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ゾンビちゃんの日常  作者: 夏目みゆ
2/5

腐らないといいな

ゾンビライフ、またの名を引きこもりライフ。

さて、昨日はお酒のテンションによりとても楽しい気分でした。

私はゆっくりと身体を起こした。

枕元の携帯端末を確認してみると、現在は次の日の朝9時でした。

今日は朝番なので、朝6時から私は仕事。

完全に遅刻ですが、左腕には包帯が巻かれており、昨日の事が夢では無いと伝えています。

それより、朝番を私抜きで回したとは、かなり厳しい事となったのでしょう。


自惚れではなく、単に人手が少ないからですけれど。

入って1ヶ月もしないうちに、料理人の花であるメイン料理を作らされる時点でお察しください。


取り敢えず、昨日留守電を入れた上司に電話を掛けてみましたが、生憎繋がりませんでした。

なので、私は寝坊した事と、恐らく感染してる事を留守電に入れて、電気と意識が生きている間にネトゲをやろうと決意しました。

家族にはついでとばかりに、バイオハザートが起きて感染してる事と、多分直ぐに正気が無くなるという内容を送る。

既読にならない事から、向こうでも大変なのだろう。

ああ、お父さんお母さん、先立つ不孝をお赦しくださいっとね。


さて、布団の魅力を振り払って私は起き上がると、梯子を使ってロフトから降りる。

梯子を使ってロフトに登るのって、秘密基地感あって良いよね。

夏は熱が篭って暑いだろうけれど、まだ6月。

私が引っ越してから、夏は来てないのだ。


寝るときは下着の私は、取り敢えず毎朝欠かさないラジオ体操(飛ぶのは省略してるよ)と柔軟、お腹が出るのが怖いので腹筋をする。

といっても、全国の女性を敵に回しそうだけれど、私は昔からいくら食べても太らない体質なので、縦にも横にも心配される細さだけれど。

20を超えたら代謝は落ちるので、腹筋は欠かさないのよ。


まぁ、ゾンビになっちゃったらそんな事関係無いのかも知れないけど。

というか、死後硬直でも始まってるのか身体が硬くなってるのよ。

でもゾンビもきっと、柔軟してたら柔らかい身体になるわ。

ゾンビと言えども女の子なのだよ。


朝の体操を終えた私は、姿見を見る前に歯磨きを始める。

私、休みながらじゃないと支度が出来ないタイプなのよね。

そして、歯磨きを始めて違和感を持つ。

あれ?犬歯長くない?


と言うか、犬歯だけでなく私の生まれつき整っていた歯が、全て尖ってる気がする。

噛み合わせがかなり心配だけど、寝てるときは特に問題無かったし大丈夫なのでしょう。

さて、歯磨きが終わったら顔を洗って、化粧水をつけて、保湿クリームを塗って終わり。

厨房は御化粧できないのです。

さて、長めの黒髪は1つにまとめてポニーテールにする。

会社では髪の毛をネットに入れるので、ポニーテールやお団子や、編め込むと良いけれど、毎日朝からやるにはポニーテールが楽なの。

結局女子力下がるのよね、平日は。


はー、とため息を吐いて気がついた。

あら?私肌白くない?

黄色なんて言われる日本人の私の肌は、雪な様に真っ白に、というか青白い。

ゾンビ成り立てみたい。

って、私ゾンビでした。

ゾンビニュービー。

身支度が終わったので、ダラダラ過ごす時間ですので、ようやく姿見の前に立ちました。

私のゾンビのイメージは、頰がこけて目の下が窪んでいるものでしたが、鏡の前の私は真っ白な肌に生まれつきの黒髪と、随分普通な姿見でした。

ウィルスが違うのかしら?

ただ、口を開いてみると人間よりも尖った歯に、左目は真っ赤に充血しており、そこに浮かぶ黒目は瞳孔が開いておりました。

噛まれた傷口は、赤黒い絵の具で塗りつぶした様になっていましたが、特に痛みもありません。


期待して喉や手首の血管に指を当ててみても、鼓動はさっぱり聞こえず。

けれど、指を耳に刺してみると、微かに心臓の音が聞こえた気がしました。

耳に指を入れた時の、ゴーって音も微かに。


どうやらまだ死んではいない様です。

そういうウィルスなのか、現象なのかよく分からないですが、私は腐る心配は今の所無いとみたいですね。


申し訳ありません、昨日の頭が腐ってる発言はお忘れ下さい。

まぁ、酔っ払いなんて皆んな頭が腐ってるようなものですけれど。


取り敢えず今はまだ大丈夫ですけど、昨日会社で出会った同僚の様なアーアー言うだけの、意識レベルに何時なるのか分からないのですよね。

生存者とコンタクトを取ろうにも、私既に見た目はゾンビですし、猟銃持った人や平凡な高校生、警察官辺りに殺されるでしょう。


窓の外を見てみると、私が寝ているうちに車の事故が起きていた様で、火事にならなくて良かったです。

はい、現実から目を逸らしてました。

多分寝てる時に、バイオハザートによるパニックが引き起こったのでしょう。

田舎にしては何台も、車が玉突きで止まっています。


うーむ、会社に行くべきでしょうか?

ただ、未感染の人間にあった時にどうしたら良いのか分からないし、アーアー言う人達に私が仲間と思われるかも不明です。

取り敢えず、私はペットボトルの紅茶を注ぎ、水溶性の食物繊維のパウダーを一杯入れて混ぜます。

水溶性食物繊維は、便を軟らかくしてお通じをよくするのです。

朝ごはんは、冷凍した御飯を解凍して、鰹出汁の粉と梅干し、沸かしたお湯をかけてほぐせば完成。


あー、美味しい。


モチャモチャと日本人の良さを味わう私は、ゾンビパニックによって、梅干しが食べられなくなる事を心配しました。

やだなー。

あ、歯磨きした後に物を食べるのは、寝起きは口の中に菌がいっぱい居るからなのです。

さて、食べ終わって食器を片付け、口の中をすすいで。


取り敢えず私は高校のハーフパンツ、沖縄の変なネーミングTシャツを着て準備オッケー。

自宅から出ると、お隣さんのインターホンを押しました。

引っ越してから早2ヶ月。

1度も挨拶してないのですけれど、初対面がゾンビパニックなのよね。


ホラー映画の様にゆっくりと扉が開き、頰がこけ目の下が窪んだ、ザ・ゾンビって方が顔を覗かせるました。

アーアー言いながら私を見ると、なんだ仲間かとまたアーアー言いながら、ゆっくりした足取りで部屋の中央に戻って行きました。


出待ち!?

出待ちなの!?


私は色々パニックになりましたが、解った事は2つ程。

目の前の彼の様な新鮮(?)なゾンビは、扉を開ける知能はある様です。

また、私もゾンビと認められて居る様で、襲われる可能性は低いですね。

まだ1人目のゾンビさんなので、詳しい事は要検証ですけれど。


さて、取り敢えず会社に向かいますかと、他の仲間ゾンビへの心配が下がった所で、階段を降りて一歩踏み出すと。

6月にしては強い日差しがギラギラと。


うん、辞めよ。


何故か人間の時と同じ様な体感温度に、ゾンビだから腐る心配もあるので、辞めましょう。

え?まだ鼓動あった?

忘れました、私ゾンビですから。

そもそも、何時電気が使えなくなるのか分からないので、人類の英知であるクーラーを今のうちに使うべしなんですよ。


私は部屋に戻りクーラーをかけて、蜂蜜リキュールをソーダで割って、生ハムとチーズを肴に飲んで寝た。

炭酸は胃を刺激して、食欲増進効果があります。

夏は炭酸で割って飲めば、夏バテ対策にもなるのです。

お酒って偉大よ!

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