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パーティー結成で地味チート その3

今回、主人公がやっと自分のチートさの一部を自覚します。しかし、自覚レベルが低い・・・実は鬼のような無双っぷりなのですが、余りにも短期間でその無双っぷりを発揮した為に、まだ噂は広まってません。なので、本格的に自分のチートさ加減を自覚するのはもう少し先になりそうです。

しかし、そんな主人公でも今回の目的はしっかり達成します


そんなパーティー結成編その3、はじまり、はじまり~♪

それから5日後。

「これはこれは。ようこそ、タカシ様。本日はいかがされましたでしょうか?」

俺は再びジライ商会に足を運んで、前の応接間でデューイさんと顔を合わせていた。

「お待たせしました。セレアさんを買い取りに伺いました。」


その台詞に、デューイさんがフリーズした。多分、こんなに早くに来るとは思っていなかったんだろう。

きちんと金額を用意してきた事を示す為、テーブルの上に3枚の金貨を出す。


「こ、こんなにお早くご準備いただけるとは・・・正直なところを申し上げますと、驚きを禁じ得ません。私の記憶が確かでございましたら、鉄級(アイアンクラス)の依頼は1日に3000エニー程が限界だったと思われるのですが・・・」

そうなの?街の南の方にある廃砦の食人草の退治1回で5000エニーも貰えたけど。


ちなみに、その依頼で俺の階級(クラス)(ブロンズ)になり、さらに、その次に受けた依頼、街から半日程離れた森の近くの街道に出没するオーガ討伐で15000エニーを得て、(シルバー)にまで上がっている。

どうやら、俺の戦闘力は並みではないらしい。多分、異世界召喚ファンタジーでお馴染みの何かのチートが働いているんだと思う。何せ、熟練の戦士でさえ一人で複数に囲まれたら死を覚悟するというオーガでもまるで敵ではなかったのだから。

オーガの討伐依頼は行く前には死ぬ程悩んだけど。だって、そんなの聞かされたら怖いだろ?まぁ、食人草の討伐には普通の鉄級(アイアンクラス)冒険者は複数で行くものだって言われたのが、全然苦にもならなかった時点で大丈夫なはずだと必死で自分に言い聞かせたわけですが。


でも、もうオーガの討伐には行かない!!アイツらの雄叫びはマジでビビるんだよ!!心臓に悪過ぎる!!第一、討伐証明部位が角ってなんだよ!!!メチャクチャ硬いから取るのは大変だし、取ってる間に新手が出てくるしで、エンドレスかと思ってゾッとしたぞ!!!!!

しかも、現地までがやたらと遠いし!!!ランプを持って行ってたから、なんとか道が分からなくなるような事にだけはならずに済んだけど、しんどいにも程がある!!!



まぁ、それはともかく、これでセレアさんを他の誰かに買われる事だけはなくなった。それが嫌だという一念だけで、オーガの討伐に2回も行ったから手持ちの資金もまだ1万エニー以上ある。今後の生活にも支障はない。


支払いを済ませると、デューイさんがまた手を叩き、今度は別のおじさんが出てくる。

「セレアの身仕度を整えさせて引き取りの準備を。」

「かしこまりました。旦那様。」

おじさんは指示を受けて、またすぐに出ていく。

「タカシ様。申し訳ございませんが、身仕度を整えさせる間、しばらくお待ちいただけますでしょうか?外を連れて歩かれる間に、タカシ様に恥をかかせては商売人としての面目も立ちませんので、せめて少しでも身綺麗にさせますので。」

はい?恥ですか?

セレアさんみたいな超絶美人を連れ歩いて、胸を張りまくる事こそあれ、恥になるような事なんて有り得ないと思うんだけど。まぁ、商品を持って帰ってもらう際には梱包にも気を遣うのと似たようなものなんだろう。この世界では奴隷も商品なわけだし。

「はい。特に予定もありませんので、ゆっくりさせてあげてください。」

「ありがとうございます。では、ただお待ちいただいているだけというのも時間が長く感じましょう。他の奴隷をご紹介させていただきますので、時間潰しにご覧くださいませ。」

・・・商売人だ。この人。



それから幾人もの紹介を受けるが、セレアさん以外には関心が湧かず、愛想笑いを浮かべて差し障りのない感想を応えながら時間が経つのをひたすらに待つ。


しかし、考えてみれば、奴隷というのは今抱えている俺の問題解決には最良の選択なのではないだろうか?当然、元々この世界の住人なのだから、一般常識は持っているはずだし、方向感覚についても少なくとも、俺よりはマシだろう。ならば、普段の生活でも逐一フォローしてもらう事もできるし、前みたいに迷った時にも頼りにできるかもしれない。

あぁ、でも、依頼についてきてくれるかどうかは本人の意志を確認しなきゃならないか。女性だし、戦う事が嫌かもしれないんだから。いくら命令には逆らえない立場にいるとはいえ、何事にも無理強いはしたくない。でも、奴隷である以上は暗黙の内に強制力が働きそうだよな・・・第一、望んで奴隷になったわけでもあるまいし・・・



何人目かの紹介を終えた後、先程のおじさんがやってきて、何事かをデューイさんに耳打ちをしてまた去っていく。

「大変お待たせ致しました。セレアの準備が整ったそうです。お連れしてよろしいでしょうか?」

待ってました!

「はい。お願いします。」

テンションがMAXに跳ね上がるのを必死に押し殺して、可能な限りに平静を装ってデューイさんの言葉に返答する。声のトーンが3つくらい上がっていたので、完全にバレてるだろうけど。

デューイさんが再び手を鳴らすと、セレアさんが静かに入ってきた。



うわ・・・



5日前に少し顔を見たっきりだから、正直なところ、多少なりとも脳内で美化してるだろうと思っていたんだけど、全然そんな事はなかった。何故か髪が湿っているけど、それがまた風呂上がりのような色気を加算していて、俺の美人度メーターが一気に振り切れて熱暴走気味になるくらいに綺麗だ。


「ご挨拶をさせていただきます。セレア ウィンスレットと申します。この度は私程度の者をお引き取りくださり、ありがとうございます。どのようなご意向にも応えられるよう尽力致しますので、どうぞよろしくお願い致します。」

そう言って深々とお辞儀をするセレアさん。

「あ、いえ、その、こ、こちらこそよろしくお願いします。」

おもいっきりドギマギしながら挨拶を返す俺に、何故か驚いたような表情で顔を上げるセレアさん。

「タカシ様。初めてですと慣れないのかもしれませんが、本日からセレアの主人はあなた様なのですから、そのようなお気遣いは無用ですよ。ましてや、獣人の奴隷なのですから。」

苦笑しながら言うデューイさんの言葉の一部に引っ掛かりを覚えながらも、なんとなく言及は避けておいた方がいい気がして、調子を合わせておく。

「まぁ、いずれは慣れると思いますから。」

「はい。では、早速ですが、主従の契約を結ばせていただきたいと思います。セレア、タカシ様のお側に。」

「はい。」

返事とともに、セレアさんが俺の側で跪く。

「では、始めさせていただきますが、よろしいでしょうか?」

「あ、はい。」


え?主従契約って、もしかして何か魔法チックなヤツなの?契約書にサインとかじゃなくて?

あ、そう言えば、魔術師ギルドなんかもあるんだっけ。魔法を目にする機会が全く無かったから、完全に魔法の存在を失念してた。


デューイさんが何かを呟くと、セレアさんの左胸、ちょうど心臓辺りとデューイさんの右手が繋がっている淡い光の線が現れる。それが消えたかと思ったら、次の瞬間には俺の右手とセレアさんが左胸とを結ぶ光の線が現れて、一瞬強く輝いたかと思うと消えた。

初めて目にする魔法にちょっと感動。


「これで主従契約は完了となります。この度はお買い上げ、誠にありがとうございます。次のご入り用の際にも、是非また当ジライ商会をご利用くださいませ。」

「こちらこそ、ありがとうございました。またの機会がありましたら、是非よろしくお願いします。」

次の予定もそのつもりもないけど。まぁ、社交辞令というヤツだ。今回はセレアさんが他の誰かに買われるのがどうしても我慢ならなかったからこういう事になったけど、奴隷というのはどうにも気持ちが良いものではないのだ。必死になって高い金を払ったけど、セレアさんが望むのなら、すぐにでも解放しようと思う。やはり、いくら問題の解決策に適していても、奴隷制度で強制的にというのは受け入れ切れそうにない。



デューイさんにまた見送られてジライ商会を出た後、とりあえずは宿に向かう。さすがに疲れが限界だ。昨日のオーガ討伐は新手の出現がしつこくて、街に戻ってきたら酒場すら閉まっていた時間だったし。そんな時間でも開いている冒険者ギルドは、どうやら本気で24時間営業らしい。受付の方々、お疲れ様です。


セレアさんは俺の後ろを黙ってついてきている。

うむぅ。何を話せばいいのかさっぱり分からん。年齢=彼女いない歴の女性免疫の無さを舐めるなよ。ましてや、こんな美人、どう接したらいいのかすら分からん。

でも、沈黙も辛い・・・自分を金で買ったような相手にはどう考えても良い感情を持っている筈がないもんなぁ・・・


そんな事を思いながら、セレアさんの方を少し振り向いて、ある事に気付いて立ち止まる。

「あれ?セレアさん、靴は?」

「セレアとお呼びください。ご主人様。私はご主人様の奴隷なのですから、奴隷にさん付けなど、ご主人様が周りの人に笑われてしまいます。」

「そ、そういうもんですか。」

「どうぞ敬語もお止めください。ご主人様に恥をかかせるわけには参りません。お願い致します。」

そう言って頭を下げるセレアさ・・・セレア。

「わかったよ。だから、頭を上げてくれ。どうにもこういうのには慣れないんだ。」

頭を掻きながら言うと、とりあえず頭を上げてくれるセレアさ・・・あぁ~っ!もう!いきなり女の子を呼び捨てとか、ハードル高いんだよ!

とはいえ、そんな事を言っても困らせてしまうだけだろうから頑張るけど。


「それで、靴は?」

「生憎ですが、持っておりません。しかし」

「え?マジ?ごめん、気付かなかった。足、ここまで痛かったろ?宿に戻る前に買いに行こう。」

セレアは何故かきょとんとした顔をして、それから慌てたように両手を振りながら言葉を紡ぐ。

「い、いえっ!そんなっ、勿体無い!狼人族は人間族よりも体が丈夫にできていますから、どうかお気遣いなく。」

「靴を履く習慣がなかったりする?」

「え・・・あ、いえ、そういうわけではありませんが・・・」

「じゃ、行こう。悪いけど、靴屋までだけ我慢してくれな。」

「あ、は、はい。」

戸惑い顔ではあったけれど、首肯してくれたので、靴屋に向かって歩き出す。

「あ、あの・・・」

「ん?どうかした?」

「本当によろしいのでしょうか?まだ何の働きもしておらず、お役に立てるかどうかも・・・いっ、いえっ!勿論、お役に立てるように全力を尽くすつもりではありますが!」

「いやいや、役に立つとかそんなの関係無いよ。裸足のままは痛いだろ?そのまま我慢させてるなんて有り得ないって。ましてや、綺麗な女の子なら尚更だ。」

ボッとセレアの顔が赤くなり、俯いてしまう。

おぅ・・・つい本音が・・・面と向かって綺麗とか恥ずかしい。

「き、綺麗だなんて、そ、そんな・・・え、えと・・・その・・・」

赤くなりながら上目使いでモジモジとか、破壊力半端ねぇぇぇぇぇっ!何、この可愛い生き物!!俺を萌え死にさせるつもりですか!?澄まし顔は綺麗だけど、表情が変わると可愛さが留まる所を知らない!!

ようやくパーティーメンバーの第1号が物語に本格登場しました。


今回の話でも新しい能力は発動してません。勿論、モンスター討伐時には【全能力向上】が発動しております。この能力の説明は字面から想像していただくか、《初依頼で無自覚チート》の後書きをご参照ください。


ブックマークしてくださった方が増えたのが嬉しくて筆が進みまくり、一気に2話投稿できました。相変わらず、物語の展開は遅いですが、また次回もお付き合いいただければ幸いです。どうぞよろしくお願い致します。


2016/4/9 本文の一部を修正しました。

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