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魔術師ギルド長の困り事 ~解決編~

ジェラルリードちゃん無双な話です。真祖吸血鬼(ハイ・デイライトウォーカー)の強さはやはり次元が違うようです。


第三章 第十五部<魔術師ギルド長の困り事 ~解決編~>是非最後までお付き合いくださいませ。

それから2日後、レンシディオさんからの連絡が来た。今夜、副ギルド長一派恐怖のドン底行き計画の決行となったのだ。レンシディオさんはきちんと約束を守ってくれて、ジェラルリードちゃんの存在をどこにも漏らさないでいてくれた。

と言うか、言った後のジェラルリードちゃんが恐くて、絶対に言えないとの事。相当に応えてるなぁ。


ちなみに、それまでの2日間はひたすら溺れた。下手な依頼を受けられないとはいえ、ダメ人間過ぎる。反省。しかし、改善する気は俺にも、そしてセレアとリアにも全く無いので、あくまでも反省だけだけど。


まぁ、それはともかくとして、夜になって計画の舞台となる魔術師ギルド内の中庭。レンシディオさんを含む俺達は4人は、副ギルド長一派総勢17人と対峙していた。

「フン。小娘が。たった4人で今後の権限を賭けようとは、笑わせてくれる。」

「あの・・・副ギルド長。先日も言いましたけど、本当に全面降伏した方がいいですよ?絶対に後悔しますから。」

レンシディオさんの言葉に、副ギルド長一派が殺気立つ。


レンシディオさんは、多分本気で相手を気遣って言ってるんだろうなぁ。何せ、相手が相手だし。でも、それ、事情が分からない奴にとっては挑発以外の何物でもないですよ?現に、聞くに耐えない罵詈雑言が浴びせられまくってるし。


「ハァ。分かりました。では、始めましょう・・・いえ。御愁傷様です。」

「どこまでも舐め腐りおってぇぇっ!!後悔するのがどちらか、身を以て知るがいいっ!!!」

青筋を立てまくって吠える副ギルド長。対して、憐憫の情たっぷりに、俺の方を振り向いて頷くレンシディオさん。


さぁ。ここからは演出効果を狙ってくぞっ!


「さて、では、副ギルド長一派の皆様方には、真の恐怖と絶望というものをご覧に入れましょう。」

俺は一歩進み出ながら、練っておいた台詞を口にする。

「ハッ。白金級(プラチナクラス)の冒険者とはいえ、この数の魔法使い相手に何ができる!?」

「〔ジェラルリードちゃん。出番だよ。〕」

俺が小声で合図を送ると、背後からの魔力の灯りによって、俺の前方へと伸びた影からゆっくりとジェラルリードちゃんが出現。圧倒的な威圧感を放ちながら、紅い瞳を輝かせ、薄く笑みを浮かべて牙を覗かせるその姿に、副ギルド長一派が一気に静まり返る。

「我が君に害意を向ける愚者共は、お主らかねぇ?」

きっちりキャラを作ってきたようだ。しかし、誰が<我が君>だ。誰が。

「な・・・ば、馬鹿な・・・吸血鬼(ヴァンパイア)を、使役する、だと・・・・?」

驚愕の声を漏らす副ギルド長に向かって、ジェラルリードちゃんが紅い瞳をさらに輝かせると、副ギルド長の眼前の地面が弾け飛び、人が半分埋まる程のクレーターができる。

吸血鬼(ヴァンパイア)とぬかしたか?この妾に向かって。」

ジェラルリードちゃんの周囲に紫の霧が立ち込め始める。


おぉ~・・メッチャクチャ怖ぇぇ・・・


「深淵なる闇の貴族にして、悠久の時を不変に在り続ける、至高にして不滅の存在。汝ら、人種族の絶望。真祖吸血鬼(ハイ・デイライトウォーカー)、このジェラルリード スウェンを只の吸血鬼(ヴァンパイア)扱いとは・・・・その非礼、死を以て贖うがよいわっ!!」

言い切ると同時に、神速の動きで襲いかかっていくジェラルリードちゃん。いきなり2人が宙を舞った。名乗りの段階で、既に膝を震わせていた副ギルド長一派は戦意喪失。バラバラに逃げ始めたが、建物内に入る扉は何故かびくともしない。

「なんでだよぉぉぉっ!?開けよ!くそっ!!開きやがれ!!」

「無駄。無駄。」

扉に駆け寄った面々の内、先頭にいた奴のすぐ横にジェラルリードちゃんが現れて、冷たい声で囁く。影を使った転移魔法で移動したらしい。その声に、先頭の奴は顔面蒼白になって、硬直してしまう。

「ここは既に妾の結界の中。助けを呼ぶ声も、赦しを乞う悲鳴も、断末魔の叫びも、何一つ外には届かぬ。ヌシらは、ただここで妾の玩具となって朽ち果てるのみ。」

異様に静かな中庭に、ジェラルリードちゃんの冷たく、静かな声だけが妙に恐ろしげに響く。


結界って・・・いつの間に・・・・やっぱ、真祖って洒落になんないんだなぁ。


「お、おおおお、落ち着けぇぇぇっ!にっ、人間族に従う真祖吸血鬼(ハイ・デイライトウォーカー)など、ある筈が無いぃぃぃっ!それは只の吸血鬼(ヴァンパイア)だっ!わっ、我々でじゅっ、充分駆逐できる筈だぁっ!全員でほのっ、炎の魔法を放てぇぇぇぇぇぇっ!!!」

怯えが滲み出まくりで全く説得力が無いが、それでも、人間族に従う真祖吸血鬼(ハイ・デイライトウォーカー)の存在よりかは信憑性があったのか、何人かがジェラルリードちゃんに手を向ける。

「よかろう。愚か者共。信じられぬのならば、己の目で確かめるがいいわ。真の恐怖と絶望というものを、ねぇ。」

ニタリと、背筋が凍るような笑みを浮かべ、優雅に両手を広げて、魔法使い達に向き合うジェラルリードちゃん。そこに、いくつもの力ある言葉が重なって発され、炎が重なり業火となってジェラルリードちゃんに向かう。


って、おい!?まさか無抵抗で受ける気か!?いくら何でも危険過ぎる!!火は吸血鬼(ヴァンパイア)の弱点だろ!?


「《激流よ!!全てを押し流せ!!》」

「え?」

ジェラルリードちゃんが肩越しに俺の方を振り向き、眼前まで業火が押し迫った瞬間、ジェラルリードちゃんの目の前から大きな幅で激流が出現。業火と化した副ギルド長一派の魔法を打ち消し、さらに前方の魔法使い達ごと壁まで押し流して叩きつける。それをジェラルリードちゃんはおろか、セレアとリア、レンシディオさんを含む巻き込まれなかった全員が呆気に取られたように見ていた。


良かった。間に合った。平気な自信でもあったんだろうけど、ムチャはしないでもらいたい。こっちの寿命が縮むぞ。


「な・・・なん、だ?今のは・・・」

「あ、あの量の水を、あの一瞬で・・・ま、魔法を覚えたばかり、なのに・・・・?」

何やら、副ギルド長とレンシディオさんがそれぞれ信じられない物を見たような顔をして、俺の方を見てくる。

「タ、タカシ様・・・凄すぎです・・・・剣だけでなくて、魔法までこんな・・・・」

さらに、リアが敬意を込めた視線を送ってくる。


え?もしかして、俺、何か有り得ない事でもやっちゃった?


「リアさん。ご主人様のされる事に逐一驚いていては身が持ちませんよ?ご主人様なんですから。」

でも、何故か平然としているセレア。しかも、なんか平然としている理由がなんとも釈然としない。

流された面々は呻きながらも、フラフラと身を起こしている。


よし。手加減とかそういうのは考えれてなかったけど、ちゃんと生きてる。しかし、咄嗟の事だとはいえ、魔法使い数人の魔法をよく押し返せたもんだ。リアの反応からすると、どうやらかなり凄い事みたいだし、多分、これもチート能力が発動してるな。魔法が巧く扱える、とかそういう感じかな?ラッキー♪これで俺も完全に魔法使いだ♪まぁ、魔力欠乏状態になったら洒落にならないから、調子には乗らないけど。


そこに、ジェラルリードちゃんが影を使った転移魔法で側にやってくる。

「〔ちょっと。あんた、魔法が使えたの?あたしの見せ場取らないでよ。〕」

「〔まだ覚えたばっかりだよ。それより、見せ場云々はいいから、あんまり危ない事をしないでくれよ。平気なんだろうけど、見てたら寿命が縮む。〕」

一瞬キョトンとした後に、顔を赤くするジェラルリードちゃん。

「〔バ、バーカ。あんな程度の魔法があたしに通用するわけないでしょうが。ま、まぁ?心配かけたのは悪かったけど?〕」

「〔・・・ツンデレ美少女発見。〕」

「〔うっ、うるさいっ!あんたは余計な一言が多いのよっ!まったく・・・〕それで、我が君。御身に無礼を働いた輩がおるとな?」

キャラの切り替え早いな!?まぁ、まだ少し赤くなってるトコを見ると、無理矢理なんだろうけど。

「あぁ。そうだった。採掘場と魔術師ギルドの受付の件だったね。」

「「ヒッ!?」」

当事者2人の短い悲鳴が漏れると、ジェラルリードちゃんはそちらに顔を向ける。


やっぱりいたのか。態度のデカさと横柄さから、間違いなく副ギルド長一派のメンバーだろうとは思ってたけど、仲良く並んでるとは。


またジェラルリードちゃんの姿が影に沈んだかと思ったら、採掘場にいた茶髪イケメンと受付にいた金髪イケメンが後ろから現れたジェラルリードちゃんに首を捕まれて宙吊りにされる。

「貴様らか?我が君に不遜な態度を取った愚か者は?」

「「ヒッ!?ヒィアァァァッ!?」

一瞬でパニックに陥ったのか、イケメン2人は手足をメチャクチャに振り回して暴れる。

「五月蝿いねぇ。」

暴れる2人を同時に副ギルド長に向かって投げつける。

「「「ギャッ!?」」」

地面に3人が倒れた瞬間に、神速で移動したジェラルリードちゃんが3人をまとめて上空に吹き飛ばす。

「フフ・・アハハ・・・アハハハハハハハハハハッ。」

狂ったように哄笑を上げて、恐怖に硬直していた他の副ギルド長一派の面々に魔法による突風を叩きつけ、全員を壁まで吹き飛ばす。その風の勢いで上空の3人の落下速度は緩められ、地面に体を強打する程度で空から地上に戻る副ギルド長とイケメン2人。当然、地面に落下した際の衝撃でのたうっている。


そのまま落としたら死ぬぞ?とか思ったけど、そういう手に出るわけね。他を攻撃してるから、当事者達にはまさか落下の衝撃緩和の為に風を起こしたとは考えられないだろう。直前の狂ったみたいに楽しそうな笑い声が、尚更にそんな印象を持たせない。っつーか、メチャ怖です。


それから、副ギルド長一派は僅かばかりの抵抗を見せてみるが、ジェラルリードちゃんは神速の動きで魔法を完成させなかったり躱してみせたり、発動直後に打ち消してみせたりと、悉く無駄な行為である事を示していった。逃げる者には、影から背後に出現して何かを囁いて膝から崩れ落ちさせたり、稲妻の魔法で痺れさせて身動きができなくしたところへ、冷笑を浮かべながらゆっくりと近付いていったり。


完全にホラー映画の1シーンだ。リアルで見ると怖過ぎる。これは絶対にチビってる奴いるぞ。演技だと分かっていても、正直、逃げ出したくなる瞬間が多数です。レンシディオさんなんか、頭を悩ませられまくってた敵対勢力相手な筈なのに、完全に同情してるし。


さらに、金髪イケメンが捕まって血を吸われたところで、副ギルド長一派の戦意は完全に打ち砕かれた。へたり込んで、壁に背中が当たっているのにも構わず必死に後退りをする者、泣き喚きながら外への扉を叩く者、頭を地面に擦りつけて無闇矢鱈に謝罪の言葉を喚く者等々、正に阿鼻叫喚。

しかし、そんな中でも死人はゼロ。全員が軽傷を負ってはいても、重傷者すらいない。ただ、心だけが完全にへし折られている。


そんな中、副ギルド長が地面を這いずって、俺達の前にやってくる。恐怖の余りに立てなくなってるらしい。顔が涙と涎でグチャグチャだ。目の前までくると、その顔を地面に擦りつけた。

「わ、私がま、間違っており、おりり、おりまし、ました。貴方様方へへ、へのの、へのぶ、ぶ無礼の数々はど、どの、ど、どのようにに、しし、してでも望まれる形でつ、つぐ、償わせていただだ、いただきます。ギ、ギル、ギルド長様。こん、今後は貴女様にぜ、絶対のちゅ、ちゅう、忠誠をちちか、誓わせていただきま、ます。も、もう、ももも、もう2どどどど、2度とさ、逆らうよう、ような事はいた、いた、致しません。で、ですのででで、ど、どうか、いいい、命ばが、ばかりは、おおおお、お助けをぉぉ。」

副ギルド長の様子を見た、まだ我を失っていない面々が次々と這いずってきて、贖罪の言葉と忠誠の誓い、命乞いをそれぞれに訴えてくる。

「あなた方は自分の力を誇示して、弱い者を虐げていたとも聞いていますが・・・その虐げられていた人達は許しを乞いませんでしたか?」

俺の冷たい言葉に、土下座状態の連中の助けを乞う言葉が途切れる。

「その言葉に、あなた方はどのように答えたんでしょうねぇ?」

副ギルド長達の伏せられた体が大きく震え始める。

「それと同じ答え、なんていうのはいかがですか?」

俺の答えに、地面に伏している面々は絶叫するように、今後の全ての態度を改める事や今までに虐げてきた人達への謝罪の言葉、命乞いの言葉を吐き連ねる。


そう、こいつらはまだ自分が強者だった時の振る舞いを、全く省みてはいなかったのだ。あくまでも、強者が弱者に従うという、言うなれば、副ギルド長の掲げた主張の下に、忠誠を誓おうとしていたに過ぎない。

しかし、それでは意味がないのだ。レンシディオさんの話を聞いて、何よりも気に入らなかったのは、弱者が虐げられ、強者が我が物顔をしているという状況。それを当然とするクソ野郎と実行する馬鹿。それを根本から叩き潰す。その為に派閥争いなんてどうでもいい事に、敢えて首を突っ込んだんだから。

勿論、セイギノミカタなんてつもりは更々無い。やり方が正しいなんて思ってない。単純に、俺がそういう目に遭わされてきたから気に入らない。それだけの理由だ。


「そうですか。そこまで嫌ですか。それでは、一旦は中断しましょう。しかし、あくまでも[中断]。意味は、分かりますよね?」

「「「「「「「「「「はいぃぃっ!!!」」」」」」」」」

這いつくばっていた全員の返事が重なったところで、俺はジェラルリードちゃんに目配せをする。ジェラルリードちゃんは意図を察してくれたんだろう。頷き返してくれる。これで結界は解除された筈だ。

「では、今日はもうお帰りいただいて結構ですよ。以後の振る舞いはレンシディオギルド長に監視をしていただきますので、よく覚えておいてください。」

「では、我が君よ。ごきげんよう。」

「ああ。またね。」

ジェラルリードちゃんは影に沈んで姿を消し、俺達は這いつくばったままの副ギルド長を放置して、魔術師ギルドを後にした。


その後、そのまま4人で一旦満月亭の俺の部屋に集合して、ジェラルリードちゃんを呼ぶ。ジェラルリードちゃんは再び影の中から姿を現す。

「お疲れ様。助かったよ。」

「タカシこそ、なかなかの冷徹ぶりだったわよ?もし、最初の謝罪だけで終わらせてたら怒ってたけどね。」

レンシディオさんをソファーに座らせて、ベットに俺が腰掛ける。その両脇にセレアとリア、ジェラルリードちゃんはまた膝に座ってくる。

「あ、あの、そ、の・・・・」

「あぁ。どういう意味かって?」

「は、はい。」

「タカシはあたしにこう言って頼んだのよ。<力ある者の道理が通らない方がおかしいとか言ってるクソ野郎と、それに乗っかって馬鹿をやってる阿呆の鼻っ柱を叩き折って、以後一切調子に乗らせないようにしたい>ってね。」

「あ、なるほど・・」

「ご主人様は最初から・・・」

「別に、魔術師ギルドの運営とか他に迷惑が掛かってるなんてのはどうでもいい、って程じゃなくても、それだけなら関わらなかったんじゃないの?」

俺は思わず苦笑を漏らしてしまう。

「まぁ、多分そうだろうな。レンシディオさんが困ってるっぽかったから、手助けになれるようならある程度は何かをしようとは思ってたけど。正直、派閥争いだけの話なら、対応策をいくつか一緒に考えておしまいにしてたと思うよ。」

「ご主人様は力に任せた理不尽を許せなかったのですね。」

「セレア。その言い方は本質的な的を得てないよ。」

「え?」

「昔、俺が似たような目に遭った事があるから、そういう連中が気に入らない。それだけの事なんだ。まぁ、ぶっちゃけた言い方するなら、私怨まみれの八つ当たりだな。」

俺の言葉に、爆笑するジェラルリードちゃん。


な、何?何がそんなにツボに嵌まったの?


「あ~あ~もう。お腹痛い。あんたって、ほんっとに変。サイッコー。飾らないにも程があるわよ。」

笑い過ぎて溜まった目尻の涙を拭いながら言うジェラルリードちゃん。

「でも、コレが本音だし。正義の味方とかそんなつもりは全く無いし、セレアが言ってくれたみたいな綺麗な理由でもないもんよ。」

「うんうん。や~もう、そうストレートに言われちゃうと、ホントにストンと納得しちゃうわ。」

「・・・タカシ様って、たまに凄く捻くれてるって言われませんか?」

「言われる。なんでだろうなぁ?素直に生きてるつもりなのに。」

俺の返事に、何故かガックリと肩を落とすリアとセレア。

「こんなに心根からお優しい方なのに・・・」

「八つ当たりで他の人の為になるなんて、聞いた事ありませんよ・・・」

「ま、いーじゃないの。あたしはますます気に入っちゃったわ。」

「しかし、これで少なくとも魔術師ギルド内では、立場や力の弱い人が無闇に虐げられる事はなくなる筈です。これを善行と言わずに何と言えばいいんでしょうか?ご主人様はただの八つ当たりの結果だと仰りそうですが。」

むぅ。セレアめ。とうとう俺のセリフを先読みするようになったか。

「まぁ、どう捉えるかは人それぞれよ。副ギルド長一派の連中にとっては悪夢以外の何物でもないでしょうし、タカシはきっと無慈悲な悪鬼羅刹扱いよ?」

「悪鬼羅刹とまで言うか。」

「だって、その子は思ったんじゃないかしら?最初の謝罪の後に、これ以上追い込む必要は無いのにって。ねぇ?」

ビクンッと体を震わせ、項垂れるレンシディオさん。

「・・・・はい。正直に申し上げると・・・・虐げられてきた人達もこれで守れると思いましたし、ギルドの運営も問題無くなると・・・・でも、あそこで終わらせていたら、きっと私の目の届かない所では・・・・・」

「それはここまでやったとしても、可能性が無くなるわけじゃないですよ。」

「しかし、大半の人達はあの追い込まれた恐怖を忘れる事はできないと思います。自分達の行いが自分にまともに返ってきた瞬間だったんですから・・・実際、あの後の贖罪の言葉と今後を改める誓い、助けを乞う言葉は必死で、本当に心から叫んでいたと思いますから・・・」

「まぁ、恐怖が抑止力ってのもどうかとは思いますけどね。本来なら、当人の良識と良心から事が起こらなくなるのが1番なんですし。」

「それこそ綺麗事だけどね。」

また苦笑が漏れる。さすがに最年長だけあって、言う事が現実的だ。

「まぁ、だから、セレアとリアがどう捉えるかも自由なわけよ。誉め称えまくって惚れ直したところで、捉え方までこいつがどうこう言えるもんでもないし。タカシ自身が認めようが認めまいが、関係無し。」

「「あ・・・はいっ。」」

若干沈み気味だったセレアとリアの表情が明るく輝く。

「そーでしょ?それとも、あたしがさらに気に入ったってのまで、セレアが口にした表現みたいに否定できる?」

「ぐ・・・・」

くそ。何も言えねぇ・・・年の差が絶対的な戦力の差だとでも言うのか!?

「そうですねっ。ご主人様がどのように仰られようと、私にとっては素晴らしい方で、最高の大好きなご主人様なんですっ。それは絶対に変わりませんっ。」

「はいっ。それなら、タカシ様が捻くれているところも可愛くて大好きですっ。」

「うわ。別にヒネてるトコは好きになんなくていいんじゃないのぉ?」

「いいんですっ。そういう所もタカシ様らしいと思ったら、愛しく思えてきましたからっ。」

自信満々に言い切るリアに、大きく首肯するセレア。


うわぁぁぁぁぁぁっ!!なんか超絶に照れくさいんですがぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!なんかこう、布団の上でゴロゴロ転げ回りたい感じですよっ!?!?!?


「ん~。ま、それもそうね。」

「・・・・なんだか、羨ましい・・・」

ソファーから立ち上がるレンシディオさん。

「今回は本当にありがとうございました。お約束は必ずお守りします。真祖吸血鬼(ハイ・デイライトウォーカー)の存在が恐ろしいからではなく、タカシ様への私なりの精一杯の誠意の証として。」

「あ、ありがとうございます。」

「ですから・・・リスタニカに立ち寄られた際には、また皆さんで我がギルドに是非お立ち寄りください。次にお会いする時には、皆さんを歓迎させていただきたいですから。」

「はい。ありがとうございます。是非。」

レンシディオさんはジェラルリードちゃんに向き直り、ゴクリと喉を鳴らし、頭を下げる。

「ジェラルリード様には、改めて初対面時の非礼を心からお詫び致します。大変な失礼を致しました。」

「へ?」

「私などでは考えが全く思い至らない所にまで思考を巡らされ、相手の真意を悟り、汲み上げ、助けにもなられる方を、勝手な思い込みで軽視しておりました事、誠に申し訳ございません。」

「あ、う、うん。もういいわよ。」

「ありがとうございます。では、私はこれで失礼致します。皆さんの旅路が無事に進まれる事をお祈りしております。」

レンシディオさんは言い切った後、再び一礼をして去っていった。


どうしたんだろ?なんか急に雰囲気が変わった気がしたけど。それに、さっきのって心からの真剣な謝罪だったよな?

圧倒的な力を持つジェラルリードちゃんにすら過保護気味な主人公ですが、気に入らないものに対しては徹底的に潰しにかかります。これは主人公が正義なのではなく、単に我儘だからなのでしょう。主人公は自分の倫理観に従って動いているだけですから。

レンシディオさんが考え方を改める切っ掛けになったのは、主人公達の関係性を目の当たりにした事です。心から信頼し合える人は誰にとっても欲しいものですよね。


では、これにて第三章 第十五部の幕を下ろさせていただきます。最後までお付き合いいただいた皆様に感謝です。また次もお付き合いいただければ幸いです。

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