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薬草採集で地味チート

ここから主人公のチート能力が少しずつ出てきます。今の段階ではチートと言っていいのか微妙なものですが(笑)

今日は休みなので、もう一話くらい投稿予定です。

アンナちゃんと一緒に街を出て薬草採集に向かう事になって、歩く事かなり。時計がないから正確には分からないけど、確実に一時間は歩いたと思う。

あ、ちなみに靴はアンナちゃんが予備のを貸してくれた。裸足のままはさすがに無理だってので、取りにいってくれた。世話をかけるねぇ。必ず恩返しするからねぇ。


「ここがよく採集に来ている森です。あんまり奥までは入らないでくださいね。奥に行くと、やっぱりモンスターに襲われる事もありますから。」

やっぱりいるのか、モンスター。ここまでのどかな風景にのんびり歩いてこれたからいないのかと思った。


「了解。でも、奥にいるなら、ここら辺も危ないんじゃないのか?」

「はい。全く無いわけじゃないです。でも、出てきた時でも数はいつも少ないですから、私でも逃げるくらいは何とかなりますよ。」

逞しい。まだ中学生くらいの女の子なのに。

「そっか。ちなみに、どんなモンスターが出てくるんだ?」

「えっと、私が見た事があるのはゴブリンとかコボルトです。私よりも背は小さくて、走るのは早くないです。奥の方に行くと、いっぱい出てきて囲まれると危ないそうです。あんまり詳しくは分からないですけど。」

「なるほど。」

ファンタジー序盤の雑魚出現設定は有効らしい。これで序盤から強敵が出現するようなハードモードなら、いろいろ諦めないといけなかったかもしれない。主に、これからの身の安全とか。



それから、アンナちゃんに教えられて、薬草探し開始。



程なくして、一つ目を発見。見た目は完全によもぎ。あの団子にも使われているヤツだ。そういえば、よもぎも煎じたら傷薬になるんだっけか、詳しくは知らんけど。

でも、ニオイが違う。なんというか、臭い。とてつもなく臭い。牛乳をこぼして拭いた後の雑巾を全く洗わずに陰干ししたようなニオイ、と言えばこの強烈なニオイの何分の一かを想像してもらえるのではないだろうか。


「強烈ですよね、これ。」

アンナちゃんも顔をしかめながら言う。

「でも、このニオイのおかげで他の動物に食べられたりする事がないらしいですよ。だから、こんな森の入り口近くにもそれなりの数があるんです。」

「納得。」

こんなのをあえて食う奴はいないだろう。と言うか、この草が薬草だって最初に気付いた奴、何をどうやって気付いたんだろうか。千切った部分からこのニオイが漂ってきて、普通の神経してたらその瞬間に投げ捨てると思う。葉っぱの部分も、鼻を近付けたら似たようなニオイ放ってるし。

「あ、でも、不思議なんですけど、干して完全に乾いたら良い香りになるんですよ。」

「マジか。」

良い香りとか、今の状態からはカケラも想像できない。どんなファンタジー要素が絡めばそうなるんだ?いや、まぁ、回収経験のあるアンナちゃんが言うんだからそうなんだろうけど。


それから、二手に分かれて薬草採集開始。

そんな簡単に見つかる物でもないよなぁとか思ってたら、なんとなくフラフラっと寄ってった茂みや木陰にあるわあるわ。雑草かってくらいに見つかる。アンナちゃんに借りた篭があっという間に一杯になってしまった。ついでに、ニオイも凄まじい。序盤にほとんど麻痺した鼻だけど、それでも辛い。


分かれてまだ15分くらいしか経ってないけど、篭が一杯になってしまったからアンナちゃんを捜す。多分、そんなに離れてないだろうからすぐに見つかるだろうと思ってたら、案の定すぐに見つかる。

んで、俺が背負っている篭の中身を見て、アンナちゃんはポカンと口を開けて硬直。

あれ?何かマズイ事した?採り過ぎとか?


「す、凄いですよ!こんなに短い時間でこんなに一杯!!私が10回来てもこんなに集められませんよ!!!」

「そなの?なんとなく適当にフラフラしてたら見つかったんだけど。」

「て、テキトーですか・・・私、不器用なのかなぁ・・・」

何やら落ち込み始めたアンナちゃん。あれ?なんか地雷踏んだ?

「い、いやいや、ビギナーズラックだって!たまたま!運がよかっただけ!」

慌ててフォローに入る。そっか、こんなに簡単に見つかるような物じゃないんだ、やっぱ。


なんだか落ち込んだアンナちゃんが復活して、薬草の量は充分という事で帰路に付く。

いや、まぁ、アンナちゃんは自分の分はまだ足りないからって探そうとしてたけど、俺の分を分けたら充分だろうと説得した。えらく遠慮してたけど、主に俺のせいでこの近くの薬草はかなり減ってしまっているから、普段よりも採集に時間もかかってしまうだろう。そうなれば、滅多に襲われないとはいえ、危険性は上がっていく。俺のせいでアンナちゃんを危険目には合わせたくない。





それから、またかなりの時間を歩いて街に戻ってきた。

え?バトルはどうしたって?ないよ、んなモン。確かに、帰りはテンプレ通りに何かトラブル発生するかとビクビクしてて、アンナちゃんに心配されたけど。


到着後、すぐにアンナちゃんがいつも薬草を干している場所に案内される。しかし、休憩無しとは元気な子である。俺はもうクタクタなのだが、まぁ、このニオイの元を担いだままゆっくりもできないか。


まず、俺が背負ってた篭の中身を地面に敷かれた布の上にひっくり返すと、アンナちゃんがまた硬直。どしたの?

「嘘・・・薬草になってる・・・?」

「?薬草だろ?この草。」

「ち、違うんです!あ、いえ、この草が薬草なのはその通りなんですけど、売られてる時と同じ状態になってるんです!ちゃんと手を加えないと薬草としての効果は出ないから、いつもは乾いてから加工してる魔術師ギルドで買ってもらうんですけど・・・」

言われてみると、ニオイが漂ってきてない。俺の手やアンナちゃんの篭からは変わらない刺激臭が襲ってきてるけど。まぁ、これだけキツかったら気付かないだろう。

「量の割にはニオイがキツくないなぁとは思ってたんですけど・・・」

・・・気付いてたらしい。

アンナちゃんが自分が背負っていた篭の中を見る。

「私のはいつも通り・・・タ、タカシさん、もしかして何かしました?」

「って言われてもな・・・」

当然、心当たりなんてあるはずもない。普通に草むしりをしていただけだ。

なんとなく、アンナちゃんが集めた方の篭の中の薬草を手に取ってみる。すると、薬草が弱く赤い光を放ち、光が収まると俺が採集した薬草と同じ状態になる。


「「・・・・・」」

思わず、二人して絶句&硬直。

これ、まさか、俺の能力・・・?うそん、ショボすぎない?

「す、凄い!凄いですよ!魔術師ギルドでは何人も魔術師の人が順番に手を加えてやっと出来上がるって話なのに!!異世界から来たなんて信じられませんでしたけど、こんなの見たらもう信じるしかないです!!」

俺の落胆とは違う意味で絶句していたらしいアンナちゃんから大絶賛をもらう。

というか、最初に話した事情、信じてなかったのか。ま、普通はいきなり異世界がどうとか言われても信じられないか。


「あのぅ・・」

遠慮がちにこちらを見上げてくる。上目遣いはダメだよ・・・可愛い・・勘違いしちゃうよ・・?

「もし、よかったら、他のも薬草にしてもらえませんか?あ、いえ、差し支えなければーなんですけど。」

「あ、あぁ、うん。別に疲れるとかそんなのもないみたいだし。」

うん、知ってた。頼み事だってくらい分かってた。でも、なんだろう、この微妙なガッカリ感は・・・



それから一つ一つ薬草を手に取って加工済み状態にしていく。

う~ん、明らかに光ってるのに、なんで俺は気付かなかったんだろう?まぁ、光自体はかなり弱いものだから、直視していなかったら目に入らないかもしれないが、ちょっと注意力が足りてないかも。


「凄いですね~♪どうやってるんですか?」

「ん~、さっぱり分からん。ただ、手に持ってるだけなんだよな・・」

「疲れたりしてません?」

「いや、全然。あ、でも、何かが体の中から減ってる気がする・・・」

なんだろ、この感覚。今まで感じた事の無い感覚だ。意識しないと分からない程度だけど。

「もしかしたら、それ魔力じゃないですか?本当に大丈夫ですか?」

心配そうに俺の顔を覗き込んでくる。近い近い近い!

「だ、大丈夫大丈夫。意識しないと分からないくらいだし。」

「そうですか。よかった。でも、無理はしないでくださいね。魔力が尽きたら、すぐに対処しないと死んじゃうって聞いた事がありますから。」

ホッとした顔をしながら、かなり怖い事を言ってくるアンナちゃん。この世界はMPが尽きたら死ぬのか・・・RPGとは違うって事だな。しかし、ほとんど減ってる感覚が無いなら、この作業では心配ないだろう。

「その魔力ってのが減ってきたら、どんな感じになるかって知ってる?」

「あ、はい。えっと、ある程度減ってきたら体が怠くなってくるそうです。それから、目眩や息切れが出てきて、酷くなると昏睡状態になるとか・・・昏睡状態になったら、魔力を回復させる薬を飲まないとそのまま衰弱死してしまうそうです。」

なるほど、一応段階はあるんだな。それなら注意していれば大丈夫だろう。


他にもいろいろ聞いている間に、アンナちゃんの採集分の加工も終了。

「ありがとうございます!買い取り金額が全然違うみたいなんですよ、加工してるのとしてないのとで。」

まぁ、加工にそんなに手間が掛かるなら値段の違いがあって当然だろう。

「加工もしてもらっちゃいましたし、採集もいつもよりずっと短く済みましたから、もうこれから売りに行こうかと思います。タカシさんもご一緒しませんか?」

「うん。頼むよ。俺一人じゃどこで売ればいいのかも分からないし。」

本音を言えば、少し休憩をしたい所だけど、年下の女の子が元気いっぱいなのにダウン宣言は男としてできん。安っぽいプライドかもしれないけど、これは男として譲れない部分である。

はい、今回明らかになった主人公の能力は【発見】と【加工】です。

無自覚行使なので、今回の話ではショボいように見えますが、これから先の展開でご都合主義全開のチートっぷりを見せてくれる・・・はず(汗)

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