第十一話 授業 受けたい
いつもより日があいたかもしれませぬ。申し訳ない。
「アキ・ハルトです。よろしくおねがいします。」
「ハルト君は編入という形でここにいます。皆さん、彼が困っていたら助けてあげてくださいね。」
「迷惑かけます。」
「彼は地方出身ですが、高名な魔剣士の方のお弟子さんだそうです。皆さんにもいい刺激となるでしょう。」
無難な挨拶で決めた俺をメルティ先生(40代、小太り、小柄、これが現実ですな)がフォローしてくれる。
教室をちらりと見まわすと、ルイスの他に傭兵を締めあげた3人を見かけた。
そりゃそうか。同じ班だってんならクラスも同じだろう。
おや?俺の方を忌々しげに見つめて来るイケメンの優男がいるが、何かしただろうか俺?つーかどちら様?
「席は…そうね。ウィルフォードさんの隣をお願いするわ。後ろでごめんなさいね。」
「いやいや、遅れて入ってきたんだから当然っすよ。」
生徒たちの席の間をぬって、指で指定された場所へと向かう。
「ここよ。」
そういって自分の隣を示してくれたのは、炎で剣を消しずみに変えた赤髪の美少女だった。
「よろしくね。」
「こっちこそ色々頼むわ。えーっと、クレア・ウィルフォードさん?」
「あら、覚えててくれたのね。」
「そりゃもう、美人の名前は一発で覚えなきゃね。」
「おだてても何も出ないわよ。」
俺の冗談に軽くあきれたのか、息を吐きながらそう言う。
美人だろうがなんだろうが、人の名前や地名は一発で覚えられるように訓練している。特務として動くには必須の技能だからだ。
だがしかし俺の場合、覚える価値のないものについては忘れるようにしている。たまにこれが問題を引き起こすんだが、まぁ今はいいか。
「堅苦しいのは苦手だからアキって呼んでくれ。」
「分かったわ。私のこともクレアでいいわよ。」
「ありがたい。敬語や様をつけろって言われたらどうしようかと思ってたんだ。」
「今どきの貴族はそんなに頭が固くないのよ。」
「ふ~ん、そんなもんか。」
「ま、頭の固いのも何人かいるけどね」
「何だ、やっぱりそうか。」
「あんまり喋らないで、授業が始まるわよ。」
俺に場所を示した後、黙々と授業の準備を進めていたメルティ先生がようやくこちらを向いた。
「それではこれから魔法理論の授業を始めます。ハルト君が今日から編入してきたことですし、基礎のおさらいから入りますね。」
「先生。たった1人のために授業の進行を遅らせるのは些か問題があるのではないのでしょうか?」
ようやく授業が始まる。そう思った矢先にきざったらしい声が教室に響き渡った。
「バート君、授業の進行は教師である私に一任されています。あなたの意見は聞き入れられません。」
「彼だって、ここに編入するだけの実力は持っているはずですよ。わざわざ基礎からやらなくても大丈夫でしょう?」
急にこんなことを言い始めたのは俺のことを睨みつけていたイケメンの優男だ。どっかで見たことある気がするが、キザ男(本命)と名付けよう。うぅむ、デジャヴ。
中々終わらないので、クレアがこちらに話しかけて来る。どうやら、あいつについて説明してくれるようだ。
「アレックス・バート…。あなた風に言えば、頭の固い貴族らしい貴族ってやつね。」
「なるほど、そんな見た目だな。にしてもどうしてあんなことを?」
「きっと貴族じゃないあなたに合わせるのが嫌なんでしょ?」
「そんなもんかね。」
「バート家っていったら新興だけど勢いのある家だからね。何人か取り巻きもいるし。まぁ、大半は私みたいな人間だから安心してくれていいわよ。」
「ははぁ、なるほど。…いつ終わるんだあれ?」
「今日はやけに絡むわね…。あなた彼に何かした?」
俺は記憶を探り起こす。
そういえば校長の部屋へシュリア会長に案内してもらう時に、しきりと俺を案内しようとした金髪の優男がいたな。
はっ。キザ男(仮)と名付けた気がする。
ようやくここにキザ男(仮)とキザ男(本命)の運命の出会いが生まれた(単なる記憶の一致)。
「生徒会長と一緒にいたら、話しかけられたな。」
「多分それだわ。バートは会長の信奉者なの。理由はどうあれ一緒にいたのが許せなかったんじゃない?」
「ただ道案内をしてもらってただけなんだが…やれやれ。」
めんどくさいことこの上ないが、やむを得ず俺は席を立ち、まだごちゃごちゃ言っている先生とキザ男(確定)に話しかける。
「先生、基礎からのおさらいは別にしないでも大丈夫ですよ。知らないことがあったら誰かに教えてもらいます。」
「でも…。」
「ほら先生、本人もこういってることですし早く授業を進めてください。時間は有限ですからね。」
「俺からもお願いします。どっかの誰かがごちゃごちゃ言ったせいで、基礎を教えてくださるよりも余計な時間がかかったと思いますので。」
ぷぷっ
くすくす
俺の皮肉に教室に笑いが漏れる。まだまだ俺のお笑いセンスもさびちゃいないな。
キザ男ことバート君が俺のことを先ほど以上の目で睨みつけて来る。
おいおい、そんな睨むなよ。怖い怖い。俺にそっちの気はないんだって。
荒い音を立てて席に着くバート。何かひと波乱ありそうかなぁ。
ふと奥の席を見ると、ルイスが何かいいたそうな目で俺を見ていた。
いやだって、しょうがねぇじゃん。なぁ?
「それでは今日は、多元素魔法の利用方法について説明します。」
まあ、めんどうごとは置いておいて俺は人生初めての学校の授業を味わうことにした。
十代…ごくり。




