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第十七話 何故 知っている!?

フリートのおっさんよ…。お茶目にも程があるぜ。

 




 俺は流れるように床を踏みしめ瞬間的にゴリン教官の背後にまわる。

 右手に魔力を練りこみドラゴンの首でも落とせるような手刀を作りそっと首筋に添えた。

 …おかしいな。常人なら反応できないはずの速さだが、このおっさんなら下手すりゃ反撃までされると思ってたんだけどなぁ。

 ひょっとして…かまかけられた?

 まずくね?

 よ、よし。とぼけてみよう。


「あ、あ~教官?特務騎士団って何ですか~?俺ナンニモワカリマセン。」

「こら小僧、人間殺すにゃ過ぎたもんチラつかせて何言ってんだ?ついでに片言言語はやめろ。」

「これはあれっすよ。教官疲れてるのかなぁと思って、肩でもお揉みしようかなと思いまして。後異国人のお店で癒される雰囲気を醸し出そうと…。」

「ほほぅ。今どきの若いやつぁ肩を揉むのに殺気と魔力を込めるのかぁ。知らなかったぜ。ついでに言うとかけらも癒されんわ。自重せい。」


 ダメだ。誤魔化されてくれるような甘い人間じゃなかった。

 しょうがねぇなぁ、脅迫するしかないか。


「はぁ、すんません。10秒だけ待つんで、教官がどこのどちら様か教えてもらえませんか?」

「ほう…もし俺が10秒以内に答えなかったらどうなるんだ?」


 余裕を感じさせる笑みを浮かべながら、むさ苦しく話すのでカチンときた俺ことアキ・ハルト君。

 折角なので短い時間の中でどうなるかを教えてあげることにした。

 商品説明をする店員さんのごとく


「ご覧のように右手には高純度の魔力が込められていまして、触れるだけで耐性のない人間は消し飛びます。ゆっくり押し付けることにしますが、教官は耐性が強いので徐々に肉が削れながらめり込んでいくと思います…3、2…。」

「まてぇい!説明込みの10秒か、言う言う言う!言わせてくれ!」

「ははは、内容聞けないとねぇ、1…。」


 さぁて、めり込ませようかなと思ったら教官が突然叫んだ。


「我ら国を守る矛なり!」


 あらぁ、このセリフが出てきたか…。これは予想してなかったねぇ。

 仕方ないからお返事しなきゃなぁ。


「我ら国を守る盾なり。」

「目指すは最強。」

「矛盾を潰す存在であれ。」


 これは特務騎士団の団長であるフリートのおっさんが定めた訓示だ。

 簡単なものだが、恥ずかしくって普通の奴は言えるはずねぇし、秘密厳守だから知ってる奴もいねぇ。

 合言葉に使われることがよくあるこの訓示。

 とどのつまりこれを言えるってことは。


「教官、何番隊ですか?」

「三番隊だ。」

「あぁ、あのもっぱら肉弾戦重視って噂の三番隊ですか。どうりで…。」

「どうりでなんだ?」

「いや~、激しい戦い方をなさると思いました。」

「分かったら、物騒な手を外せ。」

「はいはいっと。」


 俺は手刀の構えをとくと、魔力を消した。

 同僚を殺すわけにはいかねぇしな。

 そう、この見た目獣人のおっさんはどうやら俺と同じ特務騎士団の人間だったらしい。

 何でこんなところにいるのかわからねぇが、自己紹介はしとかねぇとな。


「ど~も、零番隊所属 No.3のアキ・ハルトです。」

「三番隊副長のゴリン・ソーンだ。」

「あら、副長さんでしたか?」

「元々独立した組織みたいなもんだ。他の隊のことは知らなくても問題ねぇ。」

「まぁ、そうですね~。隊長連中も噂でしか知らないですし。」


 目上の人間だったか。

 存在自体は一般人にも知れ渡っている特務騎士団ではあるが、その実態を知っているのはフリートのおっさんや隊長クラスの人間だけではなかろうか。

 自分の国の切り札の情報をさらけ出すにはいかないという方針であろうが、自分の隊のことくらいしか本当に分からないのが実情だ。大丈夫かねこれで。

 あ、一応言っとくと


トップに団長フリートのおっさん

次に副団長レイナさん

次が各隊の隊長たち(ゴリン教官は副長ね)

隊員たち(俺はここ)


 みたいピラミット型に特務騎士団が構成されている。

 団なのに隊があるのかよ!?みたいな突っ込みはあると思うが、各々独立して動くことが多いのでそういう括りになっている。

 正式名称は第零特務騎士団とか第三特務騎士団とかそういうことになっているが、中にいる連中は零番隊とか三番隊とかで話を通す。

 本当は第三特務騎士団団長って言わなきゃいけない気がするんだけど、長いしフリートのおっさんと団長でかぶるから半ば公認で隊長や副長扱いだ。

 あ、零番隊だけは特殊でフリートのおっさんが隊長を兼任してるんだぜ。(さっそく使います。)

 話がそれたな、そろそろ戻すか。


「んで、その三番隊の副長さんが何でこんなところで教師をやってるんですかね?」


 ゴリン教官は驚いたような顔をしてから考え込むような仕草を見せ、訥々と語り始めた。


「近年、ここを卒業して騎士団に入る連中の質が低下してきてるのが問題になっててな。騎士団に入れても危ないレベルだから、特務騎士団にスカウトできるやつなんかほとんどいやしねぇ。そこで総長とここの校長が話し合って、実戦でも使えるような人間を育てようって話になったらしい。で、今年から俺みたいな人間が身分を隠してガキどもを鍛えることになったってわけだ。貴族に遠慮せずにな。」


 なるほど。確かにクラスの連中をざっと見たがごく一部を除いて、優秀といえる人間は確かに少なかった。

 名門学校と行っても貴族の集まりはこんなもんかと感じた面も勿論ある。

 だから、バリバリの超一流の騎士を教員にあててスパルタ式で鍛え上げようってわけか…。


「今までは全体のレベルと教育方針を見越して、見学していただけだったが、だいたい把握したからな。これからはビシビシ連中を鍛えてくつもりだ。」

「はぁ、ご苦労様です。」


 ふ~ん。続きを待つが俺が期待している話が出てこない。

 それだけ?俺が受けた任務とゴリン教官こと三番隊副長の関係は?


「あの~、話は分かったんですけど、俺の任務…つまり行方不明の生徒たちの事件については?」

「そうそう、それだ。先日団長から直々に連絡があってな。それに関して零番隊の若いのを送り込むから、手伝いをよろしく頼むといわれてたんだ。」

「え。じゃあ俺の任務は、そもそも学校にいた教官が担当すりゃよかったんじゃ…。」

「馬鹿野郎。俺はこれから先も暫くは教官をやっていくつもりなんだ。生徒にちょっかいかけたり、こそこそ調べまわったりしたら、俺の本業が果たせないじゃねぇか。」

「あぁ、そうですか。」


 言われてみればそうかもしれない。そう考えていたら、不穏なワードが聞こえたのを思い出した。


「さっき、フリート団長から俺がくるって聞いたっていってましたよね?」

「おぅ、名前も容姿もばっちりとな。当然お前も俺がいることは聞いてるもんだと思っていたが、何の反応もせんし、かまをかけてみたわけだ。…殺されると思ったがな。」

「ははははは。」


 さっきの教官の驚いたような顔はそれだったのかぁ。

 乾いた顔で笑いながら、お茶目なおっさんの顔を思い返す。

 なぁ、おっさん。俺に言うの忘れてただろ。






 遥か遠く特務騎士団団長の執務室にて。


「あ…」

「団長どうなさいましたか?」

「あぁいや。何でもない、何でもないぞ。レイナ君。」

「…?」


 ちゃんちゃん。





にゃふ、最近は一週間に一話ですなぁ。

ま、気分が乗ればペースはあがるかと。

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