古代遺跡 ヴェルデ・パレス ~帰還編~
今回は甘味料過剰注意な感じの話です。
第三章 第三十二部<古代遺跡 ヴェルデ・パレス ~帰還編~>是非最後までお付き合いくださいませ。
そして、翌早朝、俺達は街への道をまた戻り始めた。
昨日の夜はジェラルリードちゃんにはしっかり休んでもらっている。本人は問題無いと夜の見張り番をしたがったけど、俺が強制的に寝かせた。
「あんたって過保護よねぇ。分かっちゃいたけど。」
隣を歩くジェラルリードちゃんが嬉しそうに笑いながらも、呆れたように言ってきた。
「うるせ。心配掛けまくった奴が言うな。」
「う・・・それを言われると・・・」
シュンとなるジェラルリードちゃん。
「まぁまぁ。タカシ様。」
「当分はコレでイジメてやる。」
俺の言葉に、くすくすと笑うセレア達。
何だよ?皆して妙に暖かい視線で笑いやがって。照れ隠しだってのは自覚してるっての。
「ところで、ジェラルリードさん。昨日、真祖吸血鬼の頃と感覚が違っていると仰っていましたが、どのような違いなのでしょうか?」
「あぁ。そうね。口で言うのは難しいんだけど・・・とりあえず、体は重いかしら。真祖吸血鬼の頃みたいな速さじゃ動けそうもないわ。感覚的には半分くらいっぽいかしら?あと、力も出ない感じ。前までは片手であれくらいの木なら引っこ抜けたけど、今はもう無理ね。」
セレアの問いに答えてジェラルリードちゃんが指差した木は、幹の太さがかなりの太さの大木。俺が2人でようやく囲めるくらい。
それ、人間族なら当たり前です。むしろ、それができてたら、人に戻ったとは言わないと思う。
「あとは、やっぱり固有能力は無くなってるっぽいわ。無言で魔法は発動できないし、霧にもなれないし、変身も無理。その辺の感覚がスッポリ抜け落ちてるもん。」
手を開いたり握ったりしながら言うジェラルリードちゃん。
だから、それも人間族なら以下同文。
「あとは、なんて言うのかしら・・・暖かさとか冷たさとか、そういうのは前よりしっかり感じられるようになったわ。今の感覚と比べたら、前は厚目の布越しに触ってたような感じだったわね。でも、その代わりに視覚も聴覚も落ちちゃった。前は耳を澄ましたら細かい音も全部聞き分けられてたし。」
「なるほど。五感は普通の人間族と同じくらいになったと考えた方が良さそうですね。」
「そうね。注意するわ。ありがとね。セレア。」
「あ、いいえ。そんな・・・」
「ホンット、あんたって気配りが細かいわねぇ。そういうトコに惚れてんの?タカシは。」
「ブフゥッ!?」
予想外なトコで予想外な振りがきて、思わず吹き出してしまう俺と、真っ赤になってしまうセレア。
「おまっ!?急にそういう事を言うんじゃないっ!!ハズイにも程があるぞっ!!」
「あ、否定しないんだ。」
「う・・・」
言葉に詰まって、急激に顔が熱くなってくる。それを見たセレアは耳をペタンとして、尻尾をぐるぐると大きく振りまくっている。
「ふ、普通のつもりだったんですけれど・・ご主人様に喜んでもらえていると、とても嬉しいです。」
「ん、んん。だから、セレアはもっと我儘になって甘えてきていいって言ってんだよ。」
「はいっ。」
セレアはこの上なく嬉しそうに、俺に肩を寄せてくる。それを見たリア達がジト目でジェラルリードちゃんを見る。
「ジェラルリードさん。お願いですから、セレアさんの援護はしないでください。そうでなくても、タカシ様は特にセレアさんにはデレデレなんですから。」
「そうだよぉ。割り込めない感じになっちゃうしぃ~。」
「ただでさえ、あたしは出遅れ気味なんですよぉ?そろそろ泣きますよぉ?」
「アハハ・・・ごめんごめん。まさか、即行でこんな甘い空気撒き散らしてくれるとは思ってなかったから。」
大いにほっといてくれ。大体、リア達にも充分以上にデレまくってるっての。
「! 敵が近付いています。」
セレアの耳がピンッと立って、声も表情も引き締まる。と言うか、若干怒ってる。
邪魔だもんね。ウザイって気持ちはよく分かる。俺もちょっとイラッときたし。
「どっち?」
「右前方です。まだ距離はありますが。」
「おっけー。≪光よ。我が望むものを映し出せ。≫」
「へ?」
「≪滅びの風よ。我が敵を塵と化せ。≫」
遺跡に向かっていた時と同じように、離れた所から風が吹き荒れる音がする。俺達はその音を聞きながら、唖然としてしまう。
「よっし。どう?全部退治できた筈だけど。」
「あ、は、はいっ。臭いが無くなりました・・・」
半ば信じられないといった口調で答えるセレア。
「ジェ、ジェラルリードさん?まさか、魔力は・・・」
「ええ。どうやら、昔聞いた話の通り、真祖吸血鬼から人に戻っても魔力はそのままみたいよ。魔力操作も同じ感じでいけそうね。」
戸惑い100%のリアに、軽い口調で答えるジェラルリードちゃん。
マジか。それ、大概チートじゃね?いやまぁ、ここに至るまでの流れにリスクが大き過ぎるけど。
「タ、タカシ様以外の人間族に魔法で負けちゃうなんて・・・」
ガックリと肩を落とすリア。
「まぁ、ある意味ここだけは人間族の範疇を越えてるから、それは気にしないでよ。禁呪の結果だからね。」
「・・はい・・・」
「そんなに気にするなって。リアの事は魔法だけで頼りにしてるんじゃないんだから。」
言いながらリアの頭を撫でると、リアは一気に表情を明るくする。
「はいっ。」
「・・なるほど・・・人間族に魔法で負けたってより、タカシの役に立てるかどうかが1番の問題なのね・・・・」
「それはそうですよ。これまで、私達の中で魔法だけは私が1番でしたから、その面でタカシ様にご負担を掛けないようにできるのも私だけだったんですから。」
「リアさんがモンスターを一掃する時は凄まじいもんね。本気で一瞬だし。」
「数が多い時は、ですけどね。少数の時はシャーネさん達の羽根弾丸の方が向いてますし、単独時はセレアさんにお任せした方が早いですから。」
シャーネの言葉に、現実的な答えを返すリア。
「森の中の敵じゃなかったら、あたし達で全部先に見つけて、空から羽根弾丸で蹴散らすんだけどなぁ。」
「それは危ないから止めなさいっての。空に向かって攻撃する奴もいるんだから。」
「はぁい。」
やたらと先行したがるシャーネの言葉に注意を促しておく。シャーネは若干不満そうだけど。
本当にこいつらは何が何でも俺を前線に立たせたくないらしい。完全に俺抜きの陣形が完成し切ってしまってる。俺も出番が欲しいんですが。
「ふぅん・・・全くタカシに出番あげる気ナシなのねぇ・・・分かる気はするけど。」
何故に分かる?俺がチート発動でそれなりに強いのは遺跡で分かった筈ですよね?
「いいえ。私達で手に余る場合は、必ずご主人様に助けを求めますよ?お約束していますから。」
「約束?」
「はい。何があっても生きて、一生お側でご主人様をお守りするとお約束しています。」
「私もです。」
「うぅ~・・・あたしはまだそんな約束してない・・・・あっ、主様っ。あ、あたしも約束させてくださいっ。」
「主さまぁ。あたしもぉ。」
涙目で懇願してくるシャーネとシャーン。
何故にこの子達もこんなに可愛い!?これこそチートじゃないのか!?
「ん、んん。そうだな。ムチャをされても本気で困るし。」
照れくさ過ぎて、後頭部をガリガリと掻いてしまう。
「何があっても絶対に命を懸けたりしないで、生きて一生守り続けてくれるか?シャーネ。シャーン。」
「「はいっ。」」
「ぜ、絶対に一生側で主様を守り続けますっ!!!」
「絶対絶対ぜぇ~ったいっ!!一生約束守るですっ!!!!」
メチャクチャ嬉しそうに真っ赤になりながら約束してくれるシャーネとシャーン。
いやもう、マジで愛らしいにも程があるからっ。シャーネッ。おもいっきり照れながら言うんじゃないっ。シャーンも、赤くなりながらそんなに嬉しそうにしないのっ。姉妹揃って、可愛さの破壊力がとんでもないんだよっ。
「・・・ねぇ?タカシ?」
クイクイと俺の服の裾を引っ張ってくるジェラルリードちゃん。
「ん?」
「ん~と・・・そ、その約束って、まだ増えてもだいじょぶ?」
「へ?」
ジェラルリードちゃんは耳まで真っ赤になってしまっている。
「なっ、何よっ!?べっ、別に奴隷じゃなきゃダメって事ないでしょ!?」
「う、うん。」
「じゃっ、じゃあ・・・いい?」
ジェラルリードちゃんは上目遣いで言ってくる。
え?マジで?いや、メチャクチャ嬉しいんだけど、奴隷じゃない子とこういうのってセレア達的にはどうなんだ?
「俺は凄く嬉しいんだけど・・・セレア達は構わない、か?」
「? はい。ご主人様がジェラルリードさんを大切に思われているのは重々承知していますから。」
キョトンとした顔でサラッと答えるセレア。
「そうですね。タカシ様が嬉しいんでしたら、何も問題ないかと思いますよ?」
「うん。でも、なんでそんな事聞くです?主さま?」
「あ、もしかして、ジェラルリードさんが奴隷じゃないから、ですか?」
「お、おう。そんなあっさり頷いてくれるとは思わなかった。順番とかメチャクチャ気にしてるし。」
「勿論、ご主人様を1番お慕いしているのは絶対に私です。それは例え、ジェラルリードさんであっても他の誰であっても譲れません。」
セレアはやたらと嬉しい事を胸を張って言い切ってくる。
「そ、それに・・・」
真っ赤になって俯きながらもじもじするセレア。
うわぁ・・・・セレアがこんな風に照れてるのって珍しい・・・何、この可愛さと愛くるしさっ。今すぐ抱き締めたいっ!くそぅ・・・道中でなけりゃ・・・・
「その・・・ご、ご主人様はきっと他の誰を愛されても、きっと私の事も可愛がってくださると、えと、あの・・・し、信じています、から。」
上目遣いで、そう言葉を続けるセレアに、思わずおもいきり抱き締めてしまう。
無ぅぅ理ぃぃぃぃぃっ!!!!こんな愛くるしさと愛しさを炸裂させてくる子を抱き締めるのを我慢するとか、絶対に無理っっ!!!!
「ご、ご主人様?」
「もぉ、マジで可愛過ぎるからっ。構うなって言われても、絶対に無理っ!!!自重できんっ!!!」
俺の言葉に、セレアは腕の中で脱力してしまい、俺に寄り掛かるように抱き締め返してくる。
「はい・・・ご主人様に、ずっと、ずっとずっと、一生構っていただきたいです・・・セレアの幸せはご主人様に構っていただく事です・・・」
言いながら、セレアは俺の胸に頬を擦り寄せる。
胸当が死ぬ程邪魔だっ!!!やっぱり防具はいらんぞっ!!!
「・・・ちょっとぉ。あたしの事、ほっとかないでよぉ。さすがに泣くわよぉ?」
若干涙声のジェラルリードちゃんの言葉に、俺達はハッとなって離れて真っ赤になってしまう。
「ご、ごめんごめん。そういうつもりじゃなかったんだけど・・・」
「分かってるけどさぁ。セレア達の気持ちを考えるのはさぁ。」
「・・・ね?タカシ様は特にセレアさんにはデレデレでしょう?」
「うん・・・よく分かった・・・セレアってば、ここぞって時の愛情表現に全力で加減が全くないわけだ。しかも、タカシが1番喜ぶやり方で・・・」
「ご主人様に1番喜んでもらえるやり方ですかっ!?どのような方法が1番喜んでいただけるんでしょうか!?」
セレアが食い気味にジェラルリードちゃんに迫る。
「うわぁ・・・無自覚にやってるわけか、これ・・・」
「え?」
呆れ気味のジェラルリードちゃんの言葉に、キョトンとするセレア。
「そりゃ、敵わない筈だわ・・・」
「そうなんですよぅ。」
「え?え?」
ジェラルリードちゃんとリアの脱力した様子に、意味がよく分かっていないらしく、オロオロするセレア。
セレアは計算できるような性格じゃないからなぁ。それがまた可愛いわけですが。
「セレアは気にしなくていいよ。自然体のセレアが俺は1番好きだからさ。」
「はっ、はいっ!!!」
真っ赤になりながら、耳を垂れさせて尻尾をぐるぐると振り回すセレア。
でも、これは絶対に狙ってやってる!!だって、毎度毎度、可愛過ぎなんてモンじゃないんだぞ!?耳を垂れさせて嬉しそうにするのは反則だっ!!!
「もうっ!セレアにばっかデレデレしてないで、あたしの事も忘れないでよっ!!」
言いながら、ジェラルリードちゃんは俺の耳を引っ張ってくる。
「イデデッ。ご、ごめんって。忘れてないよ。」
ジェラルリードちゃんの頭を撫でて宥めてみると、また赤くなりながら小さくなるジェラルリードちゃん。
「こ、こいつ・・・こんなのズルイ・・・」
「そうか?」
「そうよっ。もうっ。ホラッ!あたしにも約束させてよっ!タカシの側で一生タカシを守ってくってっ!!」
「こら。1番大切なトコが抜けてるぞ。」
「え?」
キョトンとして俺を見上げるジェラルリードちゃん。
「何があっても生きて、一生俺を側で守り続けてくれるか?」
ジェラルリードちゃんはボッという音が聞こえそうな勢いで全身真っ赤になってしまう。
「は・・・はい・・・約束、しましゅ・・・」
俯きながら、声がか細くなりながらも言うジェラルリードちゃん。それをポ~っと見つめるセレア達。
そういう顔で見ないでいただけませんでしょうかっ!?我ながらキザ過ぎたと反省してんだからっ!!ジェラルリードちゃんも照れ過ぎだっ!!こういうのはイケメン主人公しか、本来は言っちゃダメなセリフなんだぞ!?俺がこんな事言ったら、元の世界なら絶対に空き缶とか石とかぶつけられまくってんだからっ!!
それから、街までの道程は行きよりもさらに順調だった。テンションMAXなセレア達に、出現したモンスター達は紙切れの如く蹴散らされていったのだ。
いや、あの・・・喜んでくれるのは物凄く嬉しいんですが、何故にリアまで?今回、リアの事をあんまり構えてなくて可哀想な事したかなって思ってたんだけど・・・まぁ、ヤケクソとかじゃなくて、ホントに喜んでくれてるみたいだからいいんだけど。
そして、その日の夕方にルウィーナスに到着。
宿に戻って夕食を済ませたら、セレアとリアの誘惑で即行開戦。
ジェラルリードちゃんはメチャクチャ恥ずかしがってたけど、初めての痛みはほとんどなかったみたいで、2連戦目からもセレア達に対抗するように、避妊の魔法を使って即参戦。朝までコースになったのは言うまでもないだろう。
しかし、やっぱりベッドが狭い。次から、広いベッドってのが風呂に加えて、宿屋の必須条件だなぁ。
ジェラルリードちゃんが完全にデレました。元より、彼女が人間に戻りたかった理由は主人公でしたからね。
そして、セレアのデレ具合にさらに加速がかかっています。これは主人公のセレアに対する気持ちに、セレア自身が自信を持ててきたのが原因です。セレアが示した主人公への理解と覚悟、そして、主人公がそれを受け入れた事で自信がついたんです。もし、禁呪行使時に主人公が<自分が死んでも生きて幸せに> と望んでいたら、この自信は生まれなかったでしょう。
そして、それはリア達も同じです。形は違えど、切羽詰まった状況で本心を曝け出し、受け入れ合ったのですから。
ちなみに、いまいちイチャイチャの中心に来れないリアのテンションが高かったのは、構ってあげられていないと感じた主人公が少し気を回したからです。それだけでも充分に嬉しく感じてしまう可愛い子なんです。
では、これにて第三章 第三十二部の幕を下ろさせていただきます。最後までお付き合いいただいた皆様に感謝です。また次もお付き合いいただければ幸いです。




