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ブラッド・フラワー  作者: 御稲荷 薫
レイブン研究所編
5/67

05 約束だよ

「カノンさーーーーん!!」


大きな声で私を呼びながら駆け寄る少女が1人。


「なまえ書いたの!みてみて!!」と自慢げに紙を広げる。


「まぁ!上手に書けたわね」

「えっへへ」


雪の中から現れた謎の少女、アレンはあれから難なくすくすくと育った。元気すぎるくらいだ。


彼女がここに来たルーツを探してみたが、名前の書かれたお包み以外、手かがりは何もなかった。


あれから5年が経ったことが未だに信じられない。


アレンは父の手によって生後3ヶ月も満たないうちに彼らの被害者になった。


アレンだけを特別扱いできるはずもなく、父との契約上目を瞑るしかなかった。


けれど、アレンは違った(・・・)


原因はわからない。でもアレンの体は人工能力移植術を完全に拒否していたのだ。


父はこれに大きな可能性を見出した。


「こいつは世界中を探しても見つからない稀有な存在に違いない!!この体さえあれば、私の研究は必ず成功する!!!」


あぁ、私のせいだ。


私があの時アレンを見つけていなければ、彼女を苦しませずに済んだ。


ごめんね…ごめんね…


「カノンさん!!(‼︎)」


アレンが急に後ろから声を出したものだから、私はビクッと体を硬らせてしまった。


アレンはキラキラの笑顔で私に折り紙を渡した。


「これ、作ったんだ!カノンさんにあげる!」

「これは何…?」

「かめれおん!前カノンさんが図鑑で見せてくれたから!」


カ、カメレオン??確かにこの前、一緒に図鑑を読んだけど…


とても上手とは言えない不恰好なカメレオンを見て、私はクスッと笑った。


「ありがとう。とても嬉しいわ」と、彼女の頭を撫でた。


アレンは嬉しそうにニコニコ笑った。


「カノンさんはあたしのお母さんみたいな人だから!ずっと笑っててほしいんだ!」

「…」


違う、違うのよ。


「アレン」

「ん?」

「アレンは大きくなったらお母さんとお父さんを探しに行きなさい。きっと、2人もあなたのことを探しているわ」


そう言うと、アレンはとても不機嫌な顔をした。


「いやだ。ずっとここにいたい。カノンさんとみんなと暮らしたい」

「でも…」

「いやだよ!!絶対いや!!」


アレンは走って廊下の角を曲がった。

少しして私も角を曲がると、アレンは膝を抱えて座っていた。


「カノンさんは…私にいてほしくないの?」

「そんなはずないでしょう?でもアレンは知りたくないの?自分の両親がどんな人か」


と聞くと、アレンは顔を反対に向けて


「知りたくない」と言った。


「私のことを捨てた人たちに会いたくなんてない」


…そう思うのも当然か。


「でもこの前は会いたいって言ってたじゃない」

「だってみんなに悪いじゃん!みんなは親に会いたくて、そのために頑張ってるのに。あたしだけ会いたくないなんて…」


両親を知らないアレンにとって、親が自分にとってどういう存在なのかも知らない。

ずっと葛藤してたんだ。


私はアレンの隣に腰を下ろした。


「アレンは捨てられてなんかいないよ」

「ウソだ。だってカノンさんがあたしを雪の中から助けてくれたんでしょ?」

「えぇ、そうよ。でも私には絶対の自信があるの。だって、愛していない子どものお包みに名前なんて書く?」

「たまたまだよ…」

「そんなことない!!」


私は強く言った。


「私はね、託されたと思うの。どうして、どうやってあなたの両親がここに来たのかは分からない。でも何か重要な理由があったはず」


アレンの手を取る。


「断言するわ。アレン、あなたは愛されている(‼︎)」


アレンは驚いてるようだった。

顔も知らない両親が自分を愛してるだなんて、考えたこともなかったんだろう。


残念だけど、他の子はもうレイブンの手にかけられた時点で助からない。


だけどアレンなら。

アレンなら他の子の願いまで叶えられる。

両親と共に暮したいという、私の願いも。


「あたし、探すよ。お母さんとお父さんのこと」

「うん…!アレンなら絶対できるよ!」

「うん!約束!」


私たちは指切りをした。

固く固く、指切りをした。

ーーーーーーーーー


コンコンコン。ドアを3回ノックする。

「お父様、船の準備ができました」


パソコンに向かって作業をしている父に話しかける。


「そうか、いつ出発できる」

「いつでも出航できます」

「ワクラバを呼んでおけ。今夜だ」

「承知しました」


父が私の側を通り過ぎる。

その時、一瞬。なぜか一瞬だけ。

昔の父の姿がそこに見えた。


「お父さんっ…!(‼︎)」


思わず呼び止める。だけど、もちろんそこにはいつもの父しかいない。


「あ?」

「ご、ごめん」


チッと舌打ちを打って、父は出て行った。

ドアを閉める音と共に私は静かにつぶやいた。


「さぁ…始めるよ」

本日もご愛読ありがとうございます。

最近は寒かったり暖かったり変な天気ですね。

ご自愛ください。、


御稲荷 薫のツイッター↓

@oinarisandayo

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