古代遺跡 ヴェルデ・パレス ~常識外の魔法編~
主人公が初めて積極的に、かつ自覚的にチートっぷりを発揮します。
第三章 第二十九部<古代遺跡 ヴェルデ・パレス ~常識外の魔法編~>是非最後までお付き合いくださいませ。
ジェラルリードちゃんの先導の下、俺達は遺跡内の広い空間のある場所に移動した。奥の一段高い所に、何か低い台のような物が置いてある。
なんか、どことなくだけど、雰囲気が玉座の間っぽい。あの腐れ国王のがいた場所に似ているのだ。
「なぁ?ここって、もしかして玉座の間とかなのか?」
「あら?分かる?もうこんなにボロボロなのに。」
そう言って、ジェラルリードちゃんは部屋をくるりと体を回して見渡す。
「国王のいた場所に雰囲気がなんとなく似てる気がしてな。」
「そっか。」
「まるで、ここが玉座の間だと以前からご存知だったように聞こえるのは、私の気のせいでしょうか?」
「いいえ。セレア。当たりよ。知ってるわ。ここがあたしの故郷だもん。」
「「「「「え!?」」」」」
俺達の驚きの声が一斉に上がる。
「あはは。まぁ、故郷って言っても、もう2500年以上も前の話だし、さすがにもう感慨も感傷も湧かないけどね。不思議に思わなかった?他の人種族が見つける前にあたしがここを知ってた事を。」
「あ・・・言われてみれば確かにな・・・・」
「でもまぁ、さすがに宝物殿の方は出入りした事が無かったから、罠のある場所とかなんて知らなかったし、ましてや、解除装置があるなんて考えもしなかったけどね。全部魔法で制御してるもんだとばっかり思ってたから。」
「道理で、迷いなく先に進まれるわけですね。てっきり、遠話の腕輪を回収された際に踏破されていたからだとばかり思っていたんですけど。」
納得したように頷きながら言うリア。
「あ、それじゃあ、ここにある物を勝手に持っていかれてるのって、腹立たしいんじゃないんですか?」
「全然よ。別にあたしの物ってわけでもなかったし。」
「ジェラルリードさんって、もしかしてお姫様なの?」
「まぁ、大昔にはそう呼ばれてたかしらね。」
シャーネの問いにはあっけらかんと答えたのに対して、シャーンには苦笑混じりに答えるジェラルリードちゃん。
「姫ねぇ・・・なんか、スッゲェじゃじゃ馬姫なイメージしか湧かないんだけど。」
「失礼ねっ!誰がじゃじゃ馬よっ!・・・まぁ、清楚可憐なお姫様ではなかったのは認めるけど。」
「だろうなぁ。ま、それはともかくとして、ここで本題に入ってもいいのか?」
「ん、んん。まぁ、ここには守護者も入ってこない筈だし、場所としてはいいんだけど・・・怒んないでよ?」
改めて念押ししてくるジェラルリードちゃん。目が結構真剣だったりする。
どれだけ怒られたのがショックだったんだ。まぁ、元姫さんってのなら、怒鳴られるような経験はなくても無理ないか。
「分かったっての。少なくとも、もう怒鳴らないから。さっきのは悪かったよ。大人げなかった。」
言いながらジェラルリードちゃんの頭を撫でると、不満そうに俺を見上げてくる。
「・・・・あたしの方が年上なのに。」
「見た目年齢は俺が最年長だ。で?さっきリアが言いかけてた事を考えたら、人間に戻る方法ってのは相当にムチャっぽいんだけど?」
「う・・・」
俯くジェラルリードちゃん。
「リア?」
「あ、はい。複数の遺跡を動かす程の魔力を必要とする魔法なんて、禁呪として伝えられているもの以外にはありません。ジェラルリードさんがご存知だっていう事は、その時代の魔法なのだと思いますけど、成功率は高くない筈です。いくら魔力操作に長けている真祖吸血鬼とはいえ、絶対に危険過ぎます。」
「う、うぅ~・・・」
リアの説明に、呻き声を上げながらリアを恨みがましそうに睨むジェラルリードちゃん。説明が間違ってないという証拠だ。
「それ、失敗したらどうなるんだ?魔核の魔力を使うんなら、魔力欠乏にはならないだろ?」
「・・・・多分・・・・・跡形もなく、消えちゃう、かな。」
「は?マジでか?」
「う、うん。魔力を制御できなきゃ、暴走して弾け飛ぶだろうから。」
「・・・なんでそんな危険を犯してまで、人間に戻ろうなんて考えたんだ?」
声が自然と低くなってしまい、ジェラルリードちゃんは顔を引き攣らせて、僅かに後退りをして俺から離れる。
「だ、だってぇ・・・」
「だって、何?」
俺の問いに、ジェラルリードちゃんは俯いて、胸の前で手をもじもじさせる。
「・・・・それなら、タカシ達とずっと一緒にいられるかなぁって・・・」
「へ?」
「い、今は真祖吸血鬼だから街の中を一緒に歩けないし、ずっとこうして旅したりもできないじゃないっ!」
真っ赤になりながら、ヤケクソ気味に言い放つジェラルリードちゃんの意外な答えに、思わずポカンとなってしまう俺。
「・・・それに、怖がられる事もなくなるかなって思ってた。いくら平気そうにしてても、ちょっとくらいは怖がられてると思ってたし・・・・」
ジェラルリードちゃんが続けて言った言葉に、こめかみが引き攣る。
「そっ、それはあたしの思い過ごしだったって今はもう分かってるけどっ!!!!さっきおもいっきり怒鳴られたからっ!!!」
俺の怒りを察したのか、大慌てで2つ目の理由を全否定するジェラルリードちゃん。
うん。まぁ、もう分かってるんなら良しとしとこう。
「・・・・真祖吸血鬼に怒られるのを怖がられる人間族って、絶対に主さまだけだよね・・・」
「うん。もう主様のやる事とか言う事でビックリするの、やめよーね。セレアさん達の言う通り、何もかもが規格外なんだから。これから先も絶対に。」
「うん。そうする。」
双子達から何やらド失礼な事を言われてる気がするし、それに対して、セレアとリアが揃って首肯してる気がするけど、スルー。
限りなく釈然としないけど、ツッコんだら負けだ。ホントにもう、なんだかなぁって感じだなぁ。
「・・・え~、それはそうとして、どうしても人間に戻りたい?」
「そうしなきゃ、できないじゃない。旅を一緒にするのも、街を一緒に歩くのも・・・変身能力にだって限界があるんだから。」
つまり、変身能力だけじゃずっと一緒にってわけにはいかないのが嫌だって事か。
これは参った。こういう理由じゃ、問答無用に否定もできない。かと言って、ジェラルリードちゃんの存在が危うくなる方法を容認もできない。と言うか、絶対にしたくない。それなら、街中がパニックになろうが周りが怯えようが完全無視でジェラルリードちゃんと常に行動を共にした方がいい。
とは言え、それも現実的な話じゃない。真祖吸血鬼が街中に出現したとなれば、間違いなく大規模な混乱が起きて、無関係な人に被害が出てしまうかもしれないし、討伐隊にだって狙われる事にもなるだろう。それでジェラルリードちゃんがどうこうなるってのは考えにくいけど、絶対に無いとも言い切れない。
何せ、俺と一緒に召喚された勇者認定異世界人がいるのだ。俺にチートが発動していて、彼にはしていないと考えるのはあまりにも都合が良過ぎる考え方だ。むしろ、勇者認定された彼の方が俺より遥かにチートだと考える方が自然だろう。なにしろ、昔の勇者は国を壊滅させるような化物だったって言うんだから。
「・・・・その魔法って、成功率はどんなもんなんだ?」
「・・・分からないわよ。そんなの。」
「へ?」
「仕方ないじゃない。実際にこの魔法を使った奴なんていないんだから。」
「あぁ。そっか。魔核なんてレアアイテムがなけりゃ、使う事もできない魔法だからか。」
「そう。だから、魔核が見つからなかったら、諦めるしかなかったのよ。」
「・・探してたな?魔核を。」
「・・・そうよ?リスタニカでバカ退治した後から、いろんな街に行って遺跡の中の様子をずぅぅぅぅぅっと聞き漁ってたわよっ?文句あるっ!?」
また顔を赤くしながら言うジェラルリードちゃん。照れ隠しが可愛らしい。
「文句なんかないって。んじゃ、もう1つ。その魔法の成功率を上げる方法は?」
「・・・・魔力操作力を上げる事。それも、並大抵じゃないレベルまで。」
「・・・・・よし。ちょっと試したい事がある。」
キョトンとするジェラルリードちゃん。
「そこで立っててくれよ?」
「? うん。いいけど。」
ジェラルリードちゃんの返事の後、俺は部屋の端まで移動する。
「≪光よ。≫」
俺の力ある言葉に応えて、光の玉が広間を明るく照らし、ジェラルリードちゃんの影を大きく伸ばす。
「ちょっ!?まさか!?」
「≪影よ。開きて招け。≫」
俺の体がスッと影に沈み、そのままジェラルリードちゃんの影から浮き上がるように出てくる。ジェラルリードちゃんはそれを見て絶句している。
「すっ、凄いですっ!タカシ様っっ!!!まさか、影を利用した転位をこうもあっさりと成功させてしまうなんてっっっ!!!!」
リアの興奮した賛辞の言葉が部屋中に響く。
「よし。思った通り、大成功だな。もう1つくらい実験したいんだけど・・・・よし。リア?」
「はいっ。」
「複数の属性の魔法を同時に発動させるのって、普通はできるか?」
「え・・・?い、いえっ。普通は無理ですっ。と言うよりも、そんな事、お伽噺の中にすらできる人は出てきませんよ!?」
「んじゃ、いってみよーか。≪稲妻の投擲槍。百の炎の矢。大地より生まれ出でし錐。我が敵を殲滅せよ。≫」
俺の魔法により生まれた、巨大な稲妻でできた投擲槍と百の炎の矢が広間の壁を蒸発させ、さらに、床の下から生えた巨大な錐が天井まで伸びて、蒸発した壁の代わりのようにその空間を埋める。それを見た全員が唖然となっている。
よしっ!どうだっ!今すぐに思い付く自重無しの全力チートだっ!
思った通り、俺の魔法に関する力にもチートが発動してた。魔核を沈黙させた魔法が、どうやら完全に人外の代物っぽかったから、絶対に発動してると思ったんだよな。んで、チート能力で強化されてるんなら、俺に使えない魔法なんて無いんじゃないかと思ったから、人間には無理だって言われた転位魔法と、さらにもう1つ実験してみたのだ。
しかも、これだけやってみても、魔力の減少は大した事が無い。間違いなく、保持魔力量にもチートが働いてる。
「ふ、複数の属性魔法・・・しかも、稲妻まで・・・・灯りの魔法を維持したままとか・・・あっ、有り得ないでしょっ!?!?!?威力も半端無いしっ!!!!何!?あんたってやっぱり人間族じゃなかったわけ!?」
「失礼な。正真正銘、ただの脇役モブ男その1だぞ。」
「こんな事できる脇役がいてたまるかぁぁぁぁっ!!!!!!」
出会ってから最大級の絶叫でツッコミを入れてくるジェラルリードちゃん。
「そうです。ご主人様が脇役なんて有り得ません。どんな劇であろうと、ご主人様が脇役なんてされては誰にも主役なんて務まらなくなってしまいますよ。」
「そぉいう問題ぢゃないぃぃぃぃっ!!!!」
驚愕から復活したセレアがちょっとズレた同意を示すと、ジェラルリードちゃんが髪の毛を掻き毟りながら発狂したようにツッコミを入れる。
うん。セレア。それはちょっと違う気がするな。君の論点は俺が主役か否かに絞られてるだろ?
「・・主さま、スッゴいねぇ~・・・」
「・・・・・うん。ビックリするの止めよって言ったけど、やっぱ無理かもねぇ~・・・」
「・・・・凄過ぎて、もう本当に言葉にならないです・・・」
シャーンの半ば呆れたような賛辞の言葉に、シャーネが前言を撤回するような言葉を続け、魔法に精通しているだけに、リアは衝撃からまだ立ち直り切れてないらしい。
ん~。こうして見ると、やっぱりセレアの俺への理解度は物凄いなぁ。もう完全に平静な通常状態に戻ってやんの。
「まぁ、俺の魔力操作力はこんなもんよ。チートって凄いだろ?」
「うわぁ・・・調子に乗ってんだか乗ってないんだか・・・・って、ちょっと待ちなさい!!あんた、まさか、あたしの代わりに人化の禁呪を使うつもりじゃないでしょうね!?」
「ジェラルリードちゃんが今見せた以上の魔力操作力を持ってて、それでも失敗するかもって考えてるんなら話は別だけどな。」
「あたしの方が魔力操作力は上よ。それは間違いないわ。だから、あんたにはやらせられない。魔核を今すぐ寄越しなさい!!
ついさっきに怒りを顕にしていた時よりも、さらに威圧感が強くなった口調で言うジェラルリードちゃん。
「証明してくれたら考えるよ。ジェラルリードちゃんの方が魔力操作力が上だってな。」
「・・・どうしろってのよ。」
苦々しい口調で言うジェラルリードちゃん。
「俺と同じ事を、俺よりも規模を大きくして実行できりゃ納得するしかないだろ?まぁ、それを俺が真似できたら話は変わるけどな。」
「・・・・・つまり、あんたと同じような事を、あんたが真似できないくらいの高次元でやってみせろって事ね。」
「ああ。」
首肯する俺に、ジェラルリードちゃんは大きくタメ息をついた。
「いくら<ちーと>があるって言ったって、人種族が真祖吸血鬼に魔法で勝てると思ってるなんてね・・・・確かに、あんたの力は常識外れもいいトコだけど、調子に乗り過ぎよ。いいわ。やってやろうじゃないの。」
そう言って、ジェラルリードちゃんの瞳が紅く輝いた。
固有能力を含めたら、俺には真似できない事なんていくらでもあるだろう。でも、いくら種族的な差があるとはいえ、純粋な魔力操作力勝負で負ける程度ならチートなんて言えない。この力が本当にチートなんだったら、ここはテンプレ通りの理不尽さを発揮できる事を期待するしかない。
俺も死にたかないけど、ジェラルリードちゃんも危険な目に遭わせてたまるか。
本来、複数属性魔法の発動は真祖吸血鬼を代表とする保持魔力量が多く、魔力操作に非常に長けた存在にしかできないものです。
勿論、ジェラルリードちゃんもそれは分かっているので、主人公の魔力操作力が自分と同等に以上のものだと認識しています。しかし、主人公がジェラルリードちゃんを危険に晒したくないのと同様に、ジェラルリードちゃんもまた、主人公を危険に晒したくはないのです。互いを思いやるが故に、2人は本気でぶつかり合う事に・・・
では、これにて第三章 第二十九部の幕を下ろさせていただきます。最後までお付き合いいただいた皆様に感謝です。また次もお付き合いいただければ幸いです。




