第3話 許さないうらめしや羨ましい
「花咲さん、今日も来るわよね?」
「はふぇ?」
「フラワーガーデン」
「あ、あぁ、勿論っス」
-この奇妙な関係、もう一週間経つ。
オレ(花咲ゆり、16歳、女)は、ひょんな事から学校一の美少女かつ「フラワーガーデン」管理者の娘・庭園薔薇パイセン(17歳)が「男」だと知ってしまい、現在半見張られ中。
一体何の話だろうか…?
「花咲、これやるよ」
「…何スかコレ?」
何だかチケットらしかった。「鳴神」と書いてある。
「何スかこの、「めいじん」ってのは?」
「…それは「なるかみ」って読むんだ…」
えっ、そうなの?やべ、マジハズい。
「今度歌舞伎の舞台があってだな。観客集めの一環として、お前も呼ぼうと思ってさ」
「そうなんスか…」
そういやパイセンって、女形歌舞伎役者とかいう奴だっけ…あれっ
「女形って何スか」
「女の役をする歌舞伎役者の事だ」
「そんなの女にやらせればいいじゃないんスか?」
「…お前歌舞伎の事何も分かってないな。歌舞伎は男しか出られないんだ」
「えっ、何それ」
初めて知った…
「舞台は愛津駅から徒歩1分だからな」
「じゃあすぐ辿り着けそうっスな」
そして、舞台当日。
「ふぇぇぇ…やっと辿り着いたぁぁぁ…」
オレは完全に忘れていた。
自分が筋金入りの方向音痴だということを。
愛津駅から徒歩1分なのに…電車降りてからもう一時間も経ってるぞ!?
「よかったのぅ辿り着けて」
「あ…はい…おばあさんのおかげっス…」
実は舞台から遥か遠くでおばあさんに会い、連れて来てもらったのだ。情けない…
「おばあさんは誰目当てっスか?」
「林星蘭じゃ。星蘭はわたしの息子じゃから」
「へぇー。オレは…庭園さんっス」
「そうかい」
「おぉう、特等席じゃん…あっ、あれか?庭園さん」
「じゃのう」
…何故かおばあさんの隣。
「息子が鳴神上人で、薔薇君が絶間姫じゃ」
「へぇ…」
あれがパイセンか…絶間姫っつー役なんだ…
…つか…
何だよあの美貌。もう女そのものじゃねーか。許さないうらめしや羨ましい。
「うらめしや〜」
「…何だ急に」
呆然とするパイセン。
「何スかあの美貌、そこらへんの女子より美人じゃないっスか。やっぱパイセンが男だなんて認めやせん」
するとパイセン、イラッときたのか…
「…今度の日曜、愛浜アミューズメントパークに来い。話はそれからだ」
…はい?
続く…