第三話 見覚えのある景色
そして光に包まれた俺の眼の前には大自然が広がっていた。
「よっしゃ! 作戦成功! 油断したのが運の尽きだったな! てかほんとに一瞬で移動できるんだ」
「そりゃテレポートだし一瞬に決まってるじゃん。てか逃げただけで調子に乗らない!」
「いーだろ別にあんな格上相手に時間稼ぎした上で逃げれたんだから! ……ねぇ、これでほんとに逃げれたってこと? あっちもテレポートしてこないよね?」
「だいじょーぶだよ。ランダムで飛んだからこっちの座標はわかんないさ。まあ逆に言えば自分でもどこにいるかわかんないけどなってるけど」
「ふーん…… えっ、迷ってるの俺達? ちゃんと帰れるよね? その辺大丈夫そう?」
「うるさいな… 私の知ってるテレポート陣の形ってランダ厶タイプしかないの! 逃げられただけマシだろ、文句言うな! そっちこそなんだよ、カッコつけてエア・バ〜スト〜とか名前安直だしダサいしセンスないじゃん。それに技名正直に叫んだら不意をついたり出来ないじゃん。人の技に文句言う前に自分の直せよ」
「うっさいな、ロマンだよロマン! ってか話題そらして逃げるなよ、何しれっと人ディスって話題変えようとしてんだよ…… まあ何処だかも分からない以上もめてもしょうがないしさ、これでおあいこにしよ」
「はぁ…… わかった、それでいいよ。それよりここ見たことあったり心当たりあったりする?」
「あるわけ無いじゃん、こんな森。知ってても森の中じゃ見分け付かないよ」
こうして難を逃れたが食料も水もない地味に危機的状況となってしまった俺たちは少し考えて辺りを探索しようと言う考えに至った。
そうして探索と称して森を彷徨うこと約8分、とある生物を見つけることが出来た。
「まじか、メリュル見て! 全ての問題が解決したかもしれない! 食料問題も場所の問題も!」
「ちょ、クロイア遂にあんた頭やられたのか? あれどう見てもドフロッグじゃん、食えないじゃん。更に言えば場所の問題全然解決してないじゃん」
彼女の言ったドフロッグという生物は毒性の持つ血液を持つデカいカエルで、大陸全域に生息地が存在する。もし毒を抜かずに食せば数時間後には下痢と嘔吐が続き、体力をかなり消耗してしまう。しかしあくまでもこれがただのドフロッグならばの話だ。
「残念メリュル、こいつはドフロッグじゃない。軍事国家ヴォルス帝国の首都ウラカから南に26km先にあるヨイマの森に生息する固有種ヴォルスイボナシドフロッグだ」
「そのイボナシなんとかだと毒無いってこと? それなら背に腹は代えられないし見た目厳ついけど食うしか無い…… けどさ、えぇほんとに食べるの?」
「いや毒あるぞ」
「は? じゃあ食料問題解決してないじゃん!」
「いや、ヨイマの森ってすぐ近くにヨイマ村があるの。そこにちょうど俺の先生が住んでる」
「あ〜なるほど、それなら少しの間その人にお世話になっておけばいいわけだ!」
そう、この近くには俺に基礎的な戦い方を教えてくれた先生がいる。なかば強制的に教えを受ける羽目になったがそのおかげで先の戦闘で時間稼ぎできた事を考えるとそこまで悪くない経験ではあったかもしれない。しかし強引に事を進めるタイプの人間なので尊敬はするがあんまり会いたくない。まあ、会いに行かないと野垂れ死ぬから会うしか無いけど。
「じゃあさっさと森を出よう、森の近くにはヨイマ村以外には草原と街道しか無いから森の外周を探索してって建物か道を見つけよう」
「でもそれ大丈夫? この森そんな小さい様には見えないし、さっきの戦いで体力だいぶ持ってかれたから出るまでに持つかな?」
彼女の言う通りナキさんとの戦闘によって僕達はかなり体力を消耗していたために、休める場所を探す方が良いかもしれない。そこまで大きな森とは言えないが最悪2日かかる距離はある。そのため一回休める安全な洞窟などを探すことにした。
「てかさ、なんでそのなんとかドフロッグなんて知ってるの?」
「この辺には先生住んでるって言ったでしょ、戦い方を教えてくれた先生なんだけどこの森でよく修行させられてたから」
「ふーん、ならこの森に詳しかったりするの? なんか休めるスポットとかさ」
「まあ、あるにはあるけどここがどこだかわかんないし。けどこの森は火山が近くにあって昔から洞窟が多かったからその辺歩いてたら洞窟あると思うしそこで休めるかな。この辺は雨多いから洞窟の中なら湧き水とかもあるはずだし」
「りょーかい。まずは洞窟探しってことが」
◇◇
「いや〜ほんとに運がいいね、私達は。奥に綺麗な水の溜まってる洞窟見つけて夕飯にもありつけたし! なんか普通に冒険してるみたいだ!」
「だよな! テレポート先がランダムなのに俺が来たことあるこの森だったのも今考えると運良かったし」
俺たちはついさっき熊が住処にしていた洞窟で休みながら熊肉を焼いて食っている所だ。正直飯抜きを覚悟していたから熊がいる洞窟を見つけたのは大きい。この森一帯にいる熊は昔ここらに居たときは修行の為に倒せと言われて戦った時にだいぶ苦戦して死にかけたためこの洞窟に熊のいた痕跡を見つけた時は焦ったが今の俺たちからしたら全然弱くて正直拍子抜けだった。俺は難なく倒せた事に成長を感じたものの、それよりも魔具の強さを実感した。
(俺の魔具、改めて感じたけれどかなり強い。それが一体なんであんなとこに置いてあったんだろうか? 一体なにに巻き込まれているのだろう?)
自身の剣に対する疑問は考えれば考える程多く生まれ、不安になってきた所でメリュルがいきなり声をかけてきた。
「そういえばさ、さっき言ってた先生ってどんな人なの?」
「えっと、うーん、なんだろな格好つけるけど強くて強引な人って感じかな? 稽古するときめちゃくちゃ怖い、ホント殺されるのかってくらい威圧感が凄い。ってかメリュルの批判してた技名宣言はあの人リスペクトしてる感じだな」
「え、話聞く限りなんか面倒くさそう。てか技名叫ぶやつその先生譲りだったんだ」
「いや〜、先生の技名叫ぶの見てたらやりたくなってさ。でもきっと驚くよ、あの人の技格好いいから! あととんでもなく強いし。なんなら稽古つけてもらえるかも?」
「どんくらい強いのさ? ナキと戦ったあとだから稽古とかしたくないけどそんなに強いなら一回くらいやってもいいかも」
「ふ〜ん、なら聞いて驚け! 先生はヴォルス帝国の前軍務長やってた人だぞ! ベイル・メイジャーって名前の人! 今は軍部からいなくなってるけど昔は一人でアイスドラゴン討伐とか色々してたらしい。まああくまで噂だからどこまでホントかはしらないけど、とにかくめちゃくちゃ強いからな!」
「えっ、ちょそれ本気で言ってる? アイスドラゴンを討伐したヴォルスの軍務長ってあの"闘魂"のベイルじゃん! 私も憧れてる超有名人だよ、ヴォルスの敵対してた! てかそんな有名人も技名言うのか…… う〜ん、リスペクトしてちょっとやってみようかな」
「なんだよお前、俺が言った時は馬鹿にしたくせに先生がやってるって言った途端それかよ! まあ技名叫ぶ格好良さがわかるなら許してやろう」
「なんで上から目線なんだよ、てかそもそもそこには納得してないし! は〜あ、あんたと話すとこっちが疲れてくる! 明日早いんでしょ、もう寝るから! あっ後寝てる間に身体触ったりしたら許さないからね!」
さっき作った枯れ葉の寝床に入りながらメリュルは喋っている。こっちも眠たいのにグダグダ言って何様だよなどと思いながら火を消すために焚き火へと向かう。
「うっさいな、こっちも眠いからそんな事しないよ! さっさと寝て!」
「ハイハイ…… クロイア、おやすみ」
「おやすみ」
ゆらゆらと揺れる火を消して俺はゆっくりと寝床へ向かい、眠りについた。