第2話 お前が言うな
「おはよう、花咲さん」
「お、おはようございやす、庭園パイセン」
翌日、オレ(花咲ゆり、16歳)は学校で庭園薔薇パイセン(17歳)と会った。
オレが誰かに言わないか見張るらしい。言ったら抹殺されるみたいだし、脅されなくとも言わない、つか認めてなるものか。
「____花咲、言ったら」
「はいはい、分かってますよ」
すれ違い様にパイセンがオレの耳元で男声でささやく。オレはそれに返事をした。
途端に女声でそれじゃ、というパイセンに呆れ、オレも彼女の後を追って昇降口へと歩き出した。
これが、学校一の美少女で「男」な彼と、学校一男っぽい「女」なオレの日常である。
「どういう事?何でゆりりんが庭園先輩と?」
オレの親友-紫陽花が尋ねた。
「志倉芽がゆりりんの事睨んでたよ?ほら、アイツ庭園先輩にベタ惚れしてるでしょ?」
「…確かに、オレの事男だと思ってるもんな…あ」
「どうしたの?」
そういや庭園パイセンって、オレが女だって知ってるだろうか…
「花咲さん」
「うぉっ」
ビビった。いきなり出てくんなよ、心臓に悪い。
「何スか?あっ、丁度良かった。確認していいスか?」
「何を?」
「あのー」
その時。
「は・な・さ・きぃ〜」
「ギャアァァァ〜!」
後ろから志倉芽がオレの肩に手をかけ、殺気を放っていた。
「?どちら様?」
「う、うちのクラスの志倉芽陣…パイセンの大ファン…」
「てんめぇ、俺の許可もなしに薔薇様に近づきやがって…」バキボキ
「おおお、落ち着けや!」
「落ち着けるかぁぁぁ!!!!」
結局、その時は逃げ回ることに…
放課後、フラワーガーデンに来たオレ。
「…庭園パイセン…」
「さっきの子からは逃げられた?」
「逃げられてたら包帯巻いてやせんよ…」
「………で、さっきは何言おうとしてたの?」
「あのぅ…気づいてないでしょーけど…
オレ、こう見えても女っス」
一瞬、沈黙の時間が流れた。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ?」
「やっぱ知らなかったんスね…」
「分かるか!そんな男同然の格好をして…性別詐欺だ!!!!」
「だとしてもパイセンだけには言われたくないっス」
何しろパイセンは学校一の美少女であるにもかかわらず男…言わせてもらおう。お前が言うな。
「嘘だろ…お前女だったのかよ…」
「要するにパイセンの逆。いや、逆じゃない所もあるけど、とにかく男ではないっす」
「…マジか…」
続く…