第2話 夢のような出会い
カンカンカンカンカーン!
なんともお城らしい演出だ。門番も2人いる。お城の周りにはお彫りがあり、城まで行くには一つしか道がない。まるで『今治城』の様であった。俺は聞いた。
「この水、もしかして海水だったりする?」
すると、アールは答えた。
「はい。 ご察しの通り、このお城は『今治城』をモチイフに造られました」
門番の獣人猫と目が合った。すると、やはり驚いた感じで言った。
「ば、化け猫様! どうぞ中へお入りください!」
あっさり門を通ることができた。お城の造りは同じでも、活用しているかしていないかで、こうも活気が違うのだと実感した。お城の中へ入ると、宴会でもするのかと言わんばかりに、料理やらなんやら置かれている。
「それではフォレスト様、こちらへ」
連れてこられた場所は、いかにも王様が座りそうな玉座の前だった。周りの獣人猫達がピシッと左右それぞれ1列になった。ある1人の獣人猫が大きい声で言った。
「マタタビ王国、国王様のおなーりー!」
パチパチパチパチパチパチ・・・・・・
拍手喝采が起こった。
国王様であろう獣人猫はふさふさとした服をまとっている。特に、王冠を被っているなどはなかった。
「あの人が国王様?」
「はい。元々はペルシャ猫でございます」
「なるほど、ペルシャ猫は猫の王様と言われるからなー」
マタタビ王様が玉座に腰をかけた。そして、言った。
「『化け猫様』よ、私がこのマタタビ国の王、マタ王である。 又の王や、またの〜バイバ〜イにゃどではにゃいぞ!マタタビ国の王、マタ王じゃ!」
さりげ、親父ギャグを連発してくる国王様だった。マタ王は続けて話した。
「まずは、この世界がどこで、どういう場所か説明しよう。 簡単に言うと異次元とも言えるが、正確には異次元ではにゃい。 君ら人間界の少し延長線上の空間にある。 見てもらったらわかると思うが、この国の造りは城下町じゃ。 簡単に言うと猫にとっては黄泉の国、人間から見たら過去の国じゃな」
俺の中で整理すると、恐らく、猫と人間の寿命が違うように、『時間の違う世界』とでも言うのだろうか。すると、マタ王は言った。
「そんなに難しく考えんでも良いぞ。 まぁ、ゆっくりして行ってくれたまえ。 それでは引き続き案内を頼むぞ!アール」
「かしこまりました」
そしてマタ王は去って行った。
「フォレスト様。 それでは戦士の方々にご挨拶に伺いましょう」
「わかった」
入って来た時は緊張していてあまり気づかなかったが、廊下には戦士であろうか? 肖像画が並んでいた。
すると、かなり男前で勇敢そうな、いかにも『戦士』って感じの獣人猫が立っていた。特徴としては赤褐色の色の服を着ている。かなりスリムだが、鍛えてそうな身体付きだ。瞳の色はゴールドで、猫耳と尻尾もかっこいい。
「あっ!えんま様!」
ん?えんま様?アールが駆け寄って行った。閻魔大王様なのだろうか?と俺は思った。アールを見た赤褐色の服の戦士は明るい感じで言った。
「アールじゃにゃいか! ひさしぶりにゃ〜!」
「お元気そうで何よりです」
すると、赤褐色の服の戦士がこっちに気付いた。こちらに近づいてくる。
「君が『化け猫戦士』か! 」
「あ、はい。 フォレストと言います」
「俺は炎の魔剣士。品種はアビシニアン! みんなからは炎の魔剣士と言う事で『炎魔』と呼ばれている!」
どうやら閻魔大王様とかではないようだった。炎の魔剣士だからあだ名として『炎魔』と呼ばれているようだ。
「炎魔様、どういう戦士なのかをフォレスト様に教えてあげてくださいませんか?」
「わかった!」
炎魔さんはベルトの左右にそれぞれ1つずつある何やら剣の柄の部分しかない物を2つ取り出した。鞘も無い。そして、鍔の真ん中に満月を例えたであろう丸い場所に『炎』という文字があった。だいたい、その部分には、星のマークとかが付いている。
「柄だけですか?」
俺は質問した。鞘どころか、なんの実態もない。すると、炎魔さんが教えてくれた。
「俺たち戦士にはそれぞれ属性があるのは知っているかい?」
「はい。さっき自分の属性を知りました」
「俺は炎の戦士だ。まず、赤き炎、『レッドフレイム』 これは、情熱の炎だ!」
炎魔さんの手から赤い炎がボッと音をたてながら出た。
「この柄は、自分の属性を、物の形にしてくれるんだ! 炎!」
ボッと音とともに、右手の柄から赤い炎が剣の形となって現れた。
「赤き炎の剣で『レッドフレイムソード』これは自分自身の情熱で創り出す剣だ。そして・・・・・・」
左手からはボッと音をたてながら青い炎が出た。
「青き炎は妖怪の炎、」
するともう一本の柄も光出し、同じく剣の形になった。
「青き炎『ブルーフレイム』。これは相手に蜃気楼を魅せる、更に熱い陽炎の剣だ!」
たが、もう一本背中あたりに柄がある。
「そのもう一本は?」俺は聞いた。
「俺はこの二つ以外にも、もう一つ、黒き炎の剣、『ブラックフレイム』も扱う。『ブラックフレイム』は主に、相手の視界を奪うくらいかな!」
なるほど、炎で剣身部分を創るのか。
物凄くかっこいいと俺は思った。だが、同時に思う事もあった。
「その柄がないと技とかを使えないのですか?」
炎魔さんは答えた。
「いや、そんにゃことはにゃい! 属性を実体の物にしないのであれば必要にゃい!」
「なるほど。ありがとうございます!」
「後でアールと鍛冶屋にでも行くといいさ!」
「分かりました!」
「それでは炎魔様失礼致します」
アールと俺はペコりとお辞儀をし、次の戦士の場所へ向かった。さっきのお堀の所に来た。すると、水の中から何かが物凄い勢いで上がってきた!
ザッパーン!
女の獣人猫だった。なんと髪の毛が淡いブルーの色で、腰くらいまである。そして青色の服、瞳の色が左右で違う。右は透き通った青色で、左は綺麗な緑色の瞳をしている。猫耳と尻尾がなんとも可愛らしい。体型もスタイリッシュだ。
「アン様!」とアールが言った。
「あら、アールじゃにゃい! 久しぶりにゃ〜」
アンと言う可愛らしい戦士がこちらに気付いた。
「あら、貴方が『化け猫戦士』ね! 私は水を操る戦士、品種はターキッシュアンゴラの『アン』よ!よろしくね。瞳の色が左右で違うのは幸福をもたらすとされているオッドアイだったの。」
「フォレストと言います。 ターキッシュアンゴラだから『アン』さんですね!」
「アン様、せっかくにゃので、フォレスト様に何か技を見せてあげられませんか?」
「私は魅せる技が得意だかね! 良いわ、魅せてあ・げ・る! 虜になるかもだけれど」
「お願いします!」
どんな技かと俺は期待していた。
アンさんが目を閉じると、お堀の水が渦を作り始めた。
パッと目を開けると共に
「大渦潮!」
と言った。すると、大きな渦が空中に舞い上がった。
「どうかしら? 今は水があったから使ったけれど、水のない場所でもこれくらいの事はできるわよ」
「・・・・・・す、凄い!」
「うふふっ。ありがとにゃん!」
「アンさんは、柄とかは持たないんですか?」
「んー、私が使ってもあまり意味ないと思うよ?属性的にも水だからね。そもそも私にはこっちのスタイルの方があってると思うの。 装備とかすると重くなるしね!」
「なるほど・・・・・・」
みんないろいろ考えて、ベストの状態にしているんだと思った。
「アン様、ありがとうございました」
「ありがとうございました」
2人でお辞儀をして、アンさんを後にした。
「もう1人、風使いの戦士の方がいるのですが、基本的に偵察任務を担当されてる方なので、今日はいらっしゃらないみたいですね。」
「偵察任務か...」
「いない人は仕方ありません! これから装備を揃えに鍛冶屋に向かいましょう!」
「わかった!」
お城から出て城下町を歩く。
「こちらへ」
大通ではなく裏道を行くようだ。こっちに来てから思った事を言ってみた。
「アール、こっちに来てから結構『にゃ』って言葉を耳にするけど、方言的なやつ?」
「そうです。 人間界にいる間は怨念を調査しておりますので、猫だとバレないようにはしているのですが、こちらに居るとつい『にゃ』って言ってしまうんですよ」
「にゃるほどね〜」
「フォレスト様?」
「使い方あってる?」
「はい!」
『にゃるほど』と言っただけなのに、アールはなんだかとても嬉しそうだった。そうこうしていると、いかにも鍛冶屋と言わんばかりのお店に着いた。中に入る。
「いらっしゃい!」
「お久しぶりです。 おじ様。」
そこにはとてもテンションの高いおじさん猫が居た。
「アールか!久しぶりにゃー!にゃにゃっ!そちらの方は『化け猫』様ではございませんか!」
「おじ様、また昼間からマタタビを...」
「テンションを上げねーと鍛冶屋なんて務まらんってもんよ!」
辺りを見渡してもこの部屋にはやはり柄しかない。どれがなんなのかも全く分からない。
俺は本題を切り出した。
「あの、なんか戦える武器が欲しいのですが」
すると、鍛冶屋のおじさん猫は笑顔で言った。
「では、どーいった武器をお探しで?」
「んー、出来れば剣を1本と、短剣を1本欲しいのですが・・・・・・」
「これは珍しいですにゃ〜! 短剣使いなど滅多におられませんよ! さすがは『化け猫』様だ!」
短剣がそんなに珍しいのかは良く分からないが、おじさん猫はかなり上機嫌になっていた。
「『化け猫戦士』様ですので、特注品をお持ち致します。 少々お待ちくださいませ」
なにやら奥の倉庫へ入っていった。
ガサゴソガサゴソ・・・・・・・・・・・・・・・
「にゃホッにゃホッ」
なんだか咳き込んでいる。短剣とはそんなに人気のないものなのだろうか。
「おー、ありました! ありましたぞ!」
なんとも古い箱だった。
「今から開けますね!にゃははは!」
パカッと音がし、箱の蓋が開いた。
なんと氷でてきたかのような透き通った青い色をしている。その鍔の真ん中にちょっとした丸があった。
「可愛らしいですね」とアールが言った。
やはり剣身部分は無い。
俺は質問した。
「この、鍔の真ん中の丸い部分は満月ですか?」
おじい猫が答えた。
「左様でございます。 その鍔には『化け猫』様の属性の文字が浮かび上がります」
恐らく、炎魔さんの鍔に『炎』と描かれていたの一緒の事だろう。
「フォレスト様、短剣を持ってみてください!」
アールが目を輝かせながら言った。
俺は短剣を握った。かなりしっくりくる握り心地だ。
少し上に持ち上げてみる。
ピカーーーーーッ
「ウッ眩しい!」
辺り一面を物凄く眩しい光が包み込んだ。あまりの眩しさに目を閉じる。そして目を開けた。鍔の部分には『氷』と描かれてた文字が浮かび上がった。これを見たおじさん猫は言った。
「いやー、驚いた! まさかここまで光り輝くとは。 その短剣に選ばれた証拠ですな!」
「フォレスト様、流石でございます!」
アールも嬉しそうだ。続けて言った。
「その短剣の名前はいかがなさいますか?」
俺は答えた。
「んー、氷の短剣だから『アイスダガー』にするよ! シンプル・イズ・ベストってね!」
「そーですね ふふっ」
「それでは『化け猫』様、剣の方は貴方様自身でお選びくださいませ」おじさん猫が言った。
コツコツコツ・・・・・・ふと上を見上げると、透き通った青色の柄が目に入ってきた。俺はそれを持ってみた。すると、またしても眩しい光が辺りを包み込んだ。先程と同様、鍔の部分には『氷』という文字が浮かび上がった。
「よし、この剣の名前は氷の剣、『アイスブレード』だ!」
「フォレスト様、かなり似合っておられます!」
アールは手を叩きながら言ってくれた。
「あとは、『化け猫』様に合うベルトですなー・・・・・・」
「あ、ベルトは新しく作って貰っていいですか?」
「かしこまりました。 どーいったベルトに致しましょうか?」
「右の腰に二つの剣をしまえるように作って貰えますか上側に氷の短剣をしまえるように!」
「かまいませんが、なぜ二つとも右側に?」
とおじさん猫が言った。
「カウンター狙いで戦いたいんだ!」
「フォレスト様、一体どういう事ですか?」
アールは不思議そうな顔をしている。
「それは、ベルトが出来てからのお楽しみ!」
「出来上がるのには早くても二日かかりますがよろしいでしょうか?」
「大丈夫です!お願いします!」
「フォレスト様、それでは1度、人間界に戻りましょう」
「どーやって?」
「戻るのは簡単です。」
アールはまた呪文のようなものを言いはじめた。
「聖なる月よ、人間界への道を開たまえ」
また、周りが光出した。
ピカーーーーーーーーッ
ゆっくり目を開けると、人気の少ない神社に戻っていた。 少し立ちくらみがした。
「心愛様、先程おじ様が言っていたベルトの件ですが、人間界とマタタビ王国も時間の経過は同じです。ですが、マタタビ王国にいる間は歳をとりません。つまり、人間界から、心愛様自身が消えたという事になります。 人間界に戻った際はマタタビ王国に居た時間分の歳をとります。副作用として、立ちくらみがあります。それと、仕事がある日はマタタビ王国に来なくて構いません」
「じゃあ、なんにせよ、二日待たないとなんだね!」
「はい。 明日もまた月光浴、お願いします」
今、深夜2:00、という事は4時間はマタタビ王国にいたということになる。さっきの立ちくらみは4時間分の副作用だろう。
「あっ、やばっ!明日仕事だ!」
俺は急いで帰宅した。
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