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本編 1

声劇台本


作者:長久


配役

お父さん♂:エリートサラリーマン

お母さん♀:看護師

美咲♀:長女。女子大生

龍樹♂:長男。男子高校生

兼ね役♂:救急隊員


配役比率♂2:♀2

目安時間:30分~



~本編~



※自宅リビングにて


美咲「今日もお父さん、帰り遅いね」

龍樹「働きすぎだよね。ちょっとは自分のことも大切にしないとだよ」

美咲「私も、もうすぐ就職か~。嫌だなぁ社会人。お父さんみたいに始発と終電なんて無理」

母「いいのよ。貴方たちは自分のペースで。お父さんが頑張ったおかげで貯金も沢山あるんだし、母さんも看護師として頑張ってきたんだから」

龍樹「マジで!? 俺、ニートでもいい?」

母「それはダメ。あんたも大学受験もうすぐなんだから、自分のやりたいことを見つけなさい。お金はいいの。一生続けられる仕事と良いパートナーを見つけて幸せになるのよ」

龍樹「今の時間がずっと続けばいいのになぁ」

美咲「激しく同意だぁ」

母「ダメよ。うちが裕福で大きい家に住めてるのは、親のおかげ。義母さんはね、あんた達に自立して欲しいの」

美咲「まぁね。お父さんとお母さんは凄いな~」

龍樹「本当、尊敬するよ。父さんは家にいる時間なんて一日六時間もないし、母さんは不規則な生活なのに文句の一つすら言わないし……」

母「(微笑)。頑張る秘訣はね、生きる希望になる、大切な家族がいるからよ」

美咲「私にそれが見つかるとは思えません」

龍樹「姉さんは彼氏いない歴=年齢だもんな」

美咲「龍樹張り倒すよ!? 龍樹も彼女どころか女友達すら連れてきたことないじゃん!」

龍樹「俺はまだ花の大学生活を迎えてないからさ。伸びしろだらけだよ!」

美咲「受かればね! 浪人しないといいね」

龍樹「そうやって受験生にプレッシャーかけるのやめてくんないかな!?」

母「まあまあ、喧嘩しないの。二人仲良くね」

父「ただいまぁ~(小声で)」

美咲「あ! お父さん、お帰りなさい!」

龍樹「そんなひっそり帰ってこなくていいよ、一家の大黒柱らしく堂々と帰ってくればいいのに」

父「お前達、また起きて待っててくれたのか。嬉しいけど、夜更かしは身体に悪いぞ?」

美咲「毎日、太陽より長く働いてる人に言われたくないよ」

龍樹「そうだよ。それに、俺達がやりたくてやってるんだよ。こうでもしないと、父さんに会う時間なんて何ヶ月もなくなっちゃうじゃん」

父「お前等……。ありがとうな。おれは良い家族を持った!」

母「お帰りなさい、お風呂もご飯も出来てるからね」

父「母さん、ただいま。今日は夜勤明けじゃなかったか? 身体は平気か?」

母「二人が手伝ってくれたから、全然平気よ。あなたこそ、大丈夫?」

父「はっはっは! 愛する家族が待ってると思うと、疲れなんて吹っ飛ぶよ」

美咲「臭いこと言わないで、たまには休みなよ」

龍樹「そうだよ。いつまでも若い訳じゃねぇんだぞ?」

父「お前等、心配してくれるのか? 本当、可愛いなお前等は~!」

美咲「ちょ、髭痛い! いい歳して年頃の娘にそれはないから!」

龍樹「早く髭剃ってこいよ! どうせ今朝も忙しくて剃ってないんだろ?」

父「む……。そうか、悪い悪い。今剃ってくれるからな!」

母「急がなくてもいいからね。その間にご飯並べとくから!」

父「ああ、有り難う!」

母「全く、いつまで経っても会った時と一緒。子供っぽさが抜けない人だなぁ」

美咲「お母さんも本当にお父さんの事、大好きだよね」

母「当たり前でしょ? 大好きじゃなければここまで一緒にいれないよ」

龍樹「子供達を相手に惚気るとか、恥ずかしくねぇの?」

母「恥ずかしくないよ。だって、二人もお父さんのこと大好きなの分かってるし」

美咲「そんな事、一言も言ってないんだけど?」

母「だって、こんな夜中なのにお父さんを待って食卓に座っててくれてるじゃない?」

龍樹「あ~、まあ、それぐらいは……なぁ?」

美咲「そりゃあね? こんぐらいは普通っしょ」

母「それがね、中々当たり前じゃないんだよ。母さんも色んな患者さん家族を見てるけど……うちは本当に幸せよ」

龍樹「そんなん? 実感湧かないわ」

美咲「ね、余所様の家庭観環境を聞いてもいまいちパッとこないって言うか……」

母「ふふ。それでいいんだよ。うちはうちらしくいきましょう」

父「お!? 美味そう! なんだ、お前等も一緒に食べてくれるのか?」

美咲「私達は先に食べちゃったから、座ってるだけ」

龍樹「まあまあ、社長! ビールでもどうぞ~」

美咲「龍樹、お酌するの似合わないよ~。……私も飲もうっと」

父「おっ、こんな幸せな酌とコンパニオンは他にないな。どんな美人に注がれる場より嬉しいぞ!」

母「父さん……?」

父「いや、違うぞ!? そういう接待は受けてないからな! 俺はお前一筋だ!」

母「もし浮気したら……わかってるよね?」

父「はっはっは! そんなものする訳ないだろ!」

美咲「まあ、仕事と家庭しか頭にないお父さんが浮気するのは想像つかないね。はい、お疲れ様!」

父「ありがとう。はい、かんぱ~い! お前ら、早く寝るんだぞ~」

龍樹「はいはい、俺もそろそろ寝るよ~。おやすみ」

父「おう、お休み~。また明日な、風邪引くなよ!」



~後日深夜~

※自宅リビングにて



美咲「お父さん、今日は一段と遅いね……何かあったのかな?」

母「そうね……心配で電話かけてるんだけど、全然でなくて……」

龍樹「……探しにいく?」

母「それは、もう少し待ってからにしましょう……」

美咲「うん……。――あ! 今玄関開く音がした!」

龍樹「お!? 帰ってきたかな!――って、父さん、どうしたんだそのスーツ!」

父「(滑舌悪く)あ? 何言ってんだ龍樹、俺はなんともねぇぞ」

龍樹「いや、左側傷だらけじゃねぇか!? それに呂律も回ってねぇし……酔ってるのか?」

父「ああ!? 酔ってるわけねぇだろ! おれはお前達のために朝から晩まで精一杯働いてるのに難だその言い草は!」

美咲「と、父さん!? どうしちゃったの!? それに、足引きずってる!」

父「どうもしてねぇよ! ふざけんなよ美咲!」

美咲「――きゃ……! ……え?」

父「……あ? なんだ? 左手が揺れるぞ……?」

母「あなた……まさか。(小声で)――美咲。今すぐ奥に言って救急車呼んできて。それで龍樹と奥に隠れてなさい」

美咲「……え? 救急車?」

母「いいから、早く……!」

父「二人して何こそこそしてやがる! そんなに俺がおかしいか!? 大丈夫だって言ってんだろ! なんで、なんで俺を信じてくれねぇんだよぉおおお……!」

母「あなた、大丈夫よ。私は信じてるからね。だから落ち着いて。ね」

父「あ……あぁあああ……ありがとう、ありがとう……!」

龍樹「な、なんだってんだよ父さん……」

美咲「龍樹、こっち、早くこっちきて……」

龍樹「ね、姉ちゃん?」

父「なんだよぉ!? 俺を避けるのか、捨てるのか!? 美咲、龍樹ぃ! 俺は、こんなにお前等を愛してるってのによぉおおおおお!」

美咲「――龍樹、早く、早くこっち!」

龍樹「お、おう! ごめん、父さん……!」

父「なんで逃げる、なんで鍵をかける!? 俺の家だぞ! ふざけんな、ふざけんなぁあああ!」

美咲「怖い……怖いよ……! なんで、あんな優しかったお父さんが……!」

龍樹「わかんねぇ……わかんねぇよ……これからどうするんだ!?」

美咲「さっき救急車呼んですぐ来るって言ってたから――」

母「――きゃっ! あなた、痛い! 殴らないで、落ち着いて……!」

父「お前も、お前も俺を裏切るんだろう、どうせどうせ……! なんで、腕が動きにくいんだよぉお! ちくしょぉおおお……!」

龍樹「母さん……くそ!」

美咲「龍樹、出ちゃダメ! 今は我慢して! お母さんからの御願いなの!」

龍樹「母さんからの……!? でも、でもよぉ……!」

母「あなた、ちょっと腕の動きが悪いみたいだし一緒に病院に行きましょう。大丈夫、私の働いてる病院だから怖くないから……っ!」

父「ふざけんな! お前まで、お前まで俺を病人扱いしやがって……ぁあ……ああ……っ!」

母「念のため、念のためですから、ね。大丈夫、私がずっとついてますから……っ!」

父「ちくしょう、ちくしょう……なんで、なんでぇええ……」

救「救急隊です、大丈夫ですか? こちらの方ですね、落ち着いてください」

父「なんだお前、人の家に!」

母「病院まで一緒に来てくれる人ですよ! 大丈夫、ほら私も手を繋いで一緒にいきますからね!」

救「ええ、大丈夫です。我々は味方ですよ。さあ、ご案内しますからゆっくり一緒にいきましょう」

父「あ、あぁあああ……なんでぇええ……っ!」

母「……二人とも、今日はゆっくり寝なさい。母さんは病院に付き添ってくるから。戸締まりしてよく寝るのよ」

美咲「お母さん……!」

母「大丈夫、また明日しっかり説明するから。龍樹、いない間は任せたわよ」

龍樹「う、うん……。わかった……けど、本当に大丈夫なのかよ」

母「……母さんは、大丈夫。じゃあ、また明日ね」

美咲「行っちゃった……。どうしよう」

龍樹「わからねぇ。どうなってんのか、全くわからねぇよ。父さん、全然違う人みたいだった……。正直、怖かった」

美咲「龍樹……今日は、一緒に寝てもいい?」

龍樹「うん……俺も、その方がいい……」


~翌日~

※自宅リハビリにて


母「二人とも、心の準備はいい?」

龍樹「お、おう……。でも、父さんは?」

母「入院、することになったの」

美咲「入院!? なんで、お父さんは病気なの!?」

母「お父さんの病気は多発性脳梗塞――ラクナ梗塞とも言うんだけどね。脳の血管がいくつも、いくつも詰まっちゃったの。ずっと働きづめだったし、今までのストレスとか生活習慣とか。沢山、原因はあると思うんだけどね……」

龍樹「マジかよ……。それって大丈夫なの? 命とかさ……」

母「命は大丈夫。でもね、医者とも話したんだけど後遺症が残りそうなの」

美咲「え……。後遺症って……どんなの?」

母「手の麻痺は多分、そんなに残らないんだろうけど……高次脳機能障害が残りそうなのよ」

龍樹「麻痺が無くなるのは良かったけど、高次脳機能障害って……なに?」

母「まだ全部は分からないんだけど、病態失認と社会的行動障害が、特に残りそうなの……」

龍樹「なんだよ、それ……全くわかんないよ」

母「自分が病気なことを自覚できなかったり、衝動的になったり、人格がかわっちゃったり……抑制が効かなくて情緒不安定になっちゃう後遺症なの」

美咲「あ……じゃあ、お父さんが別人みたいに怖かったのも……」

母「そう。多分、戸惑ってたのもあるとは思うんだけど……。脱抑制って言う高次脳機能障害の症状なの」

美咲「そんな……じゃあ、お父さんはずっとあの怖いままなの?」

龍樹「そんなの、嫌だよ……」

母「大丈夫。何ヶ月、何年って付き合っていく必要があるけど……諦めないで付き合っていけばきっと大丈夫。だから、お父さんはしばらく入院することになったの」

美咲「何年もって……そんなの、突然受け入れられないよ」

母「しばらくはお母さんの働く病棟で治療するけど、きっといつか良くなって帰ってくるから」

龍樹「いつかって……その間、俺達はどうすればいいんだよ……」

母「大丈夫。貯金も結構あるし、貴方たちは安心して就職活動とか受験に集中して。お父さんが帰ってくるまでお母さん頑張るから、ね」

美咲「お母さん、ありがとう……私達も早く受け入れられるように頑張るから」

母「ありがとうね美咲、龍樹。それじゃ、お母さんこれから仕事だから病院行ってくるね。お父さんの様子はまた定期的に報告するから」

龍樹「母さん……ごめん、いってらっしゃい。気をつけて……な」


(間)

※自宅リビングにて


母「今日のお父さんの様子だけどね。お父さんちょっと病棟で暴れちゃって……。ベッドに縛られることになっちゃったの」

美咲「え!? 縛られるって何それ!?」

龍樹「なんで父さんがそんなことされなきゃいけないんだよ!」

母「後遺症で衝動的になっちゃったみたいで……。怒って点滴とか引き抜いたり、他の職員に暴力振るっちゃったみたいなの」

美咲「暴力!? お父さんがそんなことするわけないじゃん!」

龍樹「なんかの間違いだろ!? そんなの、人権侵害じゃないのかよ!」

母「一時的にこういった対処は必要なのよ。辛いだろうけど……わかってちょうだい。ね。今はお父さんを刺激したらダメだから、面会も待ってね」

美咲「母さん……私、信じられないよ……。こんなの、夢じゃないの?」

母「悲しいけど、現実なのよ。辛いけど、受け止めて受け入れてあげなきゃ。じゃないと、お父さんも可哀想でしょ?」

龍樹「そりゃ、受け入れられるように頑張るけどさ……。正直、頭がぐるぐるしちまって……」

母「大丈夫。時間はかかるけど、きっと大丈夫よ。――じゃ、お母さん仕事だからまた病院いってくるね」


(間)

※自宅リビングにて


美咲「お母さん、お帰りなさい。お父さん……今日は、どうだった?」

母「ただいま。呂律も回ってきてね、よくなってきたよ。このまま良くなっていけば、退院もできるかもしれないよ」

龍樹「父さん、帰ってこれるの!? マジで!?」

母「もうちょっと様子を見たら、母さんから医者に相談してみるから、待っててね」

美咲「そっか……そっか! うん、わかった!」

龍樹「良かったな! 姉ちゃん!」

美咲「うん、本当に……本当によかった……!」

龍樹「おいおい、泣くなよ……俺まで、涙が移っちゃうだろうが……」


(間)

※自宅リビングにて


母「二人とも、お父さんの外出許可がおりたよ! 今度の週末に一日だけ帰ってこれるよ!」

美咲「え、本当!? やった!」

龍樹「やっとか! やっと父さん、帰ってこれるのか、長かったな~!」

美咲「じゃ、お父さんの好きな食べ物とか沢山用意しなきゃね!」

龍樹「おっしゃ、俺も手伝うよ!」

美咲「え~。龍樹の料理は粗いからなぁ~……」

龍樹「なんだよ、美味いんだからいいだろ!」

美咲「ザ・男飯って感じなんだもんなぁ。それに、あんた受験大丈夫なの?」

龍樹「うぁ……ここでそれ言っちゃう? 一日ぐらいはいいんだよ! アクティブフォレスト!」

美咲「は? もしかしてアクティブレストのこと? 活動的な森って何、あんた本当に受験大丈夫でしょうね!?」

龍樹「ちょ、ちょっと間違えただけだろ! 鬼の首取ったような顔しやがって!」

美咲「どちらかというと、煮え湯を飲まされてるような顔なんだけど……」

母「ふふ……。よかったわ……本当に、よかった」


(間)

※自宅リビングにて


母「ただいま~! お父さん、帰ってきたわよ!」

美咲「お父さん、お母さんお帰りなさい!」

龍樹「父さん、久しぶり!」

父「ああ……久しぶり、だな」

龍樹「……父さん? どうしたんだよ、折角帰ってこれたのに、元気ないじゃん」

母「ああ、あのね。お父さん気分が落ち着くお薬を沢山飲んでるから、ちょっとだけ元気がないように見えるのよ」

美咲「そう…なんだ。ま、まあでも! 帰ってこれて本当に良かった! たくさん美味しい物用意しといたからね!」

龍樹「お、おう。そうだよ! ほら、まずは美味いものでも食べてくれよ!」

父「酒……」

龍樹「……え?」

父「酒がないじゃないか! なんでだよ、酒すらのましてくれねぇのか!? こんなに頑張って働いて帰ってきたってのにふざけんなよ!」

美咲「――きゃ! お、お父さん! 止めて!」

母「お父さん、落ち着いて! テーブルをひっくり返さないで、ね!」

父「お前まで……お前まで俺を否定するのか……なんで、なんでだよぉ~……っ!」

母「お父さん、ごめんなさいね。一緒に落ち着くとこに行きましょう! ね!」

父「う……あぁあ……畜生、畜生……っ!」

母「二人とも、ごめんね。お父さんを連れて病棟に戻るから……。ごめんなさいね、いってきます」

美咲「……怖かった。お父さん……全然、良くなってないよ……」

龍樹「姉ちゃん……。とりあえず、これ、片そうか」

美咲「そう、だね。……料理、無駄になっちゃったね……」


(間)

※自宅リビングにて


母「ただいま。二人とも」

龍樹「あ……母さん、お帰り……」

美咲「お父さん、どうなった?」

母「うん。ちょっと興奮しちゃってね……。お父さん、しばらくの間は精神科閉鎖病棟で療養することになっちゃったの」

美咲「え、精神科閉鎖病棟って!? どういうこと!?」

母「一般病棟にはいられないぐらい暴れちゃって、ね。大丈夫、お母さんもちょくちょく顔出すし、きっと良くなるから」

龍樹「そっか……仕方ない、んだよな……」

母「そう、仕方ないの。ごめんね、ごめんね……っ!」

美咲「お母さんはよくやってるよ、泣かないで! 私達も頑張るから!」

龍樹「そうだよ! 俺達も自分のやるべきこと頑張るからさ!」

母「うん、うん……! そうだね、ありがとう、ありがとう……!」


(間)

※自宅リビングにて


母「二人とも、今日はお父さん特に変わりなかったよ。すごく落ち着いてた」

龍樹「そうか、よかった……母さんも、お疲れ様」

美咲「早く、よくなるといいね」

母「ありがとう、ごめんね……」


(間)

※自宅リビングにて


母「二人とも、今日もお父さんは変わりなかったわ」

龍樹「そっか……。落ち着いてるみたいで良かったよ」

美咲「お母さん、お疲れ様。ご飯、できてるからね」


(間)

※精神科閉鎖病棟内にて


母「二人とも、ちょっと聞いてくれるかしら?」

美咲「ん、どうしたの? お母さん?」

龍樹「なんでも聞くから、ほら。ここに座ってゆっくり話しなよ」

母「うん。お医者さんと上司の薦めでね、お母さん、お父さんの入院してる精神科病棟に転属することになったのよ……」

美咲「……そっか……。お父さんとも会いやすいし、きっとその方がいいよ」

龍樹「ああ、これで父さんの世話もしやすくなるし、良かったじゃないか」

母「そう、そうよね……。良かったのよね」

龍樹「……あ、母さんそろそろ仕事だろ? 今日は夜勤で帰れないんだったよな」

母「……あ、そうだったわ。それじゃ二人とも、またね」


(間)

※精神科閉鎖病棟内にて


母「見て、二人とも。お父さんちゃんとご飯食べてるでしょ?」

龍樹「ああ、ちゃんと笑顔で美味しそうに食べてて安心したよ」

母「ふふ、そうでしょう。大丈夫、きっと良くなるし、またみんなで楽しく暮らせるからね」

美咲「うん、うん……っ。そうだと、いいね……っ!」

龍樹「姉ちゃん(小声)! 無事な父さんが見られて俺達も安心したよ」

母「そうでしょう? 二人とも知ってるかしら。ラクナ梗塞ってね、別名で『小さなくぼみ』ともいうのよ。大丈夫、そんなち小さな窪みなんかに私達は負けないわ」

美咲「そう、だね。負けてられないよね。私達も自分のやるべき事を頑張るからね」

龍樹「ああ、心配いらねぇから。……それじゃ、母さんも夜勤頑張ってな」

母「うん。お母さん、お仕事たくさん頑張るから安心してね」

美咲「お父さん、またね……」

父「ああ……ありがとう。ございます。またお会いましょう」

龍樹「姉ちゃん、帰るよ……」


(間)

※病院エントランスにて


美咲「面会表はここに戻して……っと。――さっきはごめんね、龍樹。我慢できなくて泣いちゃって」

龍樹「仕方ないよ。気持ちは俺も分かるし……俺達、助け合って強く生きないとな」

美咲「大丈夫、私も仕事にかなり慣れてきたし、龍樹も新生活頑張ってね」

龍樹「俺の大学生活も順調だよ。……一人暮らしさせてもらって、助かってる」

美咲「家族の思い出がたくさん詰まってるあの家にいるのは、辛いもんね……」

龍樹「ああ、正直……近づくのも辛いよ。姉ちゃんも一人暮らし、大丈夫か?」

美咲「一丁前にお姉ちゃんの心配してくれちゃってコノコノ~」

龍樹「ちょ……なんだよ、せっかく心配してやってるのに!」

美咲「大丈夫だよ。二人が精神科病棟に入院してる分のお金も出せるし、お父さん達が貯金してくれてたから龍樹の学費も問題ないから」

龍樹「お金の心配じゃなくてさ……。母さんが入院して、離ればなれに暮らして。家族が離れていくような気がして……」

美咲「大丈夫。――私達家族の絆は、結びつきはそんな簡単に溶けないから!」

龍樹「……姉ちゃん、今まで支えてくれてありがとう。これからも、よろしくな……!」



                                      (終)

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