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32話 プレゼント作り

 ユンさん達がお見舞いに来てくれてから二日後、予想通りに魔力が定着し僕の魔力は完全に龍族のものとなった。

 魔力が変質した事によっての変化はフェンさんが言っていた通り内側に強く表れた。

 まずステータスで魔力が大幅に上昇し、MPに至っては倍近くにまでなった。また両目とも魔眼となり以前よりも得られる情報量が格段に増えた。ユンさん達に確認したらこの目を『龍眼』と呼んでいるそうだ。

 これだけ変化が起きたのだから外見も変化するかと思われたが、目以外は特に目立った変化はなく以前と同じ姿をしている。魔力を込めた時だけ眼球が変化するのはしょうがないと諦めた。 


◆◇◆◇◆◇◆◇


 魔力が変化してから一カ月の時が過ぎ、修行の内容はより龍族の技がメインになっていた。

 師匠もユンさんは固定でシュイちゃんとフェンさんの手が空いている方が修行を見てくれる事になった。今日はユンさんとシュイちゃんの番である。

 本日の修行も無事終わり体をほぐしている時に後ろからユンさんが質問を投げかけてくる。


「イズミは誰かにプレゼントを渡すのかい?」


「プレゼントですか? それは……何かのお祝いですか?」


「あ、そうかイズミは余所の国から来たんだったね。それじゃ知らないのも無理はないか」


「今月にね~エルフの里で“誕生祭”って呼ばれてるお祭りがあるんだよ~」


 質問に質問で返してしまった僕に二人は気にもせず丁寧に教えてくれた。

 なんでも今月十一月の二十五日はエルフの神様の誕生日とされていて、毎年盛大に誕生祭を開催しいつもお世話になった人にプレゼントを渡す風習があるのだそうだ。こっちでいう所の日本のクリスマスに近い印象を受ける。

 なるほど、それで最近街中が落ち着きなかったんだなぁ。


「それは知らなかったです。教えてくれてありがとうございます」


「あたいら龍にはあんまし関係ないイベントなんだけどね」


 そう言ってユンさんは後ろから圧し掛かってくる。ストレッチの手伝いではなく、単にくっ付きたいだけのようだ。


「師匠達もお祭りに参加するんですか?」


「シュイ達はダーヴィットの護衛で参加できないんだよ~お菓子食べたかったのに……」


「ま~それが役目だし、しょうがないさ」


 シュイちゃんはとても残念そうに、ユンさんは既に諦めた感じで質問に答えてくれる。関係がないと言いながらもやはり興味はあるようだ。


「ま、あたい達の事は置いといて、イズミはあのエルフの御嬢さんと話しをするいい機会じゃないのかい?」


 そう言いながらユンさんは枝垂れかかってくる。エルフの御嬢さんとは言わずもがなメリッサの事だ。何とか普通に会話する位には関係が修復出来たのだが、あのベッドの上で言い掛けた話しの続きを一向にしてくれない。こちらから何回か聞こうとしたけどなんとなくはぐらかされてしまい、今では向こうから言ってくるのを待って居る状況だ。


「まぁそうなんですけどね。何と言うかタイミングがですね……」


「だからこの誕生祭を使ってちゃんと話しをすればいいのさ」


「友達とは仲良くしないとダメなんだよ~?」


 ストレッチを終え、上体を起こすと自然とシュイちゃんが腕の中に入ってくる。どうやら彼女は正面から抱きつくのが好きなようで、修行終わりには必ず抱きついてくる。吽形も正面から抱きついてくるのが好きなのだが、何がそんなにいいのだろう?


「あたいらも明日から忙しくなるし、修行は一先ず休みにするから頑張って話し合うんだよ」


「忙しく? ああ、ダーヴィットさんのお仕事関係ですか」


 ユンさん達はダーヴィットの契約龍だ。命令を優先するのは当たり前の事なのだ。


「そうなんだよ~ダーヴィットのお守りなんてフェイちゃんとユンちゃんでやればいいのにね」


 そう言ってシュイちゃんは僕を見上げてくる。その仕草に思わず頭を撫でてしまうのは仕方がないと思う。暫く休憩しながらおしゃべりを続けると、ユンさんとシュイちゃんは学園へと帰っていく。その際に残っている魔力をギリギリまで吸い取って行くのは最早お約束となっている。「魔力が変質したのだから、味も変わったのでは?」と聞いてみたのだが、三人からよりおいしくなったと返事が返ってきた。

 修行の対価と思えば安いものだと思うようにし、毎日吸われ続けている。断じて吸われる時にキスするのが気持ちいいとかではない……本当だよ?


◆◇◆◇◆◇◆◇


 夕飯を食べ終えた後、自室にこもってプレゼントの内容を考えてることにした。

 プレゼントを渡す人は住む場所と食事を提供してくれるマーリンさんに魔力切れを起こす度に運んでくれるイルマさん。この機会に仲良くなりたいメリッサと修行をしてくれるユンさん、フェンさん、シュイちゃんの六人だ。


「何が喜ばれるんだろう……正直女の子にプレゼント何てした事ないんだけど」


 異世界に行く前は彼女居ない歴=年齢だったし。前の異世界で奥さんが六人も出来たが、今思うとロクにプレゼントをした覚えがない。ん~今更ながら僕ってダメな夫だったんだな。

 女の人ならアクセサリーが無難か……イルマさんとユンさん達は手作りで何か作るとして。マーリンさんとメリッサは何か特別なモノを贈りたいな……。

 僕はアイテム欄をボーと眺める。そしてある素材が大量にある事に気が付いた。

 これから冬も本格的になるし……いけるかな。

 安直ではあるけど案も決まった為、早速明日から行動をしよう。


 今まで午後の時間をずっとユンさんの修行に充てがっていた為、その修行がなくなると午後はまるっと暇になる。その時間を利用して僕は街に繰り出す事にする。

 街に出て早々に目的のお店を発見する事が出来た。そのお店とは……


「いらっしゃいませ~マーベリット被服店へようこそ~」


 そう、服屋だ。それもこの街で女性に一番人気を誇る服屋だ。

 これまで修行と称して獣系のモスンターを狩っていた為、毛皮などが大量に余っている状態なのだ。なのでこれを使ってコートなどが作れればと思って訪れたのである。

 中に入ると自分には縁のない服たちがきらびやかにディスプレイされ、まるで別世界に来たような錯覚を感じる。


「あの……実は作ってもらいたいものがありまして……」


「オーダーメイドですね! それではこちらへどうぞ~」


 やたら元気な店員に声を掛けるとそのまま奥の部屋まで通される。どうしてもこういうオシャレ系のお店は苦手だ。

 奥に通されると先ほどの店員とは違い落ち着いた雰囲気のあるお姉さんが出迎えてくれた。僕は勧められるままに椅子に座り、今回の用事を伝えた。


「そうですか。恩人へのプレゼントで……それは誕生祭にお渡しになる予定ですか?」


「そうですね。出来れば間に合わせてもらいたいんですが……お願いできますか?」


 僕はお姉さんの顔色を窺いながらお願いをしてみた。お姉さんは難しそうな顔をしてスケジュールの確認をし始める。

 誕生祭まであと二週間ちょっと。ちょっと無謀だったかな。


「素材となる毛皮などはお持ちですか?」


 僕は手持ちの素材をリストアップしていく。僕の言い挙げる素材を紙に書きとめるとお姉さんは暫く考え込んでから「うん、これなら」と呟いて顔を上げた。


「何とか間に合いそうです。ただ、急ぎの仕事になりますからちょっとお高くなりますが……」


「全然かまわないです。ありがとうございます!」


 お姉さんが提示してきた金額はほぼ全財産だった。ブラックスミスの試験でマードックさんの売上が無ければ厳しかったと思う。

 僕はその場で素材となる毛皮などを手渡しデザイン等を決めて行った。と言っても僕にそんなことが解る訳もなく、ほとんどお姉さんにお任せ状態だった。

 注文書にサインをしてその場で代金を支払ってきた。頭金だけでいいと言われたが、他の事に使ってしまったり、忘れると困るので一括で支払ってきた。


「さて、次は師匠達へのプレゼントだけど……」


 正直、今の手持ちだと何も買えない。僕は手っ取り早く稼ぐ為に冒険者ギルドを目指した。


◇◆◇◆◇◆◇◆


 それからの数日はまさに過酷だった。女の子にプレゼントをする為に頑張ると言えば聞こえがいいが、その仕事の内容は命がけだ。

 森で薬草類の採取クエストを受ければキラーグリズリーに遭遇し。学園の裏山で鉱物採取をすれば岩崩に巻き込まれた。僕は働いてはいけないのではないかと本気で思った程だ。


 数回のクエストを経験した結果。僕は危険続きのクエストを諦め稼いだお金を使って装飾品を作り売る方法に切り替えた。

 プレゼント用の練習にもなるし、お金も稼げる。まさに一石二鳥の作戦だ。早速ブラックスミスのスキルから装飾品製造を最大レベルで取得する。

 そして、クエストで稼いだお金を全て銀と交換した。元手が少なかったので精々指輪が数個とネックレスが一つで作れるかどうかという量だ。


 ただ銀の装飾品を作っても無名な僕の作品では安く買い叩かれるのが目に見えている。そこで学園で習った魔法石を用いたタリスマンとして売ることにした。

 タリスマンは持っているだけで効力を発揮するもので一般の人達にも好まれる。ただ魔法石の核となるのは宝石が主流で所持金が無いにも等しい僕には買うことが出来ない。

 そこで、裏技を使うことにする。

『買うのが無理なら作ってしまえばいいじゃない』と言うことで早速裏山で作業開始である。


 まずは何でも良いので鉱物を用意する。そして、そこに忍術を使用すればあっという間に宝石類の出来上がりである。あくまでも作れるのは原石で貴金属の類いは精製出来ない。出来るなら今頃僕は左団扇で御大臣様だ。


「まずは~これかな? 土遁・鉱物置換!」


 手元にあったただの岩が真っ赤なルビーの原石へと変化する。立て続けにサファイア、エメラルド、アンバーと四種類の原石を作り上げ、そして最後に一番大きな塊を手に取り最後のチャクラを注ぎ込む。すると塊は白く透明な色へと変化する。日本では金剛石とも呼ばれ、女性ならいつの日か身に着けたい宝石。そうダイヤだ。僕は残りのチャクラをほぼ全て使い掌程の岩をダイヤの原石へと変えたのだ。

 しかし、いきなり休み無しで五種類もの宝石へ変化させたツケがきたのか。足元が覚束なくなりまともに歩く事も困難な状態になってしまう。


「はぁ無理は禁物か。まぁここからなら直ぐ帰れるし、少し休もう」


 僕は強化された魔眼を使い龍脈が流れている場所を特定し、這いずりながら移動すると残っていた最後のチャクラを使い周りに魔除けの結界を張る。うまく張れたと思うけど、確認する前にその場で力尽きてしまった。


 そして気が付いたら周りが暗くなっていた。上手く魔除けの結界は維持できていたようで何とか無事である。それにしてもいくら疲れているからと言ってモンスターが闊歩する岩場で寝てしまうとは……。

 今度から魔力やチャクラの残量には気をつけよう。


 影丸さんから教わった紫電と電光石火をフルに使い街まで一直線に帰る。それでも結構遅い時間になってしまい、マーリンさんに怒られた。

 そして意外だったのがメリッサがとても心配してくた様で、顔を見せると一瞬安堵した様な表情を見せたが直ぐに部屋に戻ってしまった。まぁ一瞬でも安堵してくれたんだ、それでいいとしよう。



 次の日気が付いたら食堂で机に突っ伏す様に寝ていた。きっとマーリンさんの説教の途中で寝てしまったのだろう。僕は朝食の準備をしているマーリンさんに挨拶をしてから自室へ戻った。その時のマーリンさんは次は気を付けるんだよと苦笑いをしていた。


 自室に籠ると早速作業の続きだ。途中メリッサが学園に行かないのかと聞きに来てくれたので休む旨を伝えるとまた作業に没頭する。

 今日は装飾品系のスキルで原石から宝石を取り出す作業だ。カットなどの知識がない僕でもスキルを使って魔力を込めるだけで原石から宝石が作り出せるのだ。スキル万々歳である。

 しかし魔力の量を間違えると簡単に砕けてしまうので結構集中力を使う作業だ。


 お昼を過ぎた辺りで全ての原石を宝石にする事が出来た。何回か失敗し原石を割ってしまったが、それでも一種類につき十数個の宝石を切り出す事に成功する。あとはこの宝石類に色に見合った属性を込め魔法石にすれば第一関門突破だ。

 そして再度集中する事数時間、各属性の魔法石が出来上がった。窓から外を見ればすっかり暗くなり、時間を確認すると日付が変わろうとしていた。

 ヤバイ……二日連続で手伝いをぶっちしちゃった……。

 時間を確認したからであろうか、急に眠気が襲って来てマーリンさんに謝罪をする前にまたしても力尽きた。何か最近自力でベッドへとたどり着いてないような気がする。


 翌日、誕生祭まであと一週間となった。そしてまたしてもマーリンさんへの謝罪から一日が始る。

 今日は学園が休校日なので気兼ねなく作業を続けることができる。

 本日の作業は前回買った銀を装飾品へと変化させ昨日作った魔法石を合せる作業だ。

 銀の装飾品はレベルを最大で取ったのが良かったのか、大して苦戦することなく指輪を五つとネックレスを一つ作り上げる事に成功した。指輪には各属性石を一つづつ。ネックレスには中心にダイヤを据え、周りを各属性で囲むように意匠を凝らしてみた。これならある程度の値段で買ってもらえるだろう。


 出来上がった作品を大事に仕舞い、街の宝石店を訪れる。一瞬冒険者用の装備品を扱う店にしようかと思ったが、こっちの方が高く買ってくれそうな気がしたのだ。

 出てきた店員に作品を買って欲しい旨を伝えると奥の部屋へと通された。暫く待っていると鑑定士と名乗る老人と先ほどの店員が入ってきた。まず取り出した作品を店員が品定めをし、次に鑑定士が値段を付けるシステムのようだ。僕は結果が出るのをドキドキしながら待っていた。


「大変お待たせしました。こちら全て買い取らせていただきます」


 鑑定が終わり店員が放った一言に僕は安堵のため息をつく。買い取られなかったらどうしようと不安だったのだ。


「値段はこの通りでよろしいでしょうか?」


 店員が差し出した紙には途方もない金額が書かれていた。


「あの……この値段は間違いでは……?」


「とんでもない! この指輪一つとっても大変値打ちのあるものです! むしろこれを機にうちと契約をしてもらいたいものです!!」


 しまった……やり過ぎた……

 店員さんのやる気満々な目を見ないようにし、僕は先ほどとは違ったため息をつく破目になった。


 変更後ステータス

名前:宇江原 和泉  Lv:30 Job:忍者Lv:45・ブラックスミスLv:28

                     ウィザードLv:20・ノービスLv:20

HP:800/800 MP:1900/1900

力   :60

素早さ:75

体力 :65

魔力 :150

器用さ:85

運   :50


 スキルP:655P(B:120・J:555)


 スキル:龍脈眼5⇒龍眼5 装飾品製造5 宝石加工5 

 スキルP J:555⇒465

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