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第七話 同居人 ってまさか

連続更新。

お気に入りに入れてくれたかたありがとうございます。





 消えた生徒の内訳。

 高等部1年生が1人。

 2年生が3人。

 3年生が1人。


 最初に失踪したのは1年生のアイシャ・モルグレー。授業の時間になっても席についていなかったことから、寮で同室の生徒が確認に戻ったところ失踪が発覚。

 この時はまだ高度な授業に耐えられなかった1年坊が抜け出した、位にしか認識されておらず事態はそこまで深刻ではなかった。

 次に失踪したのは3年生のマッコイ・デモン。こちらは外での実地研修の際にいなくなったらしい(この間の4人組のあれみたいなやつな)。何かの事件に巻き込まれたのではないか。そういった噂が、3年の間を駆け巡り波紋を呼ぶ。

 最後が2年生の集団失踪、こちらは3人いっぺんに消えやがったそうだ。

 ここまで来ると秘密裏に事を進めるのも難しく、学校側は生徒たちには表向きの事情を説明し、俺みたいなやつに頼らなくちゃいけなくなったらしい。

 俺のことを知っているのは校長をはじめ、一部の教員のみ。

 与えられた任務は、(彼女を作りつつ)失踪した生徒の奪還、犯人集団の拿捕、殲滅。


「という状況なわけだが、とりあえずどうしたもんかねぇ?」


 与えられたベッドに転がりながら状況を整理しつつ、独り言をつぶやく。

 ここは本館の近くに建てられている学生寮の一室だ。部屋の都合上相部屋になるらしいが、同居人はまだ帰ってきていないらしい。門限や食事の時間は決まっているが、それさえ守れば比較的自由に暮らせるらしい。

 まぁ、貴族の息子や娘をいたずらに縛ってもいいイメージは持たれんわな。

 俺は部屋の中を見回す。置いてあるもの、整頓の具合から見て恐らく男(いや、女子と相部屋で暮らせるなんて考えてないですよ?)。余計なものは少ないイメージだ。

 はぁ、トラブルなく過ごせる奴だといいな。調査の手前夜中に抜け出すことも多いだろうが、変に勘ぐられたり、間違った正義感を振りかざされても困る。

 そんなことを考えていると、通信用の魔法具が鳴り出した。


 ぷるるる ぷるるる


 ぴっ


「はい、もしもし」

「私、メ○リー。今、ボルザークにいるの」


 ぶちっ


 ぷるるる ぷるるる


 ぶちっ


 ぷるるる ぷるるる


 ぴっ


「はい、もしもし」

「うぉい!ちょっとしたおふざけだろうが!切るな、2回目取りもせずに切るな!」

「うっせぇなぁ。結構魔力の消耗激しいんだから、早く用件済ませろよ。」

「あぁ、分かった分かった。血気盛んな若者はこれだから…。」

「悪いのは俺か!?おっさんよ!」


 向こうにいる相手はシュナイダーのおっさんだった。どうやら昼過ぎに問い合わせした件を調べてくれたらしい。


「それで、どうだった?」

「言われた通り、調べたぞ。まぁ、実際に調べてくれたのはレイナ君だが」

「ありがとうございます。って言っといてくれ」

「そんな感謝しなくてもいいぞぉ。わしは上官として当然のことをしたまでだからな。」

「あんたじゃねぇよ。レイナさんにだよ。で、本題本題。」

「ルイス・ハーヴィッシュ…。辺境の推薦枠で中等部から通っている生徒だな。」

「辺境の推薦枠?」

「貴族ばかり通う魔剣学校と言っても、実力が大事なのは言うまでもない。確かに魔力は血脈によって大分定められるが、お前みたいな変な奴もおる。そこで暫く前から地方で魔力をはかる審査会のようなものを開いていたんだ。」

「あぁ、読めたぞ。そこで好評価を残したら学費免除で学校に行けるわけだ。」

「そういうことだ。ずば抜けて魔力が高かったわけではないらしいが、貴族でもないのに資質は十分ということで通うことになったらしい。」


 なるほどね、確かにあの地味な見た目は貴族って柄じゃなかった。推薦枠ねぇ、地方民からすれば大出世ってやつじゃねえのか。


「じゃあ、辺境の農家の出身って感じなのか?」

「生家についてはまだ詳しいことは調べられておらん。出身地は分かっておるが、いかんせん魔法を使えるものがほとんどいない場所らしくてな。実際に足を運ばねば、分からんことも多い。むしろ、バビルの奴に聞いた方がいいんではないか?」

「それも考えたが、失踪事件に関わっているかどうかは全く分からねぇからな。下手な疑念抱かせても問題だろうと思ったから、保留にしてたんだ。そっちで調べてもらって、どうしようもなくなったら聞いてみるさ。」

「うむ、それがいいだろう。変な心労を増やしては寿命が縮むだろうからな。…それにしても、本当なのか?お前が力を探れなかったなど。」

「あぁ、間違いねぇ。表面的な魔力と気は分かるんだが、そこから奥に入ろうとすると…上手くいえねぇが、白っぽい膜みたいなのにガードされて探れなかった。」

「ひょっとしたら、逸材か?」

「さぁな。さしあたり、優先事項は任務だからな。おいおい考えてみるさ。何かあったらまた頼むわ。」

「おう。お前のことだから滅多なことはないと思うが、気をつけろよ。アキ。」

「はいさ。んじゃまた。」


 通信を終えた俺は、ルイス・ハーヴィッシュのことは置いておいて、今後の活動を考える。

 適度に学校に馴染んだら、失踪した連中の交友関係を当たって情報収集。

 気と魔力を張り巡らして、学校内での争いごとを予見。誰かが誰かを連れ去ろうとしている現場を押さえられれば、それが最も楽なんだがな…。

 おや?部屋に向かって誰かが近づいてくる。一瞬足を止めて何を考えて…。あぁ、俺が中にいるからな。違和感を覚えたんだろうって…こいつまさか。


 がちゃ


 視線を合わし、沈黙




「また会ったね。アキ・ハルト。」

「思ったよりも早い再会だな。ルイス・ハーヴィッシュ。」


 目の前にいるのは厚底眼鏡。


 厄介事は思ったよりも増えそうであった。





さて、同居生活の始まり始まり。

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