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魔物襲来、そして出撃

 声のする方を振り返ると、白髭を蓄えた壮年の男が玉座に座っていた。威厳のある立ち姿と、鋭い眼差し。誰が見ても、この国の王なのだと分かる存在だった。

 隣にはそれより若い、顎下に少し髭を少し残したダンディーな男が立っていた。補佐官だろうか?


「突然の召喚、許されよ」


 王様はそう前置きし、俺に向かって深く頭を下げた。その行為に、胸がざわつく。王様が頭を下げる理由など、ろくなものではない。

 俺は隊員に引き続き警戒するよう命じつつ、16式のキューポラから這い出して地面に降りた。


「召喚とは、一体どいういことでしょう?というか、ここは何処なのでありますか?」


 いかん、王様の威厳に思わず上官に対するような口調になってしまった。いや、間違ってはいないのだが。


「……。落ち着いているな。質問に答えよう。召喚というのは、我が国の魔導師団が発動した異次元召喚魔法によってこの世ならざる場所からよばれた、ということじゃ。まあ、其方達にとってはここがこの世ならざる場所なのだろうが…。それと、ここはアルテリオ王国。近隣と比べても大きくも小さくもない王国の、王城前広場じゃ」


 なるほど、つまり異世界転移という訳か。それにしてもわからないことが多すぎる。


「小官は日本国陸上自衛隊第17即応機動連隊第1先遣隊隊長、佐伯亮介一等陸尉であります。質問ばかりで申し訳ないのですが、周りの槍持ちは我々に危害を加えることはないと考えていいのでしょか。次に、ここが異世界ならば何故我々の言葉が通じるのでしょうか。また、我々を召喚した意図は何でしょう」


「うむ、まずはこちらが先に名乗るのが道理。失念しておった。予はアルディオン・アルテリオ。第34代アルテリオ王である。右のものは宰相のエウレオ・グレイオスじゃ。ひとつ目の質問じゃが、周りの者は近衛兵と魔導師団の魔術師。もちろん危害を加えることはない。安心召されよ」


 それを聞いて王様が次の質問に答えるより早く指示を飛ばした。


『全隊銃を納めろ。整列・各分隊点呼後担え銃にて待機!』


 状況理解より先に命令を遂行していた隊員たちが再び素早く命令を遂行し始める。


「113分隊整列ーッ」

「111分隊整列ーッ」

「迫撃12分隊整列ーッ」

「偵察3分隊整列ーッ」

「112分隊整列ッ急げ!」


 いつものように整列し、いつものように点呼する。それだけだが、今それができることが自衛官の誇りだ。


 「担えーッ(つつ)!」

 ダッ

 一斉に足を閉じ、小銃を右肩に担ぐ。半長靴の踵がぶつかる音、小銃の金具がぶつかる音がひとつの音となって響く。


「第1先遣隊、総員63名、現在員63名、紛失物なし、人員装備異常ありません!」

「了解、機甲科も問題なし。待機続け」


兎に角、全員がここにいることがわかった。これがいいのか悪いのか。


「見事じゃな、近衛隊でもこうはいかぬ」

「はっ、恐れ入ります」

「さて、言葉についてじゃが、これは我らにも解らぬ。過去にも幾度か召喚があったが、言葉が通じぬ等という記録は一切残っていないのでな、だからこそ迷いなく召べたのじゃ」

「なるほど」

「最後の召喚した意図じゃが…これは詳しく話すと長くなるのだがな」


 王は静かに語り始めた。この世界では近年、魔物の大規模な暴走であるスタンピードが頻発していること。隣の帝国との国境地帯に広がる黒の森(シュヴァルツヴァルト)から数十万の魔物と高ランクモンスターなる生物が溢れ出していること。通常の軍や騎士団では対処しきれず、既に戦力の半数を失い、国そのものが滅びかねない危機に直面していること。そして、古くから伝わる異次元召喚魔法により、異世界から力を持つ者を召喚する以外に道がなかったこと。


「ここにいる魔導師団も元は精鋭600名を擁し近隣の魔導師団と比べてもかなり多くの戦力じゃったが…戦地に50名ほど残しているとはいえ、この有様じゃ」


 チラッと周りを見た感じ、魔導師と思われるローブを着た人間は100少し…150はいないだろう。3分の1以下に減ったということか。


「では、我々はその魔物やモンスターを駆除すれば良い訳ですね?」

「話が早くて助かるな。できれば今からでも王都の駐留軍と共に森へ向かって欲しいくらいなのじゃが」

「解りました。ですが最後にひとつだけ。駆除任務が終わり次第、我々は元の世界へ帰れるのですね?」


 これが1番重要だ。俺は家族もいないし大した未練もないから良いが、隊員達はそうもいかない。


「…」


 王が押し黙った。ということは、そういうことなのか。


「帰れない、ということですね?」


「……申し訳ない事じゃがな。転送自体はできるじゃろうが、送った先が其方達が元いた世界とは限らんのだ。それに、こんな人数を召んでしまったからには、この国の地中に残る魔力も少ない。転送魔法を発動できるのは何年後になるか…」


 ある程度覚悟はしていたが、やはりそうか。隊員達の表情も暗い。


「ここに骨を埋めろと?」

「そうなるな。じゃが討伐後は救国の英雄じゃ。ワシができる限りで最高の地位と待遇を約束する。一方的に召喚しておいて悪いが、肚を括ってくれんか」

「そうするしかなさそうですね」


 この人達にどうにもならないなら、王様が言うように肚を括るしかないんだろう。だとしたらやることはひとつだ。


「今すぐ発ちましょう。場所は何処です?」

「行ってくれるか。場所は先程も言った通り黒の森、北門からまっすぐ道なりに進んで馬車で4日、といったところじゃな」


 馬車で4日か。幸い道があるから不整地を走る必要はなさそうだが、車列を組んで、戦地で野営よりは手前のほうがいいだろう。ならこれから出発して日没前に野営場を確保、明朝に撤収したとして明日の午前中には到着できるだろう。

 あとは相手次第だが、問題は燃料と弾薬だな。どちらもこの世界にはありそうもない。最悪弾薬は節約して、車両は現地で拠点を作って固定砲座にするか。


「既に行く道の街には触れを出しておる。領主達がもてなしてくれるはずじゃ」

「触れですか?しかし我々は野営で事足りますし、急ぐなら素通りした方が良いのでは?」

「野営じゃと?丁度馬車で1日分ごとに領主の街があるのじゃから、そこを使えば良いじゃろう」

「いえ、ですから我々は今から出立すれば明日の昼までには着けますので…」

「何と!勇者殿方は馬より早く走れるのか。しかしそれでは軍が追いつけんな」


 そうだった、軍がいた。


「15名程度でしたら、車両に余裕がありますが」

「シャリョウ?何じゃそれは」

「あー… 鉄の馬のようなものでしょうか?我々はそれに乗って移動します。私が乗ってきたものも車両のひとつです」

「ほう、大きな馬じゃな。これがそんなに速いのか」

「それはまあ…馬車よりは」


 エンジンが云々なんて言ってもわからんだろうなぁ。


「そうじゃな、では近衛騎士を10名、乗せていってもらえるか」

「了解しました」


 その後も細かいところを調整して、宰相が近衛騎士を呼ぶ間に隊員をいつも通り車両に分乗させ、出発準備を整えた。


(GPSは…使えないか。まあ、衛星がないんだから当たり前だな。となると衛星通信もできんか)


「そうじゃ、出発前にステータスの確認をしておくとするかの」

「ステータス?」

「ああ、その人の体力や魔力、年齢や称号を示す身分証じゃよ。ステータスオープンといえば見える筈じゃ」


(本当にラノベの異世界だな)

「ステータスオープン」


 そう呟くと、目の前にホログラムのように画面が浮かび上がった。内容は…うん、解らん。何が何なんだ?


「職業とMP、あとスキルを教えてくれぬか」

「はぁ。えぇと、職業は軍人、MPは0、スキルは…無限補給?」

「なに、MP0じゃと?それでは戦えんではないか」

「MPって何です?」

「魔力量じゃ。それが0ということは其方は魔法が使えんということじゃ」

「魔物というのは、魔法でなければ攻撃が通らないので?」

「いや、槍や剣でも討てる。じゃがな、Bランク以上の魔物をそんなもので相手するのは無謀すぎる。過去の勇者が筒から火を噴く魔導機でドラゴンを打ち破ったこともあったが、あれは魔導機が強力だったからな」


(筒から火を噴く…?それは火砲では?)


「ヒトロク1号車、主砲仰角+35で射撃用意」

『弾種は』

「演習弾で良い、1発だ」

『了解』


「陛下、その火を噴く魔導とはこんなものでしょうか」

「?」

「1号車、射てッ!」


ドンッ


 105mmライフル砲の先端から火が噴き出し、演習弾が王都中心部を囲む城壁を越えはるか上空へ飛び去る。


「なんと… まさしくこれじゃ。これがあれば魔法など使えんでもドラゴンを倒せる」


(やはりか… ということはこの世界には既に火砲を有する勢力がいるということだ。なぜ今出てこないか解らんが)


 そんなことを考えていると、突然鐘の音が鳴り響いた。


「警戒、警戒!飛行竜(ワイバーン)の群れだ!」

飛行竜(ワイバーン)!?遂に王都まで…」


 ワイバーン、確かドラゴンより小ぶりな竜だった筈だ。本当に、ここは異世界なんだな。


「ワイバーンなる飛行生物が接近中らしい。確認できるか?」

『偵戦のレーダーで未確認飛行物体を3機捉えてます。時速82kmで接近中。上空到達まで140秒』

「ひどくゆっくりだな。ヘリのようなものか。MINIMI、狙えるか?」

『こちらLAV、射線通ってます。射撃しますか?』

「王都上空まで侵入されれば安易に撃墜できない。交戦許可する」

『了解、対空射撃開始』


タタタタタタタタ……


 軽快な射撃音と共に5.56mm×45mmNATO弾が発射される。毎分725発のハイレートで撃ち出されれた弾丸は正確に先頭を飛んでいるワイバーンを直撃した。


『射撃効果なし。目標増速!』

「おいおい…MINIMI(機関銃)が効かない生物って何だよ」

『目標、城壁を越えました』

「ドローン、奴の気を引け!壁外へ誘導!MINIMI射撃やめ。偵戦主砲射撃用意!」

『弾種徹甲、現在装填中』

『目標降下!市街地を攻撃中』

『ドローン離陸(テイクオフ)

「レーザー照射!警告用スピーカー最大ボリュームで何か流せ」


 離陸した偵察ドローンが即座にワイバーンの背後に周り、火器管制レーザーを照射しつつ数百m離れたここからでも聞こえる大音量で犬が吠えるような音声を流す。待て、なぜ偵察ドローンにそんな音声データが入ってる?

 それはともかく、狙い通り三匹のワイバーンが一斉に振り返る。どうやらドローンを外敵と認めたようだ。その翼を羽ばたかせて飛び上がった。


「喰いついた!巡航速度で壁外まで後退」

『了解』

『こちら偵戦、砲撃準備完了。目標を光学で照準追尾中』

「奴等が壁外へ出たら射撃だ」

『了解』


 ワイバーンがこちらに背を向け、ドローンを追いかける。あと少し…まだだ…よし

「射て」

『射撃開始!』


ダッ ダッ ダッ


 MINIMIとは比較にならない重厚な射撃音が響く。25式偵察警戒車(偵戦)の主砲は30mm機関砲だ。5.56mm弾とは威力がまるで違う。


『第1目標、撃墜!第2目標、撃墜!第3目標、撃墜!』


 さすが鍛え抜かれた偵察隊。動かずにヘリレベルのものを撃ち落とすなど容易いか。1匹目は翼の付け根、2匹目は胴体、3匹目に至っては異変に気づいて振り向いたところをヘッドショットだ。初弾から全弾必中で当てやがった。


『全目標撃墜!』

「良くやった。交戦終了、対空戦闘用具納め」

『了解、用具納め!』


「さすがは勇者殿。こうも鮮やかに墜とすとは」

「しかし、街に被害を出してしまいました。申し訳ありません」


 見れば、ワイバーンが襲っていた辺りから黒煙が上がっている。相当な被害があったのだろう。初めから機関砲で迎撃していれば…


「何を言う。あれはワイバーン、亜種とはいえドラゴンの1種じゃぞ。本来なら魔導師団が1匹ずつ損害覚悟で討伐する相手。それを近づけもせず屠ったのじゃから、十分凄いことだ」


 そう言われればそうかもしれないが。


「ですが、我々の判断ミスで被害が出てしまったのも事実。民間人保護を最優先事項とする我々にとって、恥ずべきことです。ですのでどうか、救助と復興を手伝わせていただけないでしょうか」

「いや、其方達には一刻も早く森へ行ってもらわねばならん。森の近くの被害はこの比ではないのだ。魔物に襲われ、全滅した村もあると聞く。これ以上の被害を出さないためにも、森へ行ってスタンピードを止めて欲しい」

「しかし…」

「それに、ここには其方達につける予定だった軍が残っておる。救助や復興は、その者たちで十分じゃ」

「…解りました」


 そう返事をすると、宰相が鎧を纏った騎士たちを連れて急いで戻ってきた。


「陛下!ワイバーンが出たと聞きましたが?」

「遅いわ。とっくに勇者殿が3匹とも屠ってしまわれた」

「3匹ですと!?さすがは勇者殿にございますな」

 

 そう言って宰相が尊敬の目でこちらを見てくる。ありゃ、騎士達もだ。本当にそんなすごいことなんだな。


「そちらの方々が騎士様で?」

「あ、ああ。そうだ。近衛騎士隊の者で、隊長のゼイン・ラグナス以下10名、勇者殿御一行と帯同することになる」


 うわー、隊長自らですか。見た感じ宰相の直ぐ後ろにいる人かな?1人だけ甲冑が違うし。ていうか美青年だな。俺より確実に若い。剣を振るなら若さが大事ということか。


「ゼインと申します。勇者殿とご一緒できて光栄であります」

「いえ、こちらこそ。道中よろしくお願いします」


 やはりというべきか、礼儀正しい。どこかの貴族の息子だろうか。


「では、騎士の方々は5名ずつに分かれていただき、こちらへ。直ぐに出発しましょう」


 騎士の人たちには高機動車に乗ってもらうことにする。ま、普段馬車や馬で移動してる人達にとって窓ひとつないパトリアの兵員室なんか牢獄のように感じるだろう。それよりは幌を(ひら)ける高機動車の方が随分マシな筈だ。


 騎士の人たちは戸惑いつつも高機動車に乗ってくれた。場所は荷台の側板から展開する簡易座席。両側から真ん中に向かって向き合う形だ。もちろんシートベルトなんかはない。いやそもそもこういう乗り物なんだって。同じ車輌で人員輸送も物資輸送もこなさなきゃなんだから。

 一応、揺れた時は後ろにある側板の縁に肘をかけるようには伝えた。馬車も通ってる街道らしいからそこまで揺れないとは思うが。

 騎士がちゃんと乗ったのを確認し、自分も16式に戻る。思ったより時間がかかったので、急いで無線機を取る。


『こちら小隊長車。これより我々は王都を出て北へ向かう。民間人を救うためにも急がなければならん。質問は多々あるだろうが、それは道中で聞く。とにかく、操縦手はアクセルを踏め。それが今できることだ。良いな』

『了解』

『では、前進』


 偵察オートの軽快なエンジン音を先頭に、各車のエンジンが唸りを上げ、ゆっくり前進を始める。急ぐとは言ったが、速度を上げるのは王都を出てからだ。

 その音を聞いた王都市民は後に、巨大な魔物が現れたと思ったほどだと語った。

なんか…ねぇ

すごい長くなったよ?

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