08 予定外
「どうだハーヴィ、2人は追ってきたか!?」
船に積んである双眼鏡を目に当て、確かめる。
「うん。影が2つ、こっちに向かってる」
「ヴォルト!船の点検できたよ!いつでも出航できる!」
「お!思ったより早かったな、ダスク」
「カノンさんが分かりやすくメモを残してくれたおかげだよ」
「さすがカノンさんだな!ハーヴィ、ちょっとそれ貸してくれるか?」
「うん」
俺も双眼鏡に目に当てる。まだ少し距離がある。
「もっと引きつけるんだ。少しでも2人から離して…」
その時。
ドォォォォン!!!!(⁉︎)
船の中から大きな音がこだます。
「爆発!?」
「大変だ!船が燃えてる!!」
火がもの凄いスピードでどんどん燃え広がる。
ここにいたら、まず助からない!
「船から降りよう!!」
「で、でも!」
「まだ爆弾が残ってるかもしれない!!早く!!」
ダスクは少しためらっていたが、コクンと頷いてくれた。
俺はハーヴィを背中に抱えた。
船はかなりの高さがあったが、獣化が進んでいるせいか、飛び降りることに躊躇はなかった。
「えい!!」
俺たちが飛び降りるのと同時にもう一発、ドォォォォンと爆発する音がした。
爆風に煽られ、俺は着地に失敗してしまった。
「うげっ!」
「大丈夫か、ヴォルト」
「あぁ…下が雪で助かった。ハーヴィ、平気か?」
「うん。ありがとうヴォルト」
ザクっザクっと雪を踏む音。そこにはワクラバと…ワクラバと…?
「どういうことだよ…」
「ファっファっ!残念だったな(⁉︎)」
・・・
西の港にもう一隻だけ、前に私が作った小舟がある。カノンさんはそう言った。
昔研究所から逃げ出そうとして作ったものらしい。
だけどそんなことより、私は目の前で起きていたことに驚きを隠せないでいた。
カノンさんの肌が、姿が、どんどん人ならぬものに変化していたのだ。
「カノン…さん…?」
「…この姿を子供に見せるのは、あなたが初めてね」
緑の肌、大きく発達した目、内向きに巻いている尻尾。その姿はまるで…
「カメレオン…」
「そう。私はカメレオンのブルーマー(‼︎)昔、父と花の契約を結んだの」
唖然した。まさかカノンさんが超人的な力を持ったブルーマーだったなんて。
「私は背景と姿を同化することができる。かなり体力を使うけど、触れた対象も同化させることができる。さっき煙幕から上手く父を出し抜けたのもこの能力のおかげ。どう?私が怖い?アレン」
「怖くなんかないよ。すごいや!カノンさん!」
「…すごくなんかないわ」
カノンさんは悲しそうに俯くと、能力を発動させた。
さっきは気づかなかったけど、私自身も透明になってる!
「さぁ、もうひと頑張り…」
カノンさんが立ち上がろうとしたその時。あたしは左側から強烈な何かを感じた。
「危ない!!!(⁉︎)」
あたしは思いっきり体を横に倒し、カノンさんと共に雪に倒れ込んだ。
あたし達の横を猛スピードで何かが通り過ぎ、壁に刺さった。
「な、なに…?」
「アレンは動かないで」
カノンさんはゆっくりと体を起こすと、壁に刺さったものを確認した。
そして眉間にしわを寄せ、拳を強く握った。
「魚雷…」
「?」
「ありがとう、アレン。これに当たってたら私は間違いなく死んでいた(⁉︎)」
そんなものがどうして…と、考えるまでもなかった。
こんなことをやるやつなんて、1人しか思いつかない。
「今のも、分かったの?これが飛んでくるってこと」
「分かったっていうか…なんかが来るって感じて」
「…あなたはいずれ偉大な人になる。その才能、決して枯らさないでね(??)」
カノンさんが何を言いたいのかはよく分からなかった。
そして次の瞬間、それを考える余裕さえなくなった。
バーンバーンバーンバーン!!!!(⁉︎)
またさっきのやつが飛んでくるのかと思ったが、今度は違った。
次々と沿岸に沿って爆発音と共に炎が上がる。
まるであたし達を囲うように。
右を見ても左を見ても、この豪雪の中でも消えないほどの大きな炎。
「これって…」
「父の仕業ね。今の魚雷の発射が合図だったのかしら。一つ、言えることは…」
ザクッザクッとこちらに近づく足音が一つ。
カノンさんは立ち上がり、その人と目を合わせて呟いた。
「もう逃げ場はないってことね」
「そう言うことだ」
その男、レイブンは自分の娘であるカノンさんに銃口を向けた。
「お前がやることなどたかが知れてるが、ガキ共を囮に使うとは随分と落ちぶれたな」
「あんたと一緒にしないで。あの子達は無事なんでしょうね?」
「さぁな」
そしてあたしを指差し、言い放つ。
「俺が用があるのは1048、お前だけだ(‼︎)」
レイブンラボ編、いよいよ佳境に入ってきました。
どこに逃げても現れるレイブン。しぶといなーー
アレンやカノン、子供達の運命はいかに…!来週もお楽しみに!
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