古代遺跡 ヴェルデ・パレス ~進入編~
目的地に到着した主人公達。罠と守護者が待ち構える遺跡の攻略が始まります。
第三章 第二十七部<古代遺跡 ヴェルデ・パレス ~進入編~>是非最後までお付き合いくださいませ。
それから3日後の昼過ぎ、俺達はあっさりと目的地に到着した。
モンスターは出るには出たけど、ジェラルリードちゃんが文字通りの瞬殺で片付けていってしまうもんだから、本気で欠片も出番がない。しかも、それで魔力の消費は微々たるものだってんだから、真祖吸血鬼の力は底知れないものがある。ジェラルリードちゃんが別格なのかもしれないけど。
到着した目的地、ヴェルデ・パレスは朽ちてはいるものの、かなり広い。入り口から見て遺跡と分かる範囲だけでも、王都の王宮よりも大きいかもしれないくらいだ。それが長い年月の間で、森に飲まれて一体化して、境目が曖昧な状態になっているのだ。実際にはもっと大きな建物だったのかもしれない。
「さて、じゃあ、このままサクッと奥まで進んじゃいましょーか。途中で何か見つけたら持って帰ってもいいけど、手を出す前に言いなさいよ?どんな罠が仕掛けてあるか分からないんだから。」
「あ。それじゃ、何か嫌がらせに使えそうなアイテムとかあったら教えてくんない?」
「嫌がらせに?」
「うん。何て言うか、こう・・・実害はないけど、ウゼェェッってなるような感じの。実行犯がバレないようなのが最高なんだけど。」
「なんでそんなのが欲しいのよ?」
ジト目で言うジェラルリードちゃん。
「復讐に使うから。」
「ふ、復讐?また、なんか似合わない言葉が出てきたわね・・・」
「ご主人様に何か無礼を働いた輩がいるのですか?」
「私に言ってもらえれば、跡形もなく消し飛ばしてやりますよ?」
戸惑いの声を上げるジェラルリードちゃんに続いて、怒気を孕んだ声で問うセレアに、物凄く物騒な事を言うリア。
「いやいやいや。待て待て待て。特にリア。言う事が物騒過ぎるから。」
「しかし、ご主人様が復讐をお考えになる程の事です。余程の事があったのではないかと・・・」
「いやまぁ、確かに結構な事ではあるけど、実害を出すのはダメ。こっちの身が危うくなるから。」
「? 誰よ?あんたの復讐の相手って。」
「国王と大臣。」
「「え!?」」
驚きの声を上げるシャーネとシャーン。
「あぁ。そういう事。」
「ど、どういう事なんですか?国王様と大臣様に復讐って・・・」
「言ってないの?あんたが勇者召喚で呼び出された事は。」
「「え!?」」
さらに驚きの声を上げるシャーネとシャーン。驚き過ぎて、2人共口が半開きになってしまっている。
「なるべく言いたくないんだよ。召喚されたら、その後、即用無し認定で放逐されたとか、誰が好んで話したがるかっての。」
「えぇっ!?主さまに用無しって言ったの!?」
「放逐って、どういう意味ですか?」
目じりを吊り上げて怒りを顕にするシャーンと、静かな声に怒りを滲ませるシャーネ。
「い、いや、あのな?冷静に聞いてくれよ?」
冷や冷やしながら、事の経緯を簡単に話す。何せ、前にセレアとリアに話した時は2人してかなり物騒な独り言を発してたからなぁ。
「・・・主様?羽根弾丸なら、遠くからでも頭に風穴を開けられるですよ?」
「王宮の窓越しでも、一撃で仕留める自信はあります。」
「待て待て待て待てっ!!!!言ってる事が物騒どころじゃないぞっ!?」
目が本気な2人の言葉に、思わず汗が一筋流れてきてしまう。
似ても似付かないキャラだと思ってたシャーネとシャーンだけど、やっぱり双子だっ!!物騒な発想が同じだぞっ!!言ってる事が、まるっきり狙撃での暗殺だっ!!!!
「そんな事してみろっ!即行で指名手配されて、宿でゆっくりイチャつく暇も無くなるぞっ!?」
「心配するトコ、そこか!?」
俺の言葉に、間髪入れずにツッコミを入れるジェラルリードちゃんだけど、セレア達の顔が引き攣っている。
「そ、それは嫌です・・」
「あの時間が無くなるなんて・・・」
「うぅ~・・・」
「・・・でも、このままっていうのも納得が・・・」
「・・・・あんた達にとってもソコは重要か・・・・」
セレア、リア、シャーン、シャーネとそれぞれのリアクションに、呆れた声を上げるジェラルリードちゃん。
「フゥ。まぁ、だから、バレないようにこっそり、ちょっとイラッときたりウゼェェってなるような嫌がらせをしまくって、溜飲を下げたいワケよ。」
「「「「はい。」」」」
「納得してるし・・・ハァ。まぁ、いいわ。分かった。見せてくれたら、そういうのに使えそうかどうかくらいは多分分かるから、随時見せてちょーだい。」
「さんきゅ~。んじゃ、行こっか。」
俺の言葉を合図に、全員で遺跡の中に足を踏み入れて、奥へと進み始める。
しばらく進んだ所で、先頭を歩く俺とジェラルリードちゃんが同時に足を止めると、
「へ?」
ジェラルリードちゃんが間の抜けた声を出して、俺を見上げてきた。
「ん?どした?」
「・・・なんで立ち止まったのよ?あたし、まだ何にも言ってないのに。」
「へ?だって、あの辺りの床、ほとんど罠だろ?」
「「「「え?」」」」
俺の言葉に、セレア達の意外そうな声が上がる。
「んで、これが解除の装置っと。」
壁の一部を押すと、その部分が凹んで床の所々が淡く光り出す。
「はぁぁぁぁっ!?」
ジェラルリードちゃんがそれを見て、素っ頓狂な叫びを上げる。
「なっ、なんでそんなにあっさりと!?」
「え?分かるだろ?なんか罠っぽかったし。なぁ?」
「い、いえ。私には全く分かりませんでした。さすがはご主人様ですっ。」
目を輝かせて俺に言葉を返すセレア。
「そなの?」
「はいっ。罠の存在も、その解除装置がある場所も全く気付けませんでしたよっ。タカシ様、凄いですっ。」
シャーネとシャーンも驚きの表情のままにコクコクと頷いている。
「う、嘘でしょ・・・罠だって、あたしは探知の魔法を使って見つけたってのに、解除装置まで・・・・って言うか、解除装置なんてあるとも思ってなかったわよ・・・どうなってんの?」
「ん~・・・多分、なんかチートな感じの能力が発動してるっぽいな。意識してやってるわけじゃないから、常時発動型なんだろうな。罠だけを見つけたわけじゃないから、多分、隠された物を見つける能力とかそんなのじゃないかと思う。」
「た、多分って・・・・<ちーと>って、本気でふざけてるわね・・」
脱力し切った感じで言うジェラルリードちゃん。
まぁ、チートって概ねそんな感じだから。ジェラルリードちゃんも早いトコ諦めてくれ。しかし、セレアとリアは耐性できたなぁ。驚きはしても、疑問には思わないんだから。まぁ、それもどうなんだって話かもしれないけど。
それからの道程も、ここまでの道中と同様に至極順調。罠は俺が解除装置と共に軽く発見、魔法を使ってしか解除できない物はジェラルリードちゃんがサラッと解除。守護者が出てきても、ジェラルリードちゃんがあっさりと塵にする。
うん。ダンジョン攻略を舐めてる展開だな、こりゃ。罠の発見もここまで簡単にやってると大概だとは思うけど、ジェラルリードちゃんの戦闘力も大概チートだ。敵が障害物程度の認識でしかない。本来なら、多分、この守護者達もそれなりの強敵な筈。少なくとも、道中に出たモンスターよりかは。
そんな軽快過ぎる遺跡攻略を進めていると、セレアとシャーンが何やら僅かに不満そうにする。
「どした?退屈か?」
「あ、い、いえ。そうではないのですが・・・」
「順調過ぎて不安になってきちゃったとか?」
「いいえ。ジェラルリードさんのお力を目の当たりにしては、不安に感じる要素は全くありません・・・ただ、その・・・・・非常に不謹慎で、我儘極まりない事を・・・」
「多分、セレアさんと同じだと思うです。でも・・・主さまが安全なのが1番だし・・・」
「? 言ってみなよ。別に言うだけならタダだし。」
「は、はい。」
何故かシュンとなるセレア。
「・・・シャーンさんの仰る通り、ご主人様に身の危険が無いのが1番です。ただ、その・・・ご主人様が戦われるお姿を目にできないのが、何と言えばいいのか・・・つ、つまり、ご主人様の戦われているお姿は、いつも凛々しくて素敵で、その・・・・かっこいい、ので少し見たい、と思ってしまいました。」
「うんです。」
「よっしゃぁっ!任せとけっ!!」
「即答!?」
申し訳なさそうに言うセレアと後ろめたそうに首肯するシャーンに対して、即断即決する俺。それに電光石火のツッコミを入れるジェラルリードちゃん。
「し、しかし」
「安心しろってっ。全く、これっぽっちも危なくなんかならずに倒して見せるからっ。ってわけだから、次はやらせてくれ。よろしくっ。」
「ハァ。はいはい。分かった分かった。かっこいいトコ見せたいわけね。とんだけ単純なのよ、あんた。いきなり目が輝いてんじゃない。」
「大いにほっといてくれ。」
ジェラルリードちゃんには完全に呆れられたが、これが男という生き物である。
惚れた相手にカッコイイ所が見たいと言われて、テンションが上がらん奴は男じゃないっ!
ましてや、いつも控え目で遠慮がちなセレアと何も疑う気になれない程に素直なシャーンが言うのだ。全力全開でいくのが当然だ。
「す、すみません。ご主人様の危険が増すような事を・・・」
「バッカ言えって。男として、こんな嬉しい事なんかそう無いぞ。」
シュンとなったまま謝るセレアの頭を、わしゃわしゃと撫で回しながら言ってやる。
「・・・本ッッッ気で嬉しそうね。男ってそういうもの?」
「そりゃそうだろ。男なんて、基本的にカッコつける為に生きてるんだから。」
「ふぅん。あ、来た。」
「ナァァァイスッ!」
魔力銀のバスタードソードを抜いて、曲がり角から出てきた守護者に躍り掛かっていく。
「ちょっ!?そいつは」
何やらジェラルリードちゃんの焦った声が上がると同時に、俺の蹴りがゾロゾロと続いて出てきた守護者達をまとめて吹っ飛ばす。
「は?」
「はいっ!邪魔ぁっ!!」
上から下へ大きく振り下ろした斬撃が、先頭の守護者を真っ二つにする。そのまま、次の奴に斬り掛かり、薙ぎ払っていく。
さっきまで出てきてた守護者は3mくらいある大きな石人形って感じでちょっとビビったけど、今回のは俺よりも少し背が低く、その代わりに剣や槍を持っているマネキンみたいな感じ。威圧感がなくて怖くないし、大きさも相手取るにはちょうどいい。ぶっちゃけた話、カッコつけには打って付けなのだ。だから、姿が見えた瞬間に向かっていったのである。石人形だったら、こんなに勢いよく向かえません。怖いから。
そんな事を思いながら、数体目の守護者を斬り伏せた時、残りの守護者の周辺に炎の塊が出現した。
「≪激流よ!飲み込め!!≫」
炎の塊がこちらに向かい始めた瞬間に、俺の魔法で前方の通路が水で埋まり、激流となって守護者ごと炎の塊を飲み込んで押し流す。
「ん。終了~。」
守護者が全て沈黙したのを確認してから振り向くと、ジェラルリードちゃんが唖然としていて、セレア達4人はうっとりとした表情で俺を見つめていた。
うん。カッコつけようとは思ったけど、そういう顔で見られるとやっぱりハズイな。と言うか、リアとシャーネもそういう風に見てくれてたのか。張り切った甲斐が増すけど、さらにハズイっす。
「さすがはご主人様です・・・」
「・・カッコよすぎ~・・・」
「タカシ様、やっぱり凄いですよぉ・・」
「うん・・言葉になんないです・・・」
「いやいやいやっ。おかしいからっ。さっきの守護者はその前のヤツよりもかなり強力なヤツなのよっ?何?あんたってそんなに強かったの?」
「そりゃ、チート炸裂しまくりだろうからな。」
俺の返答に、何故かガクッと肩を落とすジェラルリードちゃん。
「そ、そぉ・・・あくまで<ちーと>のおかげなんだ・・・こんだけ持ち上げられてるってのに・・・・」
「? そりゃな。言ったろ?チートがなけりゃ、とっくに死んでるって。」
「うん。そうね。言ってた。・・・ハァ。」
「何故にそんなに脱力する?」
「いえね、あんたって変わんないなぁと思って。出会ってからそこそこ経ってるでしょ?その間に、自分が異常に強いのもそれなり以上には分かった筈じゃない?それだけの強さしてんだから。」
「まぁな。何かと常識外らしいってのは。じゃなかったら、守護者に単身で向かってったりしないし。」
「普通は多少は増長して調子に乗るもんなのに、その無駄に謙虚なトコとかあたしに対する態度とか、全く変わってないじゃない。この子達には輪をかけて甘くなってるし。」
「ん~・・・かなり調子には乗ってると思うんだけど、それと態度が変わるってのは別問題じゃないか?人格が変わったりでもしない限りには。無駄に謙虚ってのはよく分からんけど。」
「だから変わんないのねって思ったのよ。増長する奴ってのは人格も変わってくもんよ?」
「あぁ。なるほど。そういう方向の調子の乗り方ね。それも多少は変わったと思うぞ?気に入らんもんは徹底的に詰めてってるし。」
「どうせリア達の事くらいでしょうが。それは初めて会った時から変わってない。」
「あ、それもそうか。」
「変わってほしいわけじゃないからいいんだけど、なんだかなぁって思ったのよ。人間族の馬鹿共を知ってるからなんでしょうけどね。」
「でも、万一、俺がそういう馬鹿と同じ方向に進み始めたら、ボコボコにしてでも止めてくれよ?アレと同類化するのは死んでも御免だ。」
「ん・・・そうね。まぁ、あんたなら心配なさそだけど。さ。行きましょ。」
そう言うと、ジェラルリードちゃんはまた先頭に立って先を進み始めた。俺達も後を追い、俺はその隣に並んで、歩きながらジェラルリードちゃんの横顔をチラリと見る。
見た感じは別にいつものジェラルリードちゃんなんだけど、やっぱり何か違和感があるんだよな。さっきのだって、<死ぬ気でそうならないようにしときなさい。でも、もしそうなったりしたら、地獄を見せてでも矯正したげるわよ?>とかって言いそうなもんなのに。
拭えない違和感を感じながら、俺達は遺跡の最奥を目指して歩を進めていった。
随分前(第一章 薬草採集で地味チート)に発動を見せていた主人公の能力、【発見】の能力が真価を見せました。今回は周りに他の人が多くいたので、しっかりと自覚してくれています。
【発見】の能力は主人公の認識と少し異なっていて、隠された物を見つける以外に、自分が探している物を感覚と勘で確実に見つける事ができるというものになります。さらに、見つけた物が危険かどうかも感覚的に分かってしまうという、ブービートラップ対策も不要な素敵能力となっています。
では、これにて第三章 第二十七部の幕を下ろさせていただきます。最後までお付き合いいただいた皆様に感謝です。また次もお付き合いいただければ幸いです。




