パーティー結成で地味チート その2
今回、主人公が本気を出す事を決意します。
本気を出す気になった理由は、ある意味男なら当然とも言える、しかし限りなく単純なものです。
男性からの共感が得られたら嬉しいなぁという作者の願望はともかくとして、パーティー結成編その2、はじまり、はじまり~♪
少しの間、異常に評価の高い誤解をなんとか解こうとしてみたが、諦めた。どう言っても謙遜として取られる上に、やたらと評価が上がっていってしまうからだ。
まぁ、相手は商売人なわけだから、9割くらいはお世辞だと思うけど。と言うか、お世辞であってほしい。誉め殺しにされると、むず痒くて堪らない。
デューイさんがそんな噂を知っているのは、商売柄、冒険者や金持ちの動向には常に気を配っているからだそうだ。まぁ、客を捕まえるのには情報が命という事なんだろう。元の世界では販売職をやっていたから、それはなんとなく分かる。顧客のニーズに合わせた展開と訴求というのは商売の基本だ。
「おっと、お茶も出さずに長々と話し込んでしまいましたね。失礼致しました。」
そう言って、奥の扉に向かってパンパンと手を叩くと、静かに扉が開き、一人の女性が入ってきて俺とデューイさんにお茶を煎れてくれる。
しかも、ただの女性ではない。ファンタジー世界ではお馴染みの獣人だ。
それも、なんというか・・・
超・絶・美・人!!!!
こんな美人、初めて見た。それに、ちょっと垂れた耳が限りなくキュート。
さらに、胸も大きい。巨乳だ。すっごい良い匂いもする。
我知らず見惚れていると、にこっと柔らかく微笑まれた。
一気に顔が熱くなり、思わず目を逸らして俯いてしまう。
い、いかん、なんかもういっぱいいっぱいだ。
超絶美人の獣人さんが部屋を退出して
「お気に召していただけましたか?」
と、デューイさんから声を掛けられて、やっと我に返る。
「え、ええ。物凄く綺麗な方ですね。」
正直な感想が漏れる。って、お気に召したかって、あの人も奴隷!?
「ありがとうございます。彼女はまだ入ったばかりなのですが、非常に従順で物覚えも良く、またご覧の通り、狼人族ですので動きが素早く戦闘時の戦力としてもご期待いただけます。」
戦えるのか、あんな美人なのに。
「あと、性奴隷として主人に仕える事も明言しております。当然、処女ですので、ご病気等の心配もございません。」
「ブッ!?」
思わず、少しお茶を吹いてしまった。
今、性奴隷って言ったか!?
「あぁ、申し訳ございません。ご説明がまだでした。奴隷が初めての方はよく驚かれるのですが、当商会の奴隷は性奴隷としての契約も明言させております。美しい容姿の奴隷は主人となる方の寵愛を受ける事が多い反面、狡賢い者ですと体の関係を匂わせながら取り入りつつも、一線を越えさせないように立ち振舞う者もいるものでして、そういった不都合が出ないようにとの対策でございます。」
「は、はぁ。」
なんとも間抜けな返答しかできない。衝撃が強過ぎた。
あんな美人が・・・・
その後、デューイさんからされた奴隷についての他の説明はこんな感じだ。
・主従の契約を結ぶ事で、その奴隷は主人の所有物となる。
・奴隷の所有物は主人の物となる。
・奴隷は命令された事には逆らう事はできない。逆らった場合、契約の証である呪印から強烈な苦痛を発せられる事になり、命令の重要度や奴隷自身の態度によっては死に至る場合もある。
・奴隷に関する税金は主人に支払い義務があり、支払いができなかった場合は契約が解除され、奴隷はの所有権は販売元に戻ることになる。税金は、季節毎に1万エニーずつ。
・奴隷の生活における最低限の衣食住は主人が保証しなければならない。
・奴隷を無意味に傷付ける事は禁止されている。
・主人から奴隷契約を解放する事で、奴隷はその身分から解放される事ができる。また、主人の死亡時における第三者への譲渡予定契約も可能。譲渡以外に、解放予定契約も可能であるが、それらは一般的ではない。危険な所には奴隷を先行させる事が普通なので、奴隷の方が死亡率が高いからだそうだ。
思った程には奴隷の扱いは酷くはなさそうだけど、それでもやっぱりなんだかなぁ。
それに、奴隷っていう身分から解放って事が可能なら、逆になんで奴隷なんて身分に落ちる事があるんだろうか?さっきの彼女は入ったばかりって話だった事から考えると、その前は奴隷じゃなかったって事だろうし。
奴隷制度が当たり前のこの世界の中では常識なのかもしれないから、迂闊に、どういう事があったら奴隷に落ちるんですか?なんて聞けないけど、気になる。
それから、10人程の奴隷を紹介された。男女それぞれ、年齢も15歳くらいの子から20代中盤くらいまでいろんな人がいたけど、超絶美人の獣人さん以上に魅力のある人はいなかった。と言うか、頭の中が彼女でほぼ埋まっている。うわぁ、やだなぁ。あの人が他の奴に買われて、しかも、野郎が買い手だったら・・・・
全力を以て阻止したい!!!!!!
しかし、先立つものがないとどうしようもない。彼女の売価だけまだ言われていないが、紹介された10人の男女の平均売価は50万エニー。かなり失礼な言い草だが、彼女を見る前だったら間違いなくインパクト大だったであろうかなりの美人さんでも75万エニーというんだから、彼女の売価は桁が違うかもしれない。
「いかがでしょうか?」
「そうですね・・・」
やっぱりダメ元で彼女の売価を聞いてみよう。高かったらすぐには買い手も付かないかもしれないし、それならチャンスはあるかもしれない。
「最初の獣人の女性のお値段はおいくらですか?」
「あぁ、彼女は5万エニーとなります。」
はい?5万?50万でも500万でもなく?
「やはり初めの奴隷としては獣人をお選びになられましたか。いえ、これは試すような真似をして申し訳ございません。奴隷に関する知識を全くお持ちではなかったにもかかわらず、ご慧眼恐れ入りました。やはり、噂は伊達ではございませんな。」
えーと・・・なんかまた勝手に評価が上がってるみたいなんだけど、何故に?
「非礼をお詫び致しまして、3万エニーでご提供させていただきたいと愚考致しますが、いかがでしょうか?勿論、持ち合わせが不足されているようでございましたら、10日間は売約済扱いでお取り置きさせていただきます。」
値段下がった!?しかも、喋り方がさらに丁寧になってる!?何が起こった!?
理由はさっぱり分からない。だがしかし、しかしである。
これは願ってもないチャンスだ!!
「そうですね。では、申し訳ないですが、少し手持ちが足りませんので、取り置きをお願いさせていただけますか?必ず10日以内にお伺いします。」
「ありがとうございます。心よりお待ち申し上げます。」
デューイさんに見送られてジライ商会を出た俺は、そのまま冒険者ギルドに足を向ける。
奴隷にはまだ抵抗はある。あるけれども、彼女、セレアさんというらしい、を他の誰かに買われる方がもっと断然ブッチギリで嫌だ。値段が何故か下がってチャンスではあるけれども、それでも10日間で3万エニーというのは途方もない。少なくとも、木級の依頼であるゴブリン退治程度ではまず間に合わない。何せ、1日平均1500エニーくらいしか稼げていないのだ。10日で3万というなら、単純計算で今の倍は稼がないといけない。
鉄級の依頼はどれだけ危険性が上がるのか分からないし、今までは依頼の難易度を上げてまで収入を増やす必要もなかったから、鉄級の依頼を受けるつもりはなかった。褒賞金の受け取りに行く度に受付の人から勧められても断っていたのだ。
しかし、そんな事は言ってられない。鉄級で1番報酬が高くて効率の良い依頼を受けるしかない。いや、チャンスがあるなら、昇級を狙って、さらに上の依頼を受けてもいい。命の危険が高過ぎたらさすがに止めておくけど。無理に一時的に稼いで、その後、動けなくなって稼げませんでしたなんて事になったり、ましてや死んだりしたら本末転倒もいいところだからな。
アンナちゃん、ごめん。恩返しは少し先延ばしになりそうだ。
今回の話では新しい能力は発動してません。むしろ、何の能力も発動してません。この世界の常識を知らない主人公の単純な思考と言動をデューイが深読みしてプラスの方向に誤解しているだけです。何をどう誤解しているのかは、パーティー結成編の途中で明らかになります。
ブックマークしてくださっている方がまた増えました♪感謝感激です。嬉し過ぎて、睡眠時間が削れるくらいに筆が調子良く進みまくってます。本当にありがとうございます。
次回もまたお付き合いいただければ幸いです。是非ともよろしくお願い致します。
2016/4/9 本文の一部を修正しました。




