遺跡の街 ルウィーナス
主人公達が新しい街に到着します。道中で、世にも恐ろしい存在と遭遇したようです。
第三章 第二十三部<遺跡の街 ルウィーナス>是非最後までお付き合いくださいませ。
そして、それから9日後の夕方、リブラレールの手前の街であるルウィーナスに到着。
数えてみたら、もう王都を出て37日も経ってた。リブラレールまでは30日程度って話だったのに、ここで既に7日超過してる。街に着く度に1日余分に泊まってたからなぁ。リスタニカとスクラヴォーヌでは連泊になったし。まぁ、リアの期限までは余裕だからいいんだけど。
ここまでの道中は結構ハードだった。王都周辺ののどかさが嘘みたいに、数時間街を離れたらモンスターがわんさか出てくるのだ。もう種類を挙げるのが面倒なくらいに多種多様なモンスターの博覧会状態。夜襲もあったりで気が抜けないのが何よりしんどい。ここまでの街でも、着いた初日は疲れ果ててたから休戦して即就寝っていう感じだったくらいだ。
まぁ、翌日に開戦されるから、1泊余分に泊まる事になってたわけですが。2人の体が心配だったから自重しようと思ったんだけど、抱かれた方が元気が出ると言われて、喜んで開戦してた。その後、出発してから2人の様子を見てたら、マジでメチャクチャ元気。タフだね。君達も。
その道中、シャーネとシャーンの上空からの羽根弾丸は大活躍だった。魔法と違って溜めがないから、先に見つけられたら戦闘開始前に終わってしまう感じ。ただ、それでもモンスターとの連戦になる事はある。そういう時は、僅かにも俺に構ってもらえないとセレアとリアが静かにブチギレて、群れを一瞬で蹴散らしてしまってた。それを見て、シャーネとシャーンが唖然としてたりもしてた。
そんな中で、最凶最悪のモンスターに遭遇した。絶対に遭遇したくなかった、悍ましいヤツらが・・・それも、2回も・・・・・
通常サイズのヤツらは1匹見かけたら30匹はいると聞いてたけど、モンスターとしてのヤツらはエンドレスに森の奥から湧いて出てきやがるのだ。2回共、出現した瞬間に生理的嫌悪感が爆発して、全く自重ナシの魔法を反射で放ってしまい、ヤツらごと森の一部を吹き飛ばしてしまった。それでもヤツらは湧いてきやがるもんだから、かなり大規模な自然破壊に。2回目は自重しろよと思うかもしれないが、想像してみてほしい。アレが人間大のサイズになって、大量に湧いて出てきて、しかも、飛ぶんだぞ?その周辺一帯を消し炭にしなかっただけ、まだマシな被害だと思う。
シャーネとシャーンは俺の魔法の威力に死ぬ程驚いてたけど、またセレアが<ご主人様ですから>という力業な納得のさせ方を発動してた。でも、それに対して、シャーネが何故かあっさりと納得してたのが釈然としない。シャーンも素直に納得し過ぎ。まぁ、こっちはなんか性格っぽいけど。
そんな感じだったから、もう全員疲れ果ててしまっていて、風呂付きの宿を見つけたら、即行で風呂に入っておやすみなさいだ。
ちなみに、ここまでの街でも、どんなに疲れてても全員風呂には入ってる。疲れた時程、風呂が気持ちいいのは世界が違っていても共通の感覚らしいね。
翌早朝、目を覚ましたら、日課のキスと連戦開始。
セレアとリアはいつものように先に起きていて、今回は生まれたままの姿で待機していたらしい。キスの後、いきなり柔らかい2つの山脈と丘に直接顔を挟まれたら、止まるものも止まらない、止まれない。ホントにいろいろ考えてくれて、男冥利に尽きます。
それから、朝食を挟んで昼過ぎまで連戦を重ねて、一旦落ち着いたからジェラルリードちゃんに連絡を取る事にした。
「ジェラルリードちゃ~ん。」
『はいは~い。無事に着いた?』
「おう。昨日の夕方にな。疲れ果てて、即行で寝落ちしたよ。」
『あはは。この辺りはモンスターが多いからねぇ。』
「この辺りはって、近くにいるのか?」
『勿論。ここで魔核の情報を手に入れたんだから。』
「ありゃ。それなら、かなり待たせてたんだな。ごめん。」
『構わないわよ。疲れ残したままで無理に進まれて万が一があっても困るし。』
すんません。遅くなったのは疲れを抜く為ってよりもイチャつく為でした。
『で、結構広い遺跡らしいから、しっかり準備をしといてほしいんだけど、いつ頃出発できそうかしら?』
「双子が疲れ果ててたからなぁ。まぁ、明日には出れると思うよ。」
『そ。まぁ、無理はしなくていいからね。どうせ、他の連中がそう簡単に攻略できる筈もないんだし。』
「ありがと。でも、顔合わせだけは今日しときたいんだけど、構わないか?」
『まぁ、そうね。いきなりじゃ完全に固まっちゃってパニックだろうし。』
「うん。下手すりゃ、レンシディオさんみたく気絶するかもだし。」
俺とジェラルリードちゃんのやり取りを聞いて、リアが光魔石に魔力を籠めて灯りを作る。ホントに気が利く子だ。
『それじゃ、今からそっち行くから、影作っといて。』
「もうリアがやってくれてるよ。」
『お。さっすが~。んじゃ、1回遠話を切るわね。』
「はいよ。」
遠話が切れる感覚と同時に、ジェラルリードちゃんが俺から伸びた影の中から出てくる。
「おひさ~。」
「「お久しぶりです。」」
「よっ。」
「って、ベッドの上って・・・・あんた達、さっきまでヤってたわね?」
セレアとリアがその言葉に真っ赤になってしまう。
「・・・気持ちいいの?アレって。」
「経験無いのか?」
「無いわよ。若い内に真祖吸血鬼になっちゃったし。」
若い内に?って事は、やっぱり元は人間なのか。しかも、この見た目の年齢でなったんだとしたら、本気で若い。何か事情があったんだろうか?
「ダメですよ?いくらジェラルリードさんでも、ご主人様はお譲りできません。」
ギュッと俺の腕を抱き締めながらいうセレア。リアまで抱きついてくる。
「あはは。それは無い無い。興味はあるけど、人のモノに興味だけで手を出したりしないから。第一、この子は生意気な弟みたいな感じだしねぇ。」
パタパタと左右に手を振りながら言うジェラルリードちゃん。
「お、弟・・・いやまぁ、理解できんわけじゃないけど、その外見でそう言われると違和感が半端無いぞ。」
「子どもって言われないだけマシだと思いなさい。」
「こ、子ども・・・・ハァ。あ、ところで、1個質問。」
「ん?何?」
「魔核って何?」
ガクッと肩を落とすジェラルリードちゃん。
「あ、あのねぇ・・・なんでここまで来る前に聞いておかないのよ・・・」
「だって、道中はシャーネ達がいるし、宿に泊まったらイチャつくのでそれどころじゃなかったし。それに、急いで確認するような事でもないだろ?」
「・・・なんか2番目の理由が限りなく舐めてた気がするけど、まぁいいわ。魔核ってのは、簡単に言っちゃえば、魔晶石の上位アイテムってトコね。ただし、その希少価値は魔晶石なんかとは比べ物にならないわよ?何せ、大昔の技術で加工、凝縮された魔力の結晶体なんだから。」
「失われた技術で作られたって事か。」
「そ。だから、現存してる物以上には絶対にもう手に入らないの。ちなみに、あたしもそのやり方は知らない。」
「へぇ。ジェラルリードちゃんでも・・・じゃあ、2500年以上昔の技術って事か?」
「そうね。あたしが真祖吸血鬼になったばかりの頃の技術よ。まだその頃は吸血鬼の弱点も諸々有効な時期だったから、そんなものにまで構ってる余裕もなかったのよね。」
うむぅ。やっぱり気になる。元の世界じゃ真祖吸血鬼は自分の意志で魔術とかを使って、その存在を変える事で生まれる怪物だ。この世界でもモンスター扱いなのは同じみたいだし、ジェラルリードちゃんの口振りからも最初から真祖吸血鬼として生を受けたわけじゃないのは窺える。どういう理由があって、若い内に人間を辞める事になったんだろう?
「で、その魔核は魔晶石の何倍もの魔力を秘めているって言われてるわ。」
「言われてるって、もしかして、ジェラルリードちゃんも見た事がないのか?」
「ないわよ。だから、欲しいんじゃない。それに・・・」
「それに?」
「あ、ううん。こっちの話。で、この魔核の厄介なところが1つ。あちこちを勝手に移動するの。」
「アイテムが勝手に動くのか!?」
「はい。そう言われています。魔核は無尽蔵の魔力を持つって言われてるんです。それは魔水晶のように周辺の魔力を吸い取っているからじゃないかって言われてます。それで、その吸収する魔力が濃い所に移動するんじゃないかっていうのが定説です。全部推測ですけど。」
「メ、メンドくさいアイテム・・・ん?でも、推測とか定説って、もしかして、ほとんど誰も目にした事がないんじゃないのか?」
「はい。どんな形の物なのか、どんな物でできているのか、どれくらいの大きさなのか、確実な事は何も分かっていない幻のアイテムと言われてます。ただ、古代の文献からそういう物があったらしいという事だけが分かっていたんですけど・・・」
「・・・それ、ジェラルリードちゃんがあるって言ってなかったら、ただの眉唾、都市伝説として終わらせてるレベルの話だな・・・・」
「そうね。あたしもまさか現物が残ってるなんて思ってなかったし。でも、多分、当たり。その遺跡に潜った冒険者が見たって言う正体不明の妙な物の特徴が、あたしが知ってる魔核と一致してるトコがかなり多いのよ。」
「なるほど。」
「ついでに言えば、その定説は半分は当たりで半分ハズレよ。リア。」
「え?どういう事ですか?」
「無尽蔵の魔力なんて持ってないわ。ただ、魔晶石よりも圧倒的に魔力保有量が多いの。無尽蔵に思えるくらいにね。でも、魔水晶みたいに周辺の魔力を吸収する力はあるらしいわ。しかも、魔水晶よりも吸収する力は強いみたい。だからまぁ、利用する魔力量が吸収する分より少なかったら無尽蔵に見えるかもしれないわね。んで、移動する理由は今は遺跡になっている施設を動かす為。」
「遺跡を!?」
リアがジェラルリードちゃんの解説に大きな驚きの声を上げる。
「そうよ。つまり、魔核は遺跡の大元の動力源なの。勿論、遺跡の動力源はそこにも備え付けられてるものがあるけど、魔核程の大量の魔力を保有しておけないわ。だから、魔核が各遺跡を定期的に回って、魔力を補充してるのよ。順番はランダムみたいだけどね。」
複数の遺跡の動力源になるくらいの魔力って、とんでもない保有量なんじゃないのか?しかも、少なくとも2500年は供給し続けてるわけだろ?そんなのほとんど永久機関みたいなもんじゃないか。元の世界のビルとか家みたいに電線が走ってるわけでもないんだし。古代の技術ってのはとんでもファンタジーの域を超えてる気がする。
「んじゃ、魔晶石みたいにそれから魔力を吸収するのがジェラルリードちゃんが魔核を欲しい理由か?」
「ん。まぁ、そんなトコ、かな。」
珍しく歯切れの悪い返事を返すジェラルリードちゃん。まぁ、言いたくないんなら追及はしないでおこうか。ジェラルリードちゃんが何かに悪用するのは想像し辛いし。悪戯には使いかねないけど。
「んで、もう1個いい?」
「うん。何かしら?」
「答えたくなかったら答えなくていいし、聞かれたくない事だったらごめん。さっき、若い内に真祖吸血鬼になったって言ったよな?」
「あぁ。うん。そうなった理由が気になった?」
苦笑いを浮かべながら言うジェラルリードちゃん。
「正直な。」
ポスンと俺の膝の上に座り直して、もたれてくるジェラルリードちゃん。
「その頃にはよくあった話よ。不老不死の法の1つが真祖吸血鬼へと変化する事だった。その外法を使って自分の存在を保つか、もしくはそのまま死ぬかの選択が必要な状況になった。それで、あたしは存在を保つ事を選んだの。他にも外法はいろいろあったけどね。見た目がほぼそのままでいられるのが真祖吸血鬼化する事だったのよ。ホラ、あたしって結構可愛いでしょ?リッチみたいに、見た目まで化物になんてなったらもったいないじゃない?」
言葉の最後は茶化しているように陽気な声だけど、ジェラルリードちゃんはこっちを向こうとしない。
「ん。そうだな。軽く惚れるくらいに可愛いもんな。」
言いながら、ジェラルリードちゃんを抱き包むように抱き締めて、頭を撫でる。
「・・・バーカ。どれだけ昔の事だと思ってるのよ。別に、慰める必要も気を遣う必要もないわよ?」
そう言いながらも、抱き締める俺の腕を軽く掴むジェラルリードちゃんの手は微かに震えていた。
「アホか。相手が嫌がらない限りは、可愛い子を抱き締めるのは男の本能としての義務だぞ。」
「ふふ。初めて聞いたわ。そんな義務。」
「そうか?俺の元いた世界特有なのかもな。」
「うわぁ。便利な言い訳。」
呆れたように言いながら、上を向いて俺に顔を向けて笑顔を浮かべるジェラルリードちゃん。
「でもま、そういう事なら、その義務に付き合ってあげましょーか。」
「おう。そうしてくれ。」
俺の答えに、ジェラルリードちゃんは何かを言いたそうに口を開きかけたけど、そのまま前を向いて、結局何も言わずに俺に体重を預けてきた。
どうしたんだろうな。なんか、いつものジェラルリードちゃんと様子が違う。セレアとリアも、心配そうな眼差しでジェラルリードちゃんを見てるし。ま、いつか聞かせてくれるまで待つとしようか。付き合いはまだまだこれからなんだしな。
主人公にとって、現時点での最凶最悪の敵が現れましたね。いえ、ヤツらは全人類にとっても最悪の敵でしょう。夜、寝る前に、その存在に気付いてしまったりしたら、もう退治するまでは眠れないのは作者だけでは無い筈・・・
まぁ、それはさておき、ジェラルリードちゃんの様子が少し違っています。これは主人公達に隠している理由に起因しているんです。
では、これにて第三章 第二十三部の幕を下ろさせていただきます。最後までお付き合いいただいた皆様に感謝です。また次もお付き合いいただければ幸いです。




