はじめに
サイエンス・フィクション、すなわち、SFというジャンル名を聞いて皆さんが思い浮かべるものは、どんなものでしょうか?
宇宙船が駆け回り光子爆弾が要塞を砕いたり。
サイバーワールドにダイブして狂った人工知能の野望を打ち砕いたり。
それとも、最終戦争で何もかも喪われた世界を仲間とともに生き延びる?
ちょっとだけ突拍子も無い世界の設定の上で、見たことも聞いたことも無い謎の科学が次々と襲い来る難問をバッタバッタとなぎ倒す、そんなイメージを持っている人が多いのではないでしょうか。
SFは、科学をテーマにした架空の物語。前述のようなものももちろんSFと呼んでいいのですが、特にSF成分の濃い作品というのは、たいていが科学そのものを楽しんじゃおうというテーマを持っています。さらに言えば、世の多くのSFやSF要素を含むいろんな空想作品は、必ずどこかにそんな要素を含んでいます。全くの謎技術でもいい、でも作中でなんだか上手くつじつまが合って、最後には作品のテーマそのものの一端を担うようになる、そういう作品が、SFと呼ばれるジャンルを構成しているのです。
でも、科学の要素も全くなく架空でもないお話なんて、そんなもの聞いたことが無いですよね。どんな空想のお話も、些細ながらも「何かの決まり事」があるし、いろんな空想が詰め込まれています。「決まり事」とは科学です。新しいお話を作り出す、というのは、SFの作業そのものなんです。
小説なんて書くのは簡単。日本語を知っていれば、小説なんてすぐに書けます。それなりの技術と道具があれば漫画だって描けます。
肝心なのは、お話を考えること。
決まりを考えて空想を膨らませること。
そこにちょっとだけスパイスを。
とてもとても奥深い科学の真髄を搾り出したその上澄みのちょっとピリッとするところをふりかけちゃいましょう。読者の方を、あっ、なるほど、と唸らせたら勝ち。アハ体験は何より勝るエンターテインメントです。
本書は、そのほんのちょっとのピリッとしたところだけをカタログとしてみなさんにお届けするものです。
サイエンスを楽しみながら楽しませましょう。あなたの空想はきっともっといろんな人を楽しませられるはずです。