二戦目のポーカー
赤いドレスを翻して、また部屋に入る。
見慣れたというより見飽きた八畳洋間。出口である様子は無い。
「いらっしゃい」 老人ではない人が声を掛けてくる。
「あら、お嬢さん」わたしは嬉しさを隠すことなく声を掛ける。
またゲームが始まるのか。
とりあえず扉を閉めた。がちゃりっと鍵が掛かる音がする。
今回の相手は可愛い少女。老人やあんな男なんかより気が楽だ。
「それじゃ問題を出します」
少女はリモコンを持って操作した。壁に掛かったモニターが作動する。
モニターに問題が表示される。
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ポーカー
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「あなたはトランプ担当なの?」
前回の少女とやったゲームはトランプの種類を当てるゲームだった。
「それでは始めます。制限時間は一時間です。あたしにゲームで勝ってください」
少女が砂時計をひっくり返す。
「ポーカーの種類を確認させて」
ポーカーはいろいろな種類のポーカーがあるから、きちんと確認しておかないと全く違うゲームになりかねない。
「はい。トランプの山札から五枚ずつ配ります。その五枚で強い役を作れた方の勝ちです」
「交換は何回まで?」
普通は一回まで交換出来たはず。いらないカードを捨てて五枚になるまで補充出来る。
「交換は出来ません。最初に配られた五枚で勝負します」
「チップはあるの?」
「有りません。一回の勝負であたしに勝ってください」
もはやただの運の勝負である。ゲーム性も何もあったものじゃない。
「役を教えて」
「ロイヤルストレートフラッシュ、ロイヤルストレート、フォアカード、フルハウス、フラッシュ、ストレート、ツウペア、ワンペア、の順です」
「ジョーカーは入っている?」
「一枚入っています。確認してください」
少女はわたしに山札を渡す。わたしは山札を確認する。確かにジョーカーが一枚入っていた。他のカードも通常通り入っている。何かが足りなかったり多かったりすることも無い。
わたしは少女に山札を返した。少女は山札を受け取るとカードを確認し始めた。わたしがイカサマをしていないかのチェックなのだろう。前回のゲームで山札を全部ジョーカーにしたから警戒している。
「ねぇ、イカサマされるのが怖い?」
煽ってみた。少女の頬が少し膨れた気がする。可愛いなぁ。
「イカサマなんてさせません」
「お姉さんが良いこと教えてあげよう」
「どうせ、ばれなきゃイカサマじゃないとか言うのでしょう?」
「いいえ。ばれようがばれまいが関係ないわ。
相手に同等の勝機が与えられるなら、イカサマじゃないのよ」
砂時計の砂がそろそろ落ち切りそうだ。
「それじゃ、ゲームを始めましょう」
わたしは少女に切り出した。少女は山札をわたしに渡す。
「シャッフルしてください」
わたしは言われるがままに、山札をシャッフルして少女に渡す。
少女は山札を丁寧にシャッフルしてカードを配った。わたしと自分に五枚ずつ。
「では、あたしから」
少女は自分の手札を机の上に並べる。
スペードJ、クラブJ、ハートJ、ダイヤJ、ジョーカー
フォアカード
「つ、強い」
わたしは驚いた。イカサマしないで一発でこれを引き当てたのなら相当な豪運だ。普通、イカサマをするなら最高の役であるロイヤルストレートフラッシュを狙いにいくだろう。でも先に全部のJを使い切ってしまえば、こちらはロイヤルストレートフラッシュが使えない。加えてジョーカーも使えない。こちらがイカサマをすることが前提にあるなら最高の手札だ。
「手札を見せてください」
「はい」
クラブ6、クラブ7、クラブ8、クラブ9、クラブ10
ストレートフラッシュ
「わたしの勝ちね」
「なんで?」 少女がわたしに尋ねる。
「イカサマしないで普通に勝つこともあるわよ」
勿論嘘だった。前回のトランプ当てのときにトランプを1セット丸ごと盗んでおいた。少女の手札を見てからこちらの手札を良い様に入れ替えただけのことである。
小さい頃からイカサマの練習をしていて良かったわ。
少女は大きく頷いた。
「よろしいです。進んでください」
「どうも」
わたしは席を立ち、前へ進む。部屋の奥の扉を開ける。
「ねぇ、お嬢さん」
わたしは背中越しに少女に尋ねる。
「わたしはあと何回勝てば、この迷宮から抜け出せるの?」
「きっと抜け出せます。頑張ってください」
可愛らしい対応だった。




