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プロローグ

拙い所も多くあるかと思いますが、楽しんでいただければと思います。

それでは、はじまり、はじまり~♪

気が付いたら、完全武装の兵士に囲まれてた。


(あれ?俺、さっきまで家でテレビ見てたよな・・・?)

そんな事を思いながら、少しの間ポカンとしてた。人間、理解不能すぎる状況に急に放り込まれると、パニックを通り越して放心してしまうものらしい。


しかし、いつまでも放心してても仕方がない。少し現状を把握してみよう。

まず、隣に武装してない男性が一人。多分、17~18歳くらい。確実に俺よりは年下。勿論、知ってる奴じゃない。茶色っぽいロン毛気味のイケメン。モテそう。くそ、爆発すればいいのに。こっちは青い顔しながら突っ立ってキョロキョロしてる。

で、俺。龍ヶ崎 喬。さっきまでテレビ見てた時と同じように寝転がって頬杖ついてる状態。ちなみに、23歳会社員、仕事帰りの一杯だけが生き甲斐。中の下くらいの黒髪フツメン。年齢=彼女いない歴。彼女持ちとイケメンは滅べばいいと思います。いや、んな事はどうでもいい。ホントに滅べばいいとは思ってるけど、今はそれは置いておこう。


問題は、この周りの兵士らしき人達。西洋甲冑っぽい鎧を着てRPGによく出てくるような両刃の剣構えた人達に二人共囲まれてます。もちろん、切っ先はこちらに向けられてます。

いやいや、有り得んでしょ。夢?それにしてはリアリティーがあり過ぎる。自分の体を見てみると、やっぱり寝転がってた時と同じヨレヨレのスウェット姿だし。


あと、さっきから何か喋ってるけど、さっぱり言葉も分からない。英語とかじゃなさそう。語学力ないから自信ないけど、地球上の言葉じゃない気がする。

起き上がりたいけど、大勢に剣なんか向けられてる状況で下手に動くと命が危うい気がする。でも、微妙に腕が痺れてきた。

と、そこに武装してないおっさんが一人兵士の間から出てきて、隣にいた奴と俺にそれぞれ指輪を渡してくる。何言ってんのかさっぱり分からんが、付けろってことか?サイズの問題で小指にしか入らない。


「言葉が分かるかね?」


おぉっ!?いきなり言葉が通じるようになった!?やっぱ夢か!?


「は、はい。あ、あの・・・」


お?隣のイケメン君の言葉も分かる。まぁ、こっちはさっきまで何も喋ってなかったから最初から通じてたのかもしれないけど。


「なんだね?」


指輪を渡してきたおっさんがイケメン君の言葉に応じる。なんかこいつ態度でかくね?横柄な感じの口調が気に入らん。


「こ、ここは一体どこなんでしょうか?」

「うむ、それについても含めて、これから我が王がご説明くださる。王の下まで案内しよう。」


王?王って言ったか?何これ、まさか、ラノベとかによくある異世界召喚とかそういう流れ?

改めてポカンとしていると、おっさんにジロリと睨まれる。


「君は言葉が分からんのかね?翻訳の指輪は発動しているはずだが?」


翻訳の指輪・・・完全にファンタジーの世界だ。ご都合主義アイテム万歳!


「あ、いや、すみません。驚いてしまっていて。」

言いながら立ち上がる。

このおっさん、やっぱり横柄な喋り方で気に入らん。気に入らないけど、周りは完全武装の兵士だらけ。下手な口のききかたは身の危険が増す気がするので、一応丁寧語を使っておく。俺は命知らずではないのだ。チキンとも言う。


「よろしい。では、付いてきたまえ。」


おっさんの言葉に従って、俺とイケメン君は後を付いていく。

周りの兵士さん達に囲まれながら。圧迫感、パネェっす。




それから、やたら豪華な内装の廊下を進んで大きな扉の前に到着。

「王の御前である。粗相の無いように。」

「「はい」」

俺とイケメン君の返事がハモる。

粗相も何も、ここの常識が分からんのだが。そう言うのなら、まずはその辺りから説明しろよと思う。身の危険が増す気がするからやっぱり口にはできないけど。


扉が開かれ、中に通されると、数段高い所にこれまたファンタジーによくあるような豪華な玉座。そこにふんぞり返った髭のおっさん。


「陛下。お待たせ致しまして申し訳ございません。此度の召喚魔法により現れました勇者候補でございます。」

「うむ。」


テンプレキタァァァァッ!!これ間違いなくアレだよ!魔王とか倒しに行けとか本来召喚魔法で出てくる勇者は一人のはずなのに、今回に限って二人出てきたから聖剣とか預言者とかの判断でどっちかが不要とか不吉とか言われるヤツだ!!ハードモード系の方なら片方は牢屋行きで明日処刑とか言われる!!!んでもって、誰かが脱獄の手引きとかしてくれるけど、指名手配とかされて逃げながら活躍するパターンだ!!!!


でも、これ、どうやら現実。ハードモード展開なら、ほぼ間違いなく死ぬ。あ、勿論、勇者に選ばれるのはイケメンだから、死ぬのは所詮中の下の俺。やっぱりイケメンは滅べばいいと思います。






で、それから・・・・・・







はーい、やっぱり勇者は俺じゃなかったよーん。

先に挑戦したイケメン君、宝物庫の伝説の聖剣とやらを鞘からあっさり抜いて勇者認定。

俺、挑戦すらできず・・・


でも、幸いと言うかなんと言うか、ハードモード展開ではなかった。

単純に王宮を追い出されておしまい。曰く、「勇者ではない異界人に用はない。どこへなりと勝手に行くがいい。」だそうです。





ふざけんなぁぁぁぁぁっ!!勝手に呼びつけといて、用がないから勝手にしろだぁぁぁぁっ!?





と、心の中で絶叫しながらトボトボ王宮から離れる。何せ、門前で立ち尽くしてたら門番の兵士に凄い睨まれたから。


くそ、絶対復讐してやる。


とはいえ、右も左も分からん異世界。当然、頼れる人なんかいない。んで、テンプレにあるような異能みたいな感覚も無し。無一文。しかも、家にいた時と同じ格好だから靴すら履いていないという・・・


まぁ、唯一の救いは翻訳の指輪は取り上げられなかった事だ。これが無かったら、言葉すら通じないから完全に詰みだった。コミュニケーションさえ取れたら、最悪助けは求められる。助けてもらえるかどうかはともかく。


しかし、マジでこれからどうしようか・・・バイトとかあるのか?いや、この世界の常識すら分からない人間、しかも身元不明を雇ってくれるか?




かなり真剣に物乞いでもするかと考えて、街の真ん中を通る川の水際で汚れた足を洗っていたら

「どしたの?お兄さん?」


掛けられた声に振り向くと、ショートカットで赤毛の15歳くらいの女の子が心配そうな表情で立っていた。


「あ、いや・・・実は困った事になってね。」

苦笑いを浮かべながら、少女に事情を話してみる。


藁にもすがる思いとはこの事かもしれないけど、10歳近くは離れているだろう女の子に助けを求めるいい大人の男・・・情けなすぎて笑えてくる。




「そ、それは、なんていうか・・・」

事情を聞いた少女、アンナという名前らしい、は同情を示してくれる。


「それで、できれば金の稼ぐ方法とか教えてもらえないかな?このままじゃ、まぁ、近い内に野垂れ死にしそうだし。」

「えっと、タカシさんは何か特技とかあります?」

「残念ながら、パッと思い浮かぶものはない、かな・・・」

「じゃあ、薬草採集とかどうでしょう?私もたまに行くくらいなので、危ない事なんて滅多にありませんし、常に一定の需要はありますから。そんなにたくさんは稼げませんけど・・」


どんな世の中でも、ローリスクハイリターンなんて都合の良いものがないのは分かりきっている。そんな中で、アンナちゃんの提案は俺にとって凄く有難いものだった。薬草自体には限りがあるにしても、一定の需要があるというのは、仮にこの街にいられなくなっても別の所で稼ぐ手段になり得るという事なのだから。


さらに、有難い事に、アンナちゃんはこれから薬草を採りに行くから一緒に行かないかと言ってくれる。なんて良い子なんだろう。こんな見ず知らずのおっさんの為に。

しかし、不安になってきた。いくらなんでも、警戒心が無さすぎるんじゃないか?薬草と言えばやっぱり街の外に出るんだろうし、そんな人目に付かない所によく知りもしない男と二人になるなんて、年頃の娘さんとしてはどうなんだろうと思う。

実は、薬草は街の中にあるとか、薬草が生えてる所にはいっぱい人がいるとかなんだろうか?


そんな事を口にしてみると、アンナちゃんはクスクスと小さく笑いながら

「そんなにいっぱい人がいる所の薬草なんてすぐになくなっちゃうじゃないですか。それに、街の中にあったりしたら誰も買ってなんかくれませんよぅ。」

「あ、いや、そうじゃなくてね。アンナちゃんも女の子なんだし、身の危険というか、そういう方面の警戒っていうものを持たないとって話だよ?」

「ふふ。それなら大丈夫です。」

何故か自信満々に胸を張ってそう言う。そして、こう続けた。


「私、人を見る目は結構自信あるんですよ。だから、ほら。タカシさんはこうやって心配してくれる優しい人ですもん。」


むぅ・・・なんというか、こういう風に言われると何も言えなくなるな。

と言うか、ハズイのでそんな顔で見ないでください。

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