魔術師ギルドの依頼 ~完遂編~
ジェラルリードちゃんの協力の下、本来の目的である依頼が完遂されます。
第三章 第九部<魔術師ギルドの依頼 ~完遂編~>是非最後までお付き合いくださいませ。
「よし。じゃあ、まずは魔石の回収、ちゃちゃっと済ましちゃいましょ。」
そう言って立ち上がるジェラルリードちゃんに続いて、俺達も腰を上げる。
「あ、でも、その前にっと。」
パチンッと指を鳴らすと、ジェラルリードちゃんを発生源にして何かが強い勢いで流れていく感覚がする。ただ、感覚だけで実際にはそよ風1つ起こってはいない。
「今のはなんだ?何かが凄い勢いで流れていったような・・・」
「ま、魔力の流れです。それも、とんでもなく洗練されている・・・これだけの魔力操作を指を鳴らすだけでやってしまうなんて・・やっぱり真祖ともなると、私達の常識は通用しませんね・・・・」
うむ。なんだか凄いって事しか分からん。
「あはは。まぁ、長い時間を在り続けてるわけだしね。とりあえず、これでこの中のアンデッドは全部片付いたから、安心して付いてきなさい。」
「今のでか!?」
「そっ。まぁ、ほとんどあたしが生み出した奴らばっかりだけど。いくら未処理の魔晶石でも短期間じゃあんな数の下級アンデッドも生まれやしないから、出てく前の後片付けよ。」
「すげ・・・」
あとどれだけのアンデッドが残ってたのかは分からないけど、まだまだ先はありそうだし、ここまでで俺達が倒したのよりも数が少ないって事はないだろう。それを一瞬でとか、マジで半端無いな。さすがは真祖吸血鬼。戦う事にならなくて、本ッッッ当に良かった。
それから、ジェラルリードちゃんの先導の下、最奥の採掘現場に到着。もう警戒の必要がなくなったからリアが灯りの魔法を使おうとしたが、ジェラルリードちゃんがまたも指を鳴らすだけで採掘場全体を明るくしてくれた。真祖の指パッチン、パネェっす。
「魔晶石は回収済みなのか?」
「勿論。」
懐から魔力の光を宿すエメラルドのような綺麗な宝石を出す。
「綺麗な宝石だな・・・これが?」
「そ。魔晶石。知ってた?魔晶石が魔力を生み出し尽くすと魔石になるのよ?」
「「え!?」」
セレアとリアの驚きの声が上がる。
「へぇ~。この宝石があんな石コロにねぇ。」
「・・・・興味津々って感じだけど、やっぱり欲しいとは思ってないのねぇ・・目の前にしたら、少しは目の色が変わるかと思ったのにさ。」
「いや、だって必要性感じないし。一生遊んで暮らせるとか言われても、この2人を解放するって目的が無くなった以上はそこまでの大金の必要性がないからなぁ。」
元の世界で嫌々な仕事をしていた頃なら話は別だけど、今はこの世界をあちこち見てみたいって思ってる以上はそんな大金を持っていても仕方がないだろう。いろんな依頼を受けていたら、またこういう出会いもあるかもしれないわけだし。
「解放?」
「ご主人様は私達を解放しようとしてくださっていたそうなんです。それも、その後の生活までお考えくださった上で、です。」
「でも、解放なんてされたくないですから。ずっと側に置いてもらえるようにお願いしたんです。」
キョトンとするジェラルリードちゃん。
「なんで?奴隷からの解放なんて、夢みたいな話でしょ?」
「普通ならそうだと思います。でも、奴隷から解放されたら、タカシ様と一緒にいられなくなっちゃいますから。」
頬を少し赤らめるリア。
「なんで?解放された後も一緒にいればいいんじゃないの?」
「最近の事ですので、ご存知無いのも無理はないかもしれませんが、奴隷以外の獣人族や亜人族が人間族と日常的な接触を持つ事が法律で禁じられているのです。」
「はぁ?なんで?」
セレアの答えに、訝しげな顔をするジェラルリードちゃん。
俺も当然初耳な話だ。前に解放を拒否してくれた時は2人の気持ちが嬉しくて、ジェラルリードちゃんが言った事にまで考えが及んでなかったけど、まさか禁止されてるとは。
「5年前に、恋人を奴隷にされたエルフがその主人の扱いを目にして逆上して殺しかけたんです。それ以来、そういった事が起こらないようにと。」
「殺せなかったのか・・・無念だったろうな・・・・」
逆上してしまうような扱いだ。相当に酷いものだったに違いない。それを止められなかった上に、そんな法令ができるような結果になったんだ。無念しか残らないだろう。
「そこか。気にする所は。」
「そりゃそうだろ。事を起こした後の結果が同じなら、せめて自分の恋人を手酷く扱う奴くらいは殺してやりたいだろ?」
ジェラルリードちゃんのツッコミにハッキリと返す。
「ハァ。あんたさ、異世界人とはいえ、一応人間族なわけでしょ?あたしが言えた話じゃないけど、同族愛とかはないの?」
「同族嫌悪なら持ちそうだけどな。この世界の人間、まぁ、分類的には人間族になるのか。人間族の大半は気に入らん。セレアに対する態度もそうだし、リアの前の主人なんか、話を軽く聞いただけでも地獄から引き摺り戻して俺の手で叩き込んでやりたいくらいだ。」
「タカシ様・・・」
嬉しそうに俺に肩を寄せるリア。
「ご主人様はいつも私達を気遣ってくださっています。私にはそれだけで充分過ぎる程です。」
セレアも反対側の肩に身を寄せる。
「・・・・仲がいいのはよぉっく分かったんだけど、人を無視してイチャつかないでもらえる?」
ジェラルリードちゃんのジト目付きの言葉に、2人は赤くなりながら慌てて離れる。
「あんたも、デレデレし過ぎよ。ちょっとは周りをみなさいっての。」
「ハッ。無理を言うなよ?こんな可愛い子が肩を寄せてきてデレん奴なんか男じゃないっ。」
胸を張って言い切ると同時に頭をはたかれた。
「自信満々に言い切ってんじゃないわよっ!分からんじゃないけどっ!」
おぅ。電光石火なツッコミ。なんか新鮮だな。
「ハァ。なんか馬鹿馬鹿しくなっちゃった。」
ジェラルリードちゃんはそう言って、採掘現場の壁に顔を向ける。
「《我が前を妨げるもの。砕け散れ。》」
ジェラルリードちゃんの力を持った言葉が発せられると同時に、目の前の壁がかなり奥まで砕け散っていく。壁が砕け散って砂と化していく中で、いくつもの拳大の大きさの石が砂の上に積み重なっていく。
「はい。これだけあれば、量は充分でしょ?」
俺達に向き直って言うジェラルリードちゃん。俺達は驚きに声も出ない。
「あ、それと、タカシ。あんたって冒険者の昇級には当然・・・興味ない、かな?あんたの場合は。」
「え?あ、う、うん。目立つの好きじゃないし。注目されるとキョドるから。」
「そっか。んじゃ、はい。これあげるわ。」
俺に自分の肩下に嵌めていた腕輪を差し出す。
「へ?」
「大昔に遺跡で見つけた遠話の魔法が籠められた腕輪よ。確か、名前はそのまんま遠話の腕輪だったかしら。こっちのと2つ1組になってるから、念じるだけでいつでもあたしと話せるわ。」
もう片方に嵌められた腕輪を見せながらいうジェラルリードちゃん。
「困った事があったらいつでも言いなさい。力になってあげるわ。」
俺は差し出された腕輪を受け取る。
「ありがと。でも、なんで?」
「ん~?気に入ったから、かしらね?面白いもの。あんた。あたしの眷属になりたくなったら、いつでもしてあげるわよ?」
冗談混じりの口調のジェラルリードちゃんに苦笑が漏れてしまう。
「そだな。それは気が向いたらお願いするよ。」
「そ。んじゃ、またね。リアとセレアも、元気にしてなさいよ?」
「「はいっ。」」
2人の返事を受けて、ジェラルリードちゃんは何やら悪戯を思い付いたように笑顔を浮かべたかと思ったら、一瞬で霧と化して出口の方に向かって消えていってしまった。
それから、俺達はジェラルリードちゃんが残してくれた魔石を大量に回収して、出口に向かって歩き始めた。これで依頼は完了だ。別れ際のジェラルリードちゃんの笑顔が気になるけど。一体何を企んでくれてるのやら。
「ジェラルリードさんの魔法は凄まじかったですね。アンデッドを消滅させてしまったのもそうですけど、魔石を掘り出してくださったのも。」
「アレもやっぱり相当凄いんだよな?」
「はいっ。物質破壊の魔法だけなら私も使えますけど、その中で目に見えない任意の物だけを傷一つ付けずに全て残すなんて、絶対に無理です。残したい物が目に見えているかどこにあるのかを分かっていれば、全力で魔力操作に集中してやっとって感じですね。」
「魔法に長けたエルフすらも軽く凌駕してしまうなんて、やはり伝説に残るような方は桁外れなんですね。」
「伝説にって、もしかして、セレアはジェラルリードちゃんが基になってる物語を知ってたりするのか?」
「はい。恐らくですけど、ジェラルリードさんで間違いないと思います。漆黒の服をその身に纏い、少女のような姿で恐ろしい魔力を振るう真祖吸血鬼の物語でしたから。イメージが違い過ぎて、記憶の中の物語とジェラルリードさんがなかなか繋がりませんでしたが。」
まぁ、それは半分は俺のせいだろう。いきなり泣かせちゃったしな。もう半分は本人の素に問題があると思います。適当に凄さアピールしてから帰らせてたんなら、間違いなく邪悪で恐ろしいイメージが付いてただろうに、素の彼女は傍迷惑ではあっても邪悪さの欠片も無い普通の女の子にしか見えないんだから。
「ま、傍迷惑な趣向は持ってるみたいだけど、邪悪ってよりは無邪気って感じだもんな。あの子は。」
「真祖吸血鬼であるジェラルリードさんをあの子扱いできるのは、きっとタカシ様だけです。お話していて、最初みたいな恐怖心こそなくなりましたし、助けていただいていた事を知った今でこそ敵愾心は全くありませんけど、あの魔力と魔法の力には畏敬の念を禁じ得ません。」
「ま、それは異世界人ならではなんでない?元の世界には魔法がなかったから、魔法に関しての凄さってのがよく分からないから。魔法全般が感動の対象だし。」
「そう言えば、灯りの魔法にも感心してくれてましたもんね。」
「うん。あれも凄いよなぁ。灯りの魔法のイメージが光の玉を出して照らすってな感じだったから、マジで感動した。」
「あ、そういうのもありますよ?そっちは比較的に簡単な魔法ですから、魔石をあんなに自然に使えてしまうタカシ様ならすぐに使えると思います。」
「マジか。そう言えば、セレアにも魔術師ギルドで魔法を覚えるのを勧めてもらってたっけ。」
「はい。宿の魔石の操作を見せてもらった時ですね。」
「リスタニカに戻ったら、教えてもらいにいこっかな。今回の依頼の通常報酬と追加報酬とでかなりの収入は得られるし。そのくらいの余裕はあるよな?」
「はい。魔法の教授にはそれなりの金額がかかったかと思いますが、今回の通常報酬分だけでも充分な筈です。」
「よぉっしっ。魔法使いデビューいってみっかぁっ♪」
「「はいっ。」」
俺の浮かれた声に、2人の返事が続いた。なんだか2人の視線が微笑ましいものを見守るような感じになってる気がするけど、突っ込んだら負けな気がするからスルー。いいんだよっ。多少浮かれたってっ。だって、魔法だぞ?魔法っ。リアが前に使ってた稲妻の魔法とかも使えるようになるのかなぁ?それとも、アレはエルフだけにしか使えない系なんだろうか?いや、それでも火の魔法は使えるようになる筈っ!基礎の四属性魔法までは教えてもらえるって、前にセレアが言ってたもんなっ。
そんな浮かれ気分で、採掘場の出口が見えてきた頃、なんだか外が騒がしいのに気付いて、一旦足を止める。
えぇぇぇ~・・・また何かトラブルですかぁ?もう結構疲れてるんだけどなぁ。
「何か、外が騒がしいですね?」
「そうですね・・・ご主人様。前を」
「交代しないよ。2人は何かあった時の為にフォローよろしく。」
「しかし」
「しかしもかかしもないの。蟻の時に言ったろ?」
「・・・では、せめて隣に置いてください。」
セレアはこれ以上は譲れないと言わんばかりの真剣な表情をしている。こりゃ折れそうにないか。
「・・分かった。でも、絶対に無茶な事はするなよ?」
「はいっ。ありがとうございますっ。」
嬉しそうな顔で剣を抜くセレア。俺も剣を抜き放つ。
「・・・飛び道具対策をさせてください。弓や投石なら何とかできる筈ですから。」
心無しか悔しそうな声で言うリア。自分が前衛に出ても足手まといにしかならない事が口惜しいんだろう。なんでこいつらはこうも俺の身を守るのを考えてくれるかな。俺がある程度以上に強いのは分かってるだろうに。嬉しいんだよ。こんにゃろう。
「頼む。それと、外に出れば、派手な魔法も使えるだろ?数が多い時はまとめてぶっ飛ばしてくれ。」
「はいっ。」
リアの声に明るさが戻ったところで、出口に向かって進み、慎重に外の様子を伺う。
出口付近には10人近い魔法使い姿の人が整然と並んで立っていた。その表情はどれも堅く、入る前に揉めた奴の姿もある。しかし、武装をしている様子もないし、臨戦態勢って感じでもない。どっちかと言えば、式典とかの整列って雰囲気だ。
「とりあえず、危険は無さそう、だよな?」
「恐らく、ですが。」
セレアの声に戸惑いが混じっている。
「モンスターや野盗の類いが襲ってきているというなら、ここでこんな列を作っている意味がありませんし、もし、出てくるご主人様に何らかの害をなそうというのでしたら、尚更こんなに目立つ形で並んでいる意味がありませんから。」
「だよなぁ。・・・ここでこうしてても意味がないし、顔を見せてみるか。罠があるとかなら、顔を見せた時の反応で少しは分かるだろ。」
「「はい。」」
返事を重ねて、リアはいつでも魔法を発動できるように杖を構え、セレアは剣を構え直す。それを確認して、俺も何があっても対処できるように剣を構える。
入る前に揉めた奴はここの魔術師ギルドでは天才とか言われてるとか言ってたから、それなり以上に重宝されているんだろう。そんな奴と揉めただけに、魔術師ギルド全体から敵愾心を持たれてしまった可能性は否定できない。油断はしないでいこう。
そして、俺とセレアが先頭に立って、出口から顔を覗かせると、並んでいた魔法使いご一同様が驚愕の表情を浮かべ、いきなり地面に平伏した。
な、何事?
「「「「「「「申し訳ございませんでしたぁっ!」」」」」」」
俺達がいきなりな行動に戸惑いの声を上げる前に、一糸乱れぬ謝罪の言葉が唱和された。
マジで一体何事ですか!?と言うか、全員土下座とか止めていただけませんでしょうか!?俺はどこぞの魔王の親とは違いますからね!?
主人公の人柄を探っていたジェラルリードちゃんでしたが、素のまま過ぎる主人公達を前にして、もう疑るのが馬鹿馬鹿しくなったようです。その分、主人公達を気に入ったのですが、何か悪戯を思い付いたようです。主人公はそれに本気の害意はないと考えて、気楽にしていますが・・・?
そして、何やら驚愕に染まって土下座してきた魔術師ギルドの面々には一体何があったのでしょうか?
では、今回はこの辺りで<小心者の物語>一旦の閉幕とさせていただきます。次回もお付き合いいただければ幸いです。




