王城で
第一王子殿下の誕生日パーティーの翌日、何故か私達は国王陛下に呼び出され、いま、その国王陛下が目の前にいます。お父様が少しイラついていたのが印象的でした。
「いや〜、急に呼び出してすまないな、レオン。どうしても、噂のエレメッタ嬢を見てみたくてな。呼び出してしまった」
「…はぁ。仮にも国王陛下が。そのような軽い態度でいいのですか?」
早くもお父様はお疲れ気味です。国王陛下は随分と愉快な方のようですね。
「いいではないか。私的な呼び出しだから、ここには宰相くらいしかいないのだから。学生の頃のように戻っても。
そちらがエレメッタ嬢か。
どうだ?ウチのアランと婚約する気はないか?」
国王陛下が私の方を向いてそのようなことをおっしゃました。……いきなり過ぎませんか?
「父上!」
ここにやって来たのは、先日8歳の誕生日を迎えたばかりのアラン殿下です。
「何をしておられるのですか!?」
「おおアラン、ちょうどいいところに来た。今、エレメッタ嬢にお前との婚約を申し出たところだ」
「何をしてくれているのですか、父上!」
「お前があんなにも令嬢の話を文句以外で話すのは初めてだったのでな。息子にも春が来たかと思うと、応援の一つや二つや三つや四つしたくはなるではないか」
「そういうことを彼女の前で言わないでください。そして、応援が多いです。好きな人ができたら自分で手に入れられるよう努力しますから。応援はいりません。
エレメッタ嬢、このような父ですみません。ですが、私が貴女を好いていることは事実です。婚約の件、考えてはくださいませんか?」
(お父様、殿下はこのようなことをおっしゃっておりますけど、私は伯爵になるつもりです。そして殿下は王太子であり、王になるのだから断ってもよろしいでしょうか。というか、王族からの頼みを断ってもいいですか)
(構わないよ。僕のエレメッタを婚約者に、とはそんなことさせるわけがないじゃないか。それに、これに関してはツェーヴェルト家は特別な立場にあってね、魔物を退けられる直系の子は王族であっても他の家を継ぐ予定の者との縁談は断っても不敬罪にはならないんだよ)
(私は誰のものでもありませんが分かりました。しっかりと断らせていただきます)
「アラン殿下、私は貴方と結婚することはできませんから、婚約も無理です」
「……何故か聞いても?」
「私はもう身内の中だけでですが、ツェーヴェルト家を継ぐことが決まっています。殿下はツェーヴェルト辺境伯領について学ばれましたか?学んだのなら私が言ったのがどういう意味なのかわかるはずです。私は次期王となる貴方とは婚約も結婚もできません」
「ふっ、はははははは!キッパリと振られたな、アラン。でも腕の細いエレメッタ嬢があそこを継ぐというのはあまり考えられないな」
「……父上。王位継承権を放棄してもよろしいでしょうか?」
「もちろんだ、アラン。第一王位継承権のせいで結ばれたい者と結ばれないというのなら王族という地位など邪魔で面倒なだけだからな。王位くらい弟に譲るなり、息子をまた作るなりすれば良い」
「ありがとうございます、父上。
エレメッタ嬢私は一人の男として貴女に婚約を申し入れます。私と婚約してくれますか?」
「アラン様の優秀であるという噂が本当でしたら。ツェーヴェルト辺境伯領は危険な土地です。それでもいいのでしたら、私は貴方との婚約を承諾いたします。
ですが、人の気持ちは移ろいます。いつ、私でない人を好きになるかは分かりません。だから、まだ、王位継承権は放棄しないでください。人によっては、王位継承権を放棄したから貴方との結婚は嫌だという人もいるでしょうから」
「ありがとう、エレメッタ嬢。でも、貴方以上の人はいないから今王位継承権を放棄しても問題ないよ。私を信じてほしい」
アラン殿下は私の手の甲に口付けをして戻って行きました。




