『魔王討伐パーティを追放された吟遊詩人♀は、協奏曲の音色を紡ぐ』の設定集
「短編って言ったら4万字は長いよね……これを削って……こうして……ああっ! だめだ! ここはミークゥが可愛いから消せないよっ!! まるでオーボエのように、ユーモラスかつ欠かせない大切な部分なんだっ!! 」みたいな事を散々やった結果、元々の半分くらいで限界が来て1万2千字くらいで投稿したミークゥのお話ですが、僕が設定大好きマンだと知っている友人に色々質問されたので、削った部分や隠れた部分を少しだけ補足です。
僕と同じ嗜好を持ち、僕にドストライクな女の子「ミークゥ」のお話を気に入っていただけた方なら、ちょっとくらいは楽しめて貰えるのかなぁと思います。
というわけで、ミークゥやリリスィに特別興味がある方向けの世界設定です。蛇足とも言う。元々削っていった部分だからそういうものですな、ガッハッハッハ!(最序盤に削ったコックのおっさんの笑うシーンから抜粋)
※ 曖昧な部分や『ん?ここってわざと?』という部分で色々想像する事が好きな僕は、ミークゥのお話にもそういう所を作りました。敬称や謎のセリフ、言葉の使い方等に違和感を覚え、なんかもやもやする~と言う方向けの物になります。
ご自身の解釈で楽しみたい方、特に気になる部分がなかった方にとっては、楽しみを奪ったりしてしまう恐れがある物なので、読まずに自身の捉え方で楽しんで欲しいなぁと思います。
これを見るのがおすすめな人
・結局魔王って何だかよくわかんない
・最初から50人で行け
・魔法使いの奴、いじめてたくせに調子いいんじゃないの…………等と思った方。
おすすめじゃない人
・リリスィがここで喋ってるのってもしかして?
・あれ、魔王ってもしかして?
・ミークゥがここでこう言ってるのって、誤字? いや、それとも?
・協奏曲ってどういう物だろう、調べてみようかな………………等と思った方。
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【天使様と魔王について】
冒頭で歌われる"天使様のうた"にある天使様たちは、それぞれの仕事を放棄して各地に散りました。どこかで遊んでます。
そしてその場に唯一残った、一番腕っぷしの強かった天使が『歌を歌う天使』です。
『歌を歌う天使』は一人その場で怒り続け、いつしか『魔王』と呼ばれるまでになってしまいました(魔王城に一番近い『最後の街』の上の空で喧嘩していて、その場に一人残った、と言うのはそういう意味です)。
なので、正確に言うなら『魔王』ではなく『堕天使』です。ベタですが黒くなってます。
他の全ては『天使様』ですが、本文に"一番うでっぷしが強かった天使だけを残して"とあるように、"天使様のうた"で腕っぷしが強かった天使(現魔王)が敬称付きで呼ばれる事はありません。
これは、歌を歌い継ぐバードが曲から勝手に『何となくだけど、こいつは敬称とかいらねーよなぁ!? おぉん!?』と感じ取っているだけの事で、バード達の認識の外の本能のような物に従っているだけです。
【天使様のお手伝いで与えられた才能(略して天才と呼ばれるもの)】
他の天使様はこの地にいないだけで世界のどこかにいるので、天使様のお手伝いと呼ばれる"才能"の力は『そこそこ』でしかありません。
コックの天才でなくても、まぁまぁ美味しい料理くらいは作れます。
しかし、自分の仕事をしないどころか逆に酷い事をしている『歌を歌う天使』の代わりを務める者は、他の才能と比べてずっと強く芽吹きます。本物の天使の才能に対抗する為に、より一層天使様に近い存在になる訳です。
女神様が人々に『天使様の仕事(才能)』を与えたのは、天使様の代わりをさせる為で、
女神様が『歌を歌う才能』を与えたのは上記に加えて『喧嘩の原因となった歌を歌う天使を止める為』でもあるので、当然です。およそ2倍以上(勇者比)です。
【魔王との戦いと、選ばれた理由】
魔王バトルはソプラノ(高音のミークゥ)とバス(低音の魔王)がぶつかり合う感じの物です。
お互いが曲の主導権を取り合い、拮抗ないしソプラノが押すとバリアも剥がれます。ミークゥがいれば、普通に勝てました。
魔王は熱きガチ音楽バトルを望むので、バードがいないパーティが来た時点で相手にしていません。リリスィは完全にやる気がなかった事もあり、勇者と戦士と聖女は殺す価値すらないゴミと言われて弾き出されました。3人はリリスィを囮にして逃げたつもりでしたが、リリスィは魔王と少し喋って帰りました。
(前々代の勇者パーティに属していたエルフについての話題と、次はまともなのを連れてこいという話)
魔王の『音バリア』の事を知っていたから王国でのパーティ募集時に王様がバードを入れましたが、勇者パーティのアホアホ3人衆は理解をしていませんでした。王様に媚を売ってパーティに入れて貰う事だけが異常に上手くて、他はもうボロボロって感じの3馬鹿です。
【この世界の名前の付け方と、天才】
この世界の子供の名前は『持って生まれる物』であり、女神様が付けていると言われています。
子供が喋りだすと、いつの間にか勝手に自分の名前を言うようになり、自分で言う前に親が名前をつけて呼んでしまうと『無才』と呼ばれる何の天才でもない子になってしまいます。
(そのルールは世界のルールなので、エルフ界でも同じ)
『無才』は全ての可能性を持ちますが、大体は大成せずに表舞台から消える存在です。
バードの天才は、必ず名前の最後に『音』が一つ多く付いています。
『ミークゥ』の『ゥ』がそうです。
というわけで『ィ』のある『リリスィ』もバードの天才であり、魔法使いの天才でもある、二つの才を持つ『勇者』です。リリスィは知っていますが、言うのもばっかみたいと思っているので言いません。
エルフ界では音楽を楽しむという文化がもうないのでリリスィは歌った事がありませんが、バードの天才が持つ『音からその人の心を聞く力』でミークゥの奏でる旋律にばっかみたいに強く惹かれた、という設定でした。
ちなみに、バードの天才を持つ子の名前に『音』が多く付くという事は誰も理解していません。そういう名前の子も結構いるよね、くらいの感覚で、音が一つ多い事をバードと関連付ける事はありません。気付けない、的な感覚で。
【リリスィがミークゥにした事と、ミークゥのいびき】
リリスィが『おうおう、あたしが寝るまでばっかみたいに子守唄を歌い続けろや』と言った事。
ミークゥにあげたパンは、本当はリリスィの晩ごはんです。
お腹がペコペコだったリリスィは、ミークゥのお腹の音を責めるフリしてリリスィ自身のお腹の音をかき消したかった、という流れでした。
それと、旅の始めの頃はいつも歌っていたミークゥが、最近歌うと勇者に邪魔をされるので、久しぶりにゆっくり聞きたかった、というのもあります。あとパンをベッドに突っ込む隙を作るため。
それを知って本文を読み返すと、"生き残りたければ"とか言って凄く必死にミークゥをベッドから立たせようとしてるリリスィが見えると思います。『あんたのせいで寝れないの』という部分は、リリスィのツンデレな気持ちを沢山込めました。よければ上記をふまえてもう一度見てみてくださいね。
ツンデレというのは『別にあんたの為なんじゃじゃないんだから』というのを、もっと遠回しに言うほうが魅力的だと思う僕の好みを最大まで出した部分です。
ミークゥがお腹いっぱいで寝た後に、『ぐー』という音がミークゥの頭らへんから聞こえる度に聖女が舌打ちをしていましたが、それはリリスィのお腹の音でした。
ベッドの配置が聖女から見て、ミークゥの頭の方角にリリスィのお腹が来る配置だった為、聖女はミークゥのいびきと勘違いして後日それを責める事となります。
音に敏感なミークゥは睡眠時でも音を出していたらなんとなく判るはずなので、色々責められて頭を真っ白にさせ混乱しながらも『なんで? いびき? どうして?』と『いびき』に引っかかったのでした。
ちなみに、リリスィの口癖『ばっかみたい』は、最後のミークゥとのやり取りを除いて全て勇者達に言っています。
【吟遊詩人という天才】
心にリズムを持つのはミークゥが変わっているというだけで、他のバードは普通に喋ります。
『おはなし』を記憶し、旋律に乗せて語る人々で、歌には『高揚』や『鎮静』、『安らぎ』『悲哀』等の効果を乗せる事が出来ます。
上級のバードともなると、マーチで『悲哀』や、夜想曲で『高揚』等の曲の雰囲気と全く違う効果を呼ぶ事も出来、街角でナガレで歌ったり、大衆劇場での裏方から主役、軍隊の戦意を高揚させ後押しする等、様々な事が出来るかなり地位が高い天才です。
ミークゥの歌で人々が楽しい気持ちになるのは『ミークゥ個人の才能』で、与えられたバードの天才とは違うものです。ミークゥの歌と演奏と表情が、ただただ上手で楽しくさせる、というだけです。
エルフ界でのバードは、基本は森や精霊の声を聞いて、狩りをしたり天気を予測したりする者であり、自分で音を出すような事はありません。
女神教ではなく精霊教を信仰するエルフが、女神様の名付けのルールや天才の仕組みに従わないと生きづらい事に気付き、それでも女神教に抗おうとする意思から、エルフのバードは音を楽しむ事をずっと昔にやめた、という設定。
リリスィはそんな事どうでもいいと思っている奇特なエルフ。そういう歴史を聞いたリリスィが言ったのは当然『ばっかみたい』。
尚、精霊教が信仰する精霊はどこにでもおり、ミークゥは精霊にモテまくってます。ミークゥがお腹を空かせているのは、いつも精霊がつまみ食いをしているからです。リリスィは精霊と会話が出来るし見えているので、ミークゥのご飯がどんどん取られている事をその目で見て知っています。
ミークゥには見えていないので「いつの間にかボクのご飯が音になって消えちゃった、歌の神様の取り分になっちゃった」と悲しんでいます(ワインの『天使の取り分』の言い伝えのような感じ)。
ミークゥは少食なほうですが、そのせいでお腹を鳴らすミークゥは勇者共に大食いと思われています。
【ポーション露店のポーションを飲んだ訳】
『ふぅ~やれやれ、喉が涸れちゃった。そんな時には、このポーションさ!』
『まぁ! あんなに掠れていた声が、あのポーションを飲んだら一気に透き通るような声に戻ったわ!!』
『ボクはこのポーションで、喉は治るわお肌はツヤるわ、背も伸びたし恋人も出来たし、あと評価ポイントが1億くらい入ったしブックマークも世界人口を凌駕しました』
『買うわ!』『あたしもよ!!』『ワシもじゃ!!』
『これが、知識チート――"実演販売"かっ!?』
『……ばっかみたい』
って感じです。とにかく、効果を見せて売上を上げる為でした。露店のおじさんも理解してます。
【ひとかどの吟遊詩人】
お話はほぼ全てがミークゥの歌という設定ですが、この後を紡ぐのは他のバード達です。
他のバードが歌う時、彼らはミークゥの歩みを『知っている』ものと、ミークゥは認識します。
なので、最後の最後、歌われるものではないミークゥが『今』の行動を取る時、ひとかどの吟遊詩人 という歌詞的な表現ではなく、 ひとかどの吟遊詩人 と、強調とルビという"説明"をつけずに言っています。
『ボクは強調とルビを付けて歌ったけど、ボクの事を歌うバード達は自分の表現でボクを紹介してね』という意味であり、バードが歌を継ぐ際の伝統のようなものです。
バードには、些細な力の入れ方や言葉の言い方で
吟遊詩人と書いてバードと言っているのか
うた歌いと書いてバードと言っているのか
そのままバードと言っているのか、
を、聞き分ける力があるがゆえ、です。強調も同じ。
『一人前の女性吟遊詩人』と歌う者もいれば
『名の売れたバード』と歌う人もいる、という感じで。
もちろん、ミークゥの味を出す目的で、そのまま、ひとかどの吟遊詩人と歌う人も多くいるはずです。
あ、あと最後の最後、新生勇者パーティに入った時は、ミークゥは自信を持ったので『自慢じゃないけど』とは言わなくなっています。
ドヤ顔のミークゥが目に浮かびますね。ミークゥかわいいよぉアヘアヘ。(自分のキャラに悶える変態)
【ミークゥの呼び方】
ミークゥの人を呼ぶ敬称が不揃いと友人に言われたので、言い訳的な裏設定を。
ミークゥが『勇者さん』と呼ぶ事については、集められて紹介された時の呼称が『勇者様』『戦士さん』『聖女さん』だったものを、酷い事をされたから一段階下げて『勇者さん』『戦士』『聖女』と言うようになっただけで、勇者に特別な感情がある訳ではありません。
最低が『勇者』等の呼び捨て、良い事をされると一段階上げて『聖女さん』等と呼びます。聖女に宿屋で声をかけられた時、一時的に『聖女』から『聖女さん』になってます。どんな些細な事でも、すぐに一段上げてしまうチョロい子ミークゥ。
勇者は途中まではギリギリ『勇者さん』呼びでしたが、酒場に乗り込んで来て言い合いになった辺りから最下層の『勇者』呼びになっています。
『音階』に忠実なひとかどのバードなので、そういう所の『階』にもきっちりしているだけで、『勇者』の事はとことん嫌いです。
削り取ったミークゥの台詞に
「まるでお日様が隠れてじめじめ欝気な梅雨の時期みたいに、嫌な奴」
「からからに乾いて、リュートもボクの心も指先も、音が狂って擦り切れちゃうんだ」
というものがあり、前者が勇者、後者が聖女に対して思う予定だったものです。
リュートのような木製の楽器は湿気にも感想にも弱く、ミークゥのようなリュート弾きのうた歌いには喉や指先の問題で感想が大嫌いだから、という設定でした。
(おっと!『乾燥』と書こうとしたら『感想』になってしまった!! 感想コメントが欲しい気持ちが変換にあらわれすぎちゃってるな~こまっちゃうな~)
リュートという(僕にとっても)馴染みの薄い楽器の話になってしまうので、削っちゃいましたけど。
【パーティが5人の理由とコンチェルト】
この世界の冒険者達は、ほとんどの場合4人組です。連携が取りやすく、足並みを揃えて行動しやすい為です。色んなゲームの世界に習っての事ですが。
しかし、『魔王討伐パーティ』に関してはそうではありません。
"王様とその周囲の人々は、伝えられている伝承から『バードがいないと魔王に勝てない』事を知っている"と書いた通り、パーティにバードが一人必要になります。なので、3+バード、もしくは4+バードの編成となります。
そのように少数での旅だからこそ、色んな事が出来る器用な"勇者"が魔王討伐パーティに求められる、というだけです。
この世界でも他のゲーム等の様々な世界と同じように"魔王を倒せるのは勇者だけ"、と勘違いされがちですが、どちらかと言えば魔王の闇を払うのに必要なのはバードなので、他の物語やゲームに出てくる"魔王を討ち滅ぼす為の大事な存在"と言う意味なら、吟遊詩人です。
本来であればその人数の五重奏で魔王に挑みますが、それは旅のしやすさという所を取り払った魔王城にすぐそこという場所なら、『音』で心を繋いだ人なら誰でも何人でも一緒に行っていいのです。
ミークゥの特別に上手な歌によって、沢山の人との繋がりが出来ました。勇者たちに全ての雑用を押し付けられた結果、という嬉しい誤算でもあります。
その『音を集める事』をタイトルにして『音色を紡ぐ』と言い、ミークゥ率いる『新生魔王討伐パーティ』は50人からなるオーケストラとなって、ここで初めて『みんなで協奏曲を奏でる』と発言したのです。それ以前は、パーティで曲を奏でようとは一切言っていません。調律がなってないパーティでは、不協和音しか出ないので。
そして『協奏曲』とは、独奏楽器がいくつも集まって奏でられる曲。それぞれが出来る事をする(ソロ)人たちを集めたこのパーティで、ミークゥが音を繋いで一つの曲にして奏でる、という訳ですね。
ちなみに、街で歌ったニワトリの歌は
『コッコ、コケッコ、コケコケコッコ』と言うばか丸出しの歌詞です。
ミークゥに言わせると「歌は心でうたうのさ」(ドヤ顔)
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軽く、と言いつつ中々の重さ。プロットを書いて、肉付けして、そこで生きてる人を想像して……という流れを経て本文に取り掛かり、短編向けに余計な部分を削ぎ落とす、と言う形式なので、見えない設定がモ~リモリ貯まってしまいます。悲しき性。英雄譚には、ならないタイプのヤツ。
こんなものを見てくれるような奇特な方が居られるかはわかりませんが、そんなあなたにとって、少しでも退屈しのぎになったのなら幸いです。
基本、短編は読み切りにしたいんですけど、ミークゥが好きすぎてもっと書きたくなってしまいますね。罪な娘だぜ。