魔術師ギルドの依頼 ~遂行編~
今回、想定外の事態が発生します。<小心者の物語>が始まって以来の緊迫感をお届けします。
第三章 第六部<魔術師ギルドの依頼 ~遂行編~>是非最後までお付き合いくださいませ。
2日後、セレアとリアの大活躍の中で、目的地の採掘場に無事到着。
ここまでの道中、セレアとリアが雑魚を蹴散らしてくれて、俺はマジで一切出番がなかった。
リアは前にパーティーにいた頃の経験なのか、動きに合わせた援護射撃が抜群に上手い。セレアの手が回ってない方には大火力魔法で一掃もする。しかも、巨大蟻の時よりも、明らかに動きがいい。あの時も天井の蟻を落としてくれて助かってたけど、今回は援護も攻撃も臨機応変に魔法を使い分けて、場合によってはセレアが前に出るのを止めて自分の魔法で一掃したりもしていた。あの時は地下だったせいで大火力魔法が使えなかったにしても、萎縮してしまっていて本来の実力が出せないでいたんだろう事が伺える。
セレアは本気で動きが速すぎ。女王蟻戦の時でも思ってたけど、あの時はやはり疲労が体を重くしていたらしい。全快時の本気のスピードで目の前から背後に回り込むと、オーガがセレアを見失ってた。あの時はチートがあるから任せる事にはならんだろうって思ってたから、俺よりも強くなったら前衛を任せる事を考えるとか言ったけど、今はとてもじゃないが自信なんか持てない。あの時に考えるって言っておいてよかった。危険な敵の時に、セレアを前衛に出すなんて事ができる筈がない。前衛の交代を迫られたら、考えた結果として嫌だって結論になったって事で押し通そう。またイジワルって言われそうだけど、ここは譲れん。
到着した採掘場は、山肌にポッカリと大きな穴が開いていて、その穴の入口付近に掘っ建て小屋が3つと井戸が1つあるだけのシンプルな場所だった。ここは街から結構遠いから、採掘作業をする時は掘っ建て小屋で休憩したり寝泊まりしたりするんだろう。普段なら魔石の採掘作業をする人である程度以上に活気があるのかもしれない。
しかし、今は採掘場内にアンデッドが出ているせいか、作業員らしき人影は見当たらず、入口に2人のローブを纏った男性がいるのみ。丸腰に見えるからただの見張りっぽいけど、見た目が《The 魔法使い》って感じだから、中からアンデッドが出てくるのを防ぐ役目でも与えられているのかもしれない。もしかしたら、掘っ建て小屋の中には交代要員もいるかもな。
俺達は入口に立つ2人に歩み寄り、俺が声を掛ける。
「冒険者ギルドから依頼を受けてきました。ここが依頼の対象となっている採掘場で間違いないですか?」
念の為の確認の言葉を口にすると、何故か男性2人は驚いた顔をする。近くで見てみたら、2人共意外と若い。17、8くらいだろうか。片方は俺側の人間のようだけど、もう片方は相当のイケメン。くそ。滅べばいいのに。
「え、ええ。間違いありません。ここがリスタニカ魔術師ギルド専用魔石採掘場です。」
モブ男仲間くんが答える。どうやら間違いないらしい。
「おい。まさか、鉄級の依頼として出されてたんじゃないだろうな?中には恐ろしい数のアンデッドがいるんだぞ。」
「おい。失礼だぞ。せっかく依頼を受けて来てくれたってのに。」
やたらと上から口調で言ってくるイケメンを諌めるモブ男仲間くん。
さすがはモブ男仲間。礼儀というものを分かっている。モブ男が礼儀を失っちゃただの勘違い野郎に成り下がってしまう為、モブ男は礼儀を弁えているのだ。対して、イケメンは多少横柄に振る舞ったところで、それが女の子からのカッコいいなんて評価に繋がったりするから礼儀に欠ける傾向にある。
無論、俺の偏見が多分に含まれている分析結果だが、この2人には該当しているらしい。やっぱり、イケメンは滅んだ方が世界が平和になるな。うん。
しかし、何故に鉄級だって思われたんだ?俺はやっぱりそんなに弱そうに見えるんだろうか?別に強さに誇りを持ってるわけでも強く見られたいわけでもないけど、見縊られるのはやっぱり男として気に入らない。だから、黙って冒険者証を提示してやる。
「銀級か。まぁ、そのくらいでないと無理な依頼だろうから当然だな。」
あくまで上からの態度を変えないイケメンのセリフに俺がイラッときた瞬間、俺の右側に後ろから前へ風が流れたかと思ったら、セレアがイケメンの喉に短いが鋭く伸びた爪を突きつけていた。爪の出し入れができるなんて初めて知った。猫みたい。
「なっ!?」
イケメンの驚きの声と同時に、今度は俺の左側から杖がイケメンに向かって突き出され、その杖の先にはこの前見た紫色の火花が散っている。しかも、前より断然激しい火花になっている。
「「ヒッ!?」」
それを見たモブ男くんまでがイケメンと同時に引き攣った声を上げる。
「ご主人様への侮辱は許しません。先程の言葉に対する謝罪と撤回を。ご存知でしょうが、狼人族の爪は人間族の喉くらいなら容易く引き裂けますので、そちらがお好みでしたら、そうさせていただきますが?」
「セレアさん。それだと、タカシ様に買ってもらった服や装備がタカシ様を侮辱した愚か者の血で汚れてしまいます。私の魔法なら骨も残さずに灰にできますから。」
セレアとリアの声は聞いた事がないくらいに冷たく、それでいて怒気を孕みまくっている。
ちょっとどころじゃなく待てぇぇぇぇぇぇぇっ!!!確かにイケメンセリフにはイラッときたけど、ブチギレ過ぎですよぉぉぉぉぉぉっ!!!!
「あ、貴方は少し離れていていただけますか?タカシ様への態度を改めさせようとしてくださった人は巻き込みたくありませんから。」
「そうですね。お早めに離れられるのをお勧めします。」
モブ男仲間くんがリアとセレアの言葉に全力ダッシュでイケメンから大きく離れる。その行動には一寸の躊躇いもない。無理もないだろう。この場合の<巻き込みたくない>というのは<警告に従わなければ巻き込むのも仕方がない>と言っているようなものなんだから。
って、冷静にブチギレてるぅぅぅぅっ!?これ、2人共我を忘れてのブチギレとかじゃなくて、おもいっきり冷静なままにブチギレだよ!!俺の今までの経験上、1番ヤバいキレ方だよ!!!
「おっ、お前らっ。獣人と亜人の奴隷の分際で、リスタニカ魔術師ギルド始まって以来の天才と言われてるこの俺にこんな真似をしてタダで済むと思うなよっ。」
この状況でも上から目線を変えないその姿勢はある意味尊敬に値するかもしれないけど、やっぱりただの馬鹿としか言い様がないと思うのは俺だけでしょうか?声が震えてるし。
って、んな呑気な事を考えてる場合じゃねぇぇぇぇっ!!!!
意外過ぎるセレアとリアの行動とブチギレ加減に、頭は動いていても体と口が完全にフリーズしていたが、自分へのツッコミでようやく再起動する。
「セレア!!リア!!ストップ!!待て!!落ち着け!!」
でも、まだ完全には復活してないらしくて単語しか口から出てこない。
「ご主人様。しかし・・・」
「タカシ様は優し過ぎます。こんな侮辱は許すべきじゃないです。」
「はい。ご主人様への侮辱には、心の底からの謝罪と前言の撤回が最低限の許容範囲です。それを拒否する輩には死を以て償わせるべきです。」
「俺はそこまで気にしてないからっ!!リアは杖を下げて、セレアは俺の側に戻ってこいっ!!頼むからっ!!!」
セレアは納得がいかなそうにだけど大人しく俺の隣に戻ってきて、リアも渋々といった様子で杖を下げる。
「おいっ!お前っ!!今すぐその奴隷どもに!?」
まだ吠えるイケメンに鋭い視線を送ると、イケメンはセリフを中断させて顔色を青くする。さっきから奴隷奴隷って五月蝿いんだよ。大体、奴隷<ども>ってなんだ?誰の事をそんな風に言ってる?
「少し、黙っていてもらえますか?依頼主側の人とはあまり揉めたくはないんですが、さっきから貴方の発言は不愉快なものばかりです。」
「あ・・・う・・」
「それに、天才だかなんだか知りませんが、それって死んだ後にも有効なものなんですか?」
俺の言葉にイケメンの顔は血の気を失い、真っ白になって膝から崩れ落ち、地面に頭を擦りつける。
「も・・・申し訳、ありません、でした。さ、先程までのこ、言葉はす、全て撤回します。」
「私は黙っていてもらえますかと言ったんですが?謝罪も撤回も結構です。貴方の声が耳障りで仕方がない。」
トドメの一言に、イケメンは地面に頭を擦りつけたまま固まる。
またやっちまったよ・・・セレアとリアを軽蔑するようなセリフには耐性ができそうにないなぁ。まぁ、そんなものを作る気もないんですが。
「さて、脱線しまくっちゃったけど、依頼を片付けようか。」
「「はいっ。」」
2人のいつも通りのいい返事を受けて、俺が先頭に立って採掘場内へと足を進めた。2人の目が何故かウットリしていたのが気になるが、ここからは気を引き締めないといけないからスルーしておく。
幸いな事に、採掘場内には一定間隔で光魔石が設置されていた。魔力が切れていて、ただの石コロと化していたが、入口側から順番に魔力を供給して視界を確保しつつ、先へと進んでいく。
魔力を供給するのは俺。先がどれくらいあるのか、アンデッドの駆除にどれくらいの時間を要するのかも分からないという、この状況。そんな中で、死霊なんかの魔法でしか対処できない相手がいる為に、リアの魔力をどこまで温存できるかが生死を分けるかもしれないからと、リアの灯りの魔法ではなく、俺が光魔石への魔力供給して視界を確保する事にしたのだ。
それなりに奥へ進んだ時、セレアが顔を顰めて立ち止まる。
「この先から腐敗臭が漂ってきます。恐らく、ゾンビです。」
うわ。アンデッド系モンスターって話だったから覚悟はしてたけど、やっぱり出たか。臭いと見た目がキツそう。
「ゾンビか。臭いが耐えられそうになかったら、無理はするなよ?」
「あ、それなら大丈夫です。対処できます。」
俺の言葉に、リアが意外な事を言う。
「対処?」
「はい。魔法で嗅覚を一時的に麻痺させます。そうでもしないと、密閉空間ですからセレアさんでなくてもキツいかもしれませんから。」
「しかし、それでは索敵ができなくなってしまいませんか?」
「普通の光魔石だけの光なら視界が充分じゃなくて危ないかもしれませんけど、タカシ様がとんでもなく明るくしてくれてますから、視認してからでも充分だと思います。ゾンビやスケルトンの動きは速くはないですし。」
リアの説明に疑問を唱えたセレアが首肯する。しかし、これ、とんでもなく明るいのか。充分な光量を確保したいって思ってたら宿の光魔石よりも明るくなったから、そういう仕様なのかと思ってたんですが。道理で、俺が魔石を光らせた時に驚いた顔をしてた筈だ。しかし、その後、何も言わずに諦めた顔で軽く首を振ったのはなんで?ツッコミを入れたら負けとかそういう感じ?まぁ、いいけど。
「んじゃ、頼むよ。リア。」
「はいっ。《遍く体に宿りし精霊よ。我が意志の下、腐りし臭気を遮り絶て。》」
リアの魔力を込めた言葉の後、全員の体が一瞬だけ淡く光る。
「あ、凄いです。ご主人様やリアさんの匂いは嗅ぎ取れますが、先程までの腐敗臭だけが無くなりました。」
ほぉ。凄いな。特定の臭気だけを遮断できるのか。
「はい。これで、今日1日は腐敗臭だけを嗅ぎ取れなくなりました。」
「丸1日もか?」
「はい。体の感覚を麻痺させて遮断するだけなので、嗅覚の一部だけなら大して魔力を使う事もありませんから。」
「そっか。ありがと。助かるよ。」
「ありがとうございます。」
「はいっ。」
嬉しそうに笑顔を浮かべるリア。しかし、そこに奥から何かが足を引き摺るようにして近付く音がしてきて、全員の表情が引き締まる。
「見た目のインパクトだけは覚悟しとかないとな。」
「死霊が出るのかどうか分かりませんけど、やっぱり魔力は温存しておいた方がいいですか?一気に焼き払う事もできますけど。」
「精神衛生はその方がいいんだろうけどな。魔法でしか対処できないのが出てきた時に頼れるのはリアだけなんだ。我慢してくれ。」
「「はいっ。」」
そこからの戦闘の詳しい描写は俺の精神防衛の為に避けるけど、一言で言うなら、エグい。リアがニオイを麻痺させてくれてるおかげでギリギリ耐えれたけど、そうでなかったら多少のグロ耐性ができてきたとはいえ・・・止めておこう。思い返すだけでも気分が悪くなる。
んで、奥に進めば進む程にアンデッドの数も種類も多くなっていった。人型はテンプレで、犬や猪、熊などの動物、さらにはゴブリンなんかのモンスター版まで出現して、ゾンビのレパートリーは超豊富。しかし、どれも動きは鈍く、止まってんのかというくらい。某海外映画みたく元気に走ったり跳ねたりする奴とかがいなくてよかった。あんなのはゾンビじゃない。
スケルトンもゾンビと同等種類がいるけど、こっちは骨だけだから然程のインパクトはない。しかし、関節部分とかはどうやって繋がってんだろ?
さらに、食屍鬼なんてのまで出てきた。食屍鬼はゾンビの上位種らしく、ゾンビよりは動きが速く、見た目の醜悪さも上をいく。ゾンビが単なる腐った死体なら、食屍鬼はそれに邪悪さを顔に塗り込んだような感じだ。まぁでも、あくまでゾンビよりは速いって程度だから雑魚には違いない。ゾンビよりはタフな気もするけど、大差がないし。
しかし、1体1体の強さは大した事がなくても、際限無く湧いて出てくるのは精神的にしんどい。見た目がエグい分、蟻の時よりもキツいかもしれない。
立て続けに出現するアンデッドの群れを全滅させて、増援が止んだ後、スプラッタな戦闘跡地から少し移動して、手近な岩に腰掛けて小休憩を取る事にした。
「キリがないな・・・」
「はい。強さは問題ありませんが、数と外見の醜悪さがなんとも言えないです。」
げんなりした様子で同意を示すセレア。
「ここって、元はこんなにアンデッドが湧いてたわけでもないよな?」
「はい。こんなにアンデッドだらけだと採掘に支障が出るどころの話じゃないですし、今回の依頼がアンデッドが出てきて手に負えないからっていう理由からのものでしたから。」
リアもグッタリしながら答えてくれる。元々後衛なのに、魔力温存の為に彼女も剣を振るっているから余計にだろう。
「だよなぁ。なんでこんなにアンデッドだらけになってんだか・・・」
「採掘作業の過程で魔水晶の近くまで掘り進んだせいだと思います。」
お?リアの口から、なんか凄そうなアイテム名が出てきたぞ。
「魔水晶って?」
「あ、はい。魔水晶は魔石の上位アイテムで、同じ種類の魔石よりも高い効果が出ます。それに、自然の中に漂う魔力を吸い寄せる性質もあるので、それ自体が魔力を宿しています。その為、使う時の魔力を扱う力が魔石程には求められません。」
「へぇ~。かなりの便利アイテムなんだな。」
「はい。ただ、きちんと処理をしないで1つの場所に一定期間以上放置しておくと、その魔力に当てられてアンデッドが際限無く出現してくるんです。」
げ。なんてアイテムだよ。呪われたアイテムなんじゃないのか?それ。
「あ、でも、きちんと処理さえすればそんな事には絶対になりませんよ?私の生まれたエルフの森の集落にも魔水晶はありましたから。」
俺の引き攣った表情を見て、何を思ったのか察したリアが補足してくれる。
「なるほど。でも、魔石と同じく採掘しなきゃ見つかんない物なのに、さっさと魔水晶を見つけないと処理もできないよな?それが近くまで掘り進んだだけでもアンデッドが湧くって事は、こういう状況ってもしかしてあんまり珍しくない?」
「魔水晶自体がそんなに多く見つかるものでもないですから、頻繁にって事はないと思います。ただ、魔水晶が見つかる前にはよくある事ではありますね。」
うわぁ。やっぱりよくあるのか。罰ゲーム付のアタリクジみたいだな、魔水晶。
「なかなかハードなんだなぁ。」
「・・・・でも、この状況は考えてみたら少しおかしいですね・・・・」
「おかしい?何が?」
「アンデッドが発生し始めたら近くに魔水晶がある証拠ですから、普通は採掘のペースを上げて早い内に魔水晶を回収して処理をしてしまうので、ここまでアンデッドが増える事はない筈です。放置していたら際限無く出現するのは確かですけど、アンデッドの発生するペースはそんなに早くないので、普通は増えすぎる前に魔水晶を発見できます。」
「なるほど。」
「依頼が出されたのが4日前で、その時点でもう手に負えなくなっていたという事でした。依頼を出すのが遅かったのかもしれませんけど・・・」
できれば、その理由であってほしいんですが。普通よりもアンデッドの発生するペースが早いって話になると、怖い話になる気がする。
「もし、アンデッドの発生ペースが普通と違うって事なら、発生源が別にあるのかもしれないって事にもなります。そうなったら、危険度が段違いになってしまうかもしれないんです。」
やっぱりそうなるか・・・
「ちなみに、その危険度が上がる一例は?」
リアの表情が強張る。
「リッチや吸血鬼の存在、です。」
「リッチと吸血鬼ですか!?アンデッド系モンスターの最上位種じゃないですか!?」
セレアの悲鳴に近い声が上がる。
「あくまで、一例、ですけど。それなら、正直、撤退した方がいいと思います。今の武器ではまともにダメージを与える事すら難しいですから。」
「よし。んじゃ、撤退しよう。」
セレアとリアが俺の方を驚いたように見る。
「無理に危険を冒す必要がない。」
「で、でも、まだ可能性の話ですよ?」
「可能性があるんなら撤退の理由としちゃ充分だよ。まともに戦えない相手がいるかもしれないのに、対抗策も講じずに突っ込むなんて馬鹿としか言い様がない。」
俺の言葉が終わると同時に、周囲に感じた事のない気持ちの悪い空気が発生して目の前に霧が集まり、人の形となる。
「へぇ。人間族にしては賢明なようねぇ。」
俺達が咄嗟に立ち上がり、臨戦態勢になるのと、そいつから声が発されたのは同時だった。
「う・・・そ・・・・」
リアの顎から汗が滴り落ちる。
「ふぅん?さすがはエルフ。妾がただの吸血鬼などではない事を悟ったようねぇ。」
リアの体が小刻みに震え、セレアも顔色を青くしている。そいつから吐き出される圧倒的な存在感にプレッシャーを感じているのだろう。確かに、俺でさえこいつが普通じゃないのが分かる。強い。
「妾の名乗りを受けられる事を光栄に思うがいいわ。妾の名はジェラルリード。高貴なる闇の眷属、不老にして不死の存在。そして、吸血鬼の真祖たる者。さぁ、下等なる人種族よ。妾の贄となり、僕となりなさい。」
そう言って、纏った外套大きくはためかせ、長い牙を覗かせて笑みを浮かべた。
出ました!作者主観におけるファンタジーの王道第二段、真祖吸血鬼!!
しかし、いつもなら絶叫している主人公が妙に冷静です。真剣モードなのでしょうか?
次回の展開が気になる所で、<小心者の物語>一旦の閉幕とさせていただきます。次回もお付き合いいただければ幸いです。
2016/04/13 一部修正しました。




