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3話 この世の仕組みはRPG!?

 部屋の準備が出来たと迎えに来てくれた兵士の後に続き城の中を移動する。

 案内された部屋はいわゆる来賓用の部屋なのだろう。どの調度品も高そうで迂闊に触れない。

 さらに驚くことにベッドが一つしか置かれていなかった。

 これはアレですか? BとL的な展開をお望みかしら?

 だとしたら全力でこの城を抜け出さないといけないのだけど……


「女性はこちらの部屋を御使いください。

 男性の御二人は反対側の部屋をどうぞ」


 女性? はて? …………あ~僕の事か。

 最近はこの格好でも男扱いだったからすっかり忘れてた。

 とりあえず全力で微笑み、お礼を言っておけば大丈夫かな。


「わざわざありがとうございます」


「いえ、じ、自分は姫様に言われた通りにしただけですので! お気になさらず!」


 兵士は躓きながらも足早に部屋を出ていった。

 あ~あ慌てちゃってまぁ。これで僕が男だと知ったらどうなるんだろ。


 その後大神さん達が来るかと待っていたのだが、来る気配が無かったのでそのまま寝ることにした。

 それにしても二度目の異世界かぁ。

 日本に戻ってまだ一ヶ月ちょっとなんだけど、ちょっと早すぎじゃない?


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 翌朝メイドさんによって起こされた。

 なんでもこれから昨日の夜に姫様を侵入者から守った行為に感謝の意を表す式典があるので出席してほしいとノンナ姫から言い付かったのだと。

 しかし……某電気街の喫茶店で見かける店員ではなく本物のメイドだ。何かすごい。

 ああ、僕ここに住もうかな……

 しかし夢心地は一瞬で終わりを告げた。


「それではお着替えのお手伝いを……」


 え? お着替えのお手伝い?


 昨日は大学から帰って直ぐに飛ばされたから服装は普通にTシャツにジーパンだ。

 流石にこの格好で正式な場には出て行けないだろう。ましてや相手は国のトップに立つ人な訳で。


 メイドさんは当然と言わんばかりに服を脱がしに掛かる。

 まずい! このままじゃ男だとばれる!

 ……ばれる?  いやそもそも向こうが勝手に女だと思い込んでいるんだからばれるも何も無いじゃん。

 ふ~焦って損した。ただ何も知らないメイドさんの目の前に僕の相棒が挨拶するだけじゃない。

 …………それはそれでダメじゃね?

 熟考し過ぎたのかすでに上半身は肌着一枚だけになっていた。


「こちらも脱がしますね」


「いや、ちょっと待って!」


 抵抗虚しくメイドさんによる着付け作業が終わり僕は完全にドレスアップした。

 下半身? 死守したさ! メイドさんはトランクスには驚いていたけどね!

 部屋を出るとやはり正装した陽向と武さんが立っていた。


「やはりいずんちゅは女装か」


「背が高くなったからドレスも似合うようになったな」


「全然嬉しくないからね?」


 そのまま僕たちは昨日の兵士に連れられて玉座の間へ連れて行かれた。

 なんて言うか……これはこれで緊張するね……


「それではここでお待ちください。

 暫くしたら向こうから扉を開けますので、扉が開いたら三人並んでお進みください」


 扉の前に居た兵士に一通りの流れを教えてもらう。

 何か色々とやることが多くてめんどくさい……


 扉を眺めていると兵士がそろそろですよと教えてくれた。すると扉が重い音を鳴らし左右に開いていく。

 その瞬間僕を中心に右に陽向、左に武さんがポジションをとる。

 やられた! これじゃ僕がリーダーみたいじゃない!


 場所を変えようとしたが兵士に睨まれたのでしょうがなく真ん中を歩きノンナ姫の前まで行く。

 そこで片膝を付き先ほど習った挨拶をする。

 玉座には王と王妃の姿がなく、ノンナ姫が一人で立っていた。

 まぁ話題に上がらなかったって事はそう言う事なんだろうけど……

 なんとなくすっきりしない気持ちのまま式典が始まった。


 まずはバジルさんの挨拶らしきものから始まり、昨晩起こった魔族の侵入。偶然居合わせた僕たちによる魔族の討伐。

 そして僕たちが異世界から召喚された人物で魔族討伐の報酬にこの国の市民権を贈ると。そんな感じの話しだった……と思う。


 バジルさん話し長いんだもんな~

 これが学校の朝礼とかだったら貧血で倒れちゃうよ。


 どれくらい話しを聞いていただろう。

 とりあえず式典も終わりに近付き、今はノンナ姫の演説である。

 これが終わるとようやく僕たちに褒美が手渡され今回の式典は終わりなんだと。

 何でもっとスマートに出来ないかなぁ。


「ではこれよりこの者達を我が国の一員と認め身分証を発行する!」


 そう言うとノンナ姫の手元に三枚の銀色のプレートが運ばれた。

 プレートには何も書かれておらず遠目から見るとただの銀板にしか見えない。


「それではイズミ・ウエハラ! こちらへ」


「あ、はい!」


 何か名前から呼ばれるとこそばゆいね。

 僕はそのままノンナ姫の前まで階段を上がっていく。


「イズミ・ウエハラよ。そなたの力妾に貸してくれるか?」


「おおせのままに」


 カンペを読みながらだから何かとっても棒読みになったけど、問題ないよね。

 そしてノンナ姫がいきなりナイフを取り出した。

 何! 何するの! ここでカンペを読めとしか聞いてないよ!


「ええい、狼狽えるな。そなたの血を少しもらうだけじゃ」


「血が欲しいって……飲むの?」


「たわけ! さっき説明したじゃろ! このプレートにそなたの血を記憶させ身分証にするのじゃ。

 まさか……聞いてなかったのか?」


「…………てへ」


「はぁ~まぁよい。ちくっとするだけじゃ」


 そう言いながらノンナ姫が僕の右手人差し指にナイフを刺した。

 鋭い痛みと共に血が滴り落ちる。てかこれ勢いよく刺し過ぎじゃない?


 プレートに血が滴り落ちるとカードが発光し文字が刻まれていく。

 その様子を眺めていると、姫様が何やら唱え始める。


「癒しと慈悲を司る女神よ。その御力を我らに貸したまえ……ヒール!」


 姫様が呪文を唱え終わると指先の傷が痛みと共に跡形もなく消える。

 スゲー! 魔法キターー!


「ほれ、ぼさっとするな。次がつかえるぞ」


 慌てて一礼し、先ほどのプレートを受け取り元いた場所へ戻る。

 一連の動作を陽向、武さんの順で行っていく。最後にノンナ姫が高らかに何かを宣言して式典は終わった。

 宣言の内容が聞こえなかったのは魔法と手元のプレートに気を取られていたからなんだけどね。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 式典も無事終わり昨日借りた部屋へと戻ってくる。何やらノンナ姫が直接会いたいと言っているみたいで、それまで待機だ。


「あ~肩こった」


「どうもあの手のイベントは疲れる」


「右に同じ」


 みんな僕の部屋に集まったのでそれぞれ先ほどのプレートを見せ合う事にする。


《名前:宇江原 和泉  Lv:6  Job:一般市民》


 と簡単な情報が乗っていた。てか『Job』ってゲームみたいだね?

 と言うかそもそも『一般市民』って職業なん?


「ゲームですよ?」


「あひゃい!」


 耳元でいきなり話しかけらる。


「大神さん!」


「どもども~素敵でしたよ~式典」


「それはどーも。それよりゲームってどういう意味です?」


「そのまんまの意味ですけどね~神崎さん、はい説明」


「わっ私ですか! えっとですね……」


 神崎さん居たんだ。全然気づかなかったよ。

 それからまた要領の得ない説明が続いた。

 いや、神崎さんの練習だと解っていますけど、もう少し何とかなりませんか?


 彼女が言った事をまとめるとこのディスカヴィナン。Gから始まる三文字の方がゲームを真似て作った世界なのだと。だからこの世界に生きてる全てのモノにレベルがあり、ステータスが存在する。経験値を集めればレベルアップもする。昨晩頭の中に鳴り響いた鐘の音はレベルアップの時の音楽なんだとか。


「なんて言うかそのまんまゲームなんだな」


「皆さんから見ればゲームの様でもこの世界の住人から見ればこれが常識なんです」


「それではこの世界の説明も終わりましたし、次は皆様の力について説明しましょう」


 何かいいことを言った神崎さんをガン無視し、大神さんが進行をする。

 あ、神崎さん涙目。


「まず皆様心の中で“ステータス”と唱えてください」


 言われた通りステータスと考えると目の前にゲームでお馴染みのステータス画面が現れる。

 おおースゲーこれも魔法かな?


「そうですよ。この世界の誰もが使える一般的な魔法ですよ」


 当然のように心の声に反応する大神さんを無視してステータス画面を見る。


名前:宇江原 和泉  Lv:6 Job:一般市民

HP:300/300 MP:100/100

力   :25

素早さ:40

体力 :25

魔力 :50

器用さ:50

運   :20


 スキル:残り30ポイント

  狩人の目・筋力アップ(小)・医療知識・電光石火・魔法付与師


 なるほど、見れば見るほどゲームのステータス画面だ。


「これ、前に貰ったスキルがあるんですね」


「ええ、もうそのスキルは皆様のものですので」


「消えてるスキルもありますけど」


「それはこの世界では使えないスキル。もしくは存在しないスキルです。

 和泉様の“反動無効”はこの世界に銃もしくはそれに類似するものがない為でしょう」


 なるほど。確かに銃の無い世界で反動無効は使わないね。


「気になるスキルがあれば後で調べてみてください。所得してるスキルの文字を指で触れば説明が出ます。

 では次です」


 大神さんは懐から僕たちが貰ったプレートと同じものを六枚取り出した。そして一人につき二枚づつ渡していく。


「これは?」


「通常この世界では一人一つのJobしか就けません。

 まぁ普通の人は一個のJobを育てるだけで一生が終わってしまうんですけどね」


「はぁ……それで?」


「察しが悪いですね~Jobが一つならこの世界の人と変わらないでしょう?

 そこで差別化を図る為に二つ追加で一人三つのJobについてもらいます」


「でも一生かけて育てるのを三つも一気に出来るんですか?」


「いい質問です。そこでどのJobを選択しても残りのJobにも経験値が入るようにしました。

 そして経験値の入る量を通常の三倍に増やしています」


 という事は全てのJobが三倍のスピードで成長する計算だね。


「普通の方の経験値も三倍ですよ! 三倍! 凄くないですか?」


「ただしここで注意が一つ。Jobだけ経験値が入るものは三倍になりません」


「と、言うと?」


「生産系のJobについた場合、製品を作る過程で経験値が入りますが普通の経験値はほとんど入りません。Jobの経験値が主なんです。これを三倍にするとJobのレベルだけどんどん上がってしまうんですよ」


「上がるのがダメなんです?」


「上がりすぎるのがダメなんですよ。Lv20の人がJob90とかおかしいでしょ?」


 確かに……


「ですので、生産系のスキル使用時の経験値は通常通りか多くても1.5倍までです。

 さて、他は何か質問ありますか?」


 無いので次に進んでもらった。次はスキルポイントなるものだった。

 これはレベルが上がるごとに貰えるポイントで自分が取得しているJobのスキルを自由に取得する事が出来るモノらしい。当然僕たちだけの仕様だ。

 例えば魔法使いで今まで水魔法を使っていたが、火魔法も使ってみたくなったらこのポイントを消費すれば誰にも教わらずに直ぐに使えるようになるとの事。

 ただし過剰なポイントの使用はおすすめしないと言われた。

 まぁ昨日は何も出来なかったのに今日になっていきなり全て使えますじゃ怪しすぎるものね。


「さて、それでは皆様頑張って下さいね」


「まぁ出来るだけやってみますよ」


「あ、そうそう。これからですけど、何かあった時の担当を分けたいと思います。

 私が全部やってもいいんですけど。それでは神崎さんの教育になりません。

 そこで私が二人。神崎さんが一人を担当しようと思います」


「「「じゃ大神さんで!」」」


「何でですか!」


 何でって……ねぇ


「はぁそうなりますよね。

 まぁ私達も魔王が復活しているか調べないといけませんから?

 四六時中一緒って訳じゃないんですけどね」


「私~できれば~同じ女性の和泉様がいいなぁ~」


 何を言うかな! この娘っ子は!


「その期待に応えてやるのが君の仕事だ。和泉さん」


「大丈夫。いずんちゅなら何とかなるさ」


 こいつ等……早速押し付けにきやがった!


「なら神崎さんは和泉様の担当という事で」


「なっ!」


「やったー! 私、頑張ります!」


 大神さんまで……信じてなかったけど信じてたのに……


「えへへへ~和泉様、これからよろしくお願いしますね~」


「……はぁ。もういいですよ。こちらこそお願いしますね。

 ただ! 一言言っておきますけど僕は男ですからね!」


「またまた~こんな可愛い男の人なんていませんよ~ね~?」


 神崎さんの問いかけに全員で目を逸らす。


「え……まさか。本当に男の人なんですか?

 じゃ何でドレスなんて着てるんですか! 変態ですか!」


「いきなり失礼ですね。殺しますよ」


「ひっ」


「まぁまぁ仲良くやってください。

 そろそろノンナ姫が来ますので私達はこれで。

 行きますよ! 神崎さん!」


「あ~待ってください~

 ……あの和泉様? 男の人でもよろしくお願いしますね」


「あ~はいはい」


 大神さんと神崎さんが消えると同時にノンナ姫が入ってきた。

 どうやら身分証の使い方とJobについて説明してくれるそうだ。

 さっき大神さんに大体の事は教えてもらったんだけどね……


 僕たちは渋々二週目の初心者講習を受ける事にした。

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