第五章 それぞれに
2年が経ち、哲也は高校を卒業して公務員専門学校に入った。その間に地元の警察官採用試験を受けるつもりだった。
知美は、中学を卒業し、商業高校に入った、少しでも早く自立したいとの思いからだった。
愛子は、中学に入ると学業でメキメキと頭角を表し、学年でもトップの成績になった。
とはいえ、高校で忙しい姉の事もよく手伝った。
5年が経った。哲也は公務員専門学校を卒業後、警察官採用試験に合格し、警察学校に通っていた。
知美は、商業高校を卒業後、地元の銀行に就職した。
愛子は、亜弥とも相談して、中央の進学校に進み、経済学部を目指して勉強していた。
両親を失った寂しさを除けば、3人ともそれぞれの目標に向かって、充実した日々を過ごしていた。
6年目の夏、両親の七回忌が営まれ、親族が集まった。手配は、哲也たちの伯父と亜弥が中心で行ってくれた。
「みんな、それぞれにりっぱになって。
裕子たちが生きていたらさぞ喜んだろうにね」
祖母のナツが半涙で、喜んでいるのやら、悲しんでいるのやらわからない表情で一人頷いていた。
「本当に、この交通遺児自立支援制度ってのは、助かったよな。うちのガキどもなんか、親の言う事なんかちっとも聞きやしない。」
母方の叔父の剛が写真を眺めながら呟いた。
その後も、哲也は4年で警部補となり、希望して交通機動隊に入隊して活躍している。
知美は銀行の取引先の若社長から見初められて、結婚を前提に交際中。
愛子は、有名大学の経済学部に在学中、講義やゼミに飽き足らず、インターネットを利用したベンチャー企業を立ち上げて、学生実業家である。




