冒険準備で地味チート その2
この話でようやく準備完了の主人公。能力の自覚はやっぱり無しで地味に行使。
そんな感じの準備編その2、はじまりはじまり~♪
それから、アンナちゃん達に挨拶をして、一人で街に向かった。靴を始めとして、身の回りの物を揃える為だ。せっかく金を稼ぐ手段を得たんだから、装備を整えて異世界探検に出てみたいからな。まぁ、装備を整えたところで、戦えるのかって言われたら、まず無理。戦える気がしない。むしろ、戦ったら即死する気がする。
元の世界ではまともに喧嘩すらした事がないし、武道の経験もない。中学までは剣道をやってたけど、それも竹刀で素振りをしてたのが大半だし、もう10年近くは竹刀を握ってもいない。
なので、武器を買うのは一応の護身用という以上の意味はない。無いよりはあった方がマシだろうという程度だ。
そして、街の中心と思われる賑やかな所に到着して、また一つ問題が発覚。
字が読めない。
まったく読めない。
さっぱり分からない。
店には看板が出てるけど、文字なのか何かのシンボルなのかすら判別が付かないのだ。
まぁ、店先の商品を見れば、ある程度は何を売っている店なのかは分かるが、見てもさっぱり分からない店もある。これは何気にマズイ。この先、飲食店を見つけてもメニューが読めないと注文もできないって事じゃないか。どうにかしなければ・・・
と、問題は発覚したけど、今の行動には大きな支障はないので、解決策の検討は先送りにする。分からなければ、人に聞けばいいのだ。
という事で、屋台のおっちゃんに声を掛ける事にする。さっきから屋台で売ってる串焼きの匂いがたまらんかったりしてたのだ。
「おっちゃん、一つもらえます?いくらっすか?」
「あいよ、一つ3エニーだよ。」
代金を払って、お釣りと串焼きを受け取って会話を続ける。
「ところで、この街に来たのが初めてなもので、どこに何があるかさっぱり分からないんですよ。武器と靴を買い換えたいんですが、どこかオススメってあります?」
初めて買うのに買い換えとは何言ってんだ、こいつ?とか思われるだろうけど、そこは不信感を持たれない為の表現。旅をしていて武器を持ってないなんてのは明らかにおかしいだろう。靴にしても同じ。だから、今持ってるのを買い換えたいって形を装ったのだ。
「兄ちゃん、冒険者かい?見た事無い格好してんもんなぁ。」
「ははは。まぁ、そんな感じです。」
やはりこの服は目立つか。周りの人が着ているのと素材から違って見えるし、服も買い換えた方がいいかもしれないな。
「武器屋なら、そっちの通りを進んで4件目の武防具ドンファンってのが評判いいらしいぜ。靴もそこでしっかりしたのを作ってるって話だ。高めのなら、突き当たりの魔武器ディートってトコだな。そこのなら、ゴーストとかにも効果が高い魔法の武器を扱ってるぜ。」
ゴーストなんてのもいるのか。テンプレ通りなら、普通の武器は一切効かないってヤツだろうな。まぁ、当分は関係ないだろうけど。
「ドンファンとディートですね。あ、ついでに服屋ってありますか?」
「服屋かい。なら、あっちの通りを進んで3件目のヤワイってのが安くて丈夫だってのでオススメだな。」
「ありがとうございます。んじゃ、あと2本ください。」
「お、兄ちゃん分かってるねぇ。じゃあ、ついでだ。宿屋ならこの先の突き当たり、銀月亭ってトコにしな。値段の割に旨い飯出してくれるぜ。」
「重ね重ね、ありがとうございます。助かります。」
「いいって事よ。また何かあったらよろしくな。」
「こちらこそ、よろしくお願いしますね。」
追加の串焼きを受け取ってその場を後にする。いいおっちゃんだ。串焼きも旨いし。
教えられた道を歩いて、武防具ドンファンと思われる店の前に到着。字が読めないから確証はない。ま、中で聞けばいいのだ。
串焼きを食い終わってから店内に突撃すると
「いらっしゃいませぇ。」
カウンターに座って声を掛けてくれたのは20歳くらいの女性。カウンターの上から見える上半身の一部が俺の目を釘付けにしてしまう。で、デカい!しかも、美人!!アンナちゃんも可愛かったけど、この破壊力はやはり大人の女性にしか出せないものだろう。こんな美人さんが店員さんとか、ビバ異世界!!
「お客さん~?」
ハッ!?いかんいかん、思わず、凝視してしまった。元の世界ならセクハラで訴えられてたかもしれん。
「あ、いえ、すみません。こんな綺麗な人がいるとは思ってなかったんで、ビックリしてしまいまして。」
「ふふ。お上手ですねぇ。これはサービスしないとですねぇ。」
サービス・・・ハッ!?いかんいかん!!また視線が一つに固定されるトコだった!!俺もまだまだ若いなぁ。と誤魔化してみる。
「いえいえ、正直な感想ですよ。あ、何かオススメの武器はありますか?靴も合わせて新調しようかと思ってるんですが。」
「そうですねぇ。あ、ご予算はどれくらいでお考えですかぁ?」
「今回は当面の間に合わせにって感じで考えてますので、700エニーくらいですかね。」
「あらぁ、ホントに間に合わせなんですねぇ。」
「ええ。実は急に仲間が増えましてね。予定外の出費なんで、次の仕事を片付けるまでの間に合わせって感じなんですよ。」
我ながらよくもまぁ口が回るもんである。仲間って誰よと自分に突っ込みを入れたくなる。だけどまぁ、これで低予算で実用的なものを選んでもらいやすくなったぞ。おっさん店員が相手なら間違って恥をかいても大したダメージにはならんが、こんな美人が相手だと俺の心は致命傷を受けかねないからな。
「なるほどぉ。えっと、どんな方がお使いになられますかぁ?」
「体格は私と同じくらいですが、少々非力でして。あまり重いのは辛いそうです。」
無論、辛いのは俺です。でも、そんなカッコ悪い事言えない。言いたくない。
「そうですねぇ。でしたらぁ、これはいかがでしょうかぁ?」
そう言って取り出されたのは、王宮の兵士達が持っていたのと似た両刃の剣だけど、全体的に少し小さく短くなっている。
「ノーマルなショートソードですがぁ、無駄な装飾を削ってぇ徹底的に軽く仕上げていますよぉ。ただぁ、重さがないのでぇ、叩き斬るような動作には向きませんけどぉ。」
「手に取ってみても?」
「勿論どうぞぉ。」
許可を得て、片手で持ってみる。少し重いが、これくらいなら振り回すのに困るような事はなさそうだ。
「これくらいならさすがに大丈夫だと思います。おいくらですか?」
「本当はぁ、650エニーなんですけどぉ。褒めてもらっちゃいましたからぁ、550エニーでいいですよぉ。あぁ、靴代も込みでなのでぇ、ご贔屓にしてくださいねぇ。」
マジか。一言誉めた、というか正直な感想言っただけでかなり安くなってるぞ。元の650エニーですら、安いような気がするのに。
「い、いいんですか?かなり破格な気がするんですが。」
「はいぃ。うちは女の鍛治師がやっているせいかぁ、お客さんが少なくてぇ。来た人もあんまりいい顔をしてくれないんですよぉ。でもぉ、お兄さんは全然そんな事もなくてぇ、嬉しかったのでぇ。大盛況のお隣のドンファンさんが羨ましいですけどねぇ。」
なに?ここはドンファンじゃなかったのか。
でも、この剣の質は決して悪くないと思う。むしろ、普通よりもいいんじゃないかとすら思える。剣なんか全然分からないけど、何故か確信が持てる。それでいて安い。
さらに言うなら、目の前でこんな美人さんが嬉しそうに笑っている。これで文句なんかある筈がない!!
そして、美人店主さん、エラーデさんというそうだ、に足のサイズを測ってもらい、明日の昼には靴は出来上がるとの事なので、剣と併せて後日受け取りという事にして前金でお金を払って店を後にする。
何故か前金で払おうとしたら、随分遠慮されたのだが、押し切った。すると、またかなり喜んでいた様子で、仕上げに期待していてくれと言われた。この世界では後払いが普通なのだろうか?よく分からん。
さらに、教えられた店で服を上下1セットと旅の必需品として外套と荷物入れにリュックみたいな革袋を買って、残りの手持ちはわずか131エニー。服は買ってすぐに試着室を借りて着替えた。外套が高かったんだよ、これが。まぁ、それでも相場よりは安く済んだっぽいんだけど。異世界に来て、買い物上手になったのかね?やたらと口が回るし。
さて、目的の買い物はとりあえず完了。
次は冒険者ギルドとやらで冒険者登録だ。
今回は新しい能力は出てません。武防具屋を間違えたのは単なる数えミス(笑)結果としては良かったんですけどね。
さて、次は冒険者ギルド。どこで冒険者ギルドの情報を手に入れてたんだ?って疑問にもきちんとお答えします。
では、次回もよろしくです。
2016/3/19 購入品に革製のリュックを追加、着替えについての描写を追加しました。




