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害獣駆除

 黒の森の縁は、思っていたよりも静かだった。

 風が梢を揺らし、葉擦れの音が遠くで重なっている。


『偵察オートより報告。前方三百。熱源反応、複数』


 無線が入ると同時に、車列が自然と減速する。

 佐伯はハッチから身を乗り出し、双眼鏡を構えた。


「獣だな」

 最初に姿を現したのは、狼に似た魔物だった。

 だが大きさが違う。体高は馬並み、毛並みは黒く、目が異様に赤い。


『数、十以上。隊形崩れなし』

「接近させるな。二百で止める」


 号令と同時に、MINIMIが火を噴く。

 短く、制御された連射。

 魔物は数体が倒れ、残りが離散した。

 だが、それで終わりではなかった。


『左翼、別反応!』


 森の奥から、猪型の魔物が突進してくる。まさに猪突猛進の様相で向かってくる。

 分厚い皮膚、岩のような頭部。普通科が放った小銃弾を弾く音が聞こえた。


「桐生、M2で援護しろ」

『了解』


ダッダッダッダッ


 12.7mm弾が数発命中し、ようやく巨体が横倒しになる。

 ゼインはその様子を呆然と見ていた。

「……まるで、狩りだな」

「違う。駆除だ」


 だが、次の魔物はそれまでとは異なっていた。

 木の上から、音もなく飛びかかってきたのは、猫に似た魔物。

 しなやかな動き、異様に長い前肢。


「上だ!」


 反応が一瞬遅れた。

 普通科員が転倒し、悲鳴が上がる。隣にいた隊員が即座に引き金を引いた。

 猫型の魔物は5.56mmNATOを至近距離から撃ち込まれ、地面に叩きつけられる。

 沈黙。

 息遣いだけが残った。


『負傷者一名。軽傷』

「了解。油断するな。どこからやってくるかわからん、全周囲の警戒を厳としろ」


 安堵が、遅れて胸に広がる。だが、ゼインの表情は硬かった。


「下級魔物、だよな」

「どうした」

「いや、コイツらは俺達でも倒せる雑魚だし、普段は単体か同族の群れで襲うのですが……戦い方が、どこか統制されていた気がして」


 俺は答えなかった。否、答えられなかった。

 同じことを感じていたからだ。


(偶然じゃない。誘導されている…?)


 だがそんなことはもうなく、出くわす魔物を倒しては進むことを繰り返す。時折中級魔物が現れては機関砲で対応。それ以外は小銃や機関銃でなんとかなる魔物が多かった。

 途中で消費したはずの弾薬が何故かなくなっていないことに気づいた。これが無限補給の効果だろうか。兎に角、弾薬が尽きる恐れがなくなったことで容赦なく撃ちまくることができるようになった。


 夕刻、一度森を出て野営地を設ける。森を背に、車両を円形に配置。M2やMINIMIを搭載した車両には夜番を置く。焚火は最小限。

 昨日と同じように食事を済ませ、夜番を残して就寝する。そういえば、食料も空だったダンボールに補充されていたな。


 隣に腰を下ろしたゼインは剣を抱え、低く呟いた。

「……獣型で、これだ」

「何が言いたい」

「初めに、波状攻撃を仕掛けられたでしょう?知能系の魔物がいる気がするんですよ」

「ああ、あれか。つまりその知能系って奴が裏にいるかもしれないと?」

 ゼインが頷く。


「夜が、嫌な予感しかしない」

 星のない空を見上げた。

「俺もだ」

 この夜、ここにいる誰もがまだ知らない。

 次に現れる「敵」が、獣ではないことを。

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