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4/11

今日は書き溜め放出祭(勉強の合間に修正しながらだから時間は不定期)

10話くらいまで出せるといいなー

 白い霧が、草原を低く覆っていた。

 夜露を含んだ空気は冷たく、息を吐くたびにわずかに白む。

 佐伯は誰よりも早く目を覚ましていた。

 習慣だった。実戦に近い状況に置かれるほど、身体は勝手に早く起きる。

 テントのファスナーを音を立てないよう慎重に開き、外に出る。

 周囲には、パトリアや高機動車の黒い影が霧の中に沈んでいる。車両の輪郭だけがぼんやりと浮かび、まるで置物のようだ。


(……異世界、か)


 未だに実感はない。

 だが、昨夜の土の匂い、星の並び、聞いたことのない夜鳥の声──それらが、ここが日本ではないことを否応なく突きつけてくる。


「早いですね」


 背後から声がした。

 振り返ると、ゼインが立っていた。

 鎧は外し、簡素な布の上着だけを身に着けている。剣も腰にない。


「そっちこそ」

「昔からの癖ですね。どうも陽が昇る前に目が醒めるんです」


 ゼインは霧の向こうを見つめた。

 そこには、緑色の装輪装甲車がある。


「……昨日、初めて見た時は怪物かと思いました」

「よく言われる」

「だが、中に人がいて、寝て、食って、文句を言う」

 わずかな笑み。

「兵はどこも同じ、か」


 佐伯は答えなかった。

 代わりに、ポケットから携帯用のコップを取り出し、魔法瓶の湯でコーヒーを淹れる。


「飲むか?」

「……黒い湯?」

「慣れると手放せなくなる」


 ゼインはコップを受け取ると恐る恐る一口含み、顔をしかめた。

「苦い」

「だろうな」


 しばしの沈黙。


「昨日、思ったことがある」

 ゼインが口を開く。


「お前たちは、昨日のワイバーン…魔物を『敵』として見ているが、憎んではいない」

「仕事だからな」

「俺たちは違う。恨み、恐れ、そして──誇りを込めて剣を振る」


 佐伯は時計を見る。

 5時58分。

「感情を込めすぎると、判断を誤る」

「冷たいな」

「だから、俺らは生き残れる」


 6時ちょうど。

 佐伯はスピーカーのスイッチを入れ、目的の音源が入ったトラック番号を押す。澄んだ音が霧を切り裂いた。起床ラッパだ。

 テントが揺れ、咳払い、靴音が響く。

 いつもの朝が、異世界でも始まった。



「もう目的地は近いらしい。今日から我々は魔物を討伐する。…いや、討伐と言ったがな、やることは向こうにいたときと変わらん。災害救助要請に基づく害獣駆除、といったところかな?まァ特例で無制限武器使用が認められているが」


 隊員に笑いが起こる。皆一晩寝ていつもの調子が戻ってきたようだ。


「これも変わらんが、人命が第一優先だ。主な活動地域は街じゃないからから民間人はまずいないと思うが、危険を感じたら直ぐに撤退すること」

「「了解」」

「よし。訓令は以上だ。各車に分乗15分後出発だ」


 朝靄が晴れ、遠くに左右に際限なく広がる巨大な森が見えていた。

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