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8話 いざ! 忍者の修行開始!

忍者のJobを習得する為にアキツ国まで飛んだ和泉。

しかし、転送先は戦場のど真ん中。何とか切り抜けて目的の里まで移動するがそこでも一悶着。

何とか里の一員と認められた和泉の修行が始まる。

「そうだ。修行を始める前に聞いておくことがあったわ」


 桜華さんは胸の前で両手を叩き軽く首を傾げて質問を投げかけてきた。


「和泉は“チャクラ”を知っていますか?」


「チャクラ? ナ〇トを少し読んだ事があるだけですね」


「え~と……阿波の国がどうしたの?」


「いえ、なんでもないです。言葉は知っていますが意味までは……」


「では実際に見てもらった方がいいわね。

 和泉そこに立ってくれる?」


 僕は縁側に立たされた。一体何がおこるんだろう?


「では行きますよ~」


 桜華さんは笑顔で頭頂、額、喉、胸と上から計七か所を次々と叩いて行った。


「あの~これで何が……」


 言いかけた時だった。体中を走る何とも言えない力の流れを感じた。

 これは……何? 体中を一気に走り回っている? でも……不思議と不快じゃない……?

 いやむしろこの感じは……!


「フッふおおおおおおおおおお!」


「ふふっ感じ始めたようね。それがチャクラよ。普通の人は門が閉じているから今開けてみたの」


「お頭! いきなり全部の門を開けて大丈夫なのか!」


 はははっ! サイコーの気分だぜぇ!!


「和泉なら大丈夫よ~」


「何故言い切れる?」


「ふふっ女の勘」


「なっ!」


 桜華さんと影丸さんが何か話しているけど関係ねぇ~

 まとめてやってやんよ!!


「ふははははっもう誰も僕を止められグフッ」


「……ほらダイジョウブだった」


 桜華さんの肘が適格に僕の鳩尾を突いてきた。それにより僕の意識はまた闇に呼ばれる。

 

「さて、和泉が目が覚めたら次行くわよ~」


「いや、お頭。肘……」


「何か?」


「今、和泉に肘撃ちを……いや……なんでもない」


「そう? 変な影丸。ふふっ」


 そんな会話が聞こえたような聞こえなかったような……


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 目を覚ました僕が連れて来られたのはお勝手だった。

 桜華さんは水が入った桶を僕の目の前に置いて高らかに言い放った。


「さっ次よ! 次は和泉のチャクラの性質を調べるわ!」


「チャクラに性質なんてあるんですか?

 と言うかお腹が痛いんですけど……」


「あるわよ~基本は五つに分かれるわ!」


 桜華さんはノリノリで答えてくれる。てか最初とキャラ変わってない?

 あと僕のお腹が痛いのは説明してくれないんですね。


「“この世は五つの元素で構成されている”って話し聞いたことある?」


「五行説ですね」


「お~知ってるね~やっぱりこの道を選んだから少しは勉強してきたのかな?」


「そうですね~そんな所です」


 ある年齢になると大半の男子がかかる病気にかかった時に調べた事があるのだ。

 本気で出来ると思っていた時期もありました。


「うんうん。優秀な生徒を持つと先生も嬉しいよ! それでね……」


 それから桜華先生によるチャクラの講義が始まった。

 簡単に言ってしまうとチャクラはどの属性にもなる。なので練習次第では全部の属性を使う事が出来るのだが、やはり人にはそれぞれ得意とする属性があるのだという。

 自分の得意とする属性を知っておけばどのように修行をするのか目安にもなる。長所を伸ばす極型や万遍なく使える万能型等々。

 それで今から僕のチャクラの性質を視るのだという。


「それじゃ~この桶に両手を入れてチャクラを出してみよう!」


「チャクラの出し方とかわからないんですけど」


「さっき体中を巡った感覚覚えてる?」


「はい、なんとなくですけど」


「うん! それじゃその体を巡っていたものを手に集めるように意識してみて」


 体を巡っていたものを手に集める……

 う~ん……

 あ、なんか指先が温かくなってきたような……?


「お、もうコツを掴んだね! 和泉は優秀だ~」


 桶を見ると桶の中に入ってる水がどんどん変色していく。

 右手が浸かっている場所は黒く。左手の方は逆に白くなっていく。


「あら~」


「これは」


「へぇ~初めて見た」


 三人とも桶を覗き込みそれそれに感想を口にする。

 何! 何なの!? これヤバイの?


「凄いわね和泉。陰陽の性質なんてここ百年現れてないわよ」


「それって凄い事なんです?」


「凄いなんてもんじゃないぞ。お前のチャクラはどの属性にも最適な変化を起こす」


 それって最強なんじゃ?


「でもどの属性にも弱いのよね」


 どの属性にも最適化出来るのにどの属性にも弱いってどういうこっちゃ?


 桜華さんと影丸さんの話しをまとめると僕の性質はどの属性の術を使ってもそこそこの威力を発揮する。

 でもそこそこ止まりなのだという。

 例えば同じレベルで火の適正がある人と同じ火遁の術を使うと必ず撃ち負ける。

 なので、僕の場合かなり高いレベルの万能型にならないと器用貧乏で終わるらしい。


「それは強いのか弱いのか微妙な所ですね」


「戦い方によっては最強よ? 常に相手の苦手とする属性で攻められるのだもの」


「相手の属性をいち早く見抜かないといけないがな」


「ん~まぁ要は使い方次第ですね」


「そう言う事ね。精進なさいな。

 さて、和泉のチャクラの性質もわかったし。本格的な訓練は明日からとして今日は歓迎会よ!」


「久しぶりに里の仲間が増えたんだもの! 盛大にしなきゃね、お姉ちゃん!」


「お頭。ほどほどにしないと後が……」


「うるさいわよ! 禿丸!」


「お頭。俺は影丸です。それに俺はハゲていません! これは剃髪と言って自分で髪をですね……」


「はいはい禿丸は置いて行きましょ和泉」


「え? いいんですか……?

 あ、禿丸さん。今日はありがとうございました!」


「おい。お前まで禿丸と言ったか?」


「いえ、嫌だな~言ってないですよ?」


 いけね、間違えた。でも言い訳を聞いて欲しい。その頭頂部があまりにも眩しいんですもの! 絶対影に隠れられない頭なんですもの!


「いいか? 先ほども言い掛けたが、これは剃髪といってだな……」


「和泉~置いてくわよ!」


「ごめんなさ~い。

 すみません、禿丸さん。お頭が呼んでいるのでこれで」


「お前! 明日の鍛錬の時覚えていろよ!」


 ちょっと言い過ぎたかな?

 そんなことを思いながらも桜華さん達の後を追う。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 宴会から一夜明けた早朝。僕は桜華さんから修行の方針について説明を受けた。

 午前中は基本的なチャクラの使い方から印の結び方など座学を中心に。

 午後は影丸さんに体術などを実戦形式で叩き込まれるといった感じだ。

 現役を退いた人もいるがこの里に住む全員が忍びであり、その戦闘力は例え主婦であっても目を見張るものがあった。


 子供たちに混ざり寺子屋のようなところで簡単な術を学び。

 午後は影丸さんに相手をしてもらい体が動かなくなるまで修行をつけてもらった。

 そんな日々が続き、気が付けば二週間がたった。


「火遁! 蛍火!」


 僕の掛け声と共に体の回りに小さな火の玉が浮かび上がる。


「よし! 合格!」


 桜華さんの声を聞き、忍術を解除する。


「凄いわね、和泉。二週間で初級の忍術を全て覚えてしまうなんて」


「いや~お頭の教え方が上手だからですよ」


「まったく……誉めても何も出ないわよ」


 いやいや、御世辞抜きでそう思う。

 桜華さんの教え方はとにかく丁寧で、わかりやすかった。


「さて、和泉は明日から別の修練にします」


「別の修練ですか?」


「そうです。明日からは中級以上の忍術とそれら忍術を実戦の中でも使えるようにする修練を開始します」


 なるほどね、術が使えても実際に戦いの中で使えないと意味がないものね。


「わかりました!」


「よし、いい返事ね。

 相手は……うん。桃華! あんたがやってあげて!」


「はい!」


「よし! それじゃ午前の修練はここまで!」


「「「ありがとうございました!」」」


 子供たちと一緒に頭を下げ元気に挨拶をする。


 寺子屋から居候させてもらっている桃華達の家まではゆっくり歩いて二十分位だ。

 今日も特に用事もないので桃華と一緒に歩いて帰る。


「あ~あ、和泉は半月で初級合格かぁ。私は二ヶ月もかかったのに……」


「いや~桜華さんの指導の賜物だね」


「お姉ちゃん贔屓してるよ~」


「桜華さんの性格からしてそれは無いんじゃないかな?」


「じゃ和泉が優秀って事じゃん! 何? 自慢!?」


「ええ~違うよ! ほら……え~と……

 あっそうだ! 桃華だって巻物貸してくれたじゃない? そのおかげだよ」


 チャクラの使い方がいまいちだった頃に何か無いかと桃華に相談したら巻物を貸してくれたのだ。

 ノートの代わりに巻物って……思わずツッコミをしてしまった。


「あ~そんなこともあったわね」


「とにかく読むのに苦労したよ~」


 何せ昔の字で書かれているのだ、ずっと古文の宿題をやっていた気分だった。

 神崎さんにアキツ国の言葉を教えてもらわなかったら未だに読めていなかっただろうなぁ……

 でも神崎さんに助けられたのがなんか嫌だ。


「え」


「え?」


「和泉読んだの? あの巻物を? 七本全部?」


「う……うん……なんか問題あった?」


「あれ、私でも読めないわよ」


「え? じゃどうやって使うの?」


「転写の術って言うのがあるけど……逆に和泉はどうやったのよ?」


「普通に読んで書いてある通りにやったよ? 後は使えるようになるまで反復練習」


「信じらんない……頭の中どうなっているの?」


「その言い方は傷つくよ!?」


 桃華に呆れられながらも家まで歩いていく。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「あっははは! そりゃ桃華の言っている方が正しいわ!」


 午後の鍛錬の時、影丸さんに先ほどの桃華との話しをした。

 あの後桃華に質問しても自分で考えなさいと言われ何一つ教えてくれなかったのだ。


「もう……そんなに笑わないで下さいよ~禿丸さん」


「影丸だ。

 ふむ、転写の術とはな元々は自分の術を後継に託す為に作られた術の事だ」


 昔々、この里に一人の天才がいました。

 彼は一を聞けば十でも二十でも知る事が出来る男でした。

 そんな彼にも唯一できない事があたのです。

 それは人に教えるという事。

 天才過ぎた彼は弟子の『何が解らない』が解らなかったのです。

 ある時彼は考えました。

「言っても解らないなら直接体に覚えさせればよくね?」

 彼は自分の術を巻物に宿し、それを弟子に渡し術を使わせました。

 結果は成功。

 弟子たちは彼の術の凄さを里中に知らせました。

 これにより里のレベルは上がり、今まで以上に里に繁栄をもたらしましたとさ。


「と言うのが転写の術のはじまりだ」


「はぁ~なるほど。いきなり昔話をされたときはどうしようかと思いましたよ」


「巻物のありがたみがわかっただろう?」


「要するに術のコピー&ペーストですね」


「こぴ……? 言葉の意味はわからんが、理解したのならいいだ。

 さて、実際に使ってみたくないか?」


 影丸さんは懐から一本の巻物を取り出し怪しく笑った。


「これにはな俺が得意とする雷遁の術が入っている。

 いずれは教えてやろうと思っていたが、お頭が次の段階に進むと言うならちょうどいい」


「危険性は?」


「それは何にだってつきものだろう?

 巻物はその巻物に書かれている術のレベルによって危険度が変わるが……

 まぁお前なら大丈夫だろう」


「その信用が嬉しいやら悲しいやら……」


「どうする? 俺のとっておきだぞ?」


 影丸さんが巻物を左右に揺らし問いかけてくる。

 確かにどんなものにもリスクは付き物か……

 これからも約に立ちそうだし。教えてもらおうかな?


「……お願いします。影丸さん」


「そうか。よし! それじゃ他の奴らも集めるか。

 お前みたいに知らない奴もいるかもしれないからな」


 僕の目を見た影丸さんは大きく一回頷くと術の準備に取り掛かってくれた。

 あと若い人も集めて講義をするそうだ。しっかりと後継も育てようとするあたり。

 影丸さんは思ったより優秀な人なのかもしれない。


 その後まだ転写の術を知らないと言う若い人が集められ講義の準備が整った。


「あの……禿丸さん?」


「影丸だ。なんだ? 何か問題か?」


「いえ、若い人を集めるとは聞いていましたが……

 何故みんな中学生くらいなんですか?」


「忠楽姓……? よくわからんが、ここに集まった奴等より下の奴等はまだ早いからな。

 上の奴らはすでに覚えてるか、あえて覚えない奴等ばっかだからな。どうしてもこのくらいの歳になるんだ」


 そうですね。十五歳で元服する世界でしたね。

 寺小屋でも小学生たちと一緒にやっていたんだ。もう気にしない事にしよう。


「よし、それじゃ始めるぞ!

 今回やるのは転写の術と言うものだ。一歩間違えば大事故につながる危険な術だ。心して挑むように」


 影丸さんの講義が始まった。

 最初に話すのは先ほど聞かされた昔話からだった。

 その後、術の仕組みからチャクラの練り方。印の結び方と進んでいった。


「さて、一通りやったから実際にやってみるぞ。

 それじゃ和泉! 前に出てやってみろ」


「僕ですか?」


「元々お前に教える為のモノだ! つべこべ言わずにやってみろ!」


 影丸さんから受け取った巻物を口に咥え印を結んでいく。

 え~と酉……寅……子で終わり。

 チャクラを通して……転写の術!!


 心で術名を唱えると同時に頭の中に情報が流れ込んでくる。

 凄い! この巻物に書かれている術がどんな術か解る!

 ……もっと早く知っておけばよかった……


「その顔を見ると成功したみたいだな」


「ええ、凄いです!」


「じゃ後は体に馴染ませる為に何回か使えよ~」


「え?」


「“え?”って当たり前だろ。今はただやり方を知っているだけに過ぎない。

 自分の技にするには何回も訓練を続けないとダメだ」


 人生はそんなに甘くないようです。

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