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電車  作者: ゑいすけ
4/4

あと1回

疲れ切った体を引きずり、俺は夜の列車に乗った。

急な案件で寝不足に加え残業が続き、心身ともにぐったりと疲弊していた。


座席に腰を下ろし、腕を組んで寝たふりをする。

目を閉じ、車内のざわめきと走行音に身を任せていると、こんな日に限って、酔っぱらったような、ボケているような老人の喚き声が近付いてくる。


「うわぁ……疲れてるのに、勘弁してくれよ……」


しばらくすると、俺は疲労のせいで本当にうとうととしだす。

丁度、うるさい声もこの車両へ入ってきたようだ。


ちょうどいい、少しくらい本当に寝てしまおう……。


降車駅が近付くアナウンスではっと目を開けた瞬間、視界に飛び込んできたのは、俺の顔を覗き込む老人の顔だった。


「うっ……」


悲鳴が喉につっかえる。

ぽっかりと空いた空洞のような目が、くっつきそうなほど近くにあった。


老人が、ニタリと、意味ありげに目を歪ませる。


「あはははは~~!」


体が跳ね、思わずのけ反った。

周囲の乗客は、ちらりと見たような素振りもなく、スマホに視線を戻す。

俺の心臓はバクバクと鳴る。


老人はさらに顔を近づけ、低く言った。


「あと、1かぁ~い……」


そして、何事もなかったかのように立ち去る。

残された俺は、手すりを握りしめたまま、しばらく固まっていた。


次の日、同僚に話すと、笑って聞き流されてしまったが、後1回が一体何なのか、胸の奥に不安を抱えながら、俺は自転車をこぐのだった。

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