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第三話 いざこざ 起こる

はいはい、早いもので第三話です。今回は初めて戦闘シーンを入れてみました。

登場人物数が多いので、普段の一人称視点とはちょっと違う書き方多めでお届けします。




「うっせぇな!ガキが生意気なこと言うんじゃねぇ!俺たちゃただ、ツケにしといてくれって言っただけだろうが!」

「そうだぜ嬢ちゃん」

「何言ってんのよ!初めて来た癖に常連ぶっちゃって、ちゃんとお金払いなさいよ!」

「落ち着きなさい、あなたたち。ここは私たちローランドの者があずかるわ」

 

 背の高い、キリっとした雰囲気の美少女がそう告げる。赤髪のロングヘアで腰には長剣を差しており、その佇まいは洗練された騎士を思わせるものだった。


「ローランドだぁ?学生風情が何をあずかるってんだ」

「我々には、課外活動の一環としてこの街の治安を維持する権利がある。分かったら大人しくするがいい」


 傭兵の言いがかりに、金髪を短く刈り上げた逞しい体つきの青年が、威圧感を持って答えた。青年の背中には、巨大なクレイモアがむき出しで吊るされており、その迫力に気圧されている人々が見える。


「俺らは別に悪いことしたわけじゃねぇぜ、坊ちゃんたちよ」

「何言ってるのよ!無銭飲食の現行はn…むぐ」

「…落ち着いて…ください。…話を聞く限り、…無銭飲食とのことですが何か…反論はありますか?」


 傭兵たちに食って掛かろうとする店員の娘を抑えて、背の低い暗い雰囲気の青髪の少女が声を上げる。可愛らしい顔立ちながら、左右の腰にはレイピアを2本下げており、隙のなさがうかがえた。


「これからギルドで仕事を受けて、報酬がたんまり入るんだ。今度来たとき纏めて払えや文句ねぇだろ。」

「う~んと、仕事が成功する保証はないですし、店員さんも嫌がっているんですから、大人しくお代を払ったほうがいいんじゃないでしょう…か?」


 厚底眼鏡をかけた地味な黒髪の少年が、丁寧に話しかける。これといって特徴のない少年だ。腰には短めの剣が吊り下げられており、明らかに他の3人に比べて頼りない。しかも、注意が他を向いているようでどことなく上の空だ。


「けっ、相手してらんねぇな。おい、行くぞお前たち!」


 リーダー格の男が仲間の4人を連れてその場を離れようとした。しかし、


「そのまま逃げたら、あなたたちは犯罪者になるけどそれでもいいかしら?」

「…おい、ガキども。ローランドだか何だか知らねぇが、プロの傭兵を舐めるんじゃねぇぞ」

「そちらこそ。ローランドの名を聞いてその反応とは、田舎から出てきたばかりの名ばかり傭兵だろう」

「…間違い…ない」

「ああ、ウォード君もうちょっと言葉を選んでよ。アリスちゃんも、そんなに相手を刺激しないで。」

「…どうやら、子供たちに大人の厳しさを教えてやらなきゃいけないみたいだなぁ。囲め!お前ら!」


 傭兵たちが抜刀しつつ学生たちを取り囲む。人数比は学生:傭兵が4:5。普通に考えたら年齢差も鑑みて学生たちの劣勢は必至だ。ここまで大事になるとは思っていなかった店員の娘は、誰かに助けを求めようと辺りを見回す。すると、目の前の学生たちと同じローランドの制服を着た長い白髪を後ろで縛った少年が、こちらへ歩いてくるのが見えた。彼に加勢してもらおう、そう考えた娘は白髪の少年に駆け寄った。


「ねぇ、あなたあの子たちの同級生でしょ。加勢してあげて!お願い!」

「ん~、必要ねぇよ。どうせすぐに終わる。」


その態度に唖然とする娘を置いて、少年は飄々と答えた。


「せやぁ!」


 傭兵Aの一人が叫び声を上げつつ赤髪の少女に切りかかる、さすがに峰打ちのようだが当たればただでは済まない。少女は迫る剣先を紙一重でかわしつつ、いつの間にか抜かれていた長剣を、迅雷のごとき速さで相手の剣の柄に叩き込んだ。その剣先は僅かに赤い。


「燃えなさい…ふっ」

「ぐぅ」


 がいんっ。と、鈍い音をたてつつ傭兵Aの剣が空中に弾き飛ばされる。くるくると回転して地面に落ちた剣は、突如として燃え上がり形をなくしていった。


「悪いけど、あなたの様な人に剣は危険だから処分させてもらったわ。」


 衝撃により腕と体がしびれて動けない男に向かって、あっさりとした風に言葉を投げかける。その様子はとても今、高速で移動する剣の柄に剣撃をぶつけるという神業を披露したとは思えない。


「ほ~、剣を伝導体にして魔力を直接ぶち込むか…。やるねぇ」


 ぼそりと呟く白髪の少年。彼の視線の先には別の戦闘が映し出されていた。


「大地よ…るああああああ!」

「ひっ」


 金髪の青年が繰り出したクレイモアによる一撃が、傭兵Bに襲い掛かる。傭兵Bは剣を横に構え受け止めようとするが、その剣腹に常識を超えた重さの剣が叩き込まれることとなった。

ばきん!へし折れた剣が傭兵Bの足元に突き刺さる。青年の打撃は、相手の額薄皮1枚のところで寸止めされていた。恐怖のあまり傭兵Bは失神して地面に倒れる。


「プロの傭兵がこの様か。弱すぎる…」


「土属性の重力変化かぁ。精悍な顔して繊細な魔法を使うこと」


 完全な解説役に徹する少年。主人公の自覚はあるのだろうか。続いての戦闘は目を向ける間もなく勝敗が決していた。


「…動いたら…刺す」

「ま、参った。降参だ!」


 傭兵Cの首元に2本のレイピアが突きつけられている。傭兵Cの様子を見るに、動こうとしたら首にはもう剣があったという感じだろうか。


「動き…速すぎだろ。風の多重発動か?」

「ねぇ、さっきから何ぶつぶついってるのよ。」

「あぁ、ちょっと静かにしててくれ。ここをじっくり見たいんだ」


 少年が見つめる先には、厚底眼鏡の少年がいた。


「お手並み拝見と行こうかねぇ…」


「やぁ、たぁ!」

「おらぁ、くらぁ!」


 傭兵Dと厚底眼鏡の少年の剣戟が繰り広げられる。腕力の差か、徐々に少年が押され始めた。


「くっ」

「ローランドだろうが、所詮こんなもんよ!おらぁ!」


 その時、大きく振りかぶって必殺の一撃を放とうとした傭兵Dが、突如として態勢を崩す。


「なっ!?」

「やぁ!」


 その隙に傭兵Dの剣を彼は弾き飛ばしていた。


「降参してください。あなたの負けですよ。」

「畜生…いったい何が…」

「相変わらず運がいいわね、あなた。」

「運も実力ということだろう。技術は確かにあるんだ。」

「…かっこ…悪い…けど」

「みんな、ひどいなぁ」


 こうして、ローランド魔剣学校の生徒たちは4人の傭兵を瞬く間に制圧してしまったのであった。





 今、あいつ何をした…。普通に剣で切り合ってた。それは分かる。だが、あの傭兵Dが態勢を崩したの…あれは偶然じゃねぇ。魔法の発動は感じなかった。…どういうことだ?俺があの厚底眼鏡君のことについて悶々としていると、離れたところにいた傭兵のリーダー格がこっそり逃げ出そうとするのが見えた。


「ち、ちくしょう!覚えてやがれ!」


 捨て台詞は見事なもんだ。しっかり様になっている。おい、ちょっと待てこっちに来るじゃねぇか…。


「あっ、待ちなさいよ!」


 げぇ、この店員の姉ちゃん勇敢にもあいつを捕まえようとして飛び出しやがった。学生連中は…?ダメだ。他の奴に縄をかけてる最中だ。あの高速の嬢ちゃんが動き出しているが、あの魔法は長距離には使えない技術だろう。あああああ、仕方ねぇ。騒ぎを大きくしたくなかったが…


「どけえええええ」

「うっせええええええええ」


俺の見事な喧嘩キックが傭兵リーダー格の顔面にめり込みましたとさ。







ついにアキ君の容姿が明らかに。白髪で長い髪を後ろで縛っているそうですよ。

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