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眠気と眠りのすき間のおはなし

作者: unikohu


眠い..ねむいねむいねむい





電車を降りようとした

でもまた眠気が襲う。



ドアの所で一瞬倒れそうになった。

反射的にまずいと分かっているのに



ずんずん眠気に

引きづりこまれて行く。



その時、誰が抱きとめてくれた。



…お礼を言わなきゃ

寝ぼけた頭で、そう思っていたら



「良いよ。そのまま寝ちゃいなよ。」



抱きとめてくれた人はそう囁いた。


いや..さすがにそれはまずいでしょ。

だってここは電車の中だよ?



あの..降ります。ありがとうございま..


「眠たいんでしょ?

君は今とても眠りたがっている。

それも倒れそうなくらいに。


大丈夫。

今は私が抱きとめているのだから

当分倒れる心配は無い。」



そうだな。

それならこのまま眠ってしまおうか。






いやいやいやいや。




電車が発車するメロディと

アナウンスが流れる。


私は抱きとめられたまま、

出せる限りの力を振り絞って



その人に体重をかける様にして

暖かい車内からホームへ押し出た。



寒さが身体を包む。



あなた誰なんですか。

「眠っちゃいなよ。」



何なんですか。

「眠たいんでしょ?」



ここで眠ったらまずいでしょう。

「何にもまずい事なんて無いよ。」




眠るなんて特別な行動じゃない。

人間誰しもとる通過点としての

行動の一つに過ぎない。


それに今やっている

こんな茶番みたいなことだって

当たり前みたいなものだろう?





電車のホームで茶番をする事の

どこが当たり前だと言うのだろうか。



..というか何で

こんなに眠たいのに、


いや、なんだろうもう、

眠たいんじゃなくて


ほとんど眠ってしまっているかの様な状態なのに

私の頭は何故こんなに

はっきりとしているのだろう。




眠るなんて

電車の中からホームに

出る様なもんだよ。


スイッチを切る様なもんだよ。


電車の中にいた自分も

ホームに出た自分も


起きている世界にいる自分

眠っている世界にいる自分





全て自分に変わりないでしょう?





目をつむったところで

目を開いたところで

全然違う状況かもしれないけれど



自分は自分でしょう。



私はいつも君がしているように

世界のスイッチの

ONとOFFの切り替えの

手伝いをしようとしてるだけだよ。







..ここ電車のホームじゃないんですね..

「君がそう思うのなら。」



どこなんですかね..

「とりあえず私が君を

抱きとめているのは事実だよ。

安心して良い。」



はー。

そんな事で簡単に安心出来るなんて

ハグって本当に凄いんですねー。



「君はいちいち

当たり前の事ばかり言う。」



さっきから当たり前って何ですか。

人によって違うでしょう。



「もちろん

君にとっての当たり前だよ。」



この人は何を言ってるんだろう。

でもその通りだった。

私は完全に安心しきっていた。



それに多分、


完全に眠ってしまっている。


完全にこっちに

来てしまったみたいだ。



「やっと気がついた。

ほら、大丈夫だったでしょう。

全然問題なんてなかったんだよ。」










お布団みたいな人ですね。

あなた実はお布団なんでしょう?


「何だそれは。つまらないな。

誰もが思いつく様な例えだ。

本当につまらない。ありふれた答えだ。

私がお布団なら、きっともっと

暖かく君を迎えるんじゃあないかな。



寝ても覚めても

それはそれなんだから。



もし君が、お布団をどこか

抱きとめながらも突き放す存在だと

認識しているなら、

話は変わってくるんだけれど。」



意識が朦朧としながらも、人間は、内から外、外から内へ、常に違う世界に出入りしているんだ..と強く感じていた事を覚えています。あまりにもリアルで繊細だったので忘れないうちに書きました。

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