表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月立淳水の科学カタログ  作者: 月立淳水
9.歴史・文化・社会・経済

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/32

戦争を起こそう

 A国とB国が戦争をしています。

 なぜ二国は戦争をしているのでしょうか?

 A国は悪い侵略国家で、B国の領土を欲しがって攻め込みました。

 これは無いですね、さすがに。

 まず、領土が欲しいから攻め込むっていう発想が無い。実際の国家運営は領土面積のスコア争いじゃないですからね。そりゃ確かに独裁者がゲーム気分で領土拡張に走った例が無いとは言いません。でも、ほとんどの場合、「単に領土を広げたいから」という理由で戦争が起こった例って、ほとんど無いと思うんです。

 まず最初に、国家って何のためにあるんだろう? ……そのくらいまでさかのぼって考えることが必要です。国家の定義にも、国民国家だの何だのといろいろとあるので難しいですが、一番最初の国家みたいなもの、たぶん農耕文化が出てきたあたりに一部から始まったであろうひとつの目的があったはずです。それは。

 みんなで団結して外敵から家や家族を守ろう。

 たぶん、こんなもの。

 さて、「みんな」ってなんだ? たとえば同じ民族だったり。同じ神様を信じる人たちだったり。何らかの形で、何らかの「価値」や「権利」を共有する集団、それが「国家」を作る「みんな」です。

 その国が、やむをえない理由で、周辺の別の集団と争いを起こすとなると、それはもう、理由は決まっています。その国家のみんなが共有している価値や権利を守るためです。

 つまり、その国の「みんな」がどんな権利を共有しているのか、ってことを考えればいいんです。

 先ほども書いたとおり、ゲーム脳の独裁者による侵略国家もあったかもしれませんが、そんな独裁者に権利を与えた「みんな」の共通価値観は、領土面積のスコアです。なぜそんなところに価値を求めちゃったのかは分かりませんがその裏にはもっと深遠な理由があったはずなんです。

 たとえば、その国のみんなは、一坪の家しか持っていません。なぜなら、人が増えすぎて家を建てる土地がなくなってしまったのです。じゃあ隣の国にちょっと土地を分けてもらおう。え? ダメ? よろしいならば戦争だ。こんな経緯で戦争になったのだとすれば、これは「国民が家を建てるための土地を欲したから」という理由での戦争になります。実のところ、この「家を建てる土地」を「畑を作る土地」「放牧する土地」「工場を建てる土地」「資源を掘り出す土地」「ちょっと怖い近所の国との間に塀を立てる土地」などなどと読み替えれば、面積スコア争いにしか思えない侵略戦争のほとんどは説明がついてしまいます。

 だから、戦争の理由は「領土が欲しい」ではなく「家を建てる土地を持つという国民の最低限の権利を守る」なんです。

 同じように、国民の共有する権利が「ある神様を奉ること」だとしたら、近隣の悪魔崇拝の住民が流れ込んできて神様にお祈りするのを邪魔するようになれば、悪魔崇拝の野蛮人を退治しに行かなければなりません。

 国家の軸になっている権利や価値観が何なのか、ってことに注目して、戦争をする理由を考えたいものです。

 たとえば、SFとかでよく出てくるのが、商社国家。

 ある巨大な商社が資本主義的に存続するという権利を守るための国家。

 資本主義的に存続する、と言うのは、去年より今年、今年より来年の方が多くの利益を出す、ということです。

 利益が減り始めたら資本主義的には存続不可能なんですね。

 たとえば、A国はそんな商社国家だったとしましょう。

 扱う商品をどんどん増やしてどんどん利益を上げて。

 ところが、ある日、もう新たに売る相手がいなくなってしまいました。

 手元には、たくさんの木材やコンクリートがあるのに。

 どうしよう。

 そうだ、隣の星のB国に戦争を仕掛けて建物をいっぱい壊しちゃえ。

 そしたら、新しく資材を買ってくれるかも!

 っていうかついでに滅ぼしてA国民を入植させてたくさん開発させちゃえ。

 うひょー、そしたらいくらでも商品が売れちゃうぜ。

 ひどいですね。

 悪の侵略国家です。

 こういう、現実的な悪の侵略国家を考えたいですね。

 歴史上の領土を広げるための戦争にしても、たとえば、そうしないと農地が足りなくて国民が飢えてしまう、そんな理由があったはずです。

 どんな形でも、国を形作る人たちの共通の権利をお互いに守ろうとするのが基本。

 二つの国の間でそれが両立する方法が一つでもあるなら戦争は起こりません。

 どちらかが権利を守れるともう一方の権利が失われる。

 そんな時だけです、戦争が起こるのは。

 「この戦争は百年も続きもはや何のために戦争をしているのか誰も知らなかった」

 なんて書き出しはありえないんです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ