まで溜めれるようになっている。その時の訓練でそこまで溜めれるようになったんじゃないか。」


「先生、器が視えるんですか?」


「ココだけの話にしてほしいんだが、まあそうだ。お前は全体の後2割ほど伸びしろがある。」


「器の大きさとしては、大きい方だと思う。今日の訓練で9割まで持っていけると思う。」


「梅芝の時に大体1回の訓練で、全体の1割増えたからな。浅葱の伴侶候補に相応しい器の大きさだと思う。」


「先生は、どれくらいですか?」


「私は、巫女には風呂の桶ぐらいだと言われたよ。ただ蘇芳を鍛えてもう一度確認してみようとは思うが。」

「茜ちゃんを、ですか。」

「まあ、そうだな。さあ、訓練を再開するぞ。」



訓練の終わりに藍白の霊力をもう一度確認する。

「うん。今やはり、器の9部目だ。この分だと藍白は後1回でいいかもな。」


後ろの扉が開く。


「あれ、終わっちゃった?」

浅葱が扉を開けて顔を覗かせた。


「浅葱先生…!」

藍白の目がキラキラする。


おお〜、藍白すごく嬉しそうだな。

「来るのが、遅かったな。今日はもう…」


「真朱先生、私もう一度やりたいです!」

藍白が勢いよく真朱の腕を掴んだ。


真朱は藍白の勢いに圧倒された。


「しかし……体力は大丈夫か?」

「問題ありません。」

「梅芝の時にも、1セットで止めたしな。前例がないと不安だが…。」

こんなことなら梅芝で試しとけば良かったな。


「浅葱さま、どう思う?」


「そうだね。一度だけやってみれば?無理なら直ぐ止めようか。」


一度なら大丈夫か。


「じゃあ、手に霊力を集めて。」

真朱が再度視る。





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