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ブラッド・フラワー  作者: 御稲荷 薫
レイブン研究所編
6/67

06 RUN!!!

この孤独な部屋に連れられてから1週間近く経った。


この1週間、苦しいという言葉では言い表せないほどの苦痛を受けた。


真実を聞いて、それだけでもショックなのに何もできないなんて。


(他のみんなは…?ヴォルト、ダスク、ハーヴィ…みんな大丈夫かな…)


チクタクと鳴る時計の針が異常にうるさく、そしてゆっくり聞こえる。


(カノンさんも大丈夫かな…)


カノンさんは自分の父親であるレイブンを助けたいと言った。


『父を救う唯一の方法、それはこの研究を白紙にすることなの(‼︎)』

『どういうこと…?』


あたしが聞くと、カノンさんは目を輝かせながら答えた。


『父は"研究"という魔物に取り憑かれて、踏み外してはいけない道を踏み外した。父を元の父に戻すためには、彼からそれを取り上げるしかない。だからあなた達をここから逃がし、この研究所(ラボ)を破壊する(⁉︎)』


かなりぶっ飛んだ考えだと思った。

だけど同時に、ワクワクしている自分もいた。


『でも、そんなことレイブンが許すはず…』

『もちろんただじゃ済まないわ、私はね。でも大丈夫。策はある』


カノンさんはあたしの両肩に手を置いて力強く言った。


『もう少しだけ、時間をちょうだい。必ず成功してみせる』


詳しいことは聞けなかった。でもカノンさんだから、絶対大丈夫だと思った。


それから…カノンさんは一度もここに来ていない。


正直心も体も限界を超えていた。

今すぐ壊れてもおかしくない状態であることが、自分で分かる。


その時、ウィーンとドアの開く音がした。


「「アレーーーーン!!!(⁉︎)」」


そこには、心の底から会いたかった人達が。


「みんな!!」


ヴォルト!ダスク!ハーヴィ!よかった、みんないる!


だけど、前とは姿がちょっとずつ違う。

みんな獣化が進んでいた。

特にダスクは、シスリーのことがあったからか、2人よりも急速に進んでる気がした。


「よかった…みんな無事で!」

「あぁ!!俺たちもずっとお前のこと心配してたんだぜ!」 とヴォルト。


「僕たち3人とも同じ部屋に入れられてたんだ。ヴォルトとハーヴィと3人で、支え合ってた」

「アレン何もされてない?大丈夫?」

「あたしは大丈夫!それより…」

「静かにしろ!!ガキ共!!(‼︎)」


大きな声と共に入ってきたのはワクラバ。そして…


(カノンさん!!!)

思わず声に出そうになるのをグッと堪える。


「私とレイブン様はこれから3日ほど留守にする。我々がいない間、カノンにお前らの監視をしてもらう」

「どこに行くんだよ」と、ヴォルトが聞くが

「聞くまでもなかろう?」と、したり顔で返された。


(また子供を攫いに行くのか…!)


「この部屋の唯一の出入り口であるこの扉も、私が出た後オートロックをかける。鍵を外せるのは私とカノンだけだ。分かっていると思うが、カノンは味方じゃない」


そしてカノンさんに向かって静かに言った。

「今さら下手なことはするなよ?あいつらはお前を求めていない。お前は敵だ」

「…分かってる。私は私の役を全うするだけ」


ワクラバは満足げに笑い、背を向けた。

「では、レイブン様を待たせるわけにはいかないので」


ワクラバが部屋を出るのと同時にガチャっとロックがかかる音がする。


そうして、私たち4人だけが部屋に取り残された。

ワクラバが去ってすぐ、カノンさんはポケットからスイッチを取り出してボタンを押した。上からスクリーンが降りてくる。

スクリーンには外の様子が映されていた。


「カノンさ…」

「しっ!」


じーっとスクリーンを見るカノンさん。よく見ると、画面の端に大きな船が映されていた。

その船がレイブン達が乗ってるものだとすぐに分かった。

少しすると、船は動き出し、画面から見えなくなった。


船がいなくなったことを確認すると、カノンさんは部屋の後ろに置いてあった黒いバックからコートを取り出した。


「全員これを着て」


あたし達はすぐにコートを着た。


「ヴォルト達は知ってたの?カノンさんが味方だって」

「あたりまえだろ?作戦も全部聞いてる。何かあったら俺らに頼れよな!」

「うん!」

「みんな聞いて!」


カノンさんが話しを切り出す。


「この島には2つ船がある。1つは今、父とワクラバが乗った船。そしてもう一つは、ちょっと遠いんだけど北東にある古い船。私達はそれに乗ってここを脱出する!」


そして先ほどロックをかけられた扉を解除する。


「レイブン達が気付く前に、さっさとここを出てしまいましょう!」

「「うん!!」」


研究所(ラボ)には至る所に監視カメラがある。

監視カメラの映像は随時ワクラバが持ってるパソコンに送られる。


だけどカノンさんはカメラにあたし達が映らないルートを考えてくれていた。

ちなみにさっきまでいた部屋には偽の映像を流してるから問題ないらしい。


あたしも全然知らない道をたくさん通って、最後の扉のところまで来た。


カノンさんがゆっくりを扉を開ける。


「ここから北東の港まで一直線に行く!はぐれないように手を繋いで行くわよ!」


先にカノンさん、その後をヴォルト、ダスク、ハーヴィ、そしてあたしが続いた。


外はいつもに増して吹雪いていた。


「ゆっくりね!足元よく見て!」


カノンさんの声に合わせるように、一人ずつ外に出た。

残るはあたしだけ。


「アレン!」


ハーヴィがあたしに手を差し伸べる。

その手を掴み、外に足を踏み出した…その時だった。


ビー!!ビー!!ビー!!(⁉︎)


大きなブザーが研究所(ラボ)に響き渡る。


「なに!?」

「アレン、お前何か押したか!?」

「何も押してないよ!!」


すると、カノンさんが顔をハッとさせて

「…まさか!!」と、バッグの中から何やら棒状の機械を取り出し、あたしの体をかざした。


するとその機会が首すじのあたりでピピっと音を鳴らした。

カノンさんは悔しそうに顔をしかめてやっぱり…と声を漏らした。


「アレンの体に小さなチップが埋め込まれてる(⁉︎)きっと研究所から出たらブザーが鳴るように仕掛けてたんだわ」

「そんな!!」

「じゃあ僕たちが逃げようとしていることはバレてるってこと??」

「バレてる上に…多分、あの2人はこの島を出ていない(⁉︎)」


島を出ていない!?そんなバカな。


「でも、映像では船は出航してたよ!!」

「船はフェイク。誰も乗ってない。早く船へ向かいましょう!!じゃないとあの人達に追いつかれ…」

「誰に追いつかれるって?(⁉︎)」


今一番聞こえたくない声が後ろから聞こえる。

全部筒抜けだったのか…!


「レイブン……!」


あたし達はその場から動くことができなかった。

彼のお得意のニヤァっとした顔は、あたし達を絶望させるには十分すぎた。

計画性って大事ですよね。

私ももう少し計画性を持って小説を書きたいと思います(いつもギリギリ)。

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