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第七話 小さな力でも

「じゃ、行きます!」


 そして先生とメリュルの戦いは幕を開けた。先生は木刀を構えてジリジリと距離を詰め、対するメリュルは腰を落とし、左手を前に突き出し大剣を引く。

 

(魔具に魔力が一気に集まってる…… 初動から魔具で攻める気か)

 

そしてメリュルが不意に跳び上がると彼女の大剣から彼女の身長の数倍はあるであろう大きさの火の刃が吹き出した。

 そしてメリュルの技を見た先生は口角を上げる。

 

「ほう、いきなり魔具の力を使うか? 序盤に手の内を晒しすぎるなよ、俺様はデザートは最後に食べる派なんだ」

 

「じゃあずっとデザートを味あわせてあげよっか!」


「そりゃいいな!」


 メリュルは背中の翼を羽ばたかせ、上空から火の刃と時間を少しずらして急降下し攻撃を仕掛ける。そんなメリュルを先生は一瞥した後ニヤリと笑い、木刀を振りあげた。そこから放たれる全てを巻き込まんとする風は炎を完全に捕らえ、掻き消した。


「そんでデザートはいつ出てくるんだ? ワクワクして待ちきれねぇな」

 

「なっ、嘘だろ、あいつの炎が消し飛んだ!? まじかよ……」


「俺様には弱めの魔力攻撃は効かないと思った方がいい、やる気が無くなっちまったんならすまねぇな」


「いや、俄然やる気が出てくるね!」

 

 そしてメリュルは一気に急降下し先生へ肉薄すると、俺とは比較にならないほど高速で背丈と同じ位の大剣を操り、先生に斬撃を繰り出す。


「いいね、俺様もだんだん乗ってきたとこだ! 捌ききってやる」 


「速い、いや速度じゃない。多分速度は今の私と変わんないけど反応が良い。絶対手加減されてるなこれ…… なら、これはどうだ!!」

  

 暫くの間互いに攻撃を仕掛けては防御され、拮抗した戦いになっていたが突如メリュルが後ろへ大きく下がり一息整えると自身に付与している魔力を上昇させ、大きな一撃を叩き込もうとし、大剣を正面に構える。

 そして彼女が動いたと同時に先生は接近し大剣から繰り出される速く鋭い斬撃を全て避けきると同時に一瞬の隙を付き2連撃をメリュルに放つ。


「ぐっ、まだまだぁ!」


「遅い、力に振り切れば良いという問題でもないだろ」


 その瞬間から先生は先程とは比較にならないほどの速度で攻撃を繰り出し始めた。先生から無造作に繰り出された一撃一撃がメリュルの剣を弾き、魔力で作られた障壁をあたかも薄氷かのように叩き割る。 

 俺から見るとどちらも動きが目で追うのがやっとではあるが実力差はかなり大きいらしくメリュルは必死に食らいつくも先生はその攻撃を全て避け、攻撃の合間を縫って確実にダメージを与えている。先程までは互いの攻撃を互いが読み切る事でどちらかが攻撃を浴びせ続ける事はなかったがスピードを上げた先生から一方的に攻撃を喰らうことで彼女の体力はかなり失われ、構えが崩れてきた。


「クソッ、全くかすりもしないし戦ってる気がしない……」


「まあこれが俺様と戦ってるって事だな。本気の俺様といい勝負できるようなやつはこの世に6人くらいだからな! 精進して本気で遊べるようにしてくれよ」


「こんのぉ!」


「ふむ、今のは少し痛かったな」


「嘘だろ、これを受け止められるかぁ」


 メリュルは魔具の力を最大限に引き出し、両足に炎を纏い蹴撃を流れるように浴びせるも先生は片手で全てを弾き続けていた。そんな状況に冷や汗をかくメリュルをみた先生は口を開いた。


「つまらねぇなお前…… 基本はなってるがそれだけ、魔力の扱いは雑だし力に振り切ってもそこまで強くない…… 終わりでいいか?」


「大口叩いたことは反省するよ、ごめん。でも確実になにか掴めそうなんだ、あと数分でいいからさ、付き合ってくんない?」


「あと数分でいい、か…… ならその数分お前の攻撃を全力で受け止めるか受け流す、避けはしない。それで俺を納得させる一撃を魅せてみろよ、じゃなきゃ俺の弟子は絶対無理だ。そしたらもう可能性を感じない、諦めろ」


「乗った」


 そう言うとメリュルは後ろへ下がり、ひたすら剣に魔力を集めては戻し集めては戻してを繰り返す。


「おいおい、斬りかかってくるかと思ったが何してやがる?」


「うっさいな、集中してんだよ!」


 そう叫ぶ彼女は憧れに認められる為にどうすればよいのかを必死に思考していた。

 

(確実にわかったことは一つ、単純に正攻法では勝てない…… どうする、考えろ…… 魔力を循環させて少しでも雑な操作を減らす練習を…… 魔力と種族の差で勝てる相手じゃない、けど避けはしないのはかなりしんどいな、つまり力で打ち勝てってことだろ? どうすれば…… いや! そもそも私はそんな考えて生きてきたか? してねぇじゃん! そもそも怪我しないようにとか考えてたけど遥かに格上なんだからどうせ全力当てても死なないし、最悪当たってもどうにかなる!)


「はぁ…… あんまし考えんのは性分に合ってなかった! 回復魔法使えるんだろ、ベイルさん! なら簡単だ! 自爆上等、もう互いに怪我しても知らねぇしぶっ飛ばしてやる!」


 その瞬間、彼女の剣には自身の魔力全てを無理に圧縮し、凄まじい光を放つ。


「なんだよ…… チキって全力じゃなかっただけか、その力を早くみせればよかったものを。それにアホじゃねぇか? その程度の肉体で無理矢理圧縮した魔力を放っても精密に操作出来ない以上自爆技もいいとこじゃねえか!」


「回復魔法できるんでしょ? なら関係ない」


「――仕方ねぇな、受けてやる」


「俺ってもしかして観戦してる場合じゃなくね?」

 

 彼女が倒れるように剣を振り下ろしたその瞬間、圧倒的光と音が周囲を包みこんだ。

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