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魔術師ギルドの依頼 ~出発編~

主人公が固めていた決心の1つが、今回で完全な無駄に終わります。主人公なりに彼女達の事を思っての事だったのですが・・・


第三章 第五部<魔術師ギルドの依頼 ~出発編~>是非最後までお付き合いくださいませ。

怠惰極まりない1日を過ごした翌早朝。当初の予定から1日遅れで、俺達は採掘場目指してリスタニカの街を出発した。

特に期日のない依頼だから問題はないんだけど、遅れた原因が分かっていながら改善できる気もする気もない辺り、ダメ人間に向かって突っ走り始めてる気がするが、気にしたら負けって事で。


リアにはその怠惰に過ごしていた間に、俺が異世界人だって事を話して、隠していた事を詫びた。

驚いていたリアだったけど、複眼の宝玉について知らなかった事や魔法について疎い事、何より宝玉の加工をほぼ一瞬で簡単に終わらせるという異常な現象についてが異世界人の特殊能力という事で納得いったらしく、あっさり信じてくれた。

それに、それを隠していた事も、事情が事情なだけに当然の事だと言ってくれて、むしろ、打ち明けた事を信頼の証として受け取ってくれたようで、喜んでくれていた。


街を出てからしばらくの間は、王都周辺同様にのどかに進める。まだ王都から近い事もあって、治安はいい方なんだろう。ピクニック気分で進んでいると、不意に何かに気付いたように隣を歩くリアが俺を見上げる。

「タカシ様?」

「ん?何?」

「タカシ様は召喚されてこの世界に来たって言ってましたよね?」

「? おう。そんな事言われたからな。」

ちなみに、その時に着ていたヨレヨレのスウェットはまだリュックの底に眠っている。なんとなく、捨てられないでいるのだ。着心地が気に入ってたし。

「誰に召喚されたんですか?召喚されたって事は主がいる筈ですよね?」

「あ。言われてみると、確かにそうですね。それなのに、ご主人様が初めは路頭に迷う所だったというのはどういう事なんでしょうか?」

「あぁ。そういや、それは言ってなかったっけか。」

「お聞きしてはいけなかったでしょうか?」

「いや。単に言ってなかっただけ。王宮の奴らだよ。」

「「え?」」

疑問の声がハモり、2人してキョトンとした顔になる。そんなに意外?

「そこの誰かまでは知らないけど、同時に召喚されたもう1人と一緒に国王の前まで連れていかれたから、まぁ、国に関係してる奴だろうな。」

「そ、それでどうしてそんな境遇に!?それに、王宮魔術師が行う異世界人の召喚魔法と言えば、勇者召喚以外にはない筈ですよ!?タ、タカシ様はも、もしかして」

「あ~違う違う。期待を裏切るみたいで悪いけど、俺は勇者じゃなかったらしい。だから、用無しって事で放逐されたんだ。だから、最初は本気で途方に暮れてたんだよ。アンナちゃんが助けてくれなきゃ、もしかしたらマジで今頃野垂れ死んでたかもしんない。だから、アンナちゃんは命の恩人ってわけ。」

驚きの表情だったリアとキョトンとしていたセレアの表情が、俺の話を聞いている内に怒りに染まる。

「ご、ご主人様を、よ、用無し、ですか?」

プルプルと全身を震わせながら、拳を固く握り締めるセレア。リアに至っては、杖を固く握り、魔力が漏れ出しているのか、杖の先からは紫色の火花が散っている。メ、メチャクチャ怖いんですが。

「・・・・・・広域殲滅魔法・・王宮を消滅?・・・魔法対策がされている筈・・・・許せない・・・・局地殲滅魔法で玉座の間を・・・・・」

「・・・ゆ、許せません・・・私のご主人様を・・・・・然るべき報いを・・・・闇夜に・・・暗殺の成功率も・・・・」


何やら物凄く物騒な独り言が聞こえるんですが!?復讐を考えてはいますけど、殲滅とか暗殺とかそんな大それた事は考えてませんよ!?!?


「ちょっ、お、落ち着け?2人共。いいか?放逐されたおかげで、俺はセレアとリアに逢えたんだから、そこにだけは感謝なんだぞ?」

俺の言葉に、憤怒の表情から一瞬で赤くなって嬉しそうな照れた様子に変わる2人。

「そ、そんな。私こそ、ご主人様に、その、お逢いできたのが・・その・・何よりの、幸せ、です。」

「わ、私もタカシ様に出会えて、凄く、あの、その、えと・・・幸せ、です。」

もじもじするセレアとリア。

ふぅ。素直な子達で良かった。しかし、まさか、ここまで怒ってくれるとは。非常に嬉しいんですが、冷や汗が出たよ?だって、2人共、目が本気(マジ)

「俺も、そう言ってくれるセレアとリアに逢えて幸せだよ。」

言いながら同時に2人の頭を撫でる。

「「はいっ。」」

抱きつきたいのを我慢しているようで、目に見えてウズウズする2人。いくら平穏だと言っても、道中は何があるか分からないからな。

「・・・でも、不思議です。勇者召喚の魔法は本来1人しか召喚できない筈です。さっき、タカシ様はもう1人と一緒にって言ってましたよね?」

エルフだけあって、やっぱりリアは魔法には詳しいらしい。

「うん。大臣もそんな事言ってたな。どっちかが何かの間違いで紛れ込んだ奴だって。だから、聖剣を抜けるか試して、先に挑戦したもう1人が抜いた。聖剣を抜けるのは勇者だけらしいじゃん?」

「はい。そんな伝説がありますから、多分それはそうなんだと思います。」

「おかげで、俺は挑戦する事もできなかったな。まぁ、抜けたとも思えんけど。」

「ご主人様なら抜けない方がおかしいと思いますが。」

「同感です。いえ、むしろ、タカシ様に選ばれなかった聖剣に同情します。」

セレアとリアの俺に対する評価がおかしい。高過ぎるにも程がある。所詮は中の下のモブ男その1だよ?高評価はむず痒いからヤメテ。ハズイ。

「それに、勇者召喚は究極魔法の1つです。星の配置や発動のタイミング、膨大な魔力が揃って初めて召喚が可能になって、それでも成功するとは限らないと言われています。」

マジか。そんな凄い魔法で呼び出されたのか。

「そんな魔法で召喚されたタカシ様がただの間違いだなんて事がある筈がありません。その大臣は間違いなく究極の愚か者です。」

「ん~。ま、何でもいいさね。今、こうしてるのが楽しいし。」

2人はまた少し赤くなる。いちいち反応が可愛いなぁっ。ここが宿なら押し倒してるぞ?

「ん?でも、その勇者召喚って魔法は、逆に言えば、条件が整えば他の奴でも使えるって事か?成功するかどうかはともかくとして。」

「え?あ、はい。多分、ですけど。勇者の話は伝説やお伽噺の中にしかありませんけど、こうしてタカシ様が召喚されている事を考えたら、実際にあった出来事が元になっていると考える方が自然ですし、この国に限らずあちこちに勇者の物語はありますから。」

ふむぅ。やっぱりそうなのか。微妙に不安な話だな。チート発動が俺だけの特権なんて事は有り得ないだろうから、もし、俺みたく自由に動き回ってる奴が他にもいて、そいつがチートを悪用するような奴なら厄介極まりない。まぁ、発動にかなり厳しい条件があって、しかもそれが成功しない事もあるって事は、少なくとも数は多くはない筈だけど、他にはいないとは言えない。俺以外に存在が確定している異世界人が1人いるのだから。まぁ、今考えても仕方がないか。

「そっか。」

「・・・会いたい、ですか?もし、他にも召喚された人がいたら。」

「ん~・・・どうかな。仮に俺と同じ世界から来たって奴がいたとしても、それが都合良く友人とかってわけもないだろうし、いい奴だとも限らないからなぁ。困ってるような状況なら助けてやりたいとは思うけど、捜してまでって気にはなれないかな。」

どこかホッとしたような顔をする2人。

「よかった・・・タカシ様と同じ世界の人が見つかったら、その人と一緒に帰りたいと思ったのかと・・・」

あ。そんな風にも聞こえるか。普通なら、同郷の人間がいればそう考える事もあるだろうからな。

「ごめんごめん。そういうつもりで聞いたんじゃなかったんだ。それに、あんまり帰りたいとか考えた事もないから、仮に誰か見つかって帰りたいとか言われても俺は帰らないよ。」


そう。最初から割と追い詰められてたせいか、帰る方法を探そうとかって事もほとんど考えた記憶がない。国王と大臣には絶対に復讐してやると誓ったものの、まずは生きる手段を見つけないとヤバイっていう状況だったし。それに、今はセレアとリアが側にいてくれている。

対して、元の世界では彼女どころか、女友達すらいない上に、気の置ける友人というのも別にいない。さらに、家族仲があまりよくなかったから、正直、家族に執着も愛着もない。仕事に関して言えば、やりたくてやっていたものでもないから、むしろ、清々してる程だ。

なんか改めて考えてみると寂しい事この上ないが、それだけに帰る理由も見当たらないのだ。


「「はい。」」

「しかし、ご主人様の気が変わられたら、その時は1つ、我儘を聞いてもらえませんか?」

随分と真剣な顔をするセレア。

「何?まぁ、俺の気が変わる事なんてなさそうだけど。」

「ご主人様のお邪魔には決してならないようにします。ですから・・・どうか、その時は私も連れていってください。」

「へ?」

とんでもない発言に、思わず足を止めてしまう。

「わっ、私も一緒に連れていってくださいっ。タカシ様の邪魔なんて、絶対にしませんっ。ご迷惑もお掛けしませんっ。だから・・・」

リアまで至極真剣な顔で言ってくる。

「お、おいおい。仮定の話だとしても、そりゃ言い過ぎだ。」

「言い過ぎなどではありませんっ。私はご主人様を一生お守りすると誓いましたっ。・・・・ずっと、お側に置いてもらいたいんです・・・」

「私もっ、身も心も捧げると言いましたっ。私の全てはタカシ様のものですっ。だから・・・私も一生側に置いてください・・世界がどこかなんてどうでもいいです。タカシ様の側じゃなきゃ・・・嫌なんです・・・・」

涙目で必死に言葉を紡ぐ2人。それはもう奴隷の立場など関係ないように、それぞれの俺に対する気持ちだけで言ってくれているように聞こえる言葉。

まさか、ここまで想われてるなんて夢にも思ってなかった。自分の世界を捨ててでも、一緒にいたいとまでなんて。

「ありがとう。」

2人を思いきり抱き締める。2人も全力で抱き締め返してくれる。

「ご主人様・・・ずっと・・・」

「約束するよ。何があっても置いていったりしない。セレアとリアはどこまでも連れていく。それを邪魔する奴はどんな相手でも全力で排除してな。」

「「はいっ。」」

しばらくの間、互いの想いを確かめ合うようにそのまま抱き締め合い、どちらからともなく、名残惜しそうに離れて、再び歩き出す。


物凄く嬉しいんですが、死ぬ程照れくさいぞ、おい。道中だから腕を組んではこないものの、両脇から肩を寄せられて、ピッタリとくっついたまま器用に歩く2人。しかも、嬉しそうに表情を輝かせている。セレアに至っては、耳が垂れ切って尻尾が大きく左右に振られまくってるから、分かり易すぎて余計に嬉しくて照れくさい。


「・・・そう遠くない内に、生活の基盤を整えて当面の生活に余裕が持てるくらいになったら、2人共奴隷から解放してやんなきゃと思ってたんだけどなぁ・・・」

「「嫌です。」」

ポツリと言った一言に、即答でハモるセレアとリア。そこまで嫌ですか?

「確かに、普通なら奴隷からの解放は夢です。あんな環境に望んで居続ける人はいないと思います。でも、私達の場合は別です。」

「私達が望んで、ご主人様のお側に置いてもらってるんです。ご主人様の奴隷でいさせてもらえれば、ご主人様だけのものでいられます。それが何よりの幸せなんです。」

それはつまり、奴隷の立場でも幸せって意味じゃなくて、俺の奴隷でいられるから幸せだって事ですか?嬉し恥ずかし過ぎるからヤメテ。過去最高に顔が熱い。

「わ、分かったよ。でも、それなら尚更解放しなくちゃな。」

「「え・・・?」」

「俺が先に死んだ時に、な。セレアは俺よりも年下だろうし、エルフの寿命は人間よりずっと長いだろ?俺が死んだ後に他の誰かの奴隷になんかならせてたまるか。」

「「は、はいっ!」」

明るい返事が嬉しそうに響く。うわぁ。クッソ照れくせぇ。

「そういえば、お聞きした事がありませんでした。ご主人様はおいくつなんですか?」

「23だよ。セレアとリアは?」

「私は今は17で、次の冬で18になります。」

「私は27ですけど、タカシ様の言う通り、エルフの寿命は人間族よりも長いので、ひよっこもいいところです。それに、その・・・」

何やら頬を赤くしてもじもじするリア。

「エルフは若い期間も長いですから、えと・・・ずっと若い体のままでいられます、よ?」

上目使いで言うリアに、セレアがピンッと耳を立てて反論する。

「ね、年齢相応の魅力というものがあると思いますっ。」

言いながら、胸を突き出すように張るセレア。

待て待て待て。道中で俺の理性を揺さぶるような事を言い合うんじゃない。また暴走するぞ?今は特に嬉し恥ずかし過ぎて、ブレーキが効きにくくなってんだから。




平穏過ぎる上に2人が可愛い事で張り合うもんだから、依頼遂行の道程というよりは、もはや単なるピクニックデートのような感じで先を進んでいる。


でも、やはり街からある程度離れるとモンスターとエンカウントする。

だがしかし、



「邪魔ですっ!」

「空気を読んでくださいっ!!」



最初に2人のアピールタイムを邪魔した無粋なモンスターは、出現すると同時にセレアの剣とリアの魔法に瞬殺された。


さらに、その後もセレアが先陣を切って動き、リアが魔法で援護、もしくは一斉掃討するもんだから、俺の出番が全くない。

セレア、動きが速すぎ・・・動き出しが間に合わないとか、どんだけだ。セレアの手が回ってない奴に行こうとしても、リアが先に魔法で一掃するし・・・


しかし、オーガって、熟練の冒険者でも複数に囲まれたら死を覚悟するようなモンスターって話じゃなかったっけ?さっき、7匹くらいまとめて出てきてたよね?

それに、セレア。粘液性不定形生物(スライム)相手には逃げるしかできなかったって言ってたよね?いくらリアの魔法があるって言っても、全く怯みもしないってどうなの?

リアも、巨大蟻(ジャイアントアント)相手には追い詰められてたよね?あの時とは数が全然違うとはいえ、精神的外傷(トラウマ)になってたりしないの?

俺ならまず間違いなくビビりまくるであろうシチュエーションでも、2人は平気で敵を蹴散らしていく。しかも、掠り傷一つ負わずに。これじゃ、無理をするなとも言えない。


「なんだか、タカシ様の側にいると、今までよりもずっと魔力操作が上手くできて、同じ魔力量でもずっと威力が上げられます。」

「私も、体が軽くて今までよりもずっと素早く動けます。巨大蟻(ジャイアントアント)の時には気のせいかと思っていたんですが。これなら、余程の相手でもない限りにはご主人様の手を煩わせずに済みそうですね。」

「はいっ。巨大女王蟻(ジャイアントクイーンアント)の時には全く役に立てませんでしたけど、セレアさんにも少しは楽をしてもらえそうです。」

「頼りにさせてもらいます。」

「はい。任せてください。」

なんだかとてつもなく頼もしい会話をするセレアとリアは嬉しそうだ。


しかし、女の子に戦わせて、自分は出る幕無しってのは男としてどうなんだろう?物凄く情けない気がする。でもまぁ、2人共嬉しそうだし、甘えさせてもらっておこうか。雑魚が相手の間だけな。

主人公の能力、【能力向上付与】が大活躍です。元々、ある程度以上に戦闘力が高かったのもあって、そのおかげでセレアとリアが無双しました。主人公が自分達の事を想像以上に考えて、そして、期待以上に想っていた事が無双っぷりに拍車を掛けています。それは主人公にとっても同じなんですけどね。


では、これにて第三章 第五部の幕を下ろさせていただきます。最後までお付き合いいただいた皆様に感謝です。また次もお付き合いいただければ幸いです。

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