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第六話 おっさん お前…

うし、第六話です。これから先、物語を展開させていけそうです。

ではではお楽しみあれ。




 そこはまさに本の部屋だった。

 図書館でもそこまで詰め込んでいないだろうというレベルにまで、本が積み重なっている。本当に全部必要なんだろうか?

 その中心にある机の前で、白く長い顎鬚をはやした細身の老人が座っていた。


「おうおう、ありがとうの。シュリア君。」

「いえ、生徒会長として当然のことをしたまでです。では、私はこれで。」

「ありがとう、本当助かったわ」

「お礼は、学内行事で果たしてもらおうかしら。じゃあね」


 颯爽とした後ろ姿で校長室を後にするセリス・シュリア生徒会長。かっこいいなぁ。惚れちまいそうだ。


「さて、それでは…ようこそ聖王国第零特務騎士団員 アキ・ハルト殿。私がこのローランド魔剣学校で校長を務めておりますトマス・バビルと申します。」

「丁寧な紹介痛み入ります。しかし、ここではお互い生徒と教師という立場でいきましょうか。その方が都合がいいでしょう。校長先生」

「うむ、そうじゃな…と。こんな感じかのう?」


 すぐに口調を修正する校長。ここから先自分の中ではバビルじいちゃんって呼ばせてもらおうかね。


「いやはや、フリートから噂だけは聞いておったが大層優秀なようじゃのう」

「そんなことないっすよ。あのおっさんの言うことだから眉つば眉つば。」

「あやつは決して相手を過大評価しないからのぉ。纏っておる空気もタダものじゃなし、期待させてもらうとしよう。」

「こっちのセリフですよ校長先生。おっさんが『あの爺は魔法士の癖に魔剣士より強い』っていってましたよ。」

「ほほほ、あの頃は大分無茶をしたからのぉ」


 なんてにやにや笑っているバビルじいちゃんだが、その魔力量は半端じゃない。

 学校に入るときにも感じたが、学校一帯を覆っている結界。校舎への直接魔法攻撃を防ぐためのものだろうが、戦略級の魔法じゃなきゃ打ち崩せないレベルだった。

「にしても、ハルト君。校長室の場所は分かりにくかったかね?シュリア君が案内してくれたようじゃが。」

「いや、学生証を貰ってなかったから守衛室で足止め食らいましてね。そこを助けてもらったんですよ。」

「おや、おかしいのぉ。あやつには制服と一緒に届けておいたはずじゃが。」

「あれ?マジッすか?もしや…あのおやじ」


 はるか遠方。王都にて。


「ぶぇっくしょん!」


 ぱさっ


「団長?その手帳はなんですか?」

「あ、あぁあぁ、何でもない。何でもないんだ。気にしないでくれ」

「はぁ、そうですか」


 ボルザークに戻る。


「まぁ、生徒手帳はまた用意しよう。しばらく待ってておくれ」

「どもっす。あのおやじは締めておきます」

「ほほほ、まぁほどほどにな。あ、さて既にある程度聞いているじゃろうが…」


 瞬間、場に緊張感が満ちる。


「君を呼んだのは他でもない。行方不明になった生徒たちについてなのじゃ。」

「詳しく話…聞かせてもらいましょうか」











 僕ルイス・ハーヴィッシュは傭兵を警備隊に引き渡しながら、改めて考える。先ほど出会ったアキ・ハルトについて。

 彼の魔力と気の在り方。今思えばそれは魔力と気が融合しているような状態ではなかったか。そんなの普通はありえない。認識できるものすら少ないだろう。

 あれは一体何なのか?突然変異か?

 考え事に熱中していたのか、クラスメイトのアリスに見られていたのに気付かなかった。


「…ルイス…どうしたの?」

「何でもないよ。ちょっと考え事をしてただけ。」

「…普段、そんなことしないから…気になった」

「ごめんね。アキ・ハルト君でしたか、彼のことが気になっちゃって」


 これは本当だ。実際に魔力を使ったわけじゃないから実力の程は定かではないが、長年実力を隠してきた自分の勘が告げている。『こいつは力を隠している』と。


「確かに編入生は珍しいが、そう警戒するほどでもないだろう。」

「魔力は高かったと思うけど、トリプルクラスではずば抜けている方でもないわ。あなたといい勝負ってところじゃない?」

「そう…なんだけどね。皆は何かを感じなかった?」

「…特に…何も」

「同じく。」

「私もね。でも、こういうときのルイスの勘はよく当たるから…何かあるのかしら。」

「まぁ、気にしないでよ。こんな時期に編入するのに違和感覚えただけかもしれないし。」

「もしかして失踪事件のこと?」

「うん、まあそんな感じ」


 そう、この時期に現れたというのも気になる一因だ。

 人知れず生徒たちが行方不明になっている今。学園側はある程度事実を隠そうとしているみたいだが、気付くものは気付く。

 僕と同じグループにいるクレア、ウォード、アリスも事件のことは気になっていた。


「人が消えているこの時期…。もしや何か関係があるのかもしれんな。」

「…調査に来た人間…とか?」

「まさか、そんな人には見えなかったわよ。」

「人はみかけによらないっていうけどね。」


 何にせよ警戒するに越したことはない。


 僕は普通そして平穏を好む人間。


 それを壊そうとする人間には容赦しない。


 今起きている失踪事件も言わずもがな。


 日常ってやつが僕は大好きなんだ。





次の更新は早めにできそうな予感。

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